エーバランス Research Memo(8):2022年6月期業績はコロナ禍が続くなか保守的な計画を策定
[21/09/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し及び成長戦略
Abalance<3856>の2022年6月期の連結業績は、売上高で前期比30.1%増の35,000百万円、営業利益で同2.9%増の1,400百万円、経常利益で同12.6%増の1,430百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同59.6%増の858百万円となる見通し。地球温暖化対策として再生可能エネルギー導入への取り組みが世界的に進むなかで、同社にとって市場環境は追い風が続くが、コロナ禍の収束がいまだ見えないなか、業績計画ではこうしたリスクを考慮した保守的な計画となっている。
同社は今後、ESG・SDGsの推進による社会価値と企業価値の両立により、再生可能エネルギーのグローバル企業を目指している。世界的に再生可能エネルギー需要の拡大が見込まれるなか、事業機会へ迅速に対応する観点から2023年6月期以降の新中期経営計画を策定し、2021年10月を目途に発表する予定としている。
また、VSUNのベトナム証券市場へのIPOについて、早期の上場を想定して現地当局や証券会社等と折衝中となっている。同社グループが実質的に保有するVSUNの株式についての資本政策も検討事項となるが、現状ではIPOが実現した後も子会社化は継続する方針であると同社は説明している。
なお同社は、東証の市場再編に伴い、今後プライム市場を目指すことは企業価値の向上につながるものであり、計画的に対応する方針としている。
事業セグメント別の見通しは以下の通りとなる。
(1) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業については、2ケタ増収増益となる見通しだ。2022年6月期も太陽光発電所の分譲販売を継続しつつ、発電所の自社保有化並びにM&Aによる新規取得を積極的に推進していく方針だ。2022年6月期においては、前期に連系した花畑太陽光発電所の一部区画(2020年11月連系、初年度通期売電収入:約1.5億円見込)、角田市太陽光発電所(2021年3月連系、初年度通期売電収入:約7.5億円見込)、福島市大波太陽光発電所(同6月連系、初年度通期売電収入:約2.2億円見込)などが通期で連結業績へ寄与することになる。また、神戸発電所(同9月、75百万円)、蔵波太陽光発電所(同11月、48百万円)、長嶺ソーラーファーム(同11月以降、170百万円)などの発電所が新たに系統連系する予定となっている。M&Aで発電所をさらに新規取得できれば、上乗せ要因となる。
2022年12月以降には、大型発電所となる大和町・大衡村太陽光発電所(年間想定売電収入5.3億円)が稼働予定であるなど、今後の稼働状況を考慮すると、2022年6月期以降の売電収入は20億円超が射程圏に入っていると同社は説明している。同社は、2030年までに国内外を合わせて1GW規模の発電所を保有することを目標として掲げているため、ストック型モデルの課題としてビジネスモデルの移行期から初期実現の段階をスムーズに脱し、成長過程を築いていくことがカギになるとしている。
海外事業では、各国のコロナ禍に関するリスク管理を適切に行いつつ、カンボジアにおいては受注済みのJCM案件を推進し、ベトナム、台湾も含めて日系または現地企業との合弁等の手法による太陽光発電プロジェクトの参画を進めていく計画で、これらもストック型モデルの成長要因となる。そのほか、太陽光パネルやPCS、蓄電池などの物販事業についても国内外で展開していく予定となっている。
また、新規事業として風力発電所開発や非FIT型ビジネスモデル(PPAモデル)、自家消費型太陽光発電(蓄電池設置含む)、省エネルギーに係る各種サービスの提供を行うESCO事業等において、ワンストップソリューションを形成する強みを生かして、着実に事業を進めていく方針だ。
さらに、2021年6月に設立したバーディフュエルセルズでは、未来の新エネルギーとして期待されている水素エネルギー貯蔵システムの開発を企図した開発投資を実行していく計画となっている。大手企業で水素貯蔵技術の開発に携わっていた博士号を持つ開発責任者を招聘し、今後数年で研究開発費を投じて実用化を目指していく。また、同年3月に設立したPV Repowerでは、太陽光パネルのリユース・リサイクル等に係る事業を新たに開始した。今後増加が予想される太陽光パネルの廃棄抑制と有効活用を図ることで、循環型社会の形成を通じた脱炭素社会の実現に貢献していく方針だ。
(2) 太陽光パネル製造事業
VSUNにおける第3工場の設備投資により生産能力は2.6GWの規模となり、同社の説明では、今後2030年(年間)製造目標8GWを中長期の事業目標としている。従前の欧州向けのほか、米国向けの販売をさらに強化させるとともに、脱炭素化の流れが欧米からアジア諸国にも広がりを見せていくと予測されることからアジア向けも良好に推移するものと予測される。このような需要増に対しては、VSUNの稼働状況を見計らいつつ、今後も計画的な生産能力の拡大が続くと同社は説明している。
ベトナムでは、コロナ禍が続くなかで政府による外出規制が懸念されるなど、依然その影響を少なからず受けていることも考慮のうえ、太陽光パネル製造事業の業績を見込んでいるもようである。ただ、欧米市場で太陽光パネルの需要が旺盛な状況に変わりはないことから、コロナ禍が収束し生産や物流体制が完全に正常化すれば、計画を上回ることも十分期待される。
収益性の向上施策としては、関税負担のないASEAN地域での販売拡大や生産工程のカバーエリアの拡大などが挙げられるが、中長期的なビジネス機会を捉えていくことが中長期的な成長要因と考えられる。
(3) IT事業
IT事業では引き続きホワイトカラーの生産性と価値創造力の向上を支援するソフトやシステム等を提供していく方針で、グリーンエネルギー事業やヘルスケア関連事業とも連携を図りながら増収増益を目指していく。主なサービスラインには、調整・調査などの付加価値の低い業務から意思決定・進捗管理等の付加価値の高いコア業務へ誘導するホワイトカラーの生産性向上サービス、国内市場の縮小・少子高齢化等を原因とした国内労働人口の減少に対し働き方改革に関わるソリューションを提供していく。また、事業規模の拡大に向けたM&A等も検討課題となっている。
(4) 光触媒事業
光触媒事業では新型コロナウイルス感染対策として、抗菌・抗ウィルス製品「blocKIN」シリーズの開発や販路拡大を図る一方で、メーカー施工のほか「光触媒LIFE」事業によるFC加盟・代理店の拡大により拡販を推進していく。医療機関、介護施設、学校施設をはじめ、ホテル、飲食店等の幅広い業態への活用を促進していくほか、社会的ニーズに応える新製品の開発にも取り組んでいく方針だ。当面の課題としては、理工系人材の獲得と設備投資が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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Abalance<3856>の2022年6月期の連結業績は、売上高で前期比30.1%増の35,000百万円、営業利益で同2.9%増の1,400百万円、経常利益で同12.6%増の1,430百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同59.6%増の858百万円となる見通し。地球温暖化対策として再生可能エネルギー導入への取り組みが世界的に進むなかで、同社にとって市場環境は追い風が続くが、コロナ禍の収束がいまだ見えないなか、業績計画ではこうしたリスクを考慮した保守的な計画となっている。
同社は今後、ESG・SDGsの推進による社会価値と企業価値の両立により、再生可能エネルギーのグローバル企業を目指している。世界的に再生可能エネルギー需要の拡大が見込まれるなか、事業機会へ迅速に対応する観点から2023年6月期以降の新中期経営計画を策定し、2021年10月を目途に発表する予定としている。
また、VSUNのベトナム証券市場へのIPOについて、早期の上場を想定して現地当局や証券会社等と折衝中となっている。同社グループが実質的に保有するVSUNの株式についての資本政策も検討事項となるが、現状ではIPOが実現した後も子会社化は継続する方針であると同社は説明している。
なお同社は、東証の市場再編に伴い、今後プライム市場を目指すことは企業価値の向上につながるものであり、計画的に対応する方針としている。
事業セグメント別の見通しは以下の通りとなる。
(1) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業については、2ケタ増収増益となる見通しだ。2022年6月期も太陽光発電所の分譲販売を継続しつつ、発電所の自社保有化並びにM&Aによる新規取得を積極的に推進していく方針だ。2022年6月期においては、前期に連系した花畑太陽光発電所の一部区画(2020年11月連系、初年度通期売電収入:約1.5億円見込)、角田市太陽光発電所(2021年3月連系、初年度通期売電収入:約7.5億円見込)、福島市大波太陽光発電所(同6月連系、初年度通期売電収入:約2.2億円見込)などが通期で連結業績へ寄与することになる。また、神戸発電所(同9月、75百万円)、蔵波太陽光発電所(同11月、48百万円)、長嶺ソーラーファーム(同11月以降、170百万円)などの発電所が新たに系統連系する予定となっている。M&Aで発電所をさらに新規取得できれば、上乗せ要因となる。
2022年12月以降には、大型発電所となる大和町・大衡村太陽光発電所(年間想定売電収入5.3億円)が稼働予定であるなど、今後の稼働状況を考慮すると、2022年6月期以降の売電収入は20億円超が射程圏に入っていると同社は説明している。同社は、2030年までに国内外を合わせて1GW規模の発電所を保有することを目標として掲げているため、ストック型モデルの課題としてビジネスモデルの移行期から初期実現の段階をスムーズに脱し、成長過程を築いていくことがカギになるとしている。
海外事業では、各国のコロナ禍に関するリスク管理を適切に行いつつ、カンボジアにおいては受注済みのJCM案件を推進し、ベトナム、台湾も含めて日系または現地企業との合弁等の手法による太陽光発電プロジェクトの参画を進めていく計画で、これらもストック型モデルの成長要因となる。そのほか、太陽光パネルやPCS、蓄電池などの物販事業についても国内外で展開していく予定となっている。
また、新規事業として風力発電所開発や非FIT型ビジネスモデル(PPAモデル)、自家消費型太陽光発電(蓄電池設置含む)、省エネルギーに係る各種サービスの提供を行うESCO事業等において、ワンストップソリューションを形成する強みを生かして、着実に事業を進めていく方針だ。
さらに、2021年6月に設立したバーディフュエルセルズでは、未来の新エネルギーとして期待されている水素エネルギー貯蔵システムの開発を企図した開発投資を実行していく計画となっている。大手企業で水素貯蔵技術の開発に携わっていた博士号を持つ開発責任者を招聘し、今後数年で研究開発費を投じて実用化を目指していく。また、同年3月に設立したPV Repowerでは、太陽光パネルのリユース・リサイクル等に係る事業を新たに開始した。今後増加が予想される太陽光パネルの廃棄抑制と有効活用を図ることで、循環型社会の形成を通じた脱炭素社会の実現に貢献していく方針だ。
(2) 太陽光パネル製造事業
VSUNにおける第3工場の設備投資により生産能力は2.6GWの規模となり、同社の説明では、今後2030年(年間)製造目標8GWを中長期の事業目標としている。従前の欧州向けのほか、米国向けの販売をさらに強化させるとともに、脱炭素化の流れが欧米からアジア諸国にも広がりを見せていくと予測されることからアジア向けも良好に推移するものと予測される。このような需要増に対しては、VSUNの稼働状況を見計らいつつ、今後も計画的な生産能力の拡大が続くと同社は説明している。
ベトナムでは、コロナ禍が続くなかで政府による外出規制が懸念されるなど、依然その影響を少なからず受けていることも考慮のうえ、太陽光パネル製造事業の業績を見込んでいるもようである。ただ、欧米市場で太陽光パネルの需要が旺盛な状況に変わりはないことから、コロナ禍が収束し生産や物流体制が完全に正常化すれば、計画を上回ることも十分期待される。
収益性の向上施策としては、関税負担のないASEAN地域での販売拡大や生産工程のカバーエリアの拡大などが挙げられるが、中長期的なビジネス機会を捉えていくことが中長期的な成長要因と考えられる。
(3) IT事業
IT事業では引き続きホワイトカラーの生産性と価値創造力の向上を支援するソフトやシステム等を提供していく方針で、グリーンエネルギー事業やヘルスケア関連事業とも連携を図りながら増収増益を目指していく。主なサービスラインには、調整・調査などの付加価値の低い業務から意思決定・進捗管理等の付加価値の高いコア業務へ誘導するホワイトカラーの生産性向上サービス、国内市場の縮小・少子高齢化等を原因とした国内労働人口の減少に対し働き方改革に関わるソリューションを提供していく。また、事業規模の拡大に向けたM&A等も検討課題となっている。
(4) 光触媒事業
光触媒事業では新型コロナウイルス感染対策として、抗菌・抗ウィルス製品「blocKIN」シリーズの開発や販路拡大を図る一方で、メーカー施工のほか「光触媒LIFE」事業によるFC加盟・代理店の拡大により拡販を推進していく。医療機関、介護施設、学校施設をはじめ、ホテル、飲食店等の幅広い業態への活用を促進していくほか、社会的ニーズに応える新製品の開発にも取り組んでいく方針だ。当面の課題としては、理工系人材の獲得と設備投資が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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