GMOペパボ Research Memo(5):2018年12月期第2四半期累計業績は広告宣伝費の減少等により大幅増益に
[18/09/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2018年12月期第2四半期累計業績の概要
GMOペパボ<3633>の2018年12月期第2四半期累計業績は、売上高が前年同期比9.5%増の4,015百万円、営業利益が同215.2%増の288百万円、経常利益が同207.0%増の306百万円、四半期純利益が同173.3%増の269百万円と増収増益決算となった。売上高については主力3事業すべてで増収を達成した。営業利益についてもホスティング事業、EC支援事業が増益となったほか、ハンドメイド事業も損失額が縮小した。主力のホスティング事業では契約件数の増加や顧客単価の上昇、EC支援事業では「カラーミーショップ」の契約件数が減少したものの、アップセル施策による顧客単価の上昇でカバーし、それぞれ増収増益となった。ハンドメイド事業については「minne」の増収効果に加えて広告宣伝費が前年同期の609百万円から380百万円に減少したことが収益改善要因となっている。
第2四半期累計の会社計画は開示されていないものの、売上高、利益ともに計画を上回るペースで推移したと見られる。特に、「カラーミーショップ」については情報流出のインシデント発生の影響により厳しく収益計画を立てていたが、影響は軽微にとどまったもようだ。なお、インシデント発生に対応して情報セキュリティ対策を強化したことにより、特別損失として情報セキュリティ対策費48百万円を計上している。
ホスティング事業、EC支援事業ともに顧客単価の上昇により増収増益続く
2. 事業セグメント別動向
(1) ホスティング事業
ホスティング事業の売上高は前年同期比5.7%増の2,190百万円、営業利益は同8.9%増の720百万円と増収増益基調が続いた。2018年12月期第2四半期末における契約件数は、「ロリポップ!」を中心としたレンタルサーバーが前年同期末比0.7%増の439千件、ドメイン取得代行サービスの「ムームードメイン」が同2.2%増の1,243千件といずれも着実に増加し、増収に寄与した。
このうち、「ロリポップ!」の売上高は前年同期比3.7%増の850百万円、営業利益は同2.8%増の473百万円となった。契約件数の増加に加えて顧客単価が前年同期比で4.1%上昇したことが増収増益要因となった。利益率が若干低下したのは2018年4月に正式版をリリースした新プラン「マネージドクラウド」(課金は7月から開始)のプロモーション費用が増加したことによる。
顧客単価の上昇は、「ロリポップ!」の基本料金のうちライトプラン(月額250円〜)よりもスタンダードプラン(同500円〜)を選択する顧客の比率が上昇していることに加えて、自動バックアップ(月額300円)や独自SSL(有料プラン月額1,584円)などのオプションサービスの契約件数も増加したことが要因となっている。直近の顧客単価は350円水準となっているが、新規顧客の多くはスタンダードプランで契約していることから、第3四半期以降も顧客単価の上昇トレンドは継続するものと予想される。なお、「ロリポップ!マネージドクラウド」については、ユーザーからの要望を取り入れた機能強化を2018年中に実施する予定にしており、本格的に契約件数が増え始めるのは2019年以降になると見られる。
一方、「ムームードメイン」の売上高は前年同期比9.0%増の1,009百万円、営業利益は同49.6%増の115百万円となった。2018年4月より一部ドメイン取得に関して値上げを実施※したことが増収増益要因となっている。2017年の顧客単価は平均350円程度だったが、当第2四半期は400円強まで上昇しており、第3四半期以降も増収増益基調が続くものと予想される。
※2017年は円安による仕入原価高の影響で減益となっていた。2018年より為替変動リスクが生じないよう契約条件の見直しを行っている。
(2) EC支援事業
EC支援事業の売上高は前年同期比23.3%増の941百万円、営業利益は同19.0%増の427百万円となった。このうち、主力のオンラインショップ構築ASPサービス「カラーミーショップ」の売上高は同8.9%増の628百万円、営業利益は同13.2%増の388百万円と増収増益となった。2018年1月に発生した情報流出のインシデントの影響により、各種プロモーション等を控えたことから、第2四半期末の契約件数は前年同期末比2.1%減の44,208件と減少したものの、継続的に取り組んでいるアップセル施策により上位料金プランの比率が上昇したことで顧客単価が前年同期比9%上昇したことが増収増益要因となった。
既存顧客においてショップの流通額が拡大したことによりスモールプラン(月額1,332円)からレギュラープラン(同3,240円)に切り替える動きが進んだほか、新規契約についてもレギュラープランでの契約比率が上昇したことが顧客単価の上昇要因となった。また、解約した顧客について低料金プラン(同900円)の顧客が多かったことも単価上昇要因になったと見られる。ここ最近は月額料金無料の格安事業者も台頭しており、従来、低料金プランで契約していた顧客層が格安事業者に流れる傾向にあるが、同社では価格競争はせずに売れるショップ(顧客)を育成し、流通額を拡大していくことで顧客単価を引き上げ、収益を拡大していく戦略となっている。
なお、契約件数については2019年春頃までは緩やかな減少傾向が続くと会社側では見ている。契約期間(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)満了のタイミングで解約を考えている顧客がまだ一定数残っていると考えているためだ。一方で、新規契約件数はインシデント発生前の水準まで回復していることから、減少幅については今後縮小していく見通し。このため第3四半期以降も顧客単価の上昇により、増収増益基調が続くものと予想される。
一方、オリジナルグッズ作成・販売サービスの「SUZURI」については、6月に実施したTシャツセールがSNSを中心に話題となり、1週間当たりの注文額が前年同期比で約9倍となる61百万円と急増したほか、累積会員数も前期末の18.5万人から20万人を突破するなど、着実に認知度が広がり売上高も増加している。
また、2018年4月にはM&Aによりオンデマンドオリジナルグッズ作成サービス「Canvath」の事業を譲受している。同サービスはオリジナルグッズの作成サービスとなり、販売については発注元のクリエイターあるいは個人事業主が自身の店舗やECショップで販売するビジネスモデルとなる。販売に関して自身で行うことが「SUZURI」との違いとなっている。このため、今後もサービスを統合する予定はない。年間売上規模は「SUZURI」と同水準の2億円強程度、営業利益についてはやや低く20百万円強程度と見られる。のれんが60百万円で5年定額償却となるため、のれん償却しても初年度から売上、利益で貢献することになる。同社では国内におけるクリエイターの活動を支援していくための場として、オンデマンドのオリジナルグッズ作成・販売市場の普及拡大を目指しており、今後も同市場の活性化につながる取り組みを進めていく方針となっている。
(3) ハンドメイド事業
ハンドメイド事業の売上高は前年同期比13.3%増の793百万円、営業損失は336百万円(前年同期は505百万円の損失)となった。「minne」では認知度の向上を図るため、今年で3回目となる大規模イベント「minneのハンドメイドマーケット2018」を開催したほか、Web広告の強化にも取り組んだ。また、サイトの活性化と販促を図るため、クーポン施策を積極的に展開したほか、作家向けのツールとして「Instagramショッピング機能」を2018年6月より提供開始した。「minne」のユーザー層は女性が中心であり、「Instagram」とのユーザー層とも重なるため、今後の流通額の拡大に寄与するものと期待される。
こうした取り組みの結果、当第2四半期累計期間における流通額は前年同期比20.5%増の5,938百万円に拡大し、注文単価も同8.4%増の2,990円に上昇した。また、当第2四半期末における作家数は前年同期比25.9%増の44.9万人、作品数は同39.9%増の819万点、累計アプリダウンロード数は同22.8%増の954万件となるなど順調に拡大しており、CtoCハンドメイドマーケットプレイスとして圧倒的No.1のポジションを確立している。
利益面では、増収効果に加えて広告宣伝費を前年同期の609百万円から380百万円に絞り込んだことが、損失額の縮小要因となっている。
(4) その他
その他には、主にブログサービス「JUGEM」が属しているが、2017年2月に高速無線通信サービス「PEPABO WiMAX」を事業譲渡した影響により、売上高で前年同期比32.1%減の89百万円、営業利益で同71.6%減の17百万円と減収減益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
1. 2018年12月期第2四半期累計業績の概要
GMOペパボ<3633>の2018年12月期第2四半期累計業績は、売上高が前年同期比9.5%増の4,015百万円、営業利益が同215.2%増の288百万円、経常利益が同207.0%増の306百万円、四半期純利益が同173.3%増の269百万円と増収増益決算となった。売上高については主力3事業すべてで増収を達成した。営業利益についてもホスティング事業、EC支援事業が増益となったほか、ハンドメイド事業も損失額が縮小した。主力のホスティング事業では契約件数の増加や顧客単価の上昇、EC支援事業では「カラーミーショップ」の契約件数が減少したものの、アップセル施策による顧客単価の上昇でカバーし、それぞれ増収増益となった。ハンドメイド事業については「minne」の増収効果に加えて広告宣伝費が前年同期の609百万円から380百万円に減少したことが収益改善要因となっている。
第2四半期累計の会社計画は開示されていないものの、売上高、利益ともに計画を上回るペースで推移したと見られる。特に、「カラーミーショップ」については情報流出のインシデント発生の影響により厳しく収益計画を立てていたが、影響は軽微にとどまったもようだ。なお、インシデント発生に対応して情報セキュリティ対策を強化したことにより、特別損失として情報セキュリティ対策費48百万円を計上している。
ホスティング事業、EC支援事業ともに顧客単価の上昇により増収増益続く
2. 事業セグメント別動向
(1) ホスティング事業
ホスティング事業の売上高は前年同期比5.7%増の2,190百万円、営業利益は同8.9%増の720百万円と増収増益基調が続いた。2018年12月期第2四半期末における契約件数は、「ロリポップ!」を中心としたレンタルサーバーが前年同期末比0.7%増の439千件、ドメイン取得代行サービスの「ムームードメイン」が同2.2%増の1,243千件といずれも着実に増加し、増収に寄与した。
このうち、「ロリポップ!」の売上高は前年同期比3.7%増の850百万円、営業利益は同2.8%増の473百万円となった。契約件数の増加に加えて顧客単価が前年同期比で4.1%上昇したことが増収増益要因となった。利益率が若干低下したのは2018年4月に正式版をリリースした新プラン「マネージドクラウド」(課金は7月から開始)のプロモーション費用が増加したことによる。
顧客単価の上昇は、「ロリポップ!」の基本料金のうちライトプラン(月額250円〜)よりもスタンダードプラン(同500円〜)を選択する顧客の比率が上昇していることに加えて、自動バックアップ(月額300円)や独自SSL(有料プラン月額1,584円)などのオプションサービスの契約件数も増加したことが要因となっている。直近の顧客単価は350円水準となっているが、新規顧客の多くはスタンダードプランで契約していることから、第3四半期以降も顧客単価の上昇トレンドは継続するものと予想される。なお、「ロリポップ!マネージドクラウド」については、ユーザーからの要望を取り入れた機能強化を2018年中に実施する予定にしており、本格的に契約件数が増え始めるのは2019年以降になると見られる。
一方、「ムームードメイン」の売上高は前年同期比9.0%増の1,009百万円、営業利益は同49.6%増の115百万円となった。2018年4月より一部ドメイン取得に関して値上げを実施※したことが増収増益要因となっている。2017年の顧客単価は平均350円程度だったが、当第2四半期は400円強まで上昇しており、第3四半期以降も増収増益基調が続くものと予想される。
※2017年は円安による仕入原価高の影響で減益となっていた。2018年より為替変動リスクが生じないよう契約条件の見直しを行っている。
(2) EC支援事業
EC支援事業の売上高は前年同期比23.3%増の941百万円、営業利益は同19.0%増の427百万円となった。このうち、主力のオンラインショップ構築ASPサービス「カラーミーショップ」の売上高は同8.9%増の628百万円、営業利益は同13.2%増の388百万円と増収増益となった。2018年1月に発生した情報流出のインシデントの影響により、各種プロモーション等を控えたことから、第2四半期末の契約件数は前年同期末比2.1%減の44,208件と減少したものの、継続的に取り組んでいるアップセル施策により上位料金プランの比率が上昇したことで顧客単価が前年同期比9%上昇したことが増収増益要因となった。
既存顧客においてショップの流通額が拡大したことによりスモールプラン(月額1,332円)からレギュラープラン(同3,240円)に切り替える動きが進んだほか、新規契約についてもレギュラープランでの契約比率が上昇したことが顧客単価の上昇要因となった。また、解約した顧客について低料金プラン(同900円)の顧客が多かったことも単価上昇要因になったと見られる。ここ最近は月額料金無料の格安事業者も台頭しており、従来、低料金プランで契約していた顧客層が格安事業者に流れる傾向にあるが、同社では価格競争はせずに売れるショップ(顧客)を育成し、流通額を拡大していくことで顧客単価を引き上げ、収益を拡大していく戦略となっている。
なお、契約件数については2019年春頃までは緩やかな減少傾向が続くと会社側では見ている。契約期間(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)満了のタイミングで解約を考えている顧客がまだ一定数残っていると考えているためだ。一方で、新規契約件数はインシデント発生前の水準まで回復していることから、減少幅については今後縮小していく見通し。このため第3四半期以降も顧客単価の上昇により、増収増益基調が続くものと予想される。
一方、オリジナルグッズ作成・販売サービスの「SUZURI」については、6月に実施したTシャツセールがSNSを中心に話題となり、1週間当たりの注文額が前年同期比で約9倍となる61百万円と急増したほか、累積会員数も前期末の18.5万人から20万人を突破するなど、着実に認知度が広がり売上高も増加している。
また、2018年4月にはM&Aによりオンデマンドオリジナルグッズ作成サービス「Canvath」の事業を譲受している。同サービスはオリジナルグッズの作成サービスとなり、販売については発注元のクリエイターあるいは個人事業主が自身の店舗やECショップで販売するビジネスモデルとなる。販売に関して自身で行うことが「SUZURI」との違いとなっている。このため、今後もサービスを統合する予定はない。年間売上規模は「SUZURI」と同水準の2億円強程度、営業利益についてはやや低く20百万円強程度と見られる。のれんが60百万円で5年定額償却となるため、のれん償却しても初年度から売上、利益で貢献することになる。同社では国内におけるクリエイターの活動を支援していくための場として、オンデマンドのオリジナルグッズ作成・販売市場の普及拡大を目指しており、今後も同市場の活性化につながる取り組みを進めていく方針となっている。
(3) ハンドメイド事業
ハンドメイド事業の売上高は前年同期比13.3%増の793百万円、営業損失は336百万円(前年同期は505百万円の損失)となった。「minne」では認知度の向上を図るため、今年で3回目となる大規模イベント「minneのハンドメイドマーケット2018」を開催したほか、Web広告の強化にも取り組んだ。また、サイトの活性化と販促を図るため、クーポン施策を積極的に展開したほか、作家向けのツールとして「Instagramショッピング機能」を2018年6月より提供開始した。「minne」のユーザー層は女性が中心であり、「Instagram」とのユーザー層とも重なるため、今後の流通額の拡大に寄与するものと期待される。
こうした取り組みの結果、当第2四半期累計期間における流通額は前年同期比20.5%増の5,938百万円に拡大し、注文単価も同8.4%増の2,990円に上昇した。また、当第2四半期末における作家数は前年同期比25.9%増の44.9万人、作品数は同39.9%増の819万点、累計アプリダウンロード数は同22.8%増の954万件となるなど順調に拡大しており、CtoCハンドメイドマーケットプレイスとして圧倒的No.1のポジションを確立している。
利益面では、増収効果に加えて広告宣伝費を前年同期の609百万円から380百万円に絞り込んだことが、損失額の縮小要因となっている。
(4) その他
その他には、主にブログサービス「JUGEM」が属しているが、2017年2月に高速無線通信サービス「PEPABO WiMAX」を事業譲渡した影響により、売上高で前年同期比32.1%減の89百万円、営業利益で同71.6%減の17百万円と減収減益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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