神戸物産 Research Memo(8):業務スーパー事業の躍進により中期経営計画の業績数値目標を上方修正
[21/01/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
2.中期経営計画
神戸物産<3038>は2022年10月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を2019年12月に発表したが、その後、業務スーパー事業の成長が加速し、営業利益に関しては初年度で最終年度の目標値を超過したことから、業績数値目標の上方修正を行った。具体的には、2022年10月期の売上高は従前の3,467億円から3,580億円に、営業利益は同様に230億円から260億円に引き上げた。2021年10月期の業績計画からは売上高で5.0%増、営業利益で4.8%増となる。ROEの水準については、毎期20%以上と従来の目標値を維持している。
業務スーパー事業で成長を続けていくためには、店舗数の拡大が必要となるが、出店余地についてはまだ十分あると見ている。地域別の人口構成比と業務スーパー店舗数の構成比を比較した場合、地盤となる関西圏は人口構成比で16.3%となっているのに対して、店舗数は27.9%と高い。一方、ここ数年で出店を強化してきた関東圏については人口構成比で29.1%、店舗数で27.5%とほぼ拮抗してきたが、店舗数そのものは関西地域とほぼ変わらないことを考えれば、なお出店余地があると見られる。また、地方でも前述した九州のほか北海道については人口構成比と比較して、店舗数がまだ少なく出店余地が大きいエリアと言える。
関西エリアについては人口83千人当たりに1店舗を出店している計算となり、仮に他のエリアでも同様の比率で店舗展開できたとするならば、1,500店舗までは出店できる計算となる。商圏の違いや出店条件に適う不動産物件の有無などによって、実際の上限値は変わってくるが、関西エリアでもまだ店舗数が増加し続けていることから考えると、出店拡大による成長は続くものと予想される。同社では国内1千店舗体制を当面の目標に掲げており、早ければ2025年10月期にも達成したいとしている。
また、出店拡大にあたっては既存店の収益力向上も重要となる。既存店の収益拡大によって、FCオーナーの投資意欲も活発化するためだ。同社では、魅力的なPB商品を多く開発し、業務スーパー各店舗で販売していくことに加え、店舗では販売効率の高い売り場構築やキャッシュレス決済の導入を進めていくことで、既存店向け出荷額の着実な成長を目指していく方針となっている。
なお、中期経営計画における基本方針として同社は以下の5点を掲げている。
(1) PB商品を強化し、基幹事業である業務スーパー事業の拡大を目指す。
(2) 少子高齢化や女性の社会進出等に対応すべく、中食事業の拡大を目指す。
(3) 「食の製販一体体制」を強化し、食のニーズに対応した外食事業の拡大を目指す。
(4) 「食」を通じた社会貢献活動及び環境問題に配慮した事業を推進する。
(5) 優秀な人財の確保と人財育成に注力するとともに、従業員の満足度向上により企業の生産性を向上する。
また、重点課題と施策について、以下の10点に取り組むことで計画の達成を目指していく方針だ。
(1) 業務スーパーの店舗数を早期に900店舗達成を目指す。(1年前倒しで達成する見通し)
(2) 業務スーパーの既存店向け商品出荷額について、毎期2%増以上の成長を目指す。(2021年10月期は前期好調の反動で微増にとどまる見通し)
(3) 「食の製販一体体制」を強化するため、積極的なM&Aを推進する。
(4) 食品製造において、自動化による生産効率向上と、より魅力的なPB商品の開発を推進する。
(5) 品質管理体制をより充実させ、食の安全安心の取り組みを強化する。
(6) 「食の製販一体体制」を活かした商品力や、オペレーションの更なる効率化により、他社と差別化された中食・外食事業を拡大する。
(7) オリンピックなどによる訪日外国人の食の問題を解決すべく、ハラール商品等の充実を図る。
(8) 「世界の本物を直輸入」にこだわった輸入商品の商品開発を強化する。
(9) 人財採用において、積極的な情報開示により、同社の経営理念に共感する人財の確保に努める。
(10) 従業員教育を強化し、企業と従業員がともに成長できる体制を整備する。
重点課題のなかで、品質管理体制については特に重要だと弊社では考えている。2020年も商品回収が発生しており、理由は製造ラインでの異物混入や、基準値を超える農薬の使用が確認されるなどといったケースが多い。輸入商品を多く扱っていることも一因と考えられる。現段階では大事には至っていないが、「食の安全・安心」という大前提が崩れれば消費者が離れ、成長にブレーキがかかることにもつながりかねないだけに、より一層の品質管理の体制強化が望まれる。
3. CSRの取り組みについて
同社はCSR(Corporate social responsibility:企業の社会的責任)の取り組みについても継続的に実施している。フードロス対策として、2018年より賞味期限内にも拘わらず一般市場に流通できない食品について、フードバンク※1への寄贈を開始し、児童養護施設などの福祉施設へ食品を届けている。また、地域社会への貢献として、兵庫県下の子ども食堂に、毎月の開催に必要な食材の提供、スタッフの派遣などによる活動支援を開始した。加えて、子ども元気ネットワークひょうご※2を通じて、兵庫県下の母子世帯に毎月、正規食品を無償で寄贈する活動も2018年より開始している。新たな取り組みとして、コロナの感染対策として消毒用アルコールの学校等への寄贈を実施したほか、「NPO法人全国子ども食堂支援センター・むすびえ」がサポートする全国の子ども食堂向けに、ネスレ日本(株)、エフピコ<7947>、はごろもフーズ<2831>らと共に、食品や弁当容器、子ども用マスクの寄贈を実施している。さらに、2020年7月から環境保護活動の一環として、レジ袋の有料化に合わせて業務スーパーでエコバッグを100円前後のリーズナブルな価格で販売開始している。
※1 賞味期限内であるにもかかわらず、過剰在庫や印字不良などが原因で一般市場に流通できない食品などを、支援を必要とする人たちを支える福祉施設や団体に、無償で分配を行う社会貢献活動のこと。
※2 フードバンク関西など民間の3つのNPO法人が連携して、貧困に苦しむ母子世帯を応援しようと、2015年に立ち上げた事業で要支援対象世帯に月1回、食品や生活物資、必要な情報を提供している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2.中期経営計画
神戸物産<3038>は2022年10月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を2019年12月に発表したが、その後、業務スーパー事業の成長が加速し、営業利益に関しては初年度で最終年度の目標値を超過したことから、業績数値目標の上方修正を行った。具体的には、2022年10月期の売上高は従前の3,467億円から3,580億円に、営業利益は同様に230億円から260億円に引き上げた。2021年10月期の業績計画からは売上高で5.0%増、営業利益で4.8%増となる。ROEの水準については、毎期20%以上と従来の目標値を維持している。
業務スーパー事業で成長を続けていくためには、店舗数の拡大が必要となるが、出店余地についてはまだ十分あると見ている。地域別の人口構成比と業務スーパー店舗数の構成比を比較した場合、地盤となる関西圏は人口構成比で16.3%となっているのに対して、店舗数は27.9%と高い。一方、ここ数年で出店を強化してきた関東圏については人口構成比で29.1%、店舗数で27.5%とほぼ拮抗してきたが、店舗数そのものは関西地域とほぼ変わらないことを考えれば、なお出店余地があると見られる。また、地方でも前述した九州のほか北海道については人口構成比と比較して、店舗数がまだ少なく出店余地が大きいエリアと言える。
関西エリアについては人口83千人当たりに1店舗を出店している計算となり、仮に他のエリアでも同様の比率で店舗展開できたとするならば、1,500店舗までは出店できる計算となる。商圏の違いや出店条件に適う不動産物件の有無などによって、実際の上限値は変わってくるが、関西エリアでもまだ店舗数が増加し続けていることから考えると、出店拡大による成長は続くものと予想される。同社では国内1千店舗体制を当面の目標に掲げており、早ければ2025年10月期にも達成したいとしている。
また、出店拡大にあたっては既存店の収益力向上も重要となる。既存店の収益拡大によって、FCオーナーの投資意欲も活発化するためだ。同社では、魅力的なPB商品を多く開発し、業務スーパー各店舗で販売していくことに加え、店舗では販売効率の高い売り場構築やキャッシュレス決済の導入を進めていくことで、既存店向け出荷額の着実な成長を目指していく方針となっている。
なお、中期経営計画における基本方針として同社は以下の5点を掲げている。
(1) PB商品を強化し、基幹事業である業務スーパー事業の拡大を目指す。
(2) 少子高齢化や女性の社会進出等に対応すべく、中食事業の拡大を目指す。
(3) 「食の製販一体体制」を強化し、食のニーズに対応した外食事業の拡大を目指す。
(4) 「食」を通じた社会貢献活動及び環境問題に配慮した事業を推進する。
(5) 優秀な人財の確保と人財育成に注力するとともに、従業員の満足度向上により企業の生産性を向上する。
また、重点課題と施策について、以下の10点に取り組むことで計画の達成を目指していく方針だ。
(1) 業務スーパーの店舗数を早期に900店舗達成を目指す。(1年前倒しで達成する見通し)
(2) 業務スーパーの既存店向け商品出荷額について、毎期2%増以上の成長を目指す。(2021年10月期は前期好調の反動で微増にとどまる見通し)
(3) 「食の製販一体体制」を強化するため、積極的なM&Aを推進する。
(4) 食品製造において、自動化による生産効率向上と、より魅力的なPB商品の開発を推進する。
(5) 品質管理体制をより充実させ、食の安全安心の取り組みを強化する。
(6) 「食の製販一体体制」を活かした商品力や、オペレーションの更なる効率化により、他社と差別化された中食・外食事業を拡大する。
(7) オリンピックなどによる訪日外国人の食の問題を解決すべく、ハラール商品等の充実を図る。
(8) 「世界の本物を直輸入」にこだわった輸入商品の商品開発を強化する。
(9) 人財採用において、積極的な情報開示により、同社の経営理念に共感する人財の確保に努める。
(10) 従業員教育を強化し、企業と従業員がともに成長できる体制を整備する。
重点課題のなかで、品質管理体制については特に重要だと弊社では考えている。2020年も商品回収が発生しており、理由は製造ラインでの異物混入や、基準値を超える農薬の使用が確認されるなどといったケースが多い。輸入商品を多く扱っていることも一因と考えられる。現段階では大事には至っていないが、「食の安全・安心」という大前提が崩れれば消費者が離れ、成長にブレーキがかかることにもつながりかねないだけに、より一層の品質管理の体制強化が望まれる。
3. CSRの取り組みについて
同社はCSR(Corporate social responsibility:企業の社会的責任)の取り組みについても継続的に実施している。フードロス対策として、2018年より賞味期限内にも拘わらず一般市場に流通できない食品について、フードバンク※1への寄贈を開始し、児童養護施設などの福祉施設へ食品を届けている。また、地域社会への貢献として、兵庫県下の子ども食堂に、毎月の開催に必要な食材の提供、スタッフの派遣などによる活動支援を開始した。加えて、子ども元気ネットワークひょうご※2を通じて、兵庫県下の母子世帯に毎月、正規食品を無償で寄贈する活動も2018年より開始している。新たな取り組みとして、コロナの感染対策として消毒用アルコールの学校等への寄贈を実施したほか、「NPO法人全国子ども食堂支援センター・むすびえ」がサポートする全国の子ども食堂向けに、ネスレ日本(株)、エフピコ<7947>、はごろもフーズ<2831>らと共に、食品や弁当容器、子ども用マスクの寄贈を実施している。さらに、2020年7月から環境保護活動の一環として、レジ袋の有料化に合わせて業務スーパーでエコバッグを100円前後のリーズナブルな価格で販売開始している。
※1 賞味期限内であるにもかかわらず、過剰在庫や印字不良などが原因で一般市場に流通できない食品などを、支援を必要とする人たちを支える福祉施設や団体に、無償で分配を行う社会貢献活動のこと。
※2 フードバンク関西など民間の3つのNPO法人が連携して、貧困に苦しむ母子世帯を応援しようと、2015年に立ち上げた事業で要支援対象世帯に月1回、食品や生活物資、必要な情報を提供している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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