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日本電技 Research Memo(4):厳しい業界環境のなか、2ケタ増益を確保

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2022年3月期第2四半期の業績動向
日本電技<1723>の2022年3月期第2四半期の業績は、受注高18,913百万円(前年同期比8.5%減)、売上高12,195百万円(同0.7%増)、営業利益926百万円(同18.7%増)、経常利益978百万円(同17.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益860百万円(同51.6%増)となった。なお、同社は工事の完成引き渡しが第4四半期に集中、これに伴って稼働率が向上するため、第2四半期の売上高と利益がさほど多くならないという季節的変動がある。また、収益認識に関する会計基準等を2022年3月期第1四半期期首より適用した。案件によって適用内容が異なるが、分かりやすく言うと工事完成基準から工事進行基準への変更になるため、第1四半期期首の利益剰余金が291百万円増加、第2四半期累計の売上高は1,893百万円増加、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益はそれぞれ622百万円増加した。第2四半期の利益は当初減益想定だったと推測されるが、収益認識基準等の適用などによって増益に転換したと考えられる。

国内経済は、コロナ禍の影響により厳しい局面が続いていたが、ワクチンの普及などにより徐々に持ち直しへ向けて動き出した。建設業界は、首都圏を中心とした駅前再開発や情報化へ向けた動きは順調だったが、ホテルや各種商業施設などコロナ禍の影響を受けた業界を中心に受注が低迷、完成工事という側面では、東京オリンピック・パラリンピック需要から都心駅前再開発需要への踊り場も重なり、厳しい状況が続いている。このような状況下、同社は、空調計装関連事業の新設工事では「全社最適方針の徹底および既設工事に繋がる物件の受注」、空調計装関連事業の既設工事では「エネルギー課題に則した提案型ビジネスおよびメンテナンスビジネスを両立させる事業展開」、産業システム関連事業では「グループ企業と一体となった業容拡大およびそれを可能とする事業体制の構築」をテーマに事業を展開した。

この結果、都心駅前再開発計画など長期計画に基づく新築受注の動きは変わらないが、コロナ禍も1年以上が経過して顧客側の見通しが立ってきたため、前年同期に立ち入りすらできなかった食品や製薬工場の既設改修工事が再開するなど保留案件が前進し始めた。ただし、コロナ禍のなかで、コンテナ不足や移動制限など様々なリスクが世界規模で顕在化した。同社に関しては、計装に必要な計測機器に使われていることから、半導体不足が気にかかる。現状は、機器の納品は滞りなく進んでいるようだが、早期解決との見方も一部にあるものの半導体不足が継続すれば、来期以降に影響が及ぶ懸念がある。このあたりは、アズビルですら見通しが立たないような状況になっていると思われる。


空調計装は既設工事が新設工事をある程度カバー
2. セグメントの状況
このような環境のなか、空調計装関連事業については、受注高17,082百万円(同6.0%減)、売上高10,752百万円(同7.0%増)となった。産業システム関連事業については、受注高は1,830百万円(同26.3%減)、売上高は1,443百万円(同30.2%減)だった。

空調計装関連事業のうち受注工事高は16,960百万円(前年同期比6.0%減)となった。内訳は、新設工事が研究施設や事務所向け物件などが減少して4,749百万円(同30.9%減)、既設工事が工場及び研究施設向け物件などが増加して12,211百万円(同9.4%増)だった。一方、完成工事高は10,631百万円(同7.4%増)となった。内訳は、新設工事が、高輪ゲートウェイ駅周辺や横浜新市庁舎など前期に計上した大型物件の反動で事務所や工場向けなどが減少して3,864百万円(同25.4%減)、既設工事が、リーマンショック前後に改修した空調システムの大型の取り換え需要が東京オリンピック・パラリンピックによる遅れからようやく立ち上がり、事務所や研究施設向けなどが増加して6,766百万円(同43.4%増)となった。新設工事は東京オリンピック・パラリンピック需要から都心駅前再開発需要へのまさに踊り場となったが、それを補うように大型の既設工事が立ち上がってきたことで、収益は一定程度カバーできたという印象である。なお、制御機器類販売の受注高及び売上高は121百万円(同16.5%減)だった。

産業システム関連事業のうち、受注工事高は電気工事などの減少により1,698百万円(前年同期比26.2%減)、完成工事高は地域冷暖房関連設備の計装工事などの減少により1,310百万円(同30.5%減)となった。地域冷暖房関連設備は単発のため前年同期の沖縄と品川の案件の反動が大きく、加えて、事業部制を導入し事業として改めてスタートを切ったものの、コロナ禍の影響により、営業面で思うようにダッシュが効かなかったことも、受注減の要因として大きかったと考える。なお、制御機器類販売の受注高及び売上高は、132百万円(同27.1%減)だった。

利益面では、空調計装関連事業で、好採算の既設工事の完成工事が増加したためカテゴリーミックスが改善、売上総利益率が3.1ポイント上昇して32.0%となった。一方、2021年4月から投資してきた基幹システムが稼働したため減価償却費が増加、加えて業務が通常化していくなかで人件費なども増加したため、販管費率は2.0ポイント上昇の24.4%となった。この結果、営業利益率は1.2ポイント改善し、営業利益は2ケタ増益を確保した。


下期業績も上期同様の傾向で収益認識に関する会計基準の変更が収益押し上げへ
3. 2022年3月期の業績見通し
同社は2022年3月期業績見通しについて、受注高31,000百万円(前期比10.0%減)、売上高32,000百万円(同6.1%減)、営業利益4,050百万円(同11.7%減)、経常利益4,100百万円(同12.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,830百万円(同14.9%減)と見込んでいる。空調計装関連事業について、同社は引き続き、東京オリンピック・パラリンピック需要と都心駅前再開発需要の間の踊り場に加え、ホテルや各種商業施設などコロナ禍の影響を受けた業界を中心に新設工事の受注環境の悪化を想定している。産業システム関連事業については、コロナ禍による景気の先行き不透明感から設備投資動向が徐々に改善に向かうものの、一方で慎重な動きや見方もあり、下期も上期同様に厳しい受注環境になると想定している。

空調計装関連事業については、新設工事は厳しい状況だが、日本テレビ放送網(株)社屋や日本生命丸の内ガーデンタワーなど既設工事で引き続き大型の案件が増えており、下期以降も一定程度収益をカバーできると期待する。こうした既設工事の案件はまだ数多く残っており、しかもこうした工事の中でアズビルの新製品を導入する現場が多いため、エンジニアリング機能を持つ同社が今後も受注を増やしていくことになると見られている(アズビルにもエンジニアリング機能はあるが、既にボトルネックの状態にあると思われる)。このため、価格競争も起こりづらくなっているようだ。産業システム関連事業では、上期同様に、地域冷暖房関連設備の反動減が大きくなる見込みである。加えて、工場のデジタル化志向を背景に案件は増加していくものの、省人化の内容が多岐にわたるため案件自体が大型化して、金額も大きくなるが工期も長くなるという傾向にあるため、完成工事という点では短期収益への貢献は小さくなる可能性がある。なお、利益面では上期同様、下期もカテゴリーミックスで売上総利益率が上昇、業務の通常化により販管費が増加する見込みである。営業利益に関しては、通期で減益見込みと例年通り保守的な予想となっているが、収益認識に関する会計基準等の適用などにより上方修正される公算があると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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