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テクマト Research Memo(4):情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業を展開(3)

注目トピックス 日本株
■テクマトリックス<3762>の会社概要

c) ビジネスソリューション分野
ビジネスソリューション分野では、金融向けソリューション(海外有力ベンダーや子会社の山崎情報設計が開発するリスク管理システム、金融商品評価ツール等)のほか、学術ソリューション(学術研究事業支援)、BIソリューションを開発・提供している。また、連結子会社のカサレアルでインターネットサービスに関連するシステム開発や、技術者向けの教育研修サービス、クラウドネイティブ開発向けコンサルティングサービスを行っている。

d) 教育分野
新規事業として、教育機関向けクラウド型サービス「ツムギノ」の提供を2021年4月より開始した。学びの個別化を実現することを目的に開発したクラウド型コミュニケーション・プラットフォームをベースに、校務支援システムの機能を実装したプラットフォームサービスとなる。今まで蓄積してきたクラウド型サービスや情報セキュリティシステムの構築ノウハウを生かして開発された。特長としては、低価格化(月額数百円/IDの利用料)を実現していること、マルチプラットフォームに対応可能なこと、子どもが中心となるコミュニケーション・プラットフォームではあるが、保護者や地域の住民なども参加できるプラットフォームとして設計されていること、情報基盤事業で培ったノウハウを生かして堅牢な情報セキュリティ対策が施されていることなどが挙げられる。特に、情報セキュリティ対策については教育機関にとっても重要な評価ポイントであり、競合サービスとの差別化要因になると考えられる。

(3) 医療システム事業
医療システム事業は、新生PSP及びその子会社となる医知悟、A-Lineが提供する製品・サービスで構成され、売上収益の大半はPSPの事業で占める。

新生PSPのうち旧NOBORIについては、クラウド型PACSサービス「NOBORI」を主に展開している。クラウドサービスは初期導入コストが不要なほか、データをクラウド上で安全に管理するため、病院側でデータバックアップ等のメンテナンス業務が不要になるといったメリットがある。また患者本人の同意と医療施設間の公開設定があれば、他施設の患者の画像やレポートをシームレスに参照することも可能となる。2012年に「NOBORI」のサービスを開始して以降、既存のオンプレミス(サーバを院内に設置する方式)ユーザの切り替えや、競合他社システムを利用する中規模・大規模病院のリプレイス、小規模医療施設の新規開拓などを進めてきたことにより、2022年3月末時点で契約施設数は約1,180施設まで拡大した。医用画像等の総検査件数は、2022年9月末時点で2.63億件、延べ患者数で4,275万人(複数の病院で画像診断を受ける患者はダブルカウントされている)のデータが「NOBORI」のクラウド上に保管されている。月額利用料は最低6万円からとなるが、料金は導入後5年間に蓄積される画像データの予想量に基づく従量課金制となっており、大学病院等のヘビーユーザでは月額利用料がその数十倍となるケースもある(サービス契約期間は5年間)。サービス開始から11年目を迎えるが、顧客事由による解約(閉院等)を除けばサービス内容を理由とした解約は発生しておらず、顧客からも高い評価を受けている。

そのほか旧NOBORIのサービスとしては、医療機関向けに各種クラウドサービスを提供する「NOBORI PAL」やAI技術を用いた医用画像診断支援サービス、2021年1月より有料サービスを開始した個人(患者)向けのPHR※サービス(医療情報共有アプリ「NOBORI」)などがある。

※PHR(Personal Health Record):個人の健康に関する様々な情報を指す。「NOBORI」は、患者の自己管理の下にクラウド上に医療情報を集約化するスマホアプリを提供している。無料版と有料版(月額100円)があり、無料版はデータ保存期間が1年、有料版は無期限となる。共有できる医療情報(カルテ情報、検査画像、薬歴情報等)やサービス内容(予約申込みやキャンセル等)は医療施設によって異なる。


一方、旧PSPではオンプレミス型のPACS製品「EV Insite」のほかビューアソフトウェア、放射線量管理業務システム等の開発販売及び各種ハードウェア製品の販売を行っている。主軸であるPACS製品に関しては、大学附属病院など大規模施設を含む約1,100の医療施設に導入している。旧NOBORIと競合関係にあったが、両社の顧客基盤や技術基盤は補完関係にあり、両社のリソースを融合することでシナジーを高め、PACS市場におけるシェア拡大、並びにAIを活用した新規サービスの開発などを推進し、事業規模を一段と拡大する戦略となっている。

なお、新生PSPのPACS市場における導入シェアは稼働施設数ベースで22.5%と富士フイルムメディカル(株)に次ぐ第2位となるが、クラウド型サービスでは約71%と第1位のシェアを握っている※。医療分野のクラウドサービスでは個人情報保護の観点からセキュリティ対策が重要となるほか、外部保存しているファイルサイズが非常に大きい医用画像をストレスなく院内で参照することが求められるため、ミッションクリティカルなシステムを構築する高い技術力が必要とされる。旧NOBORIでは情報基盤事業で培ったネットワーク及びセキュリティ分野における豊富な知見と高い技術力、サポート体制を強みにして、課題を解決し顧客の開拓に成功してきた。旧PSPの既存顧客に対してもこうした強みやクラウドサービスのメリットを訴求していくことで、オンプレミス型からの切り替えを進めていく戦略となっている。

※PACSの稼働施設数は9,647施設、うちクラウドPACSは1,553施設。


旧NOBORIと旧PSPの業績規模を直前期で比較して見ると、旧PSPが売上収益で約2.3倍、営業利益で約1.8倍大きいが、成長率に関してはクラウドPACSの成長を背景に旧NOBORIが高くなっている。また、営業利益率に関しても旧NOBORIが19.3%と旧PSPの15.0%を上回っている。旧PSPについてはオンプレミス型で仕入製品販売が一定程度あるため売上規模が大きく、逆に利益率が抑えられる構造となっていると考えられる。

「医知悟」は遠隔画像診断(読影)を行う放射線科医等の専門医と、画像診断を必要とする医療施設等をつなぐ情報インフラサービスを提供している。「iCOMBOX」と呼ばれる専用通信装置を送り手側・受け手側の双方に設置し、「iCOMSERVER(センターサーバ)」を介して送受信するプラットフォームである。2022年3月末時点で500施設以上の施設に導入され、利用専門医数は1,650名以上(実質的に稼働している放射線科医の約3分の1が利用)、月間の依頼検査数は約31万件、市場シェアは約55%で第1位となっている。主な導入施設は、医療機関のほか大手健康診断事業者、衛生検査所、各種病院等である。また、「NOBORI」ユーザであれば専用通信装置を設置しなくても施設外の画像診断を行うことが可能である。

A-Lineは、クラウド型の医療被ばく線量管理システム「MINCADI」を開発・提供している。「MINCADI」は、医用画像検査装置より得られる情報を自動的に取得し、患者ごとの医療被ばく線量や検査ごとの撮影条件をクラウド上で管理し、最適化するためのソリューションである。導入施設数ベースの市場シェアは第2位(300施設超)で、数量ベースのシェアは14.5%とトップクラスとなっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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