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オンコリス Research Memo(9):2020年12月期第3四半期累計業績は減収

注目トピックス 日本株
■業績動向と財務状況

1. 2020年12月期第3四半期累計業績の概要
オンコリスバイオファーマ<4588>の2020年12月期第3四半期累計業績は、売上高で前年同期比67.5%減の207百万円、営業損失で1,167百万円(前年同期は586百万円の損失)、経常損失で1,185百万円(同587百万円の損失)、四半期純損失で1,545百万円(同590百万円の損失)となった。

売上高については、トランスポゾン社との「OBP-601」の新規ライセンス契約締結に伴う契約一時金収入や岡山大学からの次世代テロメライシン「OBP-702」に関する業務請負収入等が新たに発生した。販管費の主な増減要因で見ると、新規パイプラインの開発進展により、研究開発費が前年同期比237百万円増加した。

事業セグメント別の収益動向を見ると、医薬品事業はトランスポゾン社からの契約一時金収入、台湾のメディジェンからのテロメライシンに関する開発協力金収入※、岡山大学からの業務請負収入等が発生し、売上高で207百万円(前年同期比428百万円減)、営業損失で496百万円(前年同期は74百万円の利益)となった。

※テロメライシンに関する開発費用の負担軽減を目的にメディジェンとの共同開発契約の改定を2017年3月に実施。従来、対象を肝細胞がんのみとしていたのに対して、新たに食道がんとメラノーマの共同開発権も付与した。以降、食道がん、メラノーマの研究開発費用の一部をメディジェンから開発協力金として受領している。


一方、検査事業は売上高で0.4百万円(前年同期比4百万円減)、営業損失で34百万円(前年同期は147百万円の損失)となった。

また、特別損失として2020年9月に米Unleash Immuno Oncolytics,Inc.(以下、アンリーシュ社)から引き受けた転換社債321百万円を全額、投資有価証券評価損として計上するほか、転換社債に係る未収利息分35百万円を貸倒損失として計上している。

アンリーシュは、転移がんに適応できる全身投与可能(点滴注射)な遺伝子改変型アデノウイルスの開発を行うベンチャー企業で、同社は次世代テロメライシンの開発強化を目的に2018年2月に資本提携を行った※。ただ、遺伝子改変型ウイルスの開発に時間を要しているほか、資金調達を含めた事業計画も遅延している状況にあり、今回、保守的な会計方針に則り損失計上することとした。ただ、アンリーシュの技術力そのものは同社でも高く評価しており、引き続き提携関係を継続していく。このため米国の子会社、OPA Therapeutics Inc.の社長をアンリーシュへ派遣して、資金調達の実行による経営の安定化と遺伝子改変型ウイルスの完成に取り組んでいく方針となっている。

※同社が現在、進めている第3世代テロメライシンの開発と方向性が合致することから資本提携に至った。同社はアンリーシュの転換社債3百万米ドルを引受けており、すべて転換した場合の議決権比率は約27%となる見込み。


2. 2020年12月期の業績見通し
2020年12月期の業績見通しについては、業績に与える未確定な要素が多く、適正かつ合理的な数値算出が困難なため非開示としている。今後もテロメライシンの開発協力金や次世代テロメライシンの業務請負収入、テロメスキャンの販売収入などの売上が期待されるものの、金額的には軽微となる見通しだ。また、新型コロナウイルスの影響で国内、米国とも臨床試験の進捗が全般的に遅れ気味となっていることから、計画を下回る可能性もある。


次世代テロメライシンなどその他パイプラインの開発を進め、更なる企業価値向上を目指す
3. 中長期の成長イメージ
同社はテロメライシンを中外製薬に導出したが、更なる価値向上を図るため、米国で複数の医師主導治験を進めており、中外製薬によるオプション権行使につなげていきたい考えだ。中外製薬では当面、国内での食道がん(放射線併用療法)を対象とした上市を最優先に取り組んでいくものと思われるが、本来の目的は自社の免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブとの併用療法による開発を進め、アテゾリズマブの市場価値を高めていくことにあると思われる。このため現在、日米で進められているペムプロリズマブとの併用療法による医師主導治験の結果が良好であれば、米国でもオプション権を行使してグループ会社であるジェネンテックにより、同一対象疾患の企業治験をアテゾリズマブで進めていく可能性が高いと弊社では見ている。これらの開発が進めばマイルストーン収入等の収益獲得も今後見込めることになる。また、最も開発が先行している国内の食道がんを対象とした放射線療法との併用による治験が順調に進めば、先駆け審査指定制度に指定されているため2023年に販売承認・上市が見込めることになる。

当面の業績については研究開発費が先行し、損失が続く可能性が高いものの、2023年以降はテロメライシンの上市が期待されるほか、「OBP-702」・「OBP-601」・「OBP-2001」などその他のパイプラインについてもライセンス契約やマイルストーン収入が得られる可能性がある。また、テロメスキャンについてもAI技術によるCTC自動検出ソフトウェアによる検査系の確立により、2021年以降事業が拡大していくことが見込まれる。これらプロジェクトが順調に進展すれば、2023年以降、業績は収益化ステージに入るものと予想される。

長期的には、第3世代テロメライシン等の開発や医療現場でのニーズが高い難病、希少疾病を対象とした新たな治療薬候補品の導入などにも注力していく方針となっており、収益ポートフォリオを拡充しながら企業価値の更なる向上を目指す戦略となっている。


財務戦略上、資金調達は適時検討していく方針
4. 財務状況
2020年12月期第3四半期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比1,418百万円減少の2,962百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では売上高の減少に伴い現金及び預金が1,237百万円減少したほか、投資その他の資産において特別損失発生に伴い投資有価証券が328百万円減少した。

負債合計は前期末比293百万円減少の632百万円となった。有利子負債が16百万円増加した一方で、未払金が196百万円減少した。また、純資産は1,124百万円減少の2,329百万円となった。四半期純損失1,545百万円を計上したことが主因となっている。

手元の現金及び預金は2,095百万円と、今後2年程度の事業活動資金を賄えるだけの財務余力があると見られるが、まだ開発ステージであることに変わりなく、財務戦略上、資金調達は適時検討していく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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