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Iスペース Research Memo(8):収益低迷が影響して予想EV/EBITDA倍率は割安評価

注目トピックス 日本株
■同業他社比較

アフィリエイト運営会社の大手はインタースペース<2122>のほかファンコミュニケーションズ、アドウェイズ、バリューコマース、リンクシェア・ジャパン(株)(楽天グループ<4755>の子会社)の4社が挙げられる。売上高の規模はその他の事業も展開しているため各社ばらつきがあるものの、同社も含めた5社合計のアフィリエイトサービスにおける業界シェアは6割弱程度、同社は1割弱のシェアと見られる。

同業他社の特徴について見ると、ファンコミュニケーションズは2020年9月時点で「A8.net」のパートナーサイト数が約300万サイト、稼働広告主ID数で3,296件となっており、パートナーサイト数では業界最大規模となっている。中小企業向け広告ビジネスを長く提供しており、EC分野の依存度が比較的高いことが特徴だ。業績面では、スマートフォン向け広告サービス「nend」の事業縮小に加えて、アフィリエイトサービス「A8.net」も新型コロナウイルス感染症拡大の影響で低迷しており、2021年12月期も減収減益が続く見通しとなっている。

アドウェイズはモバイル向け比率が7割弱(対国内広告売上高)と高く、ゲームや電子コミック系に強みを持つ。特に、ここ数年は機械学習によるスマートフォン向けアドネットワーク広告配信サービス「UNICORN」の売上が大きく成長しており、収益を伸ばしている。損失が続いていた海外事業についても、2021年12月期は黒字化する見通しとなっている。2021年12月期は、9ヶ月変則決算となっているほか「収益認識に関する会計基準」等の適用により売上高が大きく目減りする格好となっているが、実質ベースでは増収となり、2021年11月には通期業績の上方修正も発表するなど好調が続いている。利益面では、事業拡大のための人材投資やシステム投資を実施していることから、12ヶ月換算では前期並みの水準にとどまる見通しとなっている。

バリューコマースは業績好調が続いている。マーケティングソリューション事業(アフィリエイトサービス)が金融分野を中心に回復してきたほか、ECソリューション事業の高成長が続いていることが要因だ。2017年12月期はアフィリエイトサービスが全売上高の8割弱を占めていたが、2021年12月期第3四半期累計では5割弱の水準まで低下し、営業利益にいたっては3割の水準まで低下するなど、アフィリエイトサービス以外の事業が業績のけん引役となっている。2021年9月末のパートナーサイト数は76万サイト、広告主数は1,098件となっており、業種別売上構成比では金融分野が4割と最も高いが、そのほかは家電製品や旅行、人材と幅広い業種をバランスよく手掛けており、事業利益率も約18%と高いことが特徴となっている。なお、2021年12月期は子会社に関する減損損失を計上したため、EPSは前期比で減少見込みとなっている。

これら上場企業のなかで、同社のインターネット広告事業の事業利益率を見ると、2021年9月期で1.5%と相対的に低水準となっている。ベトナムを除いて海外事業が収益化していないことや、ストアフロントの利益も黒字化したとは言え、まだ僅少であることが一因と考えられる。ただ、ストアフロントについては収益拡大フェーズに入っており、今後は利益率の上昇が期待できるほか、海外事業についても売上高が成長ステージに入ってきたことから、早晩収益貢献してくることが見込まれる。採用計画の見直しや生産性を重視した取り組みを推進していく方針であることから、今後は上昇していく可能性が高いと弊社では見ている。

株価指標について見ると、同社の株価(2021年12月7日終値)は2022年9月期の予想PERで16.1倍、EV/EBITDAで1.64倍と大手4社のなかでもっとも低い評価となっている。EV/EBITDAとは企業を買収する場合に、買収コスト(時価総額+有利子負債−現金及び預金・有価証券)を期間収益(営業利益+償却費)の何年分で回収できるかを簡易的に指標化したものとなり、倍率が低いほど買収コストを短期間で回収できることになる(=時価総額が過小に評価)。これらの株価指標が低いと言うことは、株式市場での成長期待が低いことの裏返しでもある。なお、EV/EBITDAについてはファンコミュニケーションズも3.77倍と低く、業績好調な2社が15倍前後で評価されていることから、二極化した状態になっていると言える。既述のとおり同社の場合は、メディア運営事業や海外事業における先行投資をここ数年続けてきたことや大型プロモーション案件がなくなったこと、健康食品等の広告が規制強化の影響で減少したことなどが業績低迷の要因となっていた。今後、ストアフロントや海外事業、メディア運営事業などをけん引役に業績の再成長シナリオが明確になってくれば、株式市場での評価も変わってくるものと弊社では考えている。なお、同社は2022年4月の東京証券取引所の市場再編に伴って、「スタンダード市場」を選択する方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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