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TOKAI Research Memo(5):中期経営計画(IP20)、M&Aと「ABCIR+S」戦略推進により成長加速

注目トピックス 日本株
■TOKAIホールディングス<3167>の今後の見通し

2. 中期経営計画について
(1) 基本方針
2018年3月期よりスタートした新中期経営計画(IP20)では、基本戦略としてトップラインの成長を最優先に「守りの経営」から「攻めの経営」に転じることを打ち出した。2021年3月までに顧客基盤の拡大につながるM&Aやアライアンスを積極的に推進し、総額1,000億円の戦略的投資を実行していく方針となっている。

M&Aの対象としては、中核事業であるガス、CATV、情報及び通信サービス等で顧客基盤を持つ企業のほか、既存の生活関連サービスの周辺領域についても対象としている。2019年7月までの実績としては、CATV事業で3件(東京ベイネットワーク(株)、(株)テレビ津山、(有)シオヤ)、都市ガス事業で2件(群馬県下仁田町、秋田県にかほ市)、情報及び通信サービス事業で2件((株)サイズ、(株)アムズブレーン)の合計7件となり、株式取得費用として50億円強を投下している。同社は現在も大型ディールも含めて複数の案件について検討、交渉を進めている状況にあり、今後の動向が注目される。

また、「ABCIR+S」をテーマとした先進技術を活用した新たな顧客基盤の拡大や競争力の強化を目的とした新サービスの開発にも取り組んでいる。とりわけ、グループで290万件に上る大量の顧客データを保有していることから、これらデータの有効に活用すべく「デジタルマーケティングプラットフォーム(以下、DMP)」の構築を推進していく方針となっている。DMPは同社グループの顧客データベースとWeb閲覧情報を顧客単位でデータ統合することで、個人ごとの傾向(趣味嗜好、解約予兆等)を把握し、これらデータをもとに効果的な営業活動(新規サービスの販促等)や解約防止活動を行うことで、顧客件数の拡大並びに1顧客当たり収益最大化につなげていく考えだ。既にプラットフォームは完成しており、今後、データベースの収集・分析を行い、シナリオを複数用意した上で実用化していく予定にしている。

(2) 業績の進捗状況
中期経営計画(IP20)では経営数値目標として、2021年3月期に連結売上高で3,393億円、営業利益で225億円、親会社株主に帰属する当期純利益で115億円、グループ顧客件数で432万件以上を掲げた。これに対して、2019年3月期までの進捗状況を見ると、当初目標に対して売上高で104億円、営業利益で9億円、親会社株主に帰属する当期純利益で1億円、顧客件数で9万件の未達となっている。顧客件数を事業別で見れば、ガス及び石油事業はほぼ計画どおり、CATV事業で計画をやや上回るペースで進捗しているのに対して、情報及び通信サービス事業が計画の下振れ要因となっている。

2020年3月期の業績計画について見ると、当初目標値に対して売上高で236億円乖離している。これは顧客件数の前提が372万件から300万件に引き下げられていることが主因となっている。また、営業利益については20億円乖離しているが、中期計画策定段階と比較してLPガスの仕入価格が上昇し、一時的に収益が落ち込んだことが影響しており、同要因を除けばおおむね順調に推移しているとの認識だ。2021年3月期の目標達成については、今後のM&Aの状況次第となる。

また、収益拡大施策として注力しているグループ内サービスの複数契約率に関しては、2019年3月期末の17.8%(前期末16.7%)から2021年3月期末に20%に引き上げていくことを目標としている。複数契約率に関してはCATVや都市ガスユーザーが相対的に高くなっているため、都市ガス事業においては新規サービスエリアとなる群馬県下仁田町や秋田県にかほ市、また、CATV事業においては東京ベイネットワークやテレビ津山、シオヤの顧客に対する営業活動を強化していく方針だ。

財務面を見ると2019年3月期末は自己資本比率で37.4%、有利子負債/EBITDA倍率で1.8倍とおおむね中期経営計画目標の範囲内で推移している。今後、大型のM&A案件が決まれば株式取得費用等を有利子負債で賄っていくため、一時的に財務体質の悪化が想定されるものの、自己資本比率では30%台をキープし財務の健全性を維持しながら積極投資を実施していく方針となっている。

なお、同社株式は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点等、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たし、2019年8月30日適用予定の「JPX日経インデックス400」の構成銘柄に選定されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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