サイネックス Research Memo(2):地域行政情報誌『わが街事典』で飛躍、IT活用で発展
[18/08/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 沿革
サイネックス<2376>は1953年、三重県松阪市において電話帳及び各種名簿の作成事業を目的に、近畿電話通信社として創業した。1966年に法人へ改組し、本社を大阪市に置いた。その後全国に支店網を広げて営業地盤の拡充を図り、電話帳『テレパル50』を軸に順調に業容を拡大させた。
同社にとって大きな転機となったのは、2006年に大阪府和泉市との間で官民協働事業『暮らしの便利帳』発行協定を締結し、2007年5月に初の『市民便利帳』を発行したことだ。電話帳作成の業務プロセスの本質は地域密着型の情報誌発行であり、同社はその知験を生かして地域行政情報誌の発行事業へ進出した。和泉市との案件を皮切りに地域行政情報誌の発行事業が急速に拡大し、『わが街事典』の統一ブランドを導入した。2018年6月末現在では全国801自治体と共同発行を行っている。
同社はまた、IT活用による地域支援を目指し、2012年にはEC(eコマース)サイト『わが街とくさんネット』の運営を開始した。さらに、2013年にはふるさと納税支援のための『わが街ふるさと納税』をオープンした。2014年に茨城県笠間市との間でふるさと納税事務に関する一括業務代行協定を締結したのを皮切りに順調に協定締結自治体数を拡大し、2018年3月末までに協定締結自治体数は累計で99に達している。
株式市場には2003年11月に大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場した。その後2015年6月に東京証券取引所市場第2部に上場市場を変更したのち、2016年12月に東京証券取引所第1部に指定されて現在に至っている。
“地方創生のプラットフォームの役割を担う『社会貢献型企業』へ”という経営理念がすべての出発点
2. 経営方針
同社は創業以来60年以上にわたり、地域別に発行される50音別電話帳『テレパル50』の発行を通じて、常に地方とともに歩んできた。この間、日本では東京への一極集中が進む一方、地方の衰退が進行してきた。地方・地域とともに歩んできた同社は、地方に権限と財源を持たせて“独立自尊”の体制を確立することが重要であるとの信念を持つに至った。それが同社の“地方創生のプラットフォームの役割を担う『社会貢献型企業』へ”という経営理念へとつながっている。
その具体的なあり方として同社は“官民協働事業”の推進を掲げている。行政、企業、住民などが一体となり、地域を活性化させて公共を支えようという考え方だ。同社は官と民とをつなぐ存在として貢献することを目指している。地方は、財政逼迫(ひっぱく)、人口減少、地域経済の衰退など、数多くの問題を抱えている。これらの解決には権限と財源について地方が主導権を有する地方分権体制が不可欠だが、その実現は簡単ではない。そうした現実のなかで、地方が創生を果たす現実的方策として、官民の協働こそがカギになるというのが同社の実際の事業展開のベースとなっている。「PPP(Public-Private Partnership)」というスローガンのもと、自治体と民間企業である同社が協働で取り組むことで、(官と民という)異分子結合による化学反応で相乗効果を生み出そうという発想だ。
「官民協働事業の推進」という理念は、同社が手掛けるすべての事業において貫かれている。地方自治体との取引を収益源とする企業は数多いが、同社のように地方自治体の財政負担を伴うことなく自社の収益を確保し、自治体と住民の価値を高めて地方創生へつなげようというビジネスモデルの企業は非常に数が少ない。まして、そうした事業を全国展開している企業はさらに少数だ。同社の経営方針は、他に例を見ないユニークなものと言え、そこに同社の潜在成長性の源泉があると弊社では考えている。
出版事業を中核に、WEB・ソリューション事業で次代の成長を狙う
3. 事業の概要
同社の事業は、出版事業、WEB・ソリューション事業、ロジスティクス事業及び不動産事業(2018年3月期から独立)の4部門から成っている。
出版事業は紙媒体の事業で、同社本体と2016年10月に連結子会社化した(株)サンマークが行っている。同社本体では地域行政情報誌『わが街事典』と地域別の50音別電話帳『テレパル50』を手掛けており、この2つが同社の主力商品かつ収益の中核となっている。サンマークは九州の福岡・北九州・熊本の3市を対象に地域情報誌『Nasse』を発行している。
WEB・ソリューション事業では、出版事業の『わが街事典』同様、地方自治体との協働事業や業務支援を行っている。様々なサービスメニューがあるが、現在最も大きいのはふるさと納税事務の一括代行請負だ。これにEC(eコマース)で地方の特産物を販売する『わが街とくさんネット』、旅行商品を販売する『わが街トラベル』などが続いている。また、中長期的な収益化を目指した取り組みでは、自治体支援クラウドサービスや、広報活動支援の『わが街NAVI』、動画配信などのシティープロモーション支援事業等も展開している。この事業セグメントはアプリやシステムの開発のための先行投資が多いのが特徴だ。
ロジスティクス事業は、DM(ダイレクトメール)発送を代行する郵便発送代行業務と、地域内で広告等を配布するポスティング業務がその内容だ。業容としては郵便発送代行業務が圧倒的に大きい。利益率は高くはないが安定した収益を計上している。
不動産事業は同社本体及び子会社のサンマークが所有する不動産の賃貸事業だ。同社は2018年5月にホテル運営事業者である(株)スーパーホテルとビジネスマッチング業務契約を締結した。この契約締結からの収益も不動産事業セグメントに組み入れられることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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1. 沿革
サイネックス<2376>は1953年、三重県松阪市において電話帳及び各種名簿の作成事業を目的に、近畿電話通信社として創業した。1966年に法人へ改組し、本社を大阪市に置いた。その後全国に支店網を広げて営業地盤の拡充を図り、電話帳『テレパル50』を軸に順調に業容を拡大させた。
同社にとって大きな転機となったのは、2006年に大阪府和泉市との間で官民協働事業『暮らしの便利帳』発行協定を締結し、2007年5月に初の『市民便利帳』を発行したことだ。電話帳作成の業務プロセスの本質は地域密着型の情報誌発行であり、同社はその知験を生かして地域行政情報誌の発行事業へ進出した。和泉市との案件を皮切りに地域行政情報誌の発行事業が急速に拡大し、『わが街事典』の統一ブランドを導入した。2018年6月末現在では全国801自治体と共同発行を行っている。
同社はまた、IT活用による地域支援を目指し、2012年にはEC(eコマース)サイト『わが街とくさんネット』の運営を開始した。さらに、2013年にはふるさと納税支援のための『わが街ふるさと納税』をオープンした。2014年に茨城県笠間市との間でふるさと納税事務に関する一括業務代行協定を締結したのを皮切りに順調に協定締結自治体数を拡大し、2018年3月末までに協定締結自治体数は累計で99に達している。
株式市場には2003年11月に大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場した。その後2015年6月に東京証券取引所市場第2部に上場市場を変更したのち、2016年12月に東京証券取引所第1部に指定されて現在に至っている。
“地方創生のプラットフォームの役割を担う『社会貢献型企業』へ”という経営理念がすべての出発点
2. 経営方針
同社は創業以来60年以上にわたり、地域別に発行される50音別電話帳『テレパル50』の発行を通じて、常に地方とともに歩んできた。この間、日本では東京への一極集中が進む一方、地方の衰退が進行してきた。地方・地域とともに歩んできた同社は、地方に権限と財源を持たせて“独立自尊”の体制を確立することが重要であるとの信念を持つに至った。それが同社の“地方創生のプラットフォームの役割を担う『社会貢献型企業』へ”という経営理念へとつながっている。
その具体的なあり方として同社は“官民協働事業”の推進を掲げている。行政、企業、住民などが一体となり、地域を活性化させて公共を支えようという考え方だ。同社は官と民とをつなぐ存在として貢献することを目指している。地方は、財政逼迫(ひっぱく)、人口減少、地域経済の衰退など、数多くの問題を抱えている。これらの解決には権限と財源について地方が主導権を有する地方分権体制が不可欠だが、その実現は簡単ではない。そうした現実のなかで、地方が創生を果たす現実的方策として、官民の協働こそがカギになるというのが同社の実際の事業展開のベースとなっている。「PPP(Public-Private Partnership)」というスローガンのもと、自治体と民間企業である同社が協働で取り組むことで、(官と民という)異分子結合による化学反応で相乗効果を生み出そうという発想だ。
「官民協働事業の推進」という理念は、同社が手掛けるすべての事業において貫かれている。地方自治体との取引を収益源とする企業は数多いが、同社のように地方自治体の財政負担を伴うことなく自社の収益を確保し、自治体と住民の価値を高めて地方創生へつなげようというビジネスモデルの企業は非常に数が少ない。まして、そうした事業を全国展開している企業はさらに少数だ。同社の経営方針は、他に例を見ないユニークなものと言え、そこに同社の潜在成長性の源泉があると弊社では考えている。
出版事業を中核に、WEB・ソリューション事業で次代の成長を狙う
3. 事業の概要
同社の事業は、出版事業、WEB・ソリューション事業、ロジスティクス事業及び不動産事業(2018年3月期から独立)の4部門から成っている。
出版事業は紙媒体の事業で、同社本体と2016年10月に連結子会社化した(株)サンマークが行っている。同社本体では地域行政情報誌『わが街事典』と地域別の50音別電話帳『テレパル50』を手掛けており、この2つが同社の主力商品かつ収益の中核となっている。サンマークは九州の福岡・北九州・熊本の3市を対象に地域情報誌『Nasse』を発行している。
WEB・ソリューション事業では、出版事業の『わが街事典』同様、地方自治体との協働事業や業務支援を行っている。様々なサービスメニューがあるが、現在最も大きいのはふるさと納税事務の一括代行請負だ。これにEC(eコマース)で地方の特産物を販売する『わが街とくさんネット』、旅行商品を販売する『わが街トラベル』などが続いている。また、中長期的な収益化を目指した取り組みでは、自治体支援クラウドサービスや、広報活動支援の『わが街NAVI』、動画配信などのシティープロモーション支援事業等も展開している。この事業セグメントはアプリやシステムの開発のための先行投資が多いのが特徴だ。
ロジスティクス事業は、DM(ダイレクトメール)発送を代行する郵便発送代行業務と、地域内で広告等を配布するポスティング業務がその内容だ。業容としては郵便発送代行業務が圧倒的に大きい。利益率は高くはないが安定した収益を計上している。
不動産事業は同社本体及び子会社のサンマークが所有する不動産の賃貸事業だ。同社は2018年5月にホテル運営事業者である(株)スーパーホテルとビジネスマッチング業務契約を締結した。この契約締結からの収益も不動産事業セグメントに組み入れられることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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