ワコム Research Memo(6):テクノロジーソリューション事業での成功体験を活かして変革のスピードアップに期待
[19/11/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略の進捗状況と今後の注目点
3. 内部体制の強化
ワコム<6727>は、2017年3月期において大きな損失を計上し、それを転機に経営陣の異動や新規中計の策定に踏み切り現在に至っている。それらの大きな要因として、営業から企画、開発、生産等、事業プロセス全般にわたって内部体制に課題があったことが指摘され、その改善が外部要因である市場環境対応と並んで重要なテーマとなっている。
この部分が想定したスピードで進捗していないことが、ブランド製品事業の収益力立て直しが遅れている1つの要因となっていると弊社では考えている。
ここで重要なツールと期待されるのがIsland & Ocean(アイランド&オーシャンによる緊密な連携)戦略だ。これは、第一義的にはブランド製品事業(島)とテクノロジーソリューション事業(海)との連携による成長追求の取り組みのことで、2つの事業間のあらゆる機能において連携を加速させ、イノベーションや新事業領域の開拓、持続的成長などへとつなげていくことを目指している。
しかしIsland & Ocean戦略にはもう1つ重要な視点があると弊社では考えている。それは、テクノロジーソリューション事業を“ベストプラクティス”(成功事例)として、その成功体験やノウハウをブランド製品事業に援用して改革・改善のスピードアップを図ることだ。
すでに両事業間の配置転換を含めた人材交流などを実施している模様だが、その効果がなかなか表面化してこない。内部体制の改革・改善の遅れが、当事者のスキルといった属人的な部分に起因しているのか、それとも同社の組織体制や運営体制に起因するものなのか、詳細は不明だが、早期の解決が望まれる。
“テクノロジー・リーダーシップ”によりペン入力デバイスの新たな価値や価値観を消費者に提案できるかに注目
4. 市場創造力
ここ数年のブランド製品事業における同社の動きをみていると、いわゆる後手に回っているという印象をぬぐいきれない。市場の変化に振り回されているというイメージだ。しかしペン入力デバイスの市場はパイオニアの同社が創造しリードしてきた市場だ。技術力やブランド力は依然として強いものを有している同社がそうした状況に陥っていることに違和感を覚えているというのが正直な感想だ。
そうした同社のブランド製品事業の収益力立て直しには、市場創造力(あるいは“先読み力”)といったものが必要だと弊社では考えている。価格競争では勝てない場合、ハイエンド市場に特化するというのは1つの選択肢だが、同社は業界のリーディングカンパニーとして一定水準以上の市場を幅広く狙っていく方針とみられる。ミドル・ローエンドの領域では価格以外の価値を提供することが不可欠だ。消費者が価格以上に求めている潜在的な価値を探り出す、あるいは新たな価値“観”を創造し浸透させていくということが必要になると考えられる。
現行中計の基本戦略であるテクノロジー・リーダーシップにはそうした意味合いも込められていると弊社では理解している。前述したユーザーファーストの視点でのラインアップ見直しやソフトウエアとの連携などは、市場創造力の強化にもつながると考えられる。今後の進捗を見守りたいと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<MH>
3. 内部体制の強化
ワコム<6727>は、2017年3月期において大きな損失を計上し、それを転機に経営陣の異動や新規中計の策定に踏み切り現在に至っている。それらの大きな要因として、営業から企画、開発、生産等、事業プロセス全般にわたって内部体制に課題があったことが指摘され、その改善が外部要因である市場環境対応と並んで重要なテーマとなっている。
この部分が想定したスピードで進捗していないことが、ブランド製品事業の収益力立て直しが遅れている1つの要因となっていると弊社では考えている。
ここで重要なツールと期待されるのがIsland & Ocean(アイランド&オーシャンによる緊密な連携)戦略だ。これは、第一義的にはブランド製品事業(島)とテクノロジーソリューション事業(海)との連携による成長追求の取り組みのことで、2つの事業間のあらゆる機能において連携を加速させ、イノベーションや新事業領域の開拓、持続的成長などへとつなげていくことを目指している。
しかしIsland & Ocean戦略にはもう1つ重要な視点があると弊社では考えている。それは、テクノロジーソリューション事業を“ベストプラクティス”(成功事例)として、その成功体験やノウハウをブランド製品事業に援用して改革・改善のスピードアップを図ることだ。
すでに両事業間の配置転換を含めた人材交流などを実施している模様だが、その効果がなかなか表面化してこない。内部体制の改革・改善の遅れが、当事者のスキルといった属人的な部分に起因しているのか、それとも同社の組織体制や運営体制に起因するものなのか、詳細は不明だが、早期の解決が望まれる。
“テクノロジー・リーダーシップ”によりペン入力デバイスの新たな価値や価値観を消費者に提案できるかに注目
4. 市場創造力
ここ数年のブランド製品事業における同社の動きをみていると、いわゆる後手に回っているという印象をぬぐいきれない。市場の変化に振り回されているというイメージだ。しかしペン入力デバイスの市場はパイオニアの同社が創造しリードしてきた市場だ。技術力やブランド力は依然として強いものを有している同社がそうした状況に陥っていることに違和感を覚えているというのが正直な感想だ。
そうした同社のブランド製品事業の収益力立て直しには、市場創造力(あるいは“先読み力”)といったものが必要だと弊社では考えている。価格競争では勝てない場合、ハイエンド市場に特化するというのは1つの選択肢だが、同社は業界のリーディングカンパニーとして一定水準以上の市場を幅広く狙っていく方針とみられる。ミドル・ローエンドの領域では価格以外の価値を提供することが不可欠だ。消費者が価格以上に求めている潜在的な価値を探り出す、あるいは新たな価値“観”を創造し浸透させていくということが必要になると考えられる。
現行中計の基本戦略であるテクノロジー・リーダーシップにはそうした意味合いも込められていると弊社では理解している。前述したユーザーファーストの視点でのラインアップ見直しやソフトウエアとの連携などは、市場創造力の強化にもつながると考えられる。今後の進捗を見守りたいと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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