ALBERT Research Memo(3):顧客ごとに特化したプロジェクト型サービスの受注が好調
[19/08/30]
提供元:株式会社フィスコ
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■会社概要
2. 事業内容
ALBERT<3906>は、1)顧客ごとに特化したビッグデータ分析、アルゴリズム開発、AIのシステム実装等を提供するプロジェクト型サービス、2)幅広い顧客を対象とするAIを搭載した汎用的な自社プロダクトの提供、3)データサイエンティストの育成支援、の3つの事業サービスを展開している。
(1)プロジェクト型サービス
プロジェクト型サービスにおける同社の強みは、ビッグデータ分析に基づき開発した精度の高いアルゴリズムをスクリプト化し顧客企業のシステムに実装し、その後も精度向上のためのアルゴリズムのチューニングアップ等の保守・運用サポートに至るまで、AI開発プロセスを一気通貫で提供していること、また、高品質なサービスを提供するため高いスキルを持ったデータサイエンティストを多く抱えるほか、スキル向上のための独自の育成プログラムを自社で整備していることにある。2018年12月期にトヨタ自動車やKDDIなど大手企業との資本業務提携を締結したことで、同社の技術力の高さが改めて認知されるようになり、引き合いが増加している。大手主要顧客に関しては継続的に新規プロジェクトの受注を獲得しており、その他の新規案件については会社のホームページからの問い合わせ、あるいは展示会に出展した際の問い合わせに対応していく格好となっている。
ビジネスモデルとしては、プロジェクトごとのフロー型ビジネスとなり、売上高はプロジェクトに係る人数や難易度、期間等で決まる。ここ最近はデータサイエンティストの需給がひっ迫化する中で、プロジェクトの大型化、長期化が進んでいることもあり、単価の引き上げに取り組んでいる。
(2)自社開発プロダクト
自社プロダクトサービスでは、2016年12月にリリースしたAI・高性能チャットボットサービス「スグレス」と、2018年10月にリリースしたAI・画像認識サービス「タクミノメ」の2つのサービスを中心に展開している。
「スグレス」の特徴は、独自の自然言語処理技術と自動学習機能による性能の高さと、導入・運用の簡便さ、LINEや有人チャットとの連携機能など各種機能が充実している点にある。性能の高さについては、2018年8月よりKDDIが「スグレス with KDDI」のブランド名でサービスを開始したことからもうかがえる。KDDIではチャットボットサービスを販売するにあたって、数十社のチャットボット製品を検証しており、性能とコストパフォーマンスの高さから「スグレス」の導入を決定している。「スグレス」の初期導入費用は標準機能にオプション機能を付けて約50〜100万円、月額利用料はチャットボットの表示回数によるものの、約10〜50万円程度となっている。
「タクミノメ」は2019年2月に用途に応じて、「タクミノメ 異常検知」と「タクミノメ アノテーション※」に分けて正式リリースしている。「タクミノメ 異常検知」は工場の製造ラインの検査工程で画像認識技術とAIアルゴリズムを使って不良品等を発見するサービスとなる。従来は、人が目視検査していた工程を自動化できるため、人材不足難を解消するサービスとなる。初期導入費用は数百万円、月額利用料は数十万円程度となり、中小規模の製造会社を顧客ターゲットに導入実績を積み上げている。また、「タクミノメ アノテーション」は画像の被写体を正確に認識して、タグ情報を自動で付けていくサービスとなり、自社でアノテーションを行っている企業や、AIによる画像認識技術をビジネスに活用したい企業向けのサービスとなる。このため、業界は製造業以外にも通信、金融、流通など様々な業界でニーズがあると見られる。「タクミノメ」シリーズについては、顧客側からより高度なサービスを求められるケースもあり、そういう場合はプロジェクト案件として対応していくことになる。自社開発プロダクトのビジネスモデルは、初期導入費用と月額利用料(または従量課金)が売上となるため、ストック型ビジネスとなる。
※アノテーションはテキストや音声、画像などあらゆる形態のデータにタグ付けする作業のこと。機械学習アルゴリズムはタグが付いたデータを取り込むことでパターンを認識する。
(3)データサイエンティスト育成支援サービス
自社で開発したデータサイエンティストの育成プログラム「データサイエンティスト養成講座」が、2018年8月に経済産業省による「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」に認定※され講座を開設している。基本的には業務提携先の企業からの依頼のみを受けている状況だが、問い合わせが増加していることから新たに教育事業部門を新設した。業績面での直接的な影響は軽微だが、提携先企業との関係強化という面での寄与が見込まれる。また、データサイエンティストなどAI人材に関しては2020年に国内で4.5万人の人材が不足すると言われており、AI関連企業にとって人材の育成・確保が重要な経営課題となるだけに、人材育成のノウハウを持つ同社にとっては強みとなる。
※「データサイエンティスト養成講座(R言語 上級編)」「データサイエンティスト養成講座(Python上級編)」の2講座が認定された。認定を受けたのは15事業者21講座となる。認定期間は2018年10月より3年間。
なお、データサイエンティストとは、データサイエンス力及びデータエンジニアリング力をベースに、データから価値を創出し、ビジネス課題に対する答えを導き出すプロフェショナル人材のことを同社では指している。各業界においてデータサイエンティストが不足するなか、同社は積極的な採用活動を実施しており、2019年6月末時点で161名が在籍(派遣・契約社員、アルバイト含む)、質・量ともに国内トップクラスの陣容となっている。なお、正社員のうち博士号取得者の比率が10%、修士号取得者は51%を占めている。2018年に大手企業との資本業務提携を相次いで発表し、業績が急回復したこともあって、新卒、中途採用ともに応募者が増加しており、採用面でも追い風となっているようだ。2020年春には新卒で35名が入社予定のほか、中途採用も含めて全体で200名超の体制に拡大する予定となっている。
CATALYST戦略の推進により重点5分野の売上構成比が80%超を占めるまでに成長
3.業種別売上構成
同社は重点産業分野として、自動車、製造(自動車除く)、通信、流通、金融の5つの分野での取り組みを強化し、特定業種の好不況の影響に左右されない安定した収益基盤を構築することを目指している。
特に、2018年後半以降にCATALYST戦略により業界大手との資本業務提携を進めてきたことで、売上構成比も顕著に変化してきている。2019年12月期第2四半期の売上構成比で見れば、通信向けが38%と最も高く、次いで製造(自動車除く)が15%、自動車が14%、金融が8%、流通が6%となり、5分野合計で81%と1年前の70%から11ポイントも上昇している。通信はKDDI、自動車はトヨタ自動車、金融は東京海上日動火災保険といったCATALYSTパートナー向けの売上が伸びていることが要因となっている。また、製造(自動車除く)分野についても「タクミノメ 異常検知」のほか、2017年7月に業務提携を発表したエレクトロニクス商社の(株)マクニカとのスマートファクトリー事業で実績が出始め、売上増につながっているものと見られる。なお、流通分野の深耕が遅れているが、今後、CATALYSTパートナーを獲得することで売上を伸ばしていく方針となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業内容
ALBERT<3906>は、1)顧客ごとに特化したビッグデータ分析、アルゴリズム開発、AIのシステム実装等を提供するプロジェクト型サービス、2)幅広い顧客を対象とするAIを搭載した汎用的な自社プロダクトの提供、3)データサイエンティストの育成支援、の3つの事業サービスを展開している。
(1)プロジェクト型サービス
プロジェクト型サービスにおける同社の強みは、ビッグデータ分析に基づき開発した精度の高いアルゴリズムをスクリプト化し顧客企業のシステムに実装し、その後も精度向上のためのアルゴリズムのチューニングアップ等の保守・運用サポートに至るまで、AI開発プロセスを一気通貫で提供していること、また、高品質なサービスを提供するため高いスキルを持ったデータサイエンティストを多く抱えるほか、スキル向上のための独自の育成プログラムを自社で整備していることにある。2018年12月期にトヨタ自動車やKDDIなど大手企業との資本業務提携を締結したことで、同社の技術力の高さが改めて認知されるようになり、引き合いが増加している。大手主要顧客に関しては継続的に新規プロジェクトの受注を獲得しており、その他の新規案件については会社のホームページからの問い合わせ、あるいは展示会に出展した際の問い合わせに対応していく格好となっている。
ビジネスモデルとしては、プロジェクトごとのフロー型ビジネスとなり、売上高はプロジェクトに係る人数や難易度、期間等で決まる。ここ最近はデータサイエンティストの需給がひっ迫化する中で、プロジェクトの大型化、長期化が進んでいることもあり、単価の引き上げに取り組んでいる。
(2)自社開発プロダクト
自社プロダクトサービスでは、2016年12月にリリースしたAI・高性能チャットボットサービス「スグレス」と、2018年10月にリリースしたAI・画像認識サービス「タクミノメ」の2つのサービスを中心に展開している。
「スグレス」の特徴は、独自の自然言語処理技術と自動学習機能による性能の高さと、導入・運用の簡便さ、LINEや有人チャットとの連携機能など各種機能が充実している点にある。性能の高さについては、2018年8月よりKDDIが「スグレス with KDDI」のブランド名でサービスを開始したことからもうかがえる。KDDIではチャットボットサービスを販売するにあたって、数十社のチャットボット製品を検証しており、性能とコストパフォーマンスの高さから「スグレス」の導入を決定している。「スグレス」の初期導入費用は標準機能にオプション機能を付けて約50〜100万円、月額利用料はチャットボットの表示回数によるものの、約10〜50万円程度となっている。
「タクミノメ」は2019年2月に用途に応じて、「タクミノメ 異常検知」と「タクミノメ アノテーション※」に分けて正式リリースしている。「タクミノメ 異常検知」は工場の製造ラインの検査工程で画像認識技術とAIアルゴリズムを使って不良品等を発見するサービスとなる。従来は、人が目視検査していた工程を自動化できるため、人材不足難を解消するサービスとなる。初期導入費用は数百万円、月額利用料は数十万円程度となり、中小規模の製造会社を顧客ターゲットに導入実績を積み上げている。また、「タクミノメ アノテーション」は画像の被写体を正確に認識して、タグ情報を自動で付けていくサービスとなり、自社でアノテーションを行っている企業や、AIによる画像認識技術をビジネスに活用したい企業向けのサービスとなる。このため、業界は製造業以外にも通信、金融、流通など様々な業界でニーズがあると見られる。「タクミノメ」シリーズについては、顧客側からより高度なサービスを求められるケースもあり、そういう場合はプロジェクト案件として対応していくことになる。自社開発プロダクトのビジネスモデルは、初期導入費用と月額利用料(または従量課金)が売上となるため、ストック型ビジネスとなる。
※アノテーションはテキストや音声、画像などあらゆる形態のデータにタグ付けする作業のこと。機械学習アルゴリズムはタグが付いたデータを取り込むことでパターンを認識する。
(3)データサイエンティスト育成支援サービス
自社で開発したデータサイエンティストの育成プログラム「データサイエンティスト養成講座」が、2018年8月に経済産業省による「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」に認定※され講座を開設している。基本的には業務提携先の企業からの依頼のみを受けている状況だが、問い合わせが増加していることから新たに教育事業部門を新設した。業績面での直接的な影響は軽微だが、提携先企業との関係強化という面での寄与が見込まれる。また、データサイエンティストなどAI人材に関しては2020年に国内で4.5万人の人材が不足すると言われており、AI関連企業にとって人材の育成・確保が重要な経営課題となるだけに、人材育成のノウハウを持つ同社にとっては強みとなる。
※「データサイエンティスト養成講座(R言語 上級編)」「データサイエンティスト養成講座(Python上級編)」の2講座が認定された。認定を受けたのは15事業者21講座となる。認定期間は2018年10月より3年間。
なお、データサイエンティストとは、データサイエンス力及びデータエンジニアリング力をベースに、データから価値を創出し、ビジネス課題に対する答えを導き出すプロフェショナル人材のことを同社では指している。各業界においてデータサイエンティストが不足するなか、同社は積極的な採用活動を実施しており、2019年6月末時点で161名が在籍(派遣・契約社員、アルバイト含む)、質・量ともに国内トップクラスの陣容となっている。なお、正社員のうち博士号取得者の比率が10%、修士号取得者は51%を占めている。2018年に大手企業との資本業務提携を相次いで発表し、業績が急回復したこともあって、新卒、中途採用ともに応募者が増加しており、採用面でも追い風となっているようだ。2020年春には新卒で35名が入社予定のほか、中途採用も含めて全体で200名超の体制に拡大する予定となっている。
CATALYST戦略の推進により重点5分野の売上構成比が80%超を占めるまでに成長
3.業種別売上構成
同社は重点産業分野として、自動車、製造(自動車除く)、通信、流通、金融の5つの分野での取り組みを強化し、特定業種の好不況の影響に左右されない安定した収益基盤を構築することを目指している。
特に、2018年後半以降にCATALYST戦略により業界大手との資本業務提携を進めてきたことで、売上構成比も顕著に変化してきている。2019年12月期第2四半期の売上構成比で見れば、通信向けが38%と最も高く、次いで製造(自動車除く)が15%、自動車が14%、金融が8%、流通が6%となり、5分野合計で81%と1年前の70%から11ポイントも上昇している。通信はKDDI、自動車はトヨタ自動車、金融は東京海上日動火災保険といったCATALYSTパートナー向けの売上が伸びていることが要因となっている。また、製造(自動車除く)分野についても「タクミノメ 異常検知」のほか、2017年7月に業務提携を発表したエレクトロニクス商社の(株)マクニカとのスマートファクトリー事業で実績が出始め、売上増につながっているものと見られる。なお、流通分野の深耕が遅れているが、今後、CATALYSTパートナーを獲得することで売上を伸ばしていく方針となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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