Eストアー Research Memo(3):『アナログ戦略』と『マーケティング』をキーワードに成長を目指す
[19/09/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略と進捗状況
1. 成長戦略の全体像
(1) 事業体制
前述のように、2017年に販促システム事業を開始したことで、販売システム(ECシステム)事業、マーケティングサービス(販促サービス)事業、及び販促システム(マーケティングシステム)事業の3事業体制が完成した。この3事業を、販売と販促(マーケティング)の軸と、システム(機械・ソフトウェア)と人的サービスの2つの軸から成る4つの象限で以下に表現した。
Eストアー<4304>の成長戦略とは、Eストアーの事業領域図のA〜Dの各事業領域において収益拡大を目指すことにほかならないが、ポイントは、A 〜Dは同一平面上に他から区切られて(独立して)存在しているわけではなく、因果関係や代替関係、補完関係など、様々な種類の関係性を持ち、関係性に応じて立体的・重層的に存在しているということだ。したがって同社が収益拡大を目指すうえでは複数の事業を連携させてシナジー効果を追求することはもちろんであるが、市場環境や時代の変化に応じて組み合わせや前後関係などを変えながら取り組む必要があるということだ。
(2) 事業環境の認識と目指す方向性
販売システム(レンタルサーバーやEC総合支援サービス『ショップサーブ』など)から事業をスタートし、直近では販促システム(『Eストアーコンペア』や『Eストアークエリー』)をリリースしてITやデジタルを事業に活用する同社だが、成長戦略の中核には『アナログ戦略』を据えている。
これを理解するためには同社の現状認識を知る必要がある。同社は、IT社会の進展は止まらないものの、需要側(消費者側)はIT(より正確にはIT化がもたらす情報供給量)に対し満腹感(膨満感)を感じていると分析している。こうした状況下にあっては、いわゆるビッグデータやAIを活用した需要予測を行っても有効性は低いとみている。
それに対して、有効性を発揮すると同社が考えるのが『アナログ戦略』だ。同社はこれを“三河屋さん”と表現する。その意味するところは、企業側(同社にとっての顧客企業)と消費者との間にちょうど良い距離感、心地よい関係といったものを構築していくことこそが重要、ということだ。
同社の成長戦略に重要な影響を与えているもう1つの要素がデフレ経済だ。日本が人口減少社会に突入し、さらにはバブルを経験した世代がどんどん減少する状況にあっては、デフレ経済は今後も継続するというのが同社の認識だ。そしてそれは、“消費社会”(モノを消す・費やす社会)から“持続社会”(モノを持ち続ける社会)への移行を促すと予測している。持続社会においてはモノが売れにくくなるため、既存客との関係に根差した販売戦略、すなわち三河屋さん戦略(=アナログ戦略)がここでも重要になると考えている。
デフレ経済はまた、販売手法においても企業に変革を迫ると同社は考えている。デフレ下で収益を上げていくには、モールなどの中間領域に頼らない販売戦略、すなわち直販シフトをせざるを得ないというのが同社の将来予測だ。
以上のような現状認識、将来予測から明らかなように、現在の3事業部門・4事業領域の中で、今後同社が特に注力する領域はマーケティングサービス事業だ。反対に販売システムの中のショップサーブは競合の林立で徐々に非注力事業へと移行しつつある。販促システムはマーケティングサービスの効率性アップに貢献すると期待され、本来はマーケティングサービス同様、注力分野になると考えられるが、現状は同社の販促システムに対して“時期尚早”という評価・反応が多いため、無理押しはしない方針とみられる。同社はこれまでも社会状況の変化に合わせて、自身の成長の方向性を徐々に変えてきたが、以上のような状況を踏まえて、ターゲットの企業サイズを、従来の中小・中堅から、いわゆる大企業へと変更している。また、売上高では、販売システム・フロウ売上高(商規模連動料金収入)に当たる顧客売上高の拡大を中心に目標に掲げてきた。これに対して、今後はマーケティングサービス事業におけるコンサルティング収入による拡大を目指す方針だ。コンサルティングも目的は顧客売上高の拡大であり、これは商規模連動料金収入の拡大にもつながるため、コンサルティング収入と合わせて売上高の厚みを増すことができる。また、コンサルティングフィーを払える顧客は一定以上の規模でもあるため、大企業をターゲットとする戦略ともマッチする。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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