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明豊ファシリ Research Memo(9):脱炭素化支援やDX支援など事業領域を拡大しながら持続的な収益成長を目指す

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

2. 2023年3月期の事業方針
明豊ファシリティワークス<1717>は今後の事業方針として、発注者支援事業の社会的価値と同社の企業価値を向上させるための中長期の成長基盤を確立することを挙げている。そのために、社会の変化と発注者の課題に対応したより高度な顧客本位のCM事業を創造し、成功事例の蓄積によってサービスレベルの一層の向上を図るとともに、それらを実現するための資産である人の成長と組織力の向上に向けて人的資本経営の推進に取り組む方針だ。

(1) CM事業
CM事業において従来は、顧客が自社の事業の将来像をある程度想定可能な中で発注者を質的に補完し、品質・コスト・スケジュールの最適化を図っていた。また、発注者に対するアカウンタビリティを確保していくことでCMの導入拡大に取り組んできた。

2022年以降は物価高騰や為替の円安進行、サプライチェーンリスクの高まりなど、発注者の投資判断が困難な環境となっているが、発注者から納得感を得ると同時に、事業価値の向上につながるCMサービスを提供していくことで、持続的な成長を目指す方針だ。2024年4月以降は建設業界でも労働時間の上限規制が実施される予定で、人手不足による工期の長期化やコスト上昇が懸念されており、発注者単独で建設投資する難易度が高まる中でCMサービスの重要性は一段と高まると弊社では見ている。このため、中期的に建設投資が横ばいで推移したとしても、CMサービスの価値及び認知度の向上によって市場規模は拡大が見込まれる。さらには、建設投資以外の維持保全のDX化や脱炭素化支援、働き方改革支援などの領域に注力していくことで新たな顧客ニーズを開拓し、事業を拡大していく戦略だ。

(2) DX支援事業
DX支援事業では「MeihoAMS」「MPS」の2つのサービスを提供しているが、機能の一部を利用したいという要望も増えていることから、サービスメニューを細分化して販売することを検討している。

「MeihoAMS」は、働き方改革に取り組む企業に対して従業員の働き方を可視化・定量化し、生産性の向上を支援するマンアワーシステムである。執務環境構築プロジェクトの成功事例を基に、顧客に最適な検討プロセスと環境実現を支援する。オフィス移転プロジェクトの際に試験的に導入する企業が多く、経済産業省での導入実績もある。同社は「MeihoAMS」を活用することによって、2012年3月期以降の10年間で付加価値労働生産性(売上粗利益÷直接労働時間)を約1.7倍に引き上げた実績を持つ。分母となる直接労働時間は、1人当たりの月平均残業時間が46.2時間(2012年3月期)から16.2時間(2023年3月期第2四半期累計)となり、ほぼ下限レベルに達している。今後は高度なスキルが要求される付加価値の高い案件や、人員数に律速しないDX支援サービスを拡大していくことで、さらなる生産性向上を目指す。

「MPS」は、事業拠点の維持保全と改修プロジェクトの効率化をDXで支援するサービスとして、CREM事業での利用が進んでいる。今後は多拠点展開している金融機関や大企業、公共インフラ施設を多く持つ官公庁での導入拡大が期待される。「MPS」を活用することで、維持保全における課題及び優先順位を可視化し、経営判断を支援するほか、維持保全プロセスの可視化による業務効率化支援や、データ蓄積と活用による将来の経営計画立案支援を行う。顧客との関係構築も強化されることから、CM事業やオフィス事業への橋渡し的な位置付けにもなっている。

(3) 脱炭素化支援コンストラクション・マネジメントサービス
脱炭素化支援コンストラクション・マネジメントサービスでは、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの導入を検討する企業や自治体向けに、顧客の保有施設全体の脱炭素化を支援する。同社内の建築、設備、DX推進チームによる、ZEBの導入をはじめとした保有施設全体の脱炭素化戦略の立案から、二酸化炭素排出量削減計画の実行、再生可能エネルギーの調達支援、「MPS」を活用した脱炭素化の進捗状況の可視化・一元管理に至るまで、顧客の脱炭素化戦略の「立案、実行、成果の確認」をワンストップで提供する。また、発注者と利益相反のない独自の公正な調達支援スキームを提供することで、発注者のアカウンタビリティを支援する。民間企業や官公庁などでサステナビリティへの取り組みが拡がるなか、建築分野で多くの実績とノウハウを持つ同社の活躍余地は大きいと言える。

(4) 人的資本経営の推進
同社は成長の基盤となる人材の採用・育成を経営の重要課題と認識している。採用については、引き続きスキルの高いキャリア人材を採用していくほか、女性やCMの社会的意義に共感する人材の採用に注力する。また、育成面では、OJTに加えて2021年から研修プログラムを体系化し、拡充に取り組んでいる。社員が自己の能力をより一層伸ばすことで、顧客に提供するCMサービスの付加価値をさらに高めるとともに、ハード・ソフトスキル両面で個々の成長を促すことでエンゲージメントを高め、企業価値の向上につなげていく。

研修体系としては、階層別に能力向上のための研修プログラムを組んでいるほか、全社員共通でエンゲージメント、法令遵守をテーマとした研修を実施している。能力向上のためのプログラムとしては、タレントマネジメント会議、ビジネススキル研修、次世代経営人材研修、リーダーシップ研修なども導入する予定となっている。

また、デジタル基盤上に構築されているナレッジ・センターで業務上のベストプラクティスを共有するほか、サービス品質向上に不可欠なドキュメントレベルの周知や学習が行える環境を整備していく。また、「MeihoAMS」の活用による社員自らのアクティビティ改善や、キャリアビジョン実現に向けた主体的な働き方改革を推進する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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