ダイコク電 Research Memo(3):2014年3月期より将来の成長に向けた研究開発費を積極投入
[18/07/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
1. 過去の業績推移
過去8期分の業績を振り返ると、個人消費の冷え込みと東日本大震災の影響とが重なった2011年3月期に業績の落ち込みがあったが、その後はパチンコ業界が縮小傾向にあるなかでも、ダイコク電機<6430>の業績は順調に回復してきた。特に高い市場シェアを誇る「情報システム事業」は、2015年3月期まで3期連続で過去最高の売上高を更新しており、同社の業績を支えてきた。ただ、2016年3月期以降は、業界における自主規制や「回収・撤去」の影響、そして今回の「新規則」に伴う先行き不透明感など、相次ぐマイナスの外部要因により、売上高は縮小傾向をたどっている。
また、利益面では、「情報システム事業」が同社の収益源となっており、業績の回復とともに高い利益率が維持されてきた。2014年3月期以降は次世代製品群向けの研究開発費の増加等により低下しているが、その分を考慮すれば、依然高い水準を確保していると言える。特に、MGサービスの伸長などストック型ビジネスモデルへの転換が着実に進み、収益の下支えとなっている。
財務面では、財務基盤の安定性を示す自己資本比率は、内部留保の積み上げ等により上昇傾向にあり、2018年3月期は67.1%の高い水準となっている。また、短期の支払能力を示す流動比率についても、潤沢な現預金を中心に203.8%の水準を確保している。一方、資本効率性を示すROEは2015年3月期以降、低調に推移してきた。いずれも最終損益の落ち込みによるものであり、2015年3月期は取引先メーカーの自己破産に伴う損失、2016年3月期は自主規制の影響によりパチスロ遊技機の販売機種及び台数において計画を下回ったことによる専用部材の評価替えに伴う損失が原因となっている。ただ、足元では徐々に回復傾向にある。
2. 2018年3月期決算の概要
ダイコク電機<6430>の2018年3月期の業績は、売上高が前期比16.3%減の34,093百万円、営業利益が同13.8%増の1,192百万円、経常利益が同1.2%増の1,390百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同56.2%増の785百万円と減収ながら増益を確保した。ただ、期初予想に対しては、売上高、利益ともに下回る着地となっている。
「新規則」による影響の不透明感から、設備投資に対して慎重な姿勢が継続する厳しい市場環境が続くなかで、「情報システム事業」及び「制御システム事業」がともに減収となった。特に、「情報システム事業」は、パチンコホールの新規出店や大規模改装が減少した影響により計画を大きく下回った。また、制御システム事業についても、各遊技機メーカーにおける「新規則」を見据えた開発スケジュールや販売時期の延期により計画を下回る減収となった。
一方、利益面では、減収による収益の下振れがあったものの、「次世代システム」の開発計画について見直しを行い、開発費が減少したこと等により、営業利益率は3.5%(前期は2.6%)に大きく改善し、増益を確保した。特に、販管費率の低下は、研究開発費の一巡や貸倒引当金の戻し入れ※があったことが主因である。
※2015年4月に発生した取引先遊技機メーカーの破産手続きが2017年7月で終結決定したことに伴うもの。
財務面では、「受取手形及び売掛金」の減少(減収に伴うもの)や、「棚卸資産」の減少(自社開発パチスロ遊技機)、「固定資産」の減価償却費などにより前期末比7.0%減の43,564百万円に縮小した一方、株主資本はほぼ横ばいの29,369百万円となったことから、自己資本比率は67.1%(前期末は62.3%)に上昇した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 情報システム情報
売上高は前期比8.9%減の24,827百万円、セグメント利益は同19.1%減の2,435百万円と減収減益となり、計画を大きく下回った。先行き不透明感からパチンコホールにおける投資の慎重姿勢が続くなかで、ファン向け情報公開端末「BiGMO PREMIUM」及び「IL-X」シリーズが新規採用顧客の増加※1のほか、新製品効果による需要の掘り起し※2等により、前期を上回る販売台数を実現することができた。ただ、2017年6月に市場投入した新製品「VEGASIA III」を主とするCRユニット、及びホールコンピュータ・景品顧客システムの販売台数については、新規出店や大規模改装の減少による影響を大きく受け、事業全体の足を引っ張る結果となった。
※1 大手チェーン店との新規取引を含む。
※2 2017年12月に市場投入した「「BiGMO PREMIUM II」及び「IL-X3」による入替提案等。
利益面でも、研究開発費の減少(開発計画の見直し)のほか、販売促進費や広告宣伝費の削減を図ったものの、減収による収益の下振れをカバーできず、利益率も9.8%(前期は11.0%)に低下した。
ただ、機器販売が全般的に苦戦を強いられるなかでも、サービス売上はほぼ横ばい(特に、注力するMGサービスの売上高は前期比4.1%増の4,312百万円)で推移しており、収益の下支えとなっているところは評価すべきポイントである。また、今後に向けた活動についても、画期的な機能を搭載している新CRユニット「VEGASIA III」※1に続いて、より詳細な顧客データ分析を可能とする「Fan-SIS」(全国ファン動向公開サービス)※2も開始するなど一定の成果を残すことができた。本格的な拡販には時間を要するものの、今期(2019年3月期)以降の業績貢献に向けて確かな手応えをつかんでいるようだ。
※1 顔認証カメラが標準装備され、ファン動向が把握できるところに最大の特徴がある。業績寄与は下期以降となるが、次世代CRユニットとして注目を集めている。
※2 「VEGASIA III」によって、より詳細なデータ分析が可能となったことを生かしたデータ分析サービスである。1)全国データを集約することで、より精度が高く、信頼できるデータ分析が可能となること、2)自店と全国データとを比較することで、自店の強みや弱み、伸びしろを知ることができること、に特徴がある。特に、自店の客層にあった最適な機種構成を実現することで、ホールの業績向上への貢献が期待される。
(2) 制御システム事業
売上高が前期比31.0%減の9,322百万円、セグメント利益が433百万円(前期は306百万円の損失)と減収ながら大幅な増益(黒字転換)を実現した(計画に対しては未達)。
遊技機市場全体の新台販売台数が低調に推移するなか、各遊技機メーカーにおいて新規則を見据えた機種使用の変更による開発スケジュールや販売時期の延期があったことにより、表示ユニット及び制御ユニットの販売台数は前期に比べ大幅に減少した。また、自社開発によるパチスロ遊技機も計画を若干上回る約5,500台を市場投入したものの、前期の市場投入台数(約12,300台)には及ばなかった。
一方、利益面では、自社開発パチスロ遊技機にかかる販売手数料の減少のほか、開発スケジュールの延期等により研究開発費が大きく減少(想定以下の水準)したことや貸倒引当金の戻し入れなどにより増益を確保した。
以上から、2018年3月期の業績を総括すると、外部環境の影響を受けやすい売上高の下振れはマイナス材料となったものの、MGサービスの伸長等が収益の下支えとなったところ(利益を出せる収益構造への着実な転換)は評価できる。また、本格的な拡販に向けては時間を要するものの、画期的な製品・サービスの市場投入や大手チェーン店との取引開始についても、今後に向けて大きな方向性を示すことができたと言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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1. 過去の業績推移
過去8期分の業績を振り返ると、個人消費の冷え込みと東日本大震災の影響とが重なった2011年3月期に業績の落ち込みがあったが、その後はパチンコ業界が縮小傾向にあるなかでも、ダイコク電機<6430>の業績は順調に回復してきた。特に高い市場シェアを誇る「情報システム事業」は、2015年3月期まで3期連続で過去最高の売上高を更新しており、同社の業績を支えてきた。ただ、2016年3月期以降は、業界における自主規制や「回収・撤去」の影響、そして今回の「新規則」に伴う先行き不透明感など、相次ぐマイナスの外部要因により、売上高は縮小傾向をたどっている。
また、利益面では、「情報システム事業」が同社の収益源となっており、業績の回復とともに高い利益率が維持されてきた。2014年3月期以降は次世代製品群向けの研究開発費の増加等により低下しているが、その分を考慮すれば、依然高い水準を確保していると言える。特に、MGサービスの伸長などストック型ビジネスモデルへの転換が着実に進み、収益の下支えとなっている。
財務面では、財務基盤の安定性を示す自己資本比率は、内部留保の積み上げ等により上昇傾向にあり、2018年3月期は67.1%の高い水準となっている。また、短期の支払能力を示す流動比率についても、潤沢な現預金を中心に203.8%の水準を確保している。一方、資本効率性を示すROEは2015年3月期以降、低調に推移してきた。いずれも最終損益の落ち込みによるものであり、2015年3月期は取引先メーカーの自己破産に伴う損失、2016年3月期は自主規制の影響によりパチスロ遊技機の販売機種及び台数において計画を下回ったことによる専用部材の評価替えに伴う損失が原因となっている。ただ、足元では徐々に回復傾向にある。
2. 2018年3月期決算の概要
ダイコク電機<6430>の2018年3月期の業績は、売上高が前期比16.3%減の34,093百万円、営業利益が同13.8%増の1,192百万円、経常利益が同1.2%増の1,390百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同56.2%増の785百万円と減収ながら増益を確保した。ただ、期初予想に対しては、売上高、利益ともに下回る着地となっている。
「新規則」による影響の不透明感から、設備投資に対して慎重な姿勢が継続する厳しい市場環境が続くなかで、「情報システム事業」及び「制御システム事業」がともに減収となった。特に、「情報システム事業」は、パチンコホールの新規出店や大規模改装が減少した影響により計画を大きく下回った。また、制御システム事業についても、各遊技機メーカーにおける「新規則」を見据えた開発スケジュールや販売時期の延期により計画を下回る減収となった。
一方、利益面では、減収による収益の下振れがあったものの、「次世代システム」の開発計画について見直しを行い、開発費が減少したこと等により、営業利益率は3.5%(前期は2.6%)に大きく改善し、増益を確保した。特に、販管費率の低下は、研究開発費の一巡や貸倒引当金の戻し入れ※があったことが主因である。
※2015年4月に発生した取引先遊技機メーカーの破産手続きが2017年7月で終結決定したことに伴うもの。
財務面では、「受取手形及び売掛金」の減少(減収に伴うもの)や、「棚卸資産」の減少(自社開発パチスロ遊技機)、「固定資産」の減価償却費などにより前期末比7.0%減の43,564百万円に縮小した一方、株主資本はほぼ横ばいの29,369百万円となったことから、自己資本比率は67.1%(前期末は62.3%)に上昇した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 情報システム情報
売上高は前期比8.9%減の24,827百万円、セグメント利益は同19.1%減の2,435百万円と減収減益となり、計画を大きく下回った。先行き不透明感からパチンコホールにおける投資の慎重姿勢が続くなかで、ファン向け情報公開端末「BiGMO PREMIUM」及び「IL-X」シリーズが新規採用顧客の増加※1のほか、新製品効果による需要の掘り起し※2等により、前期を上回る販売台数を実現することができた。ただ、2017年6月に市場投入した新製品「VEGASIA III」を主とするCRユニット、及びホールコンピュータ・景品顧客システムの販売台数については、新規出店や大規模改装の減少による影響を大きく受け、事業全体の足を引っ張る結果となった。
※1 大手チェーン店との新規取引を含む。
※2 2017年12月に市場投入した「「BiGMO PREMIUM II」及び「IL-X3」による入替提案等。
利益面でも、研究開発費の減少(開発計画の見直し)のほか、販売促進費や広告宣伝費の削減を図ったものの、減収による収益の下振れをカバーできず、利益率も9.8%(前期は11.0%)に低下した。
ただ、機器販売が全般的に苦戦を強いられるなかでも、サービス売上はほぼ横ばい(特に、注力するMGサービスの売上高は前期比4.1%増の4,312百万円)で推移しており、収益の下支えとなっているところは評価すべきポイントである。また、今後に向けた活動についても、画期的な機能を搭載している新CRユニット「VEGASIA III」※1に続いて、より詳細な顧客データ分析を可能とする「Fan-SIS」(全国ファン動向公開サービス)※2も開始するなど一定の成果を残すことができた。本格的な拡販には時間を要するものの、今期(2019年3月期)以降の業績貢献に向けて確かな手応えをつかんでいるようだ。
※1 顔認証カメラが標準装備され、ファン動向が把握できるところに最大の特徴がある。業績寄与は下期以降となるが、次世代CRユニットとして注目を集めている。
※2 「VEGASIA III」によって、より詳細なデータ分析が可能となったことを生かしたデータ分析サービスである。1)全国データを集約することで、より精度が高く、信頼できるデータ分析が可能となること、2)自店と全国データとを比較することで、自店の強みや弱み、伸びしろを知ることができること、に特徴がある。特に、自店の客層にあった最適な機種構成を実現することで、ホールの業績向上への貢献が期待される。
(2) 制御システム事業
売上高が前期比31.0%減の9,322百万円、セグメント利益が433百万円(前期は306百万円の損失)と減収ながら大幅な増益(黒字転換)を実現した(計画に対しては未達)。
遊技機市場全体の新台販売台数が低調に推移するなか、各遊技機メーカーにおいて新規則を見据えた機種使用の変更による開発スケジュールや販売時期の延期があったことにより、表示ユニット及び制御ユニットの販売台数は前期に比べ大幅に減少した。また、自社開発によるパチスロ遊技機も計画を若干上回る約5,500台を市場投入したものの、前期の市場投入台数(約12,300台)には及ばなかった。
一方、利益面では、自社開発パチスロ遊技機にかかる販売手数料の減少のほか、開発スケジュールの延期等により研究開発費が大きく減少(想定以下の水準)したことや貸倒引当金の戻し入れなどにより増益を確保した。
以上から、2018年3月期の業績を総括すると、外部環境の影響を受けやすい売上高の下振れはマイナス材料となったものの、MGサービスの伸長等が収益の下支えとなったところ(利益を出せる収益構造への着実な転換)は評価できる。また、本格的な拡販に向けては時間を要するものの、画期的な製品・サービスの市場投入や大手チェーン店との取引開始についても、今後に向けて大きな方向性を示すことができたと言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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