デリカフHD Research Memo(2):業務用の野菜卸しとカット野菜の業界最大手で、売上高の7割強が外食業界向け
[21/06/25]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 事業内容
デリカフーズホールディングス<3392>は、業務用野菜に関する仕入販売及びカット野菜の製造販売で業界トップ企業となるデリカフーズ(株)を中心に、物流事業を行うエフエスロジスティックス(株)、食品の分析事業並びに研究開発を行う(株)メディカル青果物研究所、コンサルティング事業を行うデザイナーフーズ(株)、デリカフーズ北海道(株)に加えて、2020年12月に新たに設立したミールキット・調味液等の製造販売を行うデリカフーズ長崎(株)の6社をグループとする持株会社となる。デリカフーズは2021年3月時点で北海道から長崎まで11事業所、17拠点で事業を展開しており、エリア協力企業も含めて全国の約3万店舗に日々、新鮮な野菜を安全・安心に供給している。
事業セグメントは、主力事業となる青果物事業(デリカフーズ及びデリカフーズ北海道、デリカフーズ長崎)のほか、物流事業(エフエスロジスティックス)、研究開発・分析事業(デザイナーフーズ、メディカル青果物研究所)の3つの事業セグメントで開示している(持株会社分除く)。2021年3月期の売上構成比で見ると、青果物事業で89.9%、物流事業で8.3%、研究開発・分析事業で0.2%の構成だが、物流事業の大半はグループ内売上であり、外部顧客向け売上ベースで見れば青果物事業で99.1%、物流事業で0.7%、研究開発・分析事業で0.2%の構成となる。
商品別の売上構成比では、仕入れた野菜をそのまま配送するホール野菜が40.4%、顧客の要望に応じて形状を加工して販売するカット野菜(真空加熱野菜※含む)が47.1%、その他が12.6%となっており、カット野菜の売上構成比が初めてホール野菜を上回った。これは人材不足に悩む外食企業において、調理が簡便で時間も短縮できるこれら商品の需要が増加していることが背景にある。なお、その他には日配品(卵、豆腐等)の売上のほか、物流、分析・コンサルティングサービスの売上が含まれている。
※野菜のおいしさと鮮度を重視した加熱調理済みの野菜で、「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ第4の調理方法として注目されている。食材と調味液をフィルム袋に入れて真空密封しており、湯煎や電子レンジなどで再加熱するだけで提供できるため、調理時間を短縮することができる。カット野菜よりもさらに付加価値を高めた製品となる。
2021年3月期における業態別売上構成比は、コロナ禍の影響によって大きく変化した。従来は外食業界向けが全体の8割以上を占めていたのに対して、当期は73.8%と大きく低下している。同社ではファストフードやデリバリー業態など、コロナ禍に強い外食企業への営業に注力し、これら企業の売上構成比は前期の4.9%から9.1%に上昇したものの、居酒屋業態やファミリーレストラン業態等の落ち込みをカバーするまでには至らなかった。外食業界向けの落ち込みをカバーするため、外食市場以外の顧客取り込みに注力した結果、中食向けが前期5.8%から6.8%に、量販・小売店向けが同8.1%から14.0%に、給食向けが同2.7%から3.6%にそれぞれ上昇している。また、新たに開始したBtoC/DtoC事業で1.2%、ミールキット事業で0.3%となっている。
スーパーコールドチェーンの導入と衛生品質管理の国際標準規格取得、BCP対策等に先行して取り組み、業界随一の安全・安心なサービスを提供
2. 同社の強み
同社の強みは、卸売事業者として国内外で開拓してきた多くの契約産地(仕入高の60%超)から安定した仕入れを行うことができる調達力と、高品質で安全・安心に商品を顧客のもとに配送する物流網を全国に構築(委託業者を含む)していることが挙げられる。また、業界初となるスーパーコールドチェーン※1を東京第二FSセンター(2013年7月稼働)以降に開設した事業所(奈良、東京、西東京、中京、埼玉、仙台、九州)で導入しているほか、食品安全マネジメントシステムの国際標準規格となるISO22000や、その上位規格となるFSSC22000※2の認証も各事業拠点で取得、さらには、BCP対策という観点でも、物流センターや貯蔵センター、カット野菜の製造拠点を複数拠点構築するなど、自然災害リスクへの備えも万全を期している。こうした食の安全・安心を確保するうえでの取り組みについては業界で最も先行しており、顧客からの高い評価につながっている。
※1 スーパーコールドチェーン:野菜の入庫から出荷、配送までの全工程を1〜4℃の低温度で管理するシステム。野菜の鮮度が保持できるため、カット野菜の賞味期限を従来比2倍に延長することが可能となった。
※2 「FSSC22000」:「ISO22000」に食品安全対策(フード・テロ対策、原材料やアレルギー物質の管理方法など)や、「食品安全に関連する要員の監視」「サービスに関する仕様」などを追加したものでオランダの食品安全認証財団が認証機関となっている。
2018年6月には食品衛生法等の一部改正により、食品事業者等において衛生品質管理システムの国際基準となるHACCP(ハサップ)※の制度化が決まり、2021年6月から義務化されることが決まっている。同社が取得しているISO22000やFSSC22000は認証要件としてHACCPの規格が含まれていることから、同社にとっては追い風となる可能性がある。既に、外資系企業ではこれら国際標準規格を認証していることが取引を行ううえでの要件となっており、取引額も増加傾向にある。
※HACCP: 食品の安全衛生管理手法のことで、食品の中に潜む危害(生物的、化学的あるいは物理的)要因を科学的に分析し、それが除去(あるいは安全な範囲まで低減)できる工程を常時管理し記録しておく手法。
さらには、生産者と外食・中食企業をつなぐ情報流通機能を持つことも同社の強みとなっている。生産者に対しては、どのような野菜が求められているのか、どれだけの需要量があるのかという情報を提供し、また販売先となる外食・中食企業に対しては野菜の市況やトレンド、高騰した野菜に対する代替メニューの提案などを行っている。特に、ここ数年は天候不順や自然災害に起因する野菜価格の高騰が外食企業にとっても悩みのタネとなっており、同社のメニュー提案力等が高く評価されている。同社は10年以上にわたって、野菜の機能性を研究しており、日本中から取り寄せた野菜に関する栄養価などの分析データベースで国内随一のデータを蓄積している。この分析データに基づいて、健康増進につながるメニュー提案を行っており、同業他社にはない強みとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>
1. 事業内容
デリカフーズホールディングス<3392>は、業務用野菜に関する仕入販売及びカット野菜の製造販売で業界トップ企業となるデリカフーズ(株)を中心に、物流事業を行うエフエスロジスティックス(株)、食品の分析事業並びに研究開発を行う(株)メディカル青果物研究所、コンサルティング事業を行うデザイナーフーズ(株)、デリカフーズ北海道(株)に加えて、2020年12月に新たに設立したミールキット・調味液等の製造販売を行うデリカフーズ長崎(株)の6社をグループとする持株会社となる。デリカフーズは2021年3月時点で北海道から長崎まで11事業所、17拠点で事業を展開しており、エリア協力企業も含めて全国の約3万店舗に日々、新鮮な野菜を安全・安心に供給している。
事業セグメントは、主力事業となる青果物事業(デリカフーズ及びデリカフーズ北海道、デリカフーズ長崎)のほか、物流事業(エフエスロジスティックス)、研究開発・分析事業(デザイナーフーズ、メディカル青果物研究所)の3つの事業セグメントで開示している(持株会社分除く)。2021年3月期の売上構成比で見ると、青果物事業で89.9%、物流事業で8.3%、研究開発・分析事業で0.2%の構成だが、物流事業の大半はグループ内売上であり、外部顧客向け売上ベースで見れば青果物事業で99.1%、物流事業で0.7%、研究開発・分析事業で0.2%の構成となる。
商品別の売上構成比では、仕入れた野菜をそのまま配送するホール野菜が40.4%、顧客の要望に応じて形状を加工して販売するカット野菜(真空加熱野菜※含む)が47.1%、その他が12.6%となっており、カット野菜の売上構成比が初めてホール野菜を上回った。これは人材不足に悩む外食企業において、調理が簡便で時間も短縮できるこれら商品の需要が増加していることが背景にある。なお、その他には日配品(卵、豆腐等)の売上のほか、物流、分析・コンサルティングサービスの売上が含まれている。
※野菜のおいしさと鮮度を重視した加熱調理済みの野菜で、「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ第4の調理方法として注目されている。食材と調味液をフィルム袋に入れて真空密封しており、湯煎や電子レンジなどで再加熱するだけで提供できるため、調理時間を短縮することができる。カット野菜よりもさらに付加価値を高めた製品となる。
2021年3月期における業態別売上構成比は、コロナ禍の影響によって大きく変化した。従来は外食業界向けが全体の8割以上を占めていたのに対して、当期は73.8%と大きく低下している。同社ではファストフードやデリバリー業態など、コロナ禍に強い外食企業への営業に注力し、これら企業の売上構成比は前期の4.9%から9.1%に上昇したものの、居酒屋業態やファミリーレストラン業態等の落ち込みをカバーするまでには至らなかった。外食業界向けの落ち込みをカバーするため、外食市場以外の顧客取り込みに注力した結果、中食向けが前期5.8%から6.8%に、量販・小売店向けが同8.1%から14.0%に、給食向けが同2.7%から3.6%にそれぞれ上昇している。また、新たに開始したBtoC/DtoC事業で1.2%、ミールキット事業で0.3%となっている。
スーパーコールドチェーンの導入と衛生品質管理の国際標準規格取得、BCP対策等に先行して取り組み、業界随一の安全・安心なサービスを提供
2. 同社の強み
同社の強みは、卸売事業者として国内外で開拓してきた多くの契約産地(仕入高の60%超)から安定した仕入れを行うことができる調達力と、高品質で安全・安心に商品を顧客のもとに配送する物流網を全国に構築(委託業者を含む)していることが挙げられる。また、業界初となるスーパーコールドチェーン※1を東京第二FSセンター(2013年7月稼働)以降に開設した事業所(奈良、東京、西東京、中京、埼玉、仙台、九州)で導入しているほか、食品安全マネジメントシステムの国際標準規格となるISO22000や、その上位規格となるFSSC22000※2の認証も各事業拠点で取得、さらには、BCP対策という観点でも、物流センターや貯蔵センター、カット野菜の製造拠点を複数拠点構築するなど、自然災害リスクへの備えも万全を期している。こうした食の安全・安心を確保するうえでの取り組みについては業界で最も先行しており、顧客からの高い評価につながっている。
※1 スーパーコールドチェーン:野菜の入庫から出荷、配送までの全工程を1〜4℃の低温度で管理するシステム。野菜の鮮度が保持できるため、カット野菜の賞味期限を従来比2倍に延長することが可能となった。
※2 「FSSC22000」:「ISO22000」に食品安全対策(フード・テロ対策、原材料やアレルギー物質の管理方法など)や、「食品安全に関連する要員の監視」「サービスに関する仕様」などを追加したものでオランダの食品安全認証財団が認証機関となっている。
2018年6月には食品衛生法等の一部改正により、食品事業者等において衛生品質管理システムの国際基準となるHACCP(ハサップ)※の制度化が決まり、2021年6月から義務化されることが決まっている。同社が取得しているISO22000やFSSC22000は認証要件としてHACCPの規格が含まれていることから、同社にとっては追い風となる可能性がある。既に、外資系企業ではこれら国際標準規格を認証していることが取引を行ううえでの要件となっており、取引額も増加傾向にある。
※HACCP: 食品の安全衛生管理手法のことで、食品の中に潜む危害(生物的、化学的あるいは物理的)要因を科学的に分析し、それが除去(あるいは安全な範囲まで低減)できる工程を常時管理し記録しておく手法。
さらには、生産者と外食・中食企業をつなぐ情報流通機能を持つことも同社の強みとなっている。生産者に対しては、どのような野菜が求められているのか、どれだけの需要量があるのかという情報を提供し、また販売先となる外食・中食企業に対しては野菜の市況やトレンド、高騰した野菜に対する代替メニューの提案などを行っている。特に、ここ数年は天候不順や自然災害に起因する野菜価格の高騰が外食企業にとっても悩みのタネとなっており、同社のメニュー提案力等が高く評価されている。同社は10年以上にわたって、野菜の機能性を研究しており、日本中から取り寄せた野菜に関する栄養価などの分析データベースで国内随一のデータを蓄積している。この分析データに基づいて、健康増進につながるメニュー提案を行っており、同業他社にはない強みとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>