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テラスカイ Research Memo(3):クラウド市場は年率20%の高成長が続く見通し

注目トピックス 日本株
■テラスカイ<3915>のクラウド市場の動向と事業内容

1. クラウド市場
コンピュータの歴史をひもとくと、1960年代前半のメインフレームの普及から始まり、1980年代にはオフコン/ミニコン時代となり、1990年代後半からはクライアントサーバシステムへとコンピュータの性能向上とともにシステムの形態が変遷してきたが、2000年代後半からは通信ネットワークの高速化やインターネット技術の進展を背景に、クラウド・コンピューティング市場が立ち上がり、現在はコンピュータを「所有」する時代から「利用」する時代への過渡期にあると言える。

クラウドとは、利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で利用者に提供するサービスを言う。従来、企業が情報システムを構築する際は、自身でハードウェアやソフトウェア、データなどを購入し、運用・管理しなければならなかったが、クラウドを利用することで、こうした手間や時間が省け、業務の効率化やコストダウンを図れるというメリットがある。しかも、規模・業種を選ばず適用することができ、初期投資が不要でシステム構築にかかる開発期間も短期間ですむため、企業側の導入メリットは多い。特に、ここ数年は通信ネットワークの品質向上やクラウドサービス事業者のセキュリティ対策が強化されてきたことで、規模を問わず既存システムからクラウドへ移行する企業が増加する傾向にある。

(株)MM総研の調査によれば、2016年度の国内クラウドサービス市場の規模は、前年度比38.5%増の1兆4,003億円となり、2021年度までの年平均成長率は約20%となり、2021年度の市場規模は3兆5,713億円と2016年度比で約2.5倍に拡大すると予測している。このうち、同社が主戦場とするパブリック・クラウドの市場規模は2016年度が前年度比40.9%増の3,883億円で、2021年度までの年平均成長率は約22%、2021年度の市場規模は2016年度比で約2.7倍増の1兆556億円となる見通しだ。まだクライアントサーバシステムを採用している企業が多く、今後もクラウドへの移行が進むことが高成長の背景にある。

なお、パブリック・クラウドサービスはサービスの形態により、SaaS※1、PaaS※2、IaaS※3等に大きく分類される。このうち、企業が情報システムを構築する場合はPaaS、IaaSを利用することになる。これらサービスの世界シェアで見れば、PaaSについてはsalesforce.comが、IaaSではAWSがトップとなっており、それぞれ売上高は年率25%、50%の高成長が続いている。

※1 SaaS(Softwere as a Service)パッケージ製品として提供されていたソフトウェアを、インターネット経由でサービスとして提供する形態。
※2 PaaS(Platform as a Service)アプリケーションソフトが稼働するためのハードウェアやOSなどのプラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供する形態。
※3 IaaS(Infrastructure as a Service)情報システムの稼働に必要な仮想サーバを始めとした機材やネットワークなどのインフラを、インターネット上のサービスとして提供する形態。


同社についても、設立初年度である2007年2月期に売上高150百万円を計上して以来、連続増収が続いており、特にここ数年は国内クラウド市場の高成長に合わせて急成長を続けている。

2. 事業内容
同社のセグメントは、ソリューション事業と製品事業の2つに分類される。2018年2月期における売上高構成比はソリューション事業が82.0%、製品事業が18.0%となっており、セグメント利益ではソリューション事業が80.8%、製品事業が19.2%となっている。セグメント利益率ではソリューション事業が14.4%、製品事業が15.6%とほぼ同水準となっているが、これは製品事業における開発費用の償却負担が大きいためで、セグメント利益に減価償却費とのれん償却費を足した償却前利益率で見れば、ソリューション事業が15.2%、製品事業が34.7%という水準となっている。同社の製品事業はストック型のビジネスモデルとなっているためで、開発費が一巡し売上高が拡大していけば、利益率も上昇していく構造となっている。一方、ソリューション事業については労働集約的なビジネスモデルとなっているため、収益性についてはプロジェクトの生産性をいかに向上していくことができるかがポイントとなる。

また、売上高をクラウドサービス別で分けると2018年2月期はSalesforce関連が74%、AWS関連が26%となっており、前期と比較してAWS関連の売上高構成比が伸びている。これは子会社のBeeXで展開しているAWSの導入支援サービスが急伸していることが主因となっている。

(1) ソリューション事業
ソリューション事業では、クラウドを活用したシステムを顧客企業のニーズに応じて開発し、導入支援を行っている。具体的には、フロントシステムや基幹システム等の要件定義から設計・開発・テスト・運用・効果検証・改善策立案・システム化計画までを行っている。フロントシステムとしてはSalesforceでの開発が多く、セールスフォース・ドットコムとは、Salesforceのライセンス販売契約を締結している。

同事業については、同社が主に大型案件の開発・導入支援を手掛け、連結子会社のクラウディアジャパンが九州地区、キットアライブが主に北海道地区でSalesforceの開発・導入支援を展開している。また、BeeXでは基幹システムであるSAPのAWSへの移行を主に展開しており、SAPのクラウド化では国内でもトップクラスの実績を持つ。また、スカイ365はクラウドに特化したMSPサービス※を展開している。また、持分法適用関連会社であるサーバーワークスではAWSを中心としたクラウドシステムの導入支援を行っている。国内企業の社内システムにおけるクラウド化率はまだ地方では低く、中小企業においては未導入のところも多い。九州や北海道地区では子会社のクラウディアジャパンやキットアライブが中心となってこうした需要を取り込んでいく戦略となっている。

※MSP(Management Services Provider)サービス・・・企業が保有するサーバやネットワーク等の運用・監視・保守サービス。グループ会社で開発・導入支援を行った案件をカバーしており、システムに不具合が見つかれば、復旧作業を行う。


その他、同社ではクラウド型ERPであるGLOVIA OM(富士通<6702>)の構築・導入支援サービスも行っている。BeeXで手掛けるSAPは大企業での採用が多いのに対して、GLOVIA OMは中堅から中小企業が主な顧客対象となり、同じクラウドERP領域でも棲み分けができている。

同社のSalesforceの導入実績としては3,000件以上で、みずほフィナンシャルグループ<8411>や小田急電鉄<9007>グループ、KDDI<9433>など業種・業態・企業規模を問わず、多数の企業に導入されている。業種別で見ると金融向けが全体の約4割を占めているほか、SalesforceがCRM分野で強いことからサービス業などBtoC企業の比率が高くなっている。

(2) 製品事業
同社は、SaaSベンダーとしてクラウドに特化したサービスの開発及び提供を行っている。具体的には、Salesforceの画面開発ツールである「SkyVisualEditor」、「SuPICE」、データ連携サービスの「SkyOnDemand」、「DataSpider Cloud」、ソーシャルウェアサービスの「mitoco」、保険代理店向けサービスの「IAS」などがある。このうち、現在の主力サービスは「SkyVisualEditor」で同事業セグメントの約4割を占め、UI生成・実行ツールの市場でシェアNo.1を獲得している(株式会社ミック経済研究所発刊「次世代型超高速開発ツールの市場動向2016年版」)。次いで「SkyOnDemand」、「DataSpiderCloud」が同じく同事業セグメントの約4割を占めている。日本では、システム業務に合わせて画面やロジックなどの仕様をカスタマイズし、使い勝手を向上したいとのニーズが強く、特に「SkyVisualEditor」に関しては業界でデファクト製品としての地位を確立している。

現在、最も注力している製品は2016年にリリースした「mitoco」で、これまでシステムの開発・保守担当者を対象に製品を開発してきた同社にとっては初のソーシャルウェア(次世代版グループウェア)製品で、Salesforceをさらに活用するためのコミニケーションプラットフォームとなる。グループウェア製品としては既に多くの製品が各社から提供されているが、これら競合品との違いは「mitoco」がクラウド利用を前提に開発された点にある。他社製品は、古くに設計されたデータベースエンジンを使っているなど現在のクラウド環境を前提とした設計となっていないためスマートフォン対応が難しいなど、本来の機能を発揮するにはシステム上で過度な負荷をかける必要がある。「mitoco」では、クラウドの使用を前提として開発されたため、モバイル環境下でも十分なパフォーマンスが発揮されるほか、他のアプリケーションに連携できるAPIを標準搭載するなどプラットフォームとしての拡張性も高い。また、必要とする機能をシンプルなUIで提供しているため、システムの管理者だけでなく一般の社員にとっても使いやすく、社内利用だけでなく外部のパートナー企業との連携も可能といった特徴がある。

さらには、IoTソリューション企業のエコモットとの共同開発で、会議室の利用状況センサーなどのIoTオプションサービスも提供している。会議室利用状況センサーを取り付けることで、会議室の利用予約が入っていても実際に使用されていない場合に、システムから自動で予約者にメッセージを通知し、予約者から返答がなければ予約を解除することが可能となる。車両管理も同様で、車両の予約と使用状況について効率的に運用できるほか、ドライブレコーダーで稼働の有無やトラブルの状況、傾向などについて管理部門で把握することが可能となる。なお、「mitoco」の名前の由来は、「More in today’s company〜もっと、会社や仲間に関わろう〜」である。

製品事業は、同社と米国子会社であるTerraSky Inc.で展開しているが、米国子会社については主にマーケティング機能が中心であり、売上規模も小さく業績面への影響は軽微となっている。なお、「SkyOnDemand」については資本業務提携先であるNTTテクノクロスと国内総販売代理店契約を締結しており、主にNTTテクノクロスを通じて販売を行っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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