MDNT Research Memo(1):コア事業である細胞加工事業は売上拡大と2025年9月期黒字化を必達目標とする
[22/12/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
メディネット<2370>は、「がん免疫細胞治療」領域のパイオニアとして走り続けてきた、創業27年を迎えるバイオベンチャーである。創業者である木村佳司(きむらよしじ)氏(現 代表取締役会長)と東京大学医科学研究所において、がんと分子免疫学の研究者であった故 江川滉二(えがわこうじ)氏(東京大学名誉教授)が出会い、当時認知されていなかったがん免疫細胞治療に大きな可能性を見出した。“患者さんのため”に新しい治療法を提供すべく、「免疫細胞療法総合支援サービス」(当時)という新しいビジネスモデルをデザインし、事業化するに至った。
1. 2022年9月期業績概要
2022年9月期通期の業績は、売上高が前期比7.2%減の633百万円、営業損失が1,333百万円(前期は1,080百万円の損失)、経常損失が1,314百万円(同870百万円の損失)、当期純損失が1,254百万円(同843百万円の損失)となった。損益面では、売上総利益は127百万円(前期比29.1%減)、研究開発費の増加等により販管費が1,461百万円(同15.9%増)となったことで営業損失は拡大した。また、加工中断収入10百万円、投資事業組合運用益1百万円(同99.1%減)、株式交付費7百万円(同8.4%増)等の営業外損益もあったが、経常損失も前期と比べ拡大した。資産除去債務戻入益66百万円を特別利益に計上したが当期純損失も拡大した。
細胞加工業の売上高は633百万円(前期比7.2%減)、営業損失は232百万円(前期は132百万円の損失)となった。コロナ禍により細胞加工件数が急減し、国内で最初の新型コロナウイルス感染症確認時以前となる2019年9月期の売上高1,050百万円に比べて約40%落ち込んだ。2020年9月期第3四半期には細胞加工件数は一旦下げ止まり、以降は徐々に回復傾向にあったが、2022年1月以降の新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の第6波、2022年6月下旬から始まった第7波の影響により、一転減少傾向となった。
2. 細胞加工業では免疫細胞以外の新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大
政府は2022年9月以降、コロナ禍の行動制限や水際対策を大幅に緩和したが、同社では医療インバウンド患者に依存せずとも売上が拡大できるよう、新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大を図る考えである。具体的には、「脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)」に関わる自社技術を確立した(2022年5月発表)。間葉系幹細胞は、様々な疾患に対して臨床応用されており、間葉系幹細胞治療への期待は大きい。また、セルアクシア(株)※1が保有する「ダイレクトコンバージョン法※2(歯科インプラントを確実に固定させる)」を活用した「歯科診療領域における先進的な骨造成治療法の実用化」に向けて、同社とセルアクシアが共同で研究開発することになった。CDMO※3事業においては、2022年9月末にヤンセンファーマ(株)※4の多発性骨髄腫に対する製品「カービクティ(R)点滴静注」が国際共同治験(第Ib/II相臨床試験)にて製造・販売承認された。同社はこれまで治験製品に関してヤンセンファーマの製造受託をしてきた実績があり、今回の製品の製造受託を目指している。
※1 2017年創業、難病や希少疾病の新しい治療法の開発に取り組む創薬系バイオベンチャー企業。
※2 遺伝子改変を行わない技術である。特定の条件を満たすことで、体細胞(線維芽細胞等)から目的の体細胞(骨芽細胞等)に直接転換(ダイレクトコンバージョン)する現象が見出され、将来の革新的医療を担う新技術として注目されている。セルアクシアの有する新規技術ダイレクトコンバージョン法は、患者から容易な方法で採取できる線維芽細胞を原料として、短期間の簡易な製造工程で目的とする体細胞(骨芽細胞等)を作り出すことが可能となっている。
※3 CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)とはバイオ医薬品の受託開発・製造企業を指す。
※4 ベルギーに本部を置くジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品部門。
■Key Points
・細胞加工業では免疫細胞以外の新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大
・中期経営目標のうち「細胞加工事業の2025年9月期の黒字化」に注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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メディネット<2370>は、「がん免疫細胞治療」領域のパイオニアとして走り続けてきた、創業27年を迎えるバイオベンチャーである。創業者である木村佳司(きむらよしじ)氏(現 代表取締役会長)と東京大学医科学研究所において、がんと分子免疫学の研究者であった故 江川滉二(えがわこうじ)氏(東京大学名誉教授)が出会い、当時認知されていなかったがん免疫細胞治療に大きな可能性を見出した。“患者さんのため”に新しい治療法を提供すべく、「免疫細胞療法総合支援サービス」(当時)という新しいビジネスモデルをデザインし、事業化するに至った。
1. 2022年9月期業績概要
2022年9月期通期の業績は、売上高が前期比7.2%減の633百万円、営業損失が1,333百万円(前期は1,080百万円の損失)、経常損失が1,314百万円(同870百万円の損失)、当期純損失が1,254百万円(同843百万円の損失)となった。損益面では、売上総利益は127百万円(前期比29.1%減)、研究開発費の増加等により販管費が1,461百万円(同15.9%増)となったことで営業損失は拡大した。また、加工中断収入10百万円、投資事業組合運用益1百万円(同99.1%減)、株式交付費7百万円(同8.4%増)等の営業外損益もあったが、経常損失も前期と比べ拡大した。資産除去債務戻入益66百万円を特別利益に計上したが当期純損失も拡大した。
細胞加工業の売上高は633百万円(前期比7.2%減)、営業損失は232百万円(前期は132百万円の損失)となった。コロナ禍により細胞加工件数が急減し、国内で最初の新型コロナウイルス感染症確認時以前となる2019年9月期の売上高1,050百万円に比べて約40%落ち込んだ。2020年9月期第3四半期には細胞加工件数は一旦下げ止まり、以降は徐々に回復傾向にあったが、2022年1月以降の新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の第6波、2022年6月下旬から始まった第7波の影響により、一転減少傾向となった。
2. 細胞加工業では免疫細胞以外の新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大
政府は2022年9月以降、コロナ禍の行動制限や水際対策を大幅に緩和したが、同社では医療インバウンド患者に依存せずとも売上が拡大できるよう、新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大を図る考えである。具体的には、「脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)」に関わる自社技術を確立した(2022年5月発表)。間葉系幹細胞は、様々な疾患に対して臨床応用されており、間葉系幹細胞治療への期待は大きい。また、セルアクシア(株)※1が保有する「ダイレクトコンバージョン法※2(歯科インプラントを確実に固定させる)」を活用した「歯科診療領域における先進的な骨造成治療法の実用化」に向けて、同社とセルアクシアが共同で研究開発することになった。CDMO※3事業においては、2022年9月末にヤンセンファーマ(株)※4の多発性骨髄腫に対する製品「カービクティ(R)点滴静注」が国際共同治験(第Ib/II相臨床試験)にて製造・販売承認された。同社はこれまで治験製品に関してヤンセンファーマの製造受託をしてきた実績があり、今回の製品の製造受託を目指している。
※1 2017年創業、難病や希少疾病の新しい治療法の開発に取り組む創薬系バイオベンチャー企業。
※2 遺伝子改変を行わない技術である。特定の条件を満たすことで、体細胞(線維芽細胞等)から目的の体細胞(骨芽細胞等)に直接転換(ダイレクトコンバージョン)する現象が見出され、将来の革新的医療を担う新技術として注目されている。セルアクシアの有する新規技術ダイレクトコンバージョン法は、患者から容易な方法で採取できる線維芽細胞を原料として、短期間の簡易な製造工程で目的とする体細胞(骨芽細胞等)を作り出すことが可能となっている。
※3 CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)とはバイオ医薬品の受託開発・製造企業を指す。
※4 ベルギーに本部を置くジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品部門。
■Key Points
・細胞加工業では免疫細胞以外の新たな細胞加工の品目や受託メニューの拡大
・中期経営目標のうち「細胞加工事業の2025年9月期の黒字化」に注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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