CAICA Research Memo(6):2020年10月期はコロナ禍の影響やクシムの連結除外により減収及び営業損失
[21/01/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算概要
1. 2020年10月期決算の概要
CAICA<2315>の2020年10月期の連結業績は、売上高が前期比21.0%減の6,003百万円、営業損失が679百万円(前期は615百万円の損失)、経常損失が903百万円(同1,111百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が557百万円(同1,753百万円の損失)と減収及び営業損失を計上した。また、コロナ禍の影響やクシムの連結除外等により業績修正を行っており、直近の修正予想(10月9日公表)に対しては上回って着地した。
「情報サービス事業」においては、2019年9月に売却したネクス・ソリューションズの連結除外が大幅な減収要因となったものの、利益は増加している。コロナ禍の下、クシム株式の売却(連結除外)に踏み切ったことや、新規受注が先送りされるも、金融機関向けのシステム開発分野は、保険及び銀行向けで堅調に推移した。非金融向けのシステム開発分野においても、コロナ禍においても顧客の事業拡大意欲は引き続き旺盛であり、IT投資も継続されていることから、新規案件を複数獲得し、受注が拡大した。また、リモートワークの広がりを受け、「セキュリティコンサルティング・サービス」の引き合いが増加している。「セキュリティコンサルティング・サービス」は、世界大手のシステムインテグレーターのコアパートナーとして積み上げたインフラ関連全般(設計・導入・運用・保守等)の基盤インフラ業務の実績に加え、暗号資産交換所におけるサイバーセキュリティの知見が評価されており、当該サービスをコアソリューションと位置付け、今後マーケティングを強化することで売上の拡大を図る。
「金融商品取引事業」においては、コロナ禍の株式市場急変に伴い、想定を超える商品価格の変動によりトレーディング収益が悪化したこと(株式市場の一時的な混乱によるもの)が下振れの原因となった。一方、「暗号資産関連事業」については、注力する自社開発製品のパッケージ販売は受注獲得に至らなかったものの、第4四半期において暗号資産交換所「Zaif Exchange」向けのカスタマイズ案件や業務支援案件などが寄与し、売上高は大きく改善した。また、「HRテクノロジー事業」については、クシム株式の売却により2020年4月までの6ヶ月分の反映となっているが前期比では向上した。
利益面でも、各事業で販管費の削減を図ったものの、ネクス・ソリューションズの連結除外による影響のほか、「金融商品取引事業」におけるトレーディング収益の上期落ち込みや「暗号資産関連事業」におけるシステム投資増などにより、前期に引き続き営業損失を計上する結果となった。ただ、後半にかけて損益改善の兆しが見られる点は明るい材料と言える。一方、営業外損益に目を向けると、持分法投資損失は143百万円(前期は391百万円の損失)と損失幅は縮小した。また、特別損益では、クシムの株式売却益488百万円を特別利益に計上している。
財政状態については、クシムの連結除外に伴う影響(のれんの消滅を含む)が固定資産の減少要因となったものの、クシム株式の売却やライツ・オファリングにより「現金及び預金」が大幅に増加したことから、総資産は前期末比7.6%増の11,297百万円に拡大した。一方、自己資本についても、ライツ・オファリングにより前期末比70.0%増の9,237百万円に大きく拡大したことから、自己資本比率は81.8%(前期末は51.8%)と大幅に改善している。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) 情報サービス事業
売上高は前期比33.2%減の4,852百万円、セグメント利益は177百万円となった。ネクス・ソリューションズの連結除外が減収に大きく影響したものの、利益は増加している。創業来の主力である金融機関(銀行、証券、保険等)向けは、継続案件が堅調に推移したものの、コロナ禍によるIT投資の見送り等により新規案件の受注が減少した。一方、非金融(大手ECサイト運営企業等)向けのシステム開発については、コロナ禍においても旺盛な事業拡大意欲を背景としたIT投資の継続により、新規案件を中心に受注が拡大した。また、リモートワークの広がりを受け、新たに開始した「セキュリティコンサルティング・サービス」についてもWebマーケティング等により着々と立ち上がっており、引き合いも増加しているようだ。なお、セグメント損益(営業損益)は持株会社体制への移行により全社費用の配分方法を変更したことから対前連結会計年度比の記載はない。
(2) 暗号資産関連事業
売上高は310百万円(前期は12百万円)、セグメント損失は125百万円(前期は310百万円の損失)となった。暗号資産交換所向け自社開発製品「crypto base C」のパッケージ販売については、コロナ禍による投資見合わせの影響もあり、受注獲得には至らなかった。ただ、第4四半期において暗号資産交換所「Zaif Exchange」向けのカスタマイズ案件や業務支援案件を多数受注したことから、売上高は大きく改善した。なお、自社グループ内の暗号資産交換所「Zaif Exchange」については、過去の資金流出事案に伴う業務改善命令に従って体制強化を図ってきたが、いよいよ業容拡大(新規口座の開設や新メニューの拡充等)に向けて本格的に動き出しており、今後の業績回復や投資拡大が期待できる状況となってきた。一方、利益面では投融資運用における上期評価損※の影響により、セグメント損失となった(下期は黒字転換)。
※市場流動性の低い保有暗号資産の評価損を計上した。
(3) 金融商品取引事業
売上高は前期比66.0%減の155百万円、セグメント損失は426百万円(前期は266百万円)となった。2019年9月に開始したeワラント証券自身による直接販売「eワラント・ダイレクト」については口座数が着実に増加したほか、新商品の取り扱いも開始した。なお、業績が大きく落ち込んだのは、コロナ禍の影響により株式市場が急変したことに伴い、第2四半期のトレーディング収益が落ち込んだことが理由である。その後、リスク管理体制の見直し等によりトレーディング収益は安定したものの、第2四半期までの落ち込みを補うまでには至らなかった。一方、2020年4月にはCFDサービスの提供を開始し、順調に立ち上がっている。今後は、株価指数を原資産とした証券CFDに加えて、暗号資産を原資産とする暗号資産CFDの開発・販売にも取り組む方針である。
(4) HRテクノロジー事業
売上高は881百万円、セグメント損失は18百万円となった。なお、2020年4月及び6月にクシム株式の売却を行ったことに伴いクシムは連結除外となったことから、当セグメントは第2四半期までの取り込みとなっている。
2. 2020年10月期の総括
以上から、2020年10月期を総括すると、コロナ禍の影響により業績面では厳しい状況となったことや、注力する自社開発製品の成約が先送りされたことは今後の課題として残ったものの、好調なEC業界業向けを中心に1次請けが増えてきたことや、今後の金融サービスの目玉となるCFDサービスを開始した点は今後に向けて明るい材料となった。そして、暗号資産やブロックチェーン関連における市場拡大が予想されるなかで、ライツ・オファリングにより大型の資金調達を実現したことは、今後の成長加速に向けて大きなアドバンテージになるものと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 2020年10月期決算の概要
CAICA<2315>の2020年10月期の連結業績は、売上高が前期比21.0%減の6,003百万円、営業損失が679百万円(前期は615百万円の損失)、経常損失が903百万円(同1,111百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が557百万円(同1,753百万円の損失)と減収及び営業損失を計上した。また、コロナ禍の影響やクシムの連結除外等により業績修正を行っており、直近の修正予想(10月9日公表)に対しては上回って着地した。
「情報サービス事業」においては、2019年9月に売却したネクス・ソリューションズの連結除外が大幅な減収要因となったものの、利益は増加している。コロナ禍の下、クシム株式の売却(連結除外)に踏み切ったことや、新規受注が先送りされるも、金融機関向けのシステム開発分野は、保険及び銀行向けで堅調に推移した。非金融向けのシステム開発分野においても、コロナ禍においても顧客の事業拡大意欲は引き続き旺盛であり、IT投資も継続されていることから、新規案件を複数獲得し、受注が拡大した。また、リモートワークの広がりを受け、「セキュリティコンサルティング・サービス」の引き合いが増加している。「セキュリティコンサルティング・サービス」は、世界大手のシステムインテグレーターのコアパートナーとして積み上げたインフラ関連全般(設計・導入・運用・保守等)の基盤インフラ業務の実績に加え、暗号資産交換所におけるサイバーセキュリティの知見が評価されており、当該サービスをコアソリューションと位置付け、今後マーケティングを強化することで売上の拡大を図る。
「金融商品取引事業」においては、コロナ禍の株式市場急変に伴い、想定を超える商品価格の変動によりトレーディング収益が悪化したこと(株式市場の一時的な混乱によるもの)が下振れの原因となった。一方、「暗号資産関連事業」については、注力する自社開発製品のパッケージ販売は受注獲得に至らなかったものの、第4四半期において暗号資産交換所「Zaif Exchange」向けのカスタマイズ案件や業務支援案件などが寄与し、売上高は大きく改善した。また、「HRテクノロジー事業」については、クシム株式の売却により2020年4月までの6ヶ月分の反映となっているが前期比では向上した。
利益面でも、各事業で販管費の削減を図ったものの、ネクス・ソリューションズの連結除外による影響のほか、「金融商品取引事業」におけるトレーディング収益の上期落ち込みや「暗号資産関連事業」におけるシステム投資増などにより、前期に引き続き営業損失を計上する結果となった。ただ、後半にかけて損益改善の兆しが見られる点は明るい材料と言える。一方、営業外損益に目を向けると、持分法投資損失は143百万円(前期は391百万円の損失)と損失幅は縮小した。また、特別損益では、クシムの株式売却益488百万円を特別利益に計上している。
財政状態については、クシムの連結除外に伴う影響(のれんの消滅を含む)が固定資産の減少要因となったものの、クシム株式の売却やライツ・オファリングにより「現金及び預金」が大幅に増加したことから、総資産は前期末比7.6%増の11,297百万円に拡大した。一方、自己資本についても、ライツ・オファリングにより前期末比70.0%増の9,237百万円に大きく拡大したことから、自己資本比率は81.8%(前期末は51.8%)と大幅に改善している。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) 情報サービス事業
売上高は前期比33.2%減の4,852百万円、セグメント利益は177百万円となった。ネクス・ソリューションズの連結除外が減収に大きく影響したものの、利益は増加している。創業来の主力である金融機関(銀行、証券、保険等)向けは、継続案件が堅調に推移したものの、コロナ禍によるIT投資の見送り等により新規案件の受注が減少した。一方、非金融(大手ECサイト運営企業等)向けのシステム開発については、コロナ禍においても旺盛な事業拡大意欲を背景としたIT投資の継続により、新規案件を中心に受注が拡大した。また、リモートワークの広がりを受け、新たに開始した「セキュリティコンサルティング・サービス」についてもWebマーケティング等により着々と立ち上がっており、引き合いも増加しているようだ。なお、セグメント損益(営業損益)は持株会社体制への移行により全社費用の配分方法を変更したことから対前連結会計年度比の記載はない。
(2) 暗号資産関連事業
売上高は310百万円(前期は12百万円)、セグメント損失は125百万円(前期は310百万円の損失)となった。暗号資産交換所向け自社開発製品「crypto base C」のパッケージ販売については、コロナ禍による投資見合わせの影響もあり、受注獲得には至らなかった。ただ、第4四半期において暗号資産交換所「Zaif Exchange」向けのカスタマイズ案件や業務支援案件を多数受注したことから、売上高は大きく改善した。なお、自社グループ内の暗号資産交換所「Zaif Exchange」については、過去の資金流出事案に伴う業務改善命令に従って体制強化を図ってきたが、いよいよ業容拡大(新規口座の開設や新メニューの拡充等)に向けて本格的に動き出しており、今後の業績回復や投資拡大が期待できる状況となってきた。一方、利益面では投融資運用における上期評価損※の影響により、セグメント損失となった(下期は黒字転換)。
※市場流動性の低い保有暗号資産の評価損を計上した。
(3) 金融商品取引事業
売上高は前期比66.0%減の155百万円、セグメント損失は426百万円(前期は266百万円)となった。2019年9月に開始したeワラント証券自身による直接販売「eワラント・ダイレクト」については口座数が着実に増加したほか、新商品の取り扱いも開始した。なお、業績が大きく落ち込んだのは、コロナ禍の影響により株式市場が急変したことに伴い、第2四半期のトレーディング収益が落ち込んだことが理由である。その後、リスク管理体制の見直し等によりトレーディング収益は安定したものの、第2四半期までの落ち込みを補うまでには至らなかった。一方、2020年4月にはCFDサービスの提供を開始し、順調に立ち上がっている。今後は、株価指数を原資産とした証券CFDに加えて、暗号資産を原資産とする暗号資産CFDの開発・販売にも取り組む方針である。
(4) HRテクノロジー事業
売上高は881百万円、セグメント損失は18百万円となった。なお、2020年4月及び6月にクシム株式の売却を行ったことに伴いクシムは連結除外となったことから、当セグメントは第2四半期までの取り込みとなっている。
2. 2020年10月期の総括
以上から、2020年10月期を総括すると、コロナ禍の影響により業績面では厳しい状況となったことや、注力する自社開発製品の成約が先送りされたことは今後の課題として残ったものの、好調なEC業界業向けを中心に1次請けが増えてきたことや、今後の金融サービスの目玉となるCFDサービスを開始した点は今後に向けて明るい材料となった。そして、暗号資産やブロックチェーン関連における市場拡大が予想されるなかで、ライツ・オファリングにより大型の資金調達を実現したことは、今後の成長加速に向けて大きなアドバンテージになるものと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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