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NSW Research Memo(6):コア事業領域の高付加価値化とIoT分野の事業拡大を目指す

注目トピックス 日本株
■日本システムウエア<9739>の中長期の成長戦略

1. 中期経営計画の目標
同社グループでは、「Drive Innovation」(変革を成し遂げる)を旗印に、「IoT分野の事業拡大」「コア事業の高付加価値化」を目指して、2016年4月から2019年3月の中期経営計画を推進中である。そして、最終年度の2019年3月期には、売上高350億円以上、営業利益25億円以上を目標にしている。計画達成時には、営業利益率7.0%以上(2016年3月期実績6.7%)、ROE8.0%以上(同8.9%)を目指している。既に2018年3月期には売上高を除いて達成しており、最終的にはすべての目標をクリアすると見られる。来期からは新中期経営計画に移行する予定であるが、当面は引き続きコア事業の高付加価値化と、IoT事業などのサービス提供型事業への取り組みが、同社の更なる成長のカギになりそうだ。また、将来を見据えて、新たな収益の芽となる新しいビジネスの開拓にも意欲的に取り組む意向である。

2. 新規事業の戦略
IoTとはInternet of Thingsの略で、家電製品やセンサーなど様々なモノをネットワークに接続し、情報収集だけでなく遠隔監視や制御を行い、商品開発やマーケティングに生かすことである。同社では、コア事業であるITソリューションとプロダクトソリューションのノウハウを融合することで、人月工数に依存しないストック型ビジネスとしてIoTを始めとしたサービス事業を新たな収益の柱に育成する。「この国の未来を、IoTで変えていく」をスローガンに掲げ、IoTインテグレータNo.1を目指している。

同社は、2013年5月に販売を開始したIoTクラウドプラットフォーム「Toami」を中心に、IoTに必要なアプリケーション開発と分析サービス、無線やセンサー技術を始めとする組込みアプリ、さらにLSI設計まで対応できる力を備えていることが大きな強みである。

同社グループのIoT事業は実証・検証の段階から徐々に具体的なサービス導入も増え始め、産業機器や医療機器の遠隔監視などの多くの用途で顧客に利用され始めている。継続した提案・販促活動によって商談件数は増加し、新規顧客だけでなく既存顧客の深耕によっても受注は拡大している。直近でも顧客からの引き合いは好調で、「Toami」をベースとしたシステム構築やゲートウェイ機器の出荷が増加したほか、それに伴うストック売上が順調に積み上がっている。IoT関連の売上高は2018年3月期には前期比約2倍の10億円規模に達しており、うち7割程度が「Toami」関連であった。さらに2019年3月期第2四半期も前年同期比約70%増と急増し、累計契約者数は100社を超えており、IoT事業は、新たな収益の柱として着実に育ちつつあるようだ。

IoT事業の最近の導入事例としては、ノーリツ<5943>では2015年より業務用ガス給湯器の遠隔監視システムに「Toami」を活用しているが、2018年9月には家庭用給湯器に対象を広げ、浴室事故の低減と利便性向上を図っている。その他、8月には、ワークスモバイルジャパン(株)及びPTCと提携し、LINE WORKS (LINEのビジネス版)と「Toami」を連携させることで、製造現場での情報の一元管理、機器のエラーのアラート通知、作業員同士のやり取りの履歴化などを可能にした。また、2018年6月には日本初のアドベンチャーレース国際大会において、選手の位置情報をリアルタイムで可視化するGPSトラッキングシステムを「Toami」で構築し、大会側の安全管理及び医療班やチームサポーターへの的確な情報提供に貢献した。

3. コア事業の戦略
中期経営計画の業績目標達成には、既存のコア事業の領域拡大と深耕が不可欠である。新規事業が中核事業の1つに成長するまでの間、コア事業が同社の業績をけん引することになる。

ITソリューション事業については、デジタルトランスフォーメーションを実現するソリューション・サービスの展開、 業種別IoTサービスの拡大(工場、建設、介護など)、 既存案件の着実な遂行による事業基盤強化と収益性向上を図る。また、既述のとおり、2018年4月に組織改正を行い、これまでの事業をITソリューション事業とサービスソリューション事業に区分し、新たに2軸で事業拡大を図る体制に変更した。

ソリューション事業では、小売業、物流業、製造業向けを中心に個別システムからトータルソリューションへの事業領域を拡大することや、労働力不足や業務効率化を支援するために業種・業務軸に特化したAI・RPAソリューションを創出することを計画する。サービス事業では、システム運用における労働集約から知識集約型へビジネスモデルを変革すること、運用設計、データ連携、インフラサービスの拡充を図ること、データセンター付加サービスの拡充(業務アウトソーシング、基幹システム保守など)を目指す。

ITソリューション事業における最近の取り組みとしては、働き方改革の推進と人手不足を補うRPA(Robotic Process Action)ソリューションの拡充がある。同社は2014年からeコマース事業者の業務効率化をサポートするソリューション「Creoss-Robo」を提供しており、2017年にはバックオフィス業務のルーティン作業を自動化するサービスを追加した。さらに2018年9月にはシステム運用業務自動化サービスの分野で、(株)フィックスポイントの「Kompira」との連携をスタートしている。

その他スマート決済ソリューション「NSW-SmartPay」では、既に業務で利用しているスマートフォンやタブレット端末やPCなどの業務端末と専用のモバイルカードリーダーを組み合わせるだけで、時間や場所を問わず様々な決済が可能である。セキュリティ面でも万全を期しており、今後キャッシュレス化が進むなか、幅広い業種・業態での利用拡大を目指している。

一方、プロダクトソリューション事業分野においては、既存重点分野における成長領域への拡大・展開を図り、 コア技術を生かし新サービスの創造を目指す。組込みソフトウェア開発事業では、オートモーティブ分野を維持・拡大し、走行安全系の基盤を拡充すること、モバイル技術を融合したモビリティ事業を拡大・加速すること、医療・ヘルスケア、エネルギー、産業機器向けを深耕・拡大すること、5G動向を見据えた関連業務を獲得し、通信機器提供サービスを強化することなどを掲げている。また、デバイス開発事業では、国内顧客の深耕と海外での新規市場・顧客開拓を図ること、画像系AIやモデルベース設計の活用による新サービスを創造することなどを考えている。

最近の取り組みとしては、注力事業の1つであるオートモーティブ関連で、主力の情報通信に加え、技術的にも親和性の高いコネクティッド・カー(ICT端末としての機能を有する自動車)の領域に注力している。同社は車載コックピットシステムから、車内外のデータをつなぐスマートフォンを始めとした通信端末、データ収集や蓄積基盤であるクラウドサービスまで、コネクティッド・カーに必要な技術を有している。この強みを生かして、配送トラックなどの業務用車両の運行管理システムや、車載機器と連携したスマートフォンアプリの受託開発のほか、カーシェアリングなど次世代の市場ニーズを見据えたサービスの検証を実施している。

また、デバイス開発事業分野では、9月27日に英Armと日本企業初のArm Approved Design Partner契約を締結した。Armは世界有数の半導体IP企業で、モバイル向けシェア90%を占めており、スマートフォンやタブレット以外に、IoTや自動車などの成長分野でもシェアを伸ばしている。この契約に伴い、同社はArmプロセッサIP、ツール、モデル群の使用が可能になり、ArmベースのSoC(System-on-a-chip)開発において、市場投入までの開発期間短縮が可能となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)



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