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イード Research Memo(4):2022年6月期も増収増益、営業利益・経常利益は7期ぶり最高益更新の見通し

注目トピックス 日本株
■業績動向

3. 2022年6月期の業績見通し
イード<6038>の2022年6月期業績は、売上高で前期比5.4%増の5,700百万円、営業利益で同16.6%増の530百万円、経常利益で同14.2%増の530百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同24.7%減の350百万円を計画している。増収効果に加えて本社移転に伴う固定費削減効果が継続し、営業利益や経常利益は2015年6月期以来7期ぶりに過去最高を更新する見通しだ。親会社株主に帰属する当期純利益に関しては、前期に投資有価証券売却益を計上したため減益見込みとなる。

売上高については絵本ナビが子会社対象から外れた影響により3億円強の減収要因となるが、2021年7月に子会社化したSAVAWAYで4億円強の売上高が見込めるため相殺できる見通し。利益面での影響も軽微となる。SAVAWAYはECプラットフォーム一元管理サービス「TEMPOSTAR」を提供している。同市場ではHamee<3134>やアイル<3854>が大手だが、同社もトップ5位内に入る主要ベンダーの一角で、顧客企業数は1千社弱程度と見られる。現在は若干損失となっているものの、グループの顧客基盤やネットワークを活用することで早期に収益化できる見通しだ。

コロナ禍が長引いているものの、CMP事業のうちネット広告については、PV数の回復により安定的に推移すると見ている。また、データ・コンテンツ提供(EC物販含む)や出版ビジネスも巣ごもり需要の継続により、堅調が続く見通しだ。CMS事業のうち、ECソリューションについてはEC市場拡大によるEC開設や機能強化の需要を、リサーチソリューションではオンラインリサーチの需要をそれぞれ取り込み、増収を目指す。

新たな取り組みとしては、2021年1月より会員制メディア「mirai.Response」を立ち上げている。業界最大級の自動車関連情報メディアである「Response」の知名度を生かし、最新の業界ニュースや調査レポート配信、オンラインセミナー参加権などをパッケージにして有料会員サービス(無料会員もあり)として提供する。サービス開始後、順調に有料会員数は伸びている。そのほか、サイバーセキュリティ関連の「ScanNetSecurity」や、デジタルメディア・コンテンツ関連の「Media Innovation」でも有料会員サービスを提供しており、今後、月額課金型のサブスクリプションモデルの事業を育成していく考えだ。

また、2021年8月にはエンターテインメント領域での新規サービスとして「エンタメプリント」サービスを開始している。IPを持つ会社がプロモーション施策として活用するサービスとなる。アニメ、ゲーム、声優などのブロマイドをはじめとした様々なコンテンツを提供していく予定となっている。エンタメ業界ではコアなファン層も多く、希少価値の高いコンテンツを提供することで一定の需要が見込まれることから、今後の動向が注目される。


「iid 5G Mobility」やクリエイターエコノミーメディア領域に注力し、年率2ケタ成長を目指す
4. 中期目標
同社は中期業績目標として、2026年6月期に売上高100億円、EBITDA12億円を目指す方針を明らかにした。5年間の年平均成長率は売上高で13%、EBITDAで17%となり、5年でそれぞれ約2倍に成長することになる。CMP事業を主軸に積極的なM&Aや事業開発を進めることで運営メディアや事業領域の拡大を図り、また、専門領域に特化したメディアによる360度のビジネスモデルを構築することで、収益の多様化・最大化に取り組んでいく。

売上高の7〜8割は既存事業の成長で達成可能と見ており、残りを今後のM&A、新規事業開発で創出していくことになる。M&Aについては、同社の事業規模が拡大してきたことや過去の成功実績もあり、従来よりも大型案件も手掛けていくことも可能になると見ている。また今後の成長領域としては、2017年より取り組んでいる「iid 5G Mobility」(自動車業界における第5次モビリティ革命を支援する取り組み)や、ここ数年で市場が急成長しているクリエイターエコノミーメディア領域(小規模事業者・個人)をターゲットとし、プラットフォームやソリューションを提供していくことで成長を実現していく戦略となっている。

「iid 5G Mobility」では、2017年より複数のMaaS※関連のベンチャーと資本業務提携を行い、事業支援を進めてきた。なかでも (株)ジゴワッツと共同開発した「バーチャルキー」については、民間企業や行政機関での採用が2020年以降相次いでおり、普及期に入ろうとしている。2021年以降では、オートアフターマーケット連絡協議会との連携によるカーシェアリングサービス「Patto」のほか、「Jネットレンタカー」の無人化店舗の実証実験や、J-ウイングレンタリース(株)が運営する「スカイレンタカー・スマートサービス」など、レンタカー事業者でも導入に向けた取り組みが進み始めている。同社は「バーチャルキー」の月額利用料の一定率をロイヤルティ収入として受け取るため、導入台数が増えればストック収益として貢献することになる。なお、カーシェアリング市場の車両台数は現在の4万台弱から、今後は40万台規模まで拡大すると見られている。またレンタカー市場については約90万台の規模となっており、これらが「バーチャルキー」の当面のターゲット市場となる。非接触・非対面サービスに対する需要は今後も増加すると見られ、中長期的に同社の収益に貢献するものと期待される。

※MaaS (Mobility as a Service):代表例としてはカーシェアリングが挙げられるが、同社では新車販売からメンテナンス、給油、保険、中古車流通、リサイクルなど自動車に関わる既存のサービスを、ITを活用した利便性の高いサービスへと進化させたもの、また自動運転技術によって創出される新サービスを含めてMaaSと定義している。


なお主要子会社では、エンファクトリーが新たな人材ソリューションサービスとして2020年7月に提供を開始した「複業留学」が注目される。「複業留学」とは、企業が従業員の人材育成や成長機会の提供、自立支援などを目的に、ベンチャー企業で2〜3ヶ月程度、副業あるいは研修経験を積ませるサービスとなる。送り手側企業にとっては従業員の人材育成や成長機会となり、受け入れ側企業にとっては外部人材活用により課題解決につながる可能性があり、双方がメリットを享受できるサービスとなる。既に、東海東京フィナンシャル・ホールディングス<8616>やみずほビジネスパートナー(株)など大手企業で導入実績も出始めるなど注目度も高まっているようで、新たな人材ソリューションサービスとして今後の展開が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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