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Jストリーム Research Memo(7):2021年3月期の業績は計画超過達成。同社のビジョンに世間のニーズが合致

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2021年3月期の業績動向
Jストリーム<4308>の2021年3月期の業績は、売上高12,970百万円(前期比53.6%増)、営業利益2,342百万円(同328.2%増)、経常利益2,350百万円(同318.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,548百万円(同521.4%増)となった。5GやIoTの普及で需要に弾みがついてきたところに、コロナ禍を契機に企業の動画配信へのニーズが急拡大した。時代を予見し、最先端の動画ソリューションを先行して提供してきた同社に、世間のニーズがようやく合致してきたと言える。同社は動画需要の急拡大を受け、業績見通しに対して、売上高で1,070百万円、営業利益で542百万円、経常利益で550百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で348百万円の超過達成となった。

コロナ禍の影響で先行きは不透明であるが、巣ごもり需要などを背景にネット動画視聴の広がり、リアルイベント代替・補填を目的としたオンライン配信の増加、ネット通販市場の拡大、オンデマンド動画配信など、インターネット業界の勢いが増している。また、企業にとっても非接触ニーズや密を避けるためのテレワーク推進、販売促進及び研修・面談・会議などをオンライン化するなど、感染症対策は必須となった。こうした環境下において、同社は主力サービスである「J-Stream Equipmedia」や「ライブ配信サービス」を中心に体制を整備し需要急増に対応した。またイベントの開催に関わる企業との協業・連携を進め共同して市場開拓を図るとともに、顧客企業の多様な利用シーンとニーズに応える高品質なサービス提供を行える体制整備を進めた。

医薬業界は、従来からDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進していた業界であったが、感染症対策の観点からMRによる訪問・販売促進活動が制限されたこともあり、Web講演会のライブ配信が大幅に増加した。それに伴い、関連するWeb制作や映像制作が堅調に推移した。外注先であったアズーリを買収し制作能力を強化した子会社のビッグエムズワイも、e-ディテール向けCRMコンテンツ制作とライブ配信売上が順調に推移した。医薬以外のEVC領域においても、販売促進のためのWebセミナー(以下、ウェビナー)が普及したほか、学習塾を筆頭にあらゆる業界で情報共有や教育への動画利用のニーズが高まり、「J-Stream Equipmedia」の売上が増加した。加えて、バーチャル株主総会に対するニーズが感染症対策のなかで顕在化し、関連する法制度は未整備ながらも、同社のライブ配信売上を押し上げた。2020年4月〜5月の緊急事態宣言下で滞ったWeb制作や映像制作についても、オンライン商談などの仕組みや体制が整った同年夏以降に大きく進展した。OTT領域では、東京オリンピック・パラリンピック延期に伴う需要の低迷が一時見られたが、2020年秋には大口のシステム開発を受注した。サイト運用やWeb制作、配信ネットワークは引き続き堅調に推移した。

利益面では、ライブ配信の急増や2019年9月に連結化したビッグエムズワイの外注費加算により外注費は増加したものの、開発費用負担が相対的に少なく利益率の高い「J-Stream Equipmedia」の販売増や、専門性や付加価値の高い医薬系企業によるライブ配信・制作受注の拡大、アズーリ買収に伴う外注比率の低減などにより、売上総利益率は大きく改善した。販管費に関しては、グループ企業の増加に伴う人件費増、社内システム開発のための業務委託手数料、業容拡大のための求人費、働き方改革に向けたDX関連投資などにより増加したが、売上比では大きく改善した。

なお2021年3月期業績が計画超過となった要因は、医薬系ライブ配信や「J-Stream Equipmedia」といった好採算の主力商品が想定以上に伸びたことにある。また事前収録による疑似ライブの映像制作も伸びたが、収録後リモートで映像制作するなど比較的簡便に進行できたことで原価率が改善した。

近年低迷気味であった子会社クロスコは、ライブ現場のサポートが増えたことで業況が改善し、グループ内製化率上昇により売上総利益率改善に貢献した。なお、子会社イノコスは、コロナ禍で商流が停滞したうえ輸入物が多いため物流も滞り、グループのなかで唯一厳しい状況となった。


医薬系企業によるライブ配信が好調
2. 業種別・利用用途別の売上動向
業種別(個別)などの売上動向は次のとおりである。ライブ配信などDXを強化する傾向にあった「医薬医療製造・卸」が、2021年3月期第4四半期後半にピーク期の第2四半期に近いペースになるなど需要が旺盛で、売上高は2.2倍となった。「放送」は8.5%増収と相対的に弱かったが、安定した推移に第2四半期のシステム開発案件が加わった。「金融系・保険業」は2020年6月を中心に株主総会のライブ配信が増加し、オンラインセミナーの受注も安定して推移し28.9%増収だった。「広告、情報サービス」には医薬ビジネスや一部エンタメ系の案件などが含まれており、44.6%増収と好調だった。「郵便・電気通信」は第4四半期の地域IX※での実証実験や大手顧客のサイトリニューアルなどが貢献し56.8%増収となった。「教育・学習塾」は学習塾で期初からオンデマンド配信利用が継続、27.1%増収となった。

※IX(Internet Exchange):ISP事業者やコンテンツ事業者などが相互に接続し、インターネットトラフィックを交換するための接続ポイントのこと。


利用用途別(個別)では、「販促・ブランディング」で7割程度を占める医薬系企業によるWeb講演会が全体を押し上げた。新商品発表・販促向けのライブ配信や疑似ライブ配信、配信会員制サイト集客用の動画配信なども伸長した。「情報共有」ではテレワークの推進を背景に、社内向けのウェビナー、社員総会や表彰式ライブ、部店長会議ライブ、社長講和、社内イベント向け映像制作配信などが好調だった。「事業用インフラ/サポート」では、放送局関連案件(構築から運用、配信まで)、音楽やeスポーツなどの関連システムの構築・配信、不動産や生保などBtoC事業者の顧客・代理店向けサイトの構築が伸びた。「教育・トレーニング」では、学習塾や学校法人による講義の配信、金融・医薬系企業の社内及びパートナー向けトレーニングなどが好調だった。「IR・広報・採用」では、2020年6月を中心にバーチャル株主総会が広がりを見せた。同社の売上種別区分は、ほかに契約期間(3ヶ月以上を長期とする)や同社プラットフォームの利用によって区分けしたものがあるが(いずれも個別)、その区分では、第4四半期において医薬系の短期プラットフォーム(ライブ配信)が伸びたが、医薬系企業の一部顧客が長期プラットフォーム契約に変更するケースも出てきたもようである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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