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ダイコク電 Research Memo(4):市場環境が徐々に回復に向かうなか、新製品の販売強化等により増収増益を見込む

注目トピックス 日本株
■業績見通し

2019年3月期の業績予想についてダイコク電機<6430>は、売上高を前期比2.7%増の35,000百万円、営業利益を同9.0%増の1,300百万円、経常利益を同0.7%増の1,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同1.9%増の800百万円と増収増益を見込んでいる。

引き続き、「制御システム事業」の減収を見込む一方、「情報システム事業」が新製品・サービスの販売強化※等により年度後半に向けて伸長し、増収を確保する想定である。また、利益面でも、広告宣伝費や業務委託費等により販管費が増加するものの、増収効果や開発工程の効率化(制御システム事業)等を通じて、営業利益率は3.7%(前期は3.5%)に改善する見込みである。

※「BiGMO PREMIUM II」、「REVOLA」、「IL-X3」などの情報公開端末での「わかりやすさ、見やすさ」にこだわった機能強化のほか、全国ファン動向データ公開サービス「Fan-SIS」の提案と同サービスの導入に必要なCRユニット「VEGASIA III」の販売強化など。


弊社でも、厳しい市場環境が継続するものの、「新規則」対応の遊技機が市場投入されるにつれ、集客を目的とした周辺設備の入れ替え需要が活発化することが期待できることや、前期に取引開始した大手チェーン店等との取引拡大などから、同社業績予想の達成は可能であるとみている。なお、下期偏重の業績予想(特に、上期の売上高は前年同期比16.7%のマイナス予想)となっているところには注意が必要である。


■今後の戦略的方向性

ダイコク電機<6430>は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画「Next50第一章」を推進している。中期経営計画2年目となる2018年3月期は、激変する環境変化へ対応するため、社長交代を含む新体制へ移行するとともに、収益構造の強化に向けた組織変更を行った。ただ、大きな方向性に変更はない。足元の市場環境は不透明感が漂うものの、中期的には緩やかに回復に向かうとの想定のもと、市場変化への対応(よりゲーム性を重視したファンの獲得)やパチンコホール経営の変革(データ分析に基づく戦略的な経営判断)に貢献するための事業基盤の強化に取り組む内容となっている。特に、これまで積極的な開発を行ってきた次世代ホールコンピュータ(周辺機器を含む)によるシェア拡大のほか、データ分析力や企画開発力を生かした新たな価値の創出により、成長力及び収益力の向上を実現する方針である。

相次ぐ外部要因により、定量目標の達成は難しい状況となってきたものの、以下に掲げる戦略的方向性については着実に前進しているものと評価して良いだろう。

1. 情報システム事業
市場における投資意欲は、しばらく消極的な姿勢が続くことが予想される一方、今回の「新規則」により、遊技機の入れ替えに伴う設備機器の需要が徐々に動き出していることから、市場変化に柔軟に対応しながら、シェア拡大と新規ファン獲得に貢献できる製品・サービスの開発を目指していく方針である。具体的な対応・施策として以下の3つを挙げている。

(1) これまで同様、CRユニット及び情報公開機器などの各種製品の拡販とストック型ビジネスモデル(MGサービス)の拡大により、シェア拡大と収益構造の転換を図っていく。特に、MGサービスの提供を通じて、顧客であるパチンコホールの競争力と省力化に貢献し、顧客の囲い込みと業績の安定化の両方を実現する。

(2) 「新規則」に伴う業界変化に柔軟に対応した製品・サービスをタイムリーに市場に投入していく。業界変化をビジネスチャンスと捉え、ファン向け各種情報提供サービスの拡大など、新規ファン獲得(離反した顧客の呼び戻しや新規顧客の掘り起こし)に貢献できる製品・サービスの開発を目指す。

(3) 「次世代システム」の開発には規則改正に伴う見直しを行った上で、継続的な投資を推進する。市場環境の変化に沿って、新たなルールへ対応した仕様の追加や開発工程の見直し、ホール業務の効率化・省力化へ貢献する製品・サービスの強化を進めており、市場投入時期においても市場動向を見定めながら柔軟に対応していく。

2. 制御システム事業
市場は、遊技機の開発コスト低減への志向を強めるとともに、今後の市場環境の変化に対応した新たな提案へのニーズが高まり、企画力がより重要になっているなかで、情報システム事業との連携による差別化戦略と市場環境の変化への迅速な対応、業務効率の向上に取り組む方針である。具体的な対応・施策として以下の3つを挙げている。

(1) 娯楽性に重点を置き、新規則に適したゲームの創出による遊技環境の活性化に注力することで、パチンコホールの稼動に貢献する。

(2) 遊技機メーカーの要望に迅速に対応し、顧客の開発期間の短縮、コスト削減、品質向上に貢献する体制を構築すると同時に、同社自身のコスト削減にも結び付ける。

(3) 情報システム事業の保有する「DK-SIS」データ及び「Fan-SIS」データを活用し、新たな遊技価値を生み出す企画提案の実施と事業領域の拡大にも取り組む。

弊社でも、パチンコ業界が大きな転換期を迎えていることにより、足元の業績にはマイナスに影響しているものの、中長期的に見れば、周辺機器を含めた次世代ホールコンピュータに積極的な開発を行ってきた同社には大きなアドバンテージがあるものとみている。特に、同社ならではのサービスやデータ分析による経営支援及び価値提案は、今後の業界の進むべき方向性に合致したものと評価できる。たとえ、市場がしばらく縮小傾向をたどったとしても、付加価値の高い「次世代製品群」の本格稼動により既存店向けの入れ替え需要を取り込みながら、持続的な成長を実現することは可能であるとみている。また、パチンコホールも資本力のあるところを中心に勝ち残り、二極化がさらに進む可能性が高く、そうなってくれば次世代ホールコンピュータによる囲い込みや市場シェアの向上を目指す同社にとってプラスに働くものとみている。

外部環境の影響を受けやすい売上高の伸びについては、しばらくは慎重に判断する必要があると捉えているが、市場環境の変化に対応した製品・サービスの開発やMGサービスの拡大などによる収益性の向上に注目している。今回の「新規則」により、パチンコ業界には、しばらく混沌とした状態(様子見を含め)が続くことが予想されるものの、これまで投資に慎重であったパチンコホールも、投資余力のあるところを中心として再び動き出す可能性があり、年度後半以降の回復に向けた道筋を注意深く見守る必要があるだろう。また、中長期的な視点からは、圧倒的なポジショニングを生かした同社自身の成長に加えて、業界全体の活性化に向けた取り組みにも期待している。特に、パチンコホールや各遊技機メーカーにとどまらず、パチンコ・パチスロファン、アミューズメントファン、新たなファン層にも直接的に働きかける活動(スマホアプリによる会員向け情報提供のほか、ホールに誘導する仕掛けなど)にも注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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