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ダイキアクシス Research Memo(4):海外事業は、中国とインドで浄化槽の現地生産を開始へ(1)

注目トピックス 日本株
■事業概要

(2) 海外事業
水インフラビジネスは、主要3業務で構成される。すなわち、部材・部品・機器製造と装置設計・組立・施工・運転、及び事業運営・保守・管理(水売り)である。フランスのヴェオリアとスエズ、米国のGEウォーターなどのメジャーはすべての領域を網羅する。一方、日系企業は水処理機器、エンジニアリング、オーガナイザーなど各分野に特化している。ダイキアクシス<4245>は、中小規模の排水処理をターゲットとすることから、水メジャーと棲み分ける。主要3業務を一貫して提供する機能を持つことが、日系企業に対する差別化となる。生活排水処理・事業場排水処理、公共水域浄化のいずれにも対応できる。

同社は、中小規模の排水処理で、ASEANやインド、アフリカでの市場拡大に際して、先行者利得を得る可能性が大きい。2015年4月にグローバル事業本部を新設した。現地で工場や商業施設の建設、マンションや戸建て住宅団地の不動産開発を手掛ける日系企業に対して、日本国内でも営業活動をしている。新たな規制のレベルがかなり高く、実際に地元企業が速やかに遵守するかは、国によってばらつきが出そうだ。一方、外資に対して厳格な適用が行われるのは、共通した傾向と言える。

同社は、厳格化された水処理基準をクリアし、設置される地域の気候に適合した製品を開発し、現地生産により生産コストと運送費を抑え、より短い納期で提供できるため、品質・コスト・納期(QCD)における競争力が強い。2015年7月に本格稼働を開始したインドネシアの新工場は、生産能力を以前の5倍に拡大した。新規生産設備の導入により自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。現地仕様の製品を開発し、機能を絞り込んで製造コストを削減した。合併浄化槽を利用する住居、ビル、工場、商業施設の個別処理システムがターゲットになる。大型・中型・小型槽で各200〜250基の年産能力を持つ。2016年以降、ミャンマー、インド、ベトナム、ケニアにおいて販売代理店契約を締結したことから、引き合いも急増している。2018年に、中国とインドにおいて浄化槽の製造拠点を確保した。生活習慣の違いから、東南アジア、中国、インドの使用水量や水質汚濁の性質がそれぞれ異なるため、日本で解析してコスト競争力がある製品開発を
行う。

海外事業は、売上高を2015年12月期の602百万円から2018年12月期に1,153百万円へと増加した。前期比では中国おける大型案件が剥落して落ち込んだものの、基調は拡大傾向にある。新中期経営計画の最終年度にあたる2021年12期は3,000百万円を見込んでいる。海外売上高比率は、7.5%に高まることになる。

以下に国別の進展状況を説明する。

a) インドネシア
同社は2015年6月にインドネシア第2の都市のスラバヤに支店を開設した。日系メーカーとの競争では、日本からの輸入製品に15〜20%の関税がかかるため現地生産が有利に働く。

b) ミャンマー
経済発展に伴う汚濁量増加に伴い、政府による規制運用が強化され、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)ではBOD20が標準化されている。ミャンマーの品質基準に、固有メーカー名と同等レベルのものとの表示があるが、クボタ<6326>と同社が認定メーカーとなっている。国内最大都市ヤンゴンの開発許認可当局YCDCは、7.5階以上の新規開発申請建物に浄化槽・排水処理施設を義務付けた。市郊外にニュータウン開発が進行しており、ヤンゴンの人口は550万人から2040年には1,000万人を超えると予想されている。現在、インドネシアから製品を輸入しているが、旺盛な需要に対応するため現地生産への転換を検討中だ。

c) インド
インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年になる2019年10月までの5年間で、200億ドル(約2兆2,200億円)を投じて、1億1,100ヵ所にトイレを設置することが目標。小中学校のトイレや公衆トイレも整備する。現状では、トイレの設置は進んでいるものの、下水処理施設の整備が追い付いていない。同社は、2016年7月にインド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10m3/日)の設置場所は、インド中西部にあるナーグプル市の公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件になる。

2017年4月に、インド全土において18,000平米超の産業施設及び延床面積が2,000平米以上の居住施設に対して、水質汚濁防止の規制レベルが従来のBOD30からBOD10へ強化された。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)は汚水のみで生活排水の処理ができないため、強化された規制をクリアできない。

2018年7月に、インドに子会社を設立した。インドにおける事業展開のフェーズ1としてローカルのプラスチック製品製造会社に生産委託をする。同社から金型等の製造設備を提供し、技術指導をする。年間生産は、中・小型中心のカプセル浄化槽100台を見込む。現在、6社と代理店契約を結んでいる。子会社の設立に続き、現地生産が開始されれば、同社のインド市場へのコミットメントを代理店にアピールすることになるだろう。浄化槽は、輸送費などを考慮すると消費地に近いところに生産拠点を設けることが望ましい。インドは国土が広大で、州政府の力が強いため、将来、各地に生産拠点を設けて、進出した地域から市場開拓をすることを検討する。販売代理店をさらに増やす意向だ。

計画のフェーズ2では、同社インド子会社と現地協力会社とで新たに合弁会社を設立し、大型排水処理システムの工事に参入する。新市場開拓は、通常、小型製品から始まり、中型・大型へと引き合いが広がる。インドにおいても、これまでのパターンで市場浸透を図る。

d) 中国
中国では大連に100%子会社を有し、エンジニアリング会社として活動している。日系企業からの指名で大型案件を獲得している。

2017年11月、習近平国家主席は、きれいなトイレを整備する「トイレ革命」を推進するよう指示した。観光地や都市だけでなく、農村部でも大衆生活の品質として充足すべきと言及されており、広く下水処理施設の導入が急がれる機運となった。2014年以降、農村の環境改善のためPPP(Public Private Partnership:官民協力事業)が進展している。農村人口8億人中の1〜2億世帯が、浄化槽の潜在市場と推測される。民間導入による価格適正化と水質基準の厳格化により、日本型浄化槽の進出余地が高まっている。市・鎮などの自治体が、浄化槽製造・敷設・運営を一体で入札を募集し、25年間の水質保証を義務付けている。

2018年7月に、家庭用合併処理浄化槽の製造を行う合弁会社「凌志大器浄化槽江蘇有限公司」を設立した。出資比率は、現地企業の凌志環保股フン有限公司(江蘇省宜興市)が51%、同社が49%。同社にとって持分法適用関連会社となる。拠点とする宜興市は「国家環境保護モデル都市」に選ばれており、上海、蘇州を含む太湖エリアに入る。同工場の製品は、それぞれの出資会社に供給される。中国の農村で設置されている腐敗槽は汚水処理に対応するものの、生活排水までは処理できず、水質基準をクリアするには不十分だ。そのため、一般家庭3〜4世帯ごとに腐敗槽を設置し、後処理を合併浄化槽がする仕組みとなる。合弁先は、腐敗槽で20年の実績を持つ。合弁先の敷地内に、同社の生産技術を導入した新工場を建設する。年間生産能力は、最大5,000台を計画している。同社の日本の年間生産規模は12万〜13万台で、そのうち小型製品は6,000〜7,000台になる。日本の生産拠点が複数ヶ所に分散しているのに対して、中国は1ヶ所の能力である。

e) その他の地域
農業国のベトナムは、BOD、窒素、アンモニアなどに対する排水規制の厳格化を進めており、処理性能の高い日本仕様製品への需要が期待される。同社は、ローカルパートナーを選定し、受注活動を開始した。ケニア、スリランカ、アルジェリアにおいてトライアルマーケティングを進めている。

2018年11月に、シンガポールにおいて約200ヶ所のホテル及び分譲マンション等のプール清掃・メンテナンス事業を行うCrystal Clear Contractor Pte. Ltd.を買収した。今後、同社技術を生かし濾過設備等の施工販売を想定している。同国で実業を持つことで、アジア統括会社であるDAIKI AXIS SINGAPORE PTE.LTD.のコスト吸収と実効的な運営を行う。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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