ケアネット Research Memo(6):臨床開発から販売後のフォローまでを一括して支援する新サービス開始(2)
[19/03/28]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■ケアネット<2150>の今後の見通し
(3) 新規事業
中長期的な視点に立った新規事業として、画期的な医薬品や医療機器等の開発を目指すベンチャー企業や製薬企業、メーカーなどに対して、臨床開発から販売後のプロモーション、市場調査までをトータルソリューションとして支援するサービスを2019年12月期より本格展開していく。2018年5月にヘルスケア分野で異なる事業を行う6社が参加したコンソーシアム「SSI(Successful Support for Innovator)」によって、プロジェクトのプロセスごとに事業領域とする企業がサービスを提供していく格好となる。臨床開発から販売までのプロセスを「SSI」の参加企業で連携して進めていくことで、従来よりもスピーディかつ効率的なプロジェクトの推進が可能となる。プロジェクトを受託する窓口として同社は子会社、ヘルスケア・イニシアチブ(出資比率51%)を2018年11月に新設している。
2018年9月に資本業務提携を行ったサンバイオの外傷性脳挫傷を対象とした治療薬候補、「SB623」の承認取得及び販売後のプロモーション支援を行っていく予定となっている。順調に進めば2020年春頃の承認が見込まれているが、支援サービスは承認前から始まっている。例えば、治療薬に関する説明書やリーフレット、Webサイト等の制作など販売開始前の準備作業が必要となる。このため、関連する売上高が2019年12月期に計上される可能性もあるが、業績計画には織り込んでいない。また、その他にも現在、複数の製薬企業やバイオベンチャーのほか、海外のヘルステック企業等とも交渉中であり、受注獲得を目指して行く。日本市場に進出したい海外のヘルステック企業は多く、こうしたニーズも取り込んでいく計画だ。
2020年以降は再生医療や遺伝子治療による新薬の開発、上市がさらに活発化していくものと予想され、従来よりも臨床開発における被験者のリクルーティング活動、あるいは販売後のプロモーション活動などが難しくなると予想されるだけに、開発から販売後のフォローアップまでトータルで支援するサービスの需要は増えていくものと予想される。また、先進技術を活用して革新的な診断技術等を開発するヘルステック企業など有望なベンチャー企業があれば資本業務提携なども検討していく考えだ。資本業務提携やM&Aの際に必要となる資金を確保するため、銀行2行と合計15億円のコミットメントライン契約も2019年2月に締結しており、柔軟に資金調達できる体制を整えている(コミットメント期間:2019年2月25日−2020年2月25日)。
もう1つ、新規分野への展開として「遠隔集中治療」分野に進出すべく、(株)T-ICU、ブイキューブ<3681>との業務提携を2018年7月に発表している。T-ICUは専門医による遠隔集中治療支援の普及に取り組んでいるベンチャー企業であり、インフラ部分を提供するブイキューブと合わせて3社共同で、全国に遠隔集中治療ソリューションを展開していくことになる。
集中治療とは、救急搬送後の応急処置が行われ容態が一旦安定した患者や、大手術を受けた後の患者など重症患者に対して、呼吸・循環管理、感染症管理等の全身管理を集中治療室で行い、問題が発生した場合に適切な処置を行うことを言う。幅広い医療知識が必要となるため集中治療専門医が必要となるが、現在、国内では圧倒的に専門医の数が不足している状況にある。集中治療室は全国で約1,100室あり、このうち約300室には5〜10人の集中治療専門医が在籍しているが、残りの800室には専門医が在籍しておらず専門医ではない医師でまかなっているのが現状となっている。
こうしたアンバランスな需給を解消するためのソリューションとして、「遠隔集中治療支援システム」の導入を進めていく。患者の容態が急変した際に集中治療専門医が不在でも遠隔地からビデオ通信システム等を介して現場の看護師に適切な処置を指示し、状況の悪化を回避することが可能となる。「遠隔集中治療」の普及で先行している米国では既に全体の20%が「遠隔集中治療」の体制を整備していると言われており、国内でも今後普及する可能性は高い。
同社は「遠隔集中治療支援システム」の導入支援を行っていくほか、導入した医療施設に対して集中治療専門医を紹介するサービスも提供していく予定にしている。同社の登録会員のうち集中治療専門医は700〜800人在籍しているため、供給面での不安はないと思われる。また、導入支援に関しては同社の主要株主にもなっている地域の医療機器卸会社が販売代理店となって営業する可能性も考えられる。医療の地域格差を解消し、また、多くの重症患者の生命を救うことにもつながるソリューションとして、今後の成長期待は大きいと言える。
既に、千葉県の病院で導入実績があるほか、複数の施設で試験導入されている。また、引き合いは国内だけでなく、タイやカンボジアなど東南アジアからも来ているようだ。システムの導入価格やサービス料金など価格体系をどのようにするかを検討し、2019年4月以降に正式にサービスを開始する見通しとなっている。なお、T-ICUは次世代のヘルスケア産業の担い手を発掘・育成するため、新たなビジネス創造にチャレンジする企業を表彰する経済産業省主催の「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019」において、ビジネスコンテスト部門優秀賞を受賞するなど、「遠隔治療医療支援システム」をテーマに数々の賞を受賞しており、業界でも注目度の高い事業となっている。
同社はこれらの取り組みを踏まえて、2019年秋頃を目途に中期経営計画を発表する予定にしており、その内容が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SF>
(3) 新規事業
中長期的な視点に立った新規事業として、画期的な医薬品や医療機器等の開発を目指すベンチャー企業や製薬企業、メーカーなどに対して、臨床開発から販売後のプロモーション、市場調査までをトータルソリューションとして支援するサービスを2019年12月期より本格展開していく。2018年5月にヘルスケア分野で異なる事業を行う6社が参加したコンソーシアム「SSI(Successful Support for Innovator)」によって、プロジェクトのプロセスごとに事業領域とする企業がサービスを提供していく格好となる。臨床開発から販売までのプロセスを「SSI」の参加企業で連携して進めていくことで、従来よりもスピーディかつ効率的なプロジェクトの推進が可能となる。プロジェクトを受託する窓口として同社は子会社、ヘルスケア・イニシアチブ(出資比率51%)を2018年11月に新設している。
2018年9月に資本業務提携を行ったサンバイオの外傷性脳挫傷を対象とした治療薬候補、「SB623」の承認取得及び販売後のプロモーション支援を行っていく予定となっている。順調に進めば2020年春頃の承認が見込まれているが、支援サービスは承認前から始まっている。例えば、治療薬に関する説明書やリーフレット、Webサイト等の制作など販売開始前の準備作業が必要となる。このため、関連する売上高が2019年12月期に計上される可能性もあるが、業績計画には織り込んでいない。また、その他にも現在、複数の製薬企業やバイオベンチャーのほか、海外のヘルステック企業等とも交渉中であり、受注獲得を目指して行く。日本市場に進出したい海外のヘルステック企業は多く、こうしたニーズも取り込んでいく計画だ。
2020年以降は再生医療や遺伝子治療による新薬の開発、上市がさらに活発化していくものと予想され、従来よりも臨床開発における被験者のリクルーティング活動、あるいは販売後のプロモーション活動などが難しくなると予想されるだけに、開発から販売後のフォローアップまでトータルで支援するサービスの需要は増えていくものと予想される。また、先進技術を活用して革新的な診断技術等を開発するヘルステック企業など有望なベンチャー企業があれば資本業務提携なども検討していく考えだ。資本業務提携やM&Aの際に必要となる資金を確保するため、銀行2行と合計15億円のコミットメントライン契約も2019年2月に締結しており、柔軟に資金調達できる体制を整えている(コミットメント期間:2019年2月25日−2020年2月25日)。
もう1つ、新規分野への展開として「遠隔集中治療」分野に進出すべく、(株)T-ICU、ブイキューブ<3681>との業務提携を2018年7月に発表している。T-ICUは専門医による遠隔集中治療支援の普及に取り組んでいるベンチャー企業であり、インフラ部分を提供するブイキューブと合わせて3社共同で、全国に遠隔集中治療ソリューションを展開していくことになる。
集中治療とは、救急搬送後の応急処置が行われ容態が一旦安定した患者や、大手術を受けた後の患者など重症患者に対して、呼吸・循環管理、感染症管理等の全身管理を集中治療室で行い、問題が発生した場合に適切な処置を行うことを言う。幅広い医療知識が必要となるため集中治療専門医が必要となるが、現在、国内では圧倒的に専門医の数が不足している状況にある。集中治療室は全国で約1,100室あり、このうち約300室には5〜10人の集中治療専門医が在籍しているが、残りの800室には専門医が在籍しておらず専門医ではない医師でまかなっているのが現状となっている。
こうしたアンバランスな需給を解消するためのソリューションとして、「遠隔集中治療支援システム」の導入を進めていく。患者の容態が急変した際に集中治療専門医が不在でも遠隔地からビデオ通信システム等を介して現場の看護師に適切な処置を指示し、状況の悪化を回避することが可能となる。「遠隔集中治療」の普及で先行している米国では既に全体の20%が「遠隔集中治療」の体制を整備していると言われており、国内でも今後普及する可能性は高い。
同社は「遠隔集中治療支援システム」の導入支援を行っていくほか、導入した医療施設に対して集中治療専門医を紹介するサービスも提供していく予定にしている。同社の登録会員のうち集中治療専門医は700〜800人在籍しているため、供給面での不安はないと思われる。また、導入支援に関しては同社の主要株主にもなっている地域の医療機器卸会社が販売代理店となって営業する可能性も考えられる。医療の地域格差を解消し、また、多くの重症患者の生命を救うことにもつながるソリューションとして、今後の成長期待は大きいと言える。
既に、千葉県の病院で導入実績があるほか、複数の施設で試験導入されている。また、引き合いは国内だけでなく、タイやカンボジアなど東南アジアからも来ているようだ。システムの導入価格やサービス料金など価格体系をどのようにするかを検討し、2019年4月以降に正式にサービスを開始する見通しとなっている。なお、T-ICUは次世代のヘルスケア産業の担い手を発掘・育成するため、新たなビジネス創造にチャレンジする企業を表彰する経済産業省主催の「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019」において、ビジネスコンテスト部門優秀賞を受賞するなど、「遠隔治療医療支援システム」をテーマに数々の賞を受賞しており、業界でも注目度の高い事業となっている。
同社はこれらの取り組みを踏まえて、2019年秋頃を目途に中期経営計画を発表する予定にしており、その内容が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SF>