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サムティ Research Memo(5):2019年11月期も増収増益達成。ホテル開発事業を始め、投資計画も順調に進捗

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2019年11月期決算の概要
サムティ<3244>の2019年11月期の業績は、売上高が前期比1.5%増の85,552百万円、営業利益が同9.7%増の15,395百万円、経常利益が同13.4%増の13,193百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同14.7%増の9,740百万円となり、増収増益(7期連続)を達成した。また、2019年5月30日付の増額修正予想に対しても、特殊要因による影響を除けば、おおむね計画どおりの着地となっている。

売上高は、引き続き不動産市況が活況を呈するなかで、「不動産事業」が高い水準を確保。特に、SRR向けを中心に「S-RESIDENCE」シリーズの売却が順調に進んだほか、注力しているホテルなど、自社開発物件の販売が好調であった。また、「不動産賃貸事業」についても高稼働の維持により堅調に推移している。一方、「その他の事業」が大きく拡大したのは、ホテルの新規開業等に伴う収入増によるものである。

とりわけ増収要因として注目すべきは、SRRの規模拡大によるAM報酬(期中)の増加、「エスペリアホテル博多」※の安定稼働、新規ホテル開業によるホテル収入の増加により、各事業の中に含まれている安定収益の合計が12,996百万円(前期比16.7%増)に拡大したところにある。

※2018年3月に開業したホテル開発第1弾の大型ホテル(客室数287室)。2020年度に上場を目指しているホテルリートに組み入れる予定。


また、利益面では、ホテルなど利益率の高い開発物件の売却のほか、ピエリ守山※1の売却に伴う収益性の改善により大幅な営業増益を実現。営業利益率も18.0%(前期は16.7%)に大きく改善した。なお、売上高及び営業利益が増額修正予想を若干下回ったのは、売却予定物件を入れ替えたことに伴う会計上の理由によるものである。すなわち、販売時期のずれ込みにより、売却する物件の一部を「販売用不動産」から固定資産に切り替えたことから、売却益のみが特別利益に計上※2されたことが影響した。

※1 2014年12月にリニューアルオープンした琵琶湖湖畔の大型商業施設。今後の注力分野であるホテル開発事業への投資を優先する経営判断により、2018年11月に売却(資金回収)した。
※2 通常の「販売用不動産」(流動資産)からの売却と違って、固定資産から売却する場合は、売却益のみが特別利益に計上されるため、売上高や各段階利益(経常利益まで)には反映されないことに注意する必要がある(最終損益には影響なし)。


したがって、特別利益が大きく増加しているのは、前述のとおり、固定資産からの物件売却(益)によるものである。一方、特別損失も大きく増加しているが、こちらは、過年度消費税の追加徴収※の可能性を保守的に見積もったものである。

※税務調査において、販売目的で取得した居住用建物の仕入れにかかる消費税額の税務処理方法について指摘を受け、同社と国税局との間に見解の相違があるものの、過年度消費税等の追加で徴収される可能性を考慮し、会計上保守的に計上したものである。


一方、今後の成長につながる仕入れの状況については、開発用地38物件(想定売上高601億円、取得価額273億円/達成率109.2%)、収益不動産54物件(取得価額588億円/達成率147.0%)を取得しており、大きな成果を残した。

財政状態は、前述のとおり、物件売却や借入により調達した資金などを有効に活用し、開発用地や収益不動産を積極的に取得したことから、「販売用不動産」及び「仕掛販売用不動産」「有形固定資産」がそれぞれ増加し、総資産は前期末比34.6%増の218,803百万円に大きく拡大した。一方、自己資本についても内部留保の積み増しや自己株式の処分※1により前期末比15.4%増の71,027百万円に増加しており、自己資本比率は30%以上の水準を確保している。また、有利子負債も前期末比58.0%増の140,927百万円に増加したが、長期借入金の比率が約80%を占め、ネットD/Eレシオ※2も1.35倍の水準に収まっていることから、資産拡大を図りながらもバランスの良い財務比率を維持していると言える。

※1 大和証券グループとの資本業務提携に伴うもの。
※2 (有利子負債−現預金)÷自己資本。


各事業の業績は以下のとおりである。

(1) 不動産事業
売上高は前期比0.4%減の74,806百万円、セグメント利益は同11.1%増の17,272百万円と売上高はほぼ横ばいながら増益を確保した。売上高は、1)開発流動化が「S-RESIDNCE」シリーズ12棟(前期は17棟)や自社開発ホテル2棟※の売却などにより、高い水準を確保。特に、外資系ファンドからの強い投資需要等を背景とした販売価格の高止まりや大型ホテルの売却が寄与したと言える。また、2)再生流動化は38棟(前期は25棟)の販売により大きく伸長。一方、3)投資分譲が減収となっているのは、販売戸数が119戸(前期は383戸)に減少したことが理由であるが想定内。開発物件については、1棟での購入ニーズが高く販売効率や採算性が高い開発流動化の物件として売却していることが背景にある。4)アセットマネジメントは、SRRの運用残高の拡大に伴って安定収入である運営及び管理手数料は順調に底上げされているものの、一時的な取得手数料が前期比で減少したことから減収となっている。利益面では、ホテルなど利益率の高い開発物件の売却により大幅な増益を実現し、セグメント利益率も23.1%(前期は20.7%)と大きく改善している。

※「エスペリアイン大阪本町」「メルキュール京都ステーション」(土地のみ)。


(2) 不動産賃貸事業
売上高は前期比1.6%減の6,698百万円、セグメント利益は同29.1%増の2,462百万円と減収ながら大幅な増益を実現した。保有不動産は高稼働を維持しているものの、保有物件の売却を積極的に進めたことから、一時的に賃料収入が減少した。一方で、収益不動産の取得にも積極的に取り組み、期末の保有物件数78棟(固定資産)を確保している。利益面では、ピエリ守山の売却などにより収益性が改善し、大幅な増益を実現した。

(3) その他の事業
売上高は前期比78.0%増の4,434百万円、セグメント利益は同9.6%減の75百万円と大幅な増収ながら減益となった。「エスペリアホテル博多」などの巡航稼働に加え、「エスペリアイン日本橋箱崎」及び「エスペリアイン大阪本町」「エスペリアホテル京都」のオープンなどにより、ホテル事業が大きく拡大している。一方、利益面では、新規開業ホテルが巡航稼働していないことから、減益となっている。

2. 開発計画(パイプライン)の状況
「S-RESIDENCE」シリーズ及び投資分譲の開発状況は、2020年竣工分が28棟(1,815戸)、2021年竣工分が42棟(2,733戸)、2022年竣工分が9棟(719戸)、合計79棟(5,267戸)となっており、前期末(合計45棟2,957戸)と比較しても、今後の事業拡大に向けて順調に積み上がっていると言える。一方、もう1つの軸として注力するホテル・オフィス開発についても、2020年度開業分が4棟、2021年開業分が3棟、2022年度開業分が3棟となっている(詳細は後述)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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