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ウェーブロックHD Research Memo(4):マテリアルソリューション事業とアドバンストテクノロジー事業を展開

注目トピックス 日本株
■会社概要

3. 事業内容
ウェーブロックホールディングス<7940>は複数の素材(樹脂、繊維、紙、金属等)と各種加工技術(接着、溶着、ラミネート、表面加工、印刷、エンボス加工、編織、蒸着、発泡等)を「組み合わせる」ことで生み出される様々な付加価値製品(農業用及び建設・工事用シート、防虫網、食品トレー容器用シート、金属調加飾フィルム等)の製造・販売を各グループ会社で展開している。

事業セグメントとしては、インテリア事業を譲渡したため、2022年3月期よりマテリアルソリューション事業及びアドバンストテクノロジー事業の2つの事業セグメントとなる。直近3期間のセグメント別構成比で見ると、売上高、営業利益ともにマテリアルソリューション事業が5割強を示す水準となっている、次いで譲渡したインテリア事業が売上高で約3割、営業利益で約4割で推移しており、アドバンストテクノロジー事業については売上高で1割強の水準とまだ事業規模としては小さい。

(1) マテリアルソリューション事業
マテリアルソリューション事業では、独自技術による高品質な各種合成樹脂製品(シート、フィルム、メッシュ、ネット等)を建設資材、住宅資材、産業資材、農業資材、日用雑貨、食品包材等の幅広い分野に向け販売しており、業界別・製品群別にビルディングソリューション、インダストリアルソリューション、アグリソリューション、リビングソリューション、パッケージングソリューションの5つのソリューションに営業組織を分けることで、市場の変化に対応した最適なソリューションを提供している。同事業を担うイノベックスの主力生産拠点は古河工場(茨城県)、編織製品については静岡県にあるダイオ袋井工場やダイオ掛川工場で加工生産している。また、中国やタイの子会社を通じた仕入販売なども行っている。

a) ビルディングソリューション
主な製品として、工事用シート・メッシュといった仮設建設資材や、土木・林業資材として利用される植生網、防草フェンス、また、間仕切用資材となるカーテン・シートシャッター等を提供している。主な販売先は、仮設リース会社や代理店、商社となる。

b) インダストリアルソリューション
主な製品として、建物内で火災が発生した際に煙が拡散するのを防ぐ不燃シートである防煙垂壁や、レインウェア等の原材料として衣料用に特殊配合したシート等を提供している。主な販売先は代理店や商社、加工メーカー等となる。

c) アグリソリューション
主に農業用向け製品として、遮光・遮熱ネット、防虫網や、保温シート等の各種被膜資材、土壌改良材など幅広く提供している。主な販売先はホームセンター、大手種苗・農薬メーカー、農業資材卸専門店等となる。

d) リビングソリューション
網戸用の替え網(防虫網)や住宅廻りのネット資材、サッシと組み合わされた網戸として住宅等に設置される防虫網、農園芸用の被覆資材、関連商品などを、主にホームセンターやサッシメーカー向けに販売している。防虫網では国内シェア約7割とトップシェアを握っており、その他の製品についても高シェアを有している。防虫網や園芸用ネット、遮光網等に関しては売上の季節変動が大きく(例年3月から8月がピーク)、また、その年の天候状況によっても需要が大きく変化するため、ホームセンターでは在庫管理が難しい商材として位置付けられている。このため、同社は静岡県内にあるイノベックスの工場敷地内の3分の2を倉庫スペースに充て、生産を通年で平準化しながら在庫を一定量イノベックスで蓄え、また、シーズンインに向けた顧客店舗への大量発送および急な受注にも対応可能な物流体制を備えていることにより、顧客店舗での品切れリスクを解消可能とする販売体制を敷いている。ここ数年は海外から競合する低価格商品が入ってくるものの、こうした販売体制は構築できておらず品切れが発生することも多い。製品の品質の高さもさることながら、こうしたサポート体制が充実していることも、同社の高いシェアにつながっているものと考えられる。

e) パッケージングソリューション
乳製品、菓子、コンビニエンスストア等の弁当容器など各種食品用パッケージから電子部品用パッケージまで幅広い製品を提供している。合成樹脂を原料とし、顧客ニーズや用途に合わせて賞味期限を延ばす高機能素材や特許技術による環境配慮素材などを用いた製品を開発・提供している。主な販売先は食品メーカーや容器メーカー等となる。

(2) アドバンストテクノロジー事業
アドバンストテクノロジー事業では、金属調加飾フィルム分野として、特殊金属を蒸着したフィルムを使用した金属調テープや金属調加飾フィルムを自動車・自動二輪向け、家電・雑貨向けの部品内外装用に製造販売している。また、車載用ディスプレイ向けを中心とした高透明シート(PMMA/PC2層シート)の製造販売、医療用湿布の不織布印刷や離型フィルムへの印刷・シリコン処理加工のほか、液晶ディスプレイ向けの拡散板や食品包材向け開封テープ等の仕入販売を行っている。金属調加飾フィルムやPMMA/PC2層シートについては主に自動車電装品の2次加工メーカーや1次サプライヤー向けに販売している。

注力製品は自動車向けの需要拡大が見込める金属調加飾フィルムとなる。金属調加飾フィルムの構造は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに特殊金属を蒸着させ、耐候性を保つために表面側にPMMAシート、下面側にABSフィルムを重ね、ドライラミネート工法※により貼り合わせた6層構造となっている。同フィルムは平面的な形状だけでなく、異型押出成形やフィルムインサート成形、真空成形など様々な加工技術を用いることで立体的な形状にすることも可能となっている。メッキ加工品とは異なり、錆びず、車体の軽量化に寄与するなど環境負荷が小さいだけでなく、電波並びに光の透過性が高いこと、成型性、意匠性にも優れるといったメリットを持つ。

※基材となるフィルムに接着剤を塗布し、乾燥炉で乾燥させた後、別のフィルムと圧着して貼り合せる加工方法。


こうした特性を生かせる用途として、主に自動車の外装・内装用や、自動車・自動二輪向けの部品外装用としての採用が進んでいる。自動車向けでは国内だけでなく中国や欧米、韓国、南米、ロシア等で販売実績があり、米国には2018年、欧州には2019年に現地に販売子会社を設立し、営業活動を強化している。自動二輪向けでは、エンブレム用としてインドや東南アジアで採用されている。製造拠点は古河工場と名古屋工場の2拠点体制だが、フィルムを製造する工程は古河工場で行っており、後工程となるシート成型加工工程を名古屋工場で担当している。

金属調加飾フィルムのうち、自動車外装用の競合としてはオランダの大手化学メーカーであるAkzo Nobel N.V.(アクゾノーベル)が挙げられる。なお、金属調加飾フィルムの製法には同社やAkzo Nobelのような金属蒸着法を採用している企業と、転写を採用している企業等がある。転写は量産性に優れるためコストが低いものの、耐候性が弱く自動車の外装用としては別途ハードコートが必要となる場合が多い。

また、PMMA/PC2層シートのうちスマートフォン筐体向けに関しては中国ローカル企業との価格競争が激しいこと等から、2021年3月期に撤退し、現在は光学特性の高さ等の強みを活かし内装ディスプレイの大型化が進む車載分野(センターインフォメーションディスプレイ(CID)やヘッドアップディスプレイ(HUD)向け等)での拡販に注力している(同分野では三菱ガス化学<4182>が最大手)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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