泉州電業 Research Memo(5):24年10月期に売上高1,000億円、経常利益50億円、ROE8.0%以上へ
[21/06/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
1. 中期経営計画:目標年度を2024年10月期へ変更
泉州電業<9824>は2019年11月に設立70周年を迎えたが、ここを1つの通過点として、2017年10月期より2021年10月期を最終年度とする中期経営計画(5ヶ年)を推進してきた。この中期経営計画の数値目標として、売上高で1,000億円、経常利益で50億円、ROEで6.0%以上を掲げていたが、コロナの影響で足元の業績や業界環境が大きく変わってきていることから、ROEの目標値を8.0%以上へ引き上げるとともに、目標年度を2024年10月期に変更した。ただし、今後のコロナの収束状況や業界環境によって、これらの目標時期や数値を再度見直す可能性はある。現時点においては、以下のような重要施策を粛々と進めていく予定だ。
2. 中期経営計画:「SS2024」達成に向けての重要施策
この目標を達成するために、主に以下の重要施策を実行していく方針である。
(1) 売上高1,000億円、経常利益50億円、ROEで8.0%以上の達成。
(2) オリジナル商品の開発と加工部門の強化により直需部門の売上アップ。
(3) ジャスト・イン・タイム体制の充実。
(4) 関東・東京地区での営業強化。また、その他地区においてもシェア拡大を図る。
(5) 自社ブランドを含む非電線商品の開発・拡販及び新分野の開拓を積極的に進める。
(6) 海外での収益拡大のため海外連結子会社との連携を進め、グローバル展開の強化を図る。(米国での拠点を検討)
(7) 社会環境の解決を起点とした新たなビジネスの創出、ESG経営及びSDGsを含めたサステナビリティへの貢献を通じて企業価値を向上。
(8) 泉州改革プロジェクト(仕入、物流、人事、新商品、コスト削減)の推進。
3. 中期経営計画:設備投資計画と専用サイトの立ち上げ
この目標を達成するための設備投資としては、2021年10月期1,218百万円、2022年10月期397百万円、2023年10月期2,884百万円が見込まれている。主な投資案件は、沖縄出店(2021年5月)、米国進出(デトロイト近辺)、名古屋物流センターの土地、Webサイトの強化などとなっている。特にWebサイトの強化では、ここ数年間で以下のような専用サイトを立ち上げた。
(1) 「アビルヒーター」
新分野であるアグリ事業において、「農業ハウス用地中加熱ビニール線“アビルヒーター”」専用サイトを2019年にオープン。長久手ビニールハウスでの試験結果やアグリ製品を紹介し、新分野での商品拡販を進めている。この“アビルヒーター”は、一種の電熱線であり、これを地中に埋めることで土中を加温し、農作物の生育をサポートするもので、温度を一気に約40℃まで上げることができる。そのため、コストはビニールハウスの約半分と推定され、今後の拡販が期待出来る。某大手メーカーとの協同開発品で、同社が独占販売権を有している。現在はサンプル出荷だが、2021年10月期から本格出荷が始まる予定となっている。
(2) 「アットスカイ@sky」
自社ブランドを含む「アットスカイ@sky」を2009年に立ち上げ、カタログを発刊してきたが、2018年に“アットスカイカタログサイト”をオープンし、Webサイトでの通販も強化している。
(3) 「泉州電業FAサイト」
電線等の取扱商品情報を掲載した「泉州電業FAサイト」を2016年にオープン。各種電線等の詳細情報を掲載し、顧客ニーズ対応や新規開拓に活用している。
4. ESGとSDGsへの取り組み
同社では、ESGとSDGsへの様々な取組状況について発信している。こうしたなかで、重要課題(マテリアリティ)として、1)商品供給とサービスの提供、2)環境保全活動、3)人材創出とその環境づくり、4)地域社会とのコミュニケーションの充実の4点を挙げている。
1) 商品供給とサービスの提供
法令順守及び公正取引を行いつつ、商品の安全・品質を確保している。技術革新への貢献、イノベーションの推進も図るとしている。また、事業継続計画(BCP)についても取り組んでいく。具体的には、CG体制を構築し、コンプライアンス委員会やリスク管理委員会を立ち上げているほか、ISO9001の認証取得を行っている。
2) 環境保全活動
気候変動への対応や循環社会の構築に向けて、環境保全を目指していく。具体的には、地球温暖化防止の取り組みを進めるほか、資源の有効活用や周辺清掃活動を推進する。環境調和型製品の売上促進に加えて、環境配慮型文具の購入率も向上させている(ISO14001の運用)。
3) 人材創出とその環境づくり
ダイバーシティを推進しながら人材育成を図っており、具体的には、次世代育成支援や障がい者雇用支援、女性の活躍促進に取り組んでいる。また、外国人技術実習生の受け入れを行っているほか、各種研修や資格取得を推奨している。健康経営の推進に加えて安全衛生の維持にも努めている。
4) 地域社会とのコミュニケーションの充実
社会貢献活動に注力しており、災害支援や職場学習体験を行っている。また、地域交通安全活動や献血、エコキャップ、Wリボン自動販売機の設置、植樹(大阪府吹田市)などにも取り組んでいる。
5. 同社設立記念日の11月18日が「電線の日」に制定
同社の業績とは直接関係ないが、(一社)日本電線工業会は11月18日を「電線の日」に制定した。なぜ11月18日かについて日本電線工業会では「現代社会を支えるすべての電線を表す(111)と、様々な電線があらゆるものに無限(∞)につながっていることを表している」と説明している。ここで興味深いのは、同社の設立記念日もまた11月18日である点。これは単なる偶然ではあるが、同社の事業もまた無限大(∞)に発展する可能性を示唆しているのかもしれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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1. 中期経営計画:目標年度を2024年10月期へ変更
泉州電業<9824>は2019年11月に設立70周年を迎えたが、ここを1つの通過点として、2017年10月期より2021年10月期を最終年度とする中期経営計画(5ヶ年)を推進してきた。この中期経営計画の数値目標として、売上高で1,000億円、経常利益で50億円、ROEで6.0%以上を掲げていたが、コロナの影響で足元の業績や業界環境が大きく変わってきていることから、ROEの目標値を8.0%以上へ引き上げるとともに、目標年度を2024年10月期に変更した。ただし、今後のコロナの収束状況や業界環境によって、これらの目標時期や数値を再度見直す可能性はある。現時点においては、以下のような重要施策を粛々と進めていく予定だ。
2. 中期経営計画:「SS2024」達成に向けての重要施策
この目標を達成するために、主に以下の重要施策を実行していく方針である。
(1) 売上高1,000億円、経常利益50億円、ROEで8.0%以上の達成。
(2) オリジナル商品の開発と加工部門の強化により直需部門の売上アップ。
(3) ジャスト・イン・タイム体制の充実。
(4) 関東・東京地区での営業強化。また、その他地区においてもシェア拡大を図る。
(5) 自社ブランドを含む非電線商品の開発・拡販及び新分野の開拓を積極的に進める。
(6) 海外での収益拡大のため海外連結子会社との連携を進め、グローバル展開の強化を図る。(米国での拠点を検討)
(7) 社会環境の解決を起点とした新たなビジネスの創出、ESG経営及びSDGsを含めたサステナビリティへの貢献を通じて企業価値を向上。
(8) 泉州改革プロジェクト(仕入、物流、人事、新商品、コスト削減)の推進。
3. 中期経営計画:設備投資計画と専用サイトの立ち上げ
この目標を達成するための設備投資としては、2021年10月期1,218百万円、2022年10月期397百万円、2023年10月期2,884百万円が見込まれている。主な投資案件は、沖縄出店(2021年5月)、米国進出(デトロイト近辺)、名古屋物流センターの土地、Webサイトの強化などとなっている。特にWebサイトの強化では、ここ数年間で以下のような専用サイトを立ち上げた。
(1) 「アビルヒーター」
新分野であるアグリ事業において、「農業ハウス用地中加熱ビニール線“アビルヒーター”」専用サイトを2019年にオープン。長久手ビニールハウスでの試験結果やアグリ製品を紹介し、新分野での商品拡販を進めている。この“アビルヒーター”は、一種の電熱線であり、これを地中に埋めることで土中を加温し、農作物の生育をサポートするもので、温度を一気に約40℃まで上げることができる。そのため、コストはビニールハウスの約半分と推定され、今後の拡販が期待出来る。某大手メーカーとの協同開発品で、同社が独占販売権を有している。現在はサンプル出荷だが、2021年10月期から本格出荷が始まる予定となっている。
(2) 「アットスカイ@sky」
自社ブランドを含む「アットスカイ@sky」を2009年に立ち上げ、カタログを発刊してきたが、2018年に“アットスカイカタログサイト”をオープンし、Webサイトでの通販も強化している。
(3) 「泉州電業FAサイト」
電線等の取扱商品情報を掲載した「泉州電業FAサイト」を2016年にオープン。各種電線等の詳細情報を掲載し、顧客ニーズ対応や新規開拓に活用している。
4. ESGとSDGsへの取り組み
同社では、ESGとSDGsへの様々な取組状況について発信している。こうしたなかで、重要課題(マテリアリティ)として、1)商品供給とサービスの提供、2)環境保全活動、3)人材創出とその環境づくり、4)地域社会とのコミュニケーションの充実の4点を挙げている。
1) 商品供給とサービスの提供
法令順守及び公正取引を行いつつ、商品の安全・品質を確保している。技術革新への貢献、イノベーションの推進も図るとしている。また、事業継続計画(BCP)についても取り組んでいく。具体的には、CG体制を構築し、コンプライアンス委員会やリスク管理委員会を立ち上げているほか、ISO9001の認証取得を行っている。
2) 環境保全活動
気候変動への対応や循環社会の構築に向けて、環境保全を目指していく。具体的には、地球温暖化防止の取り組みを進めるほか、資源の有効活用や周辺清掃活動を推進する。環境調和型製品の売上促進に加えて、環境配慮型文具の購入率も向上させている(ISO14001の運用)。
3) 人材創出とその環境づくり
ダイバーシティを推進しながら人材育成を図っており、具体的には、次世代育成支援や障がい者雇用支援、女性の活躍促進に取り組んでいる。また、外国人技術実習生の受け入れを行っているほか、各種研修や資格取得を推奨している。健康経営の推進に加えて安全衛生の維持にも努めている。
4) 地域社会とのコミュニケーションの充実
社会貢献活動に注力しており、災害支援や職場学習体験を行っている。また、地域交通安全活動や献血、エコキャップ、Wリボン自動販売機の設置、植樹(大阪府吹田市)などにも取り組んでいる。
5. 同社設立記念日の11月18日が「電線の日」に制定
同社の業績とは直接関係ないが、(一社)日本電線工業会は11月18日を「電線の日」に制定した。なぜ11月18日かについて日本電線工業会では「現代社会を支えるすべての電線を表す(111)と、様々な電線があらゆるものに無限(∞)につながっていることを表している」と説明している。ここで興味深いのは、同社の設立記念日もまた11月18日である点。これは単なる偶然ではあるが、同社の事業もまた無限大(∞)に発展する可能性を示唆しているのかもしれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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