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テクマト Research Memo(9):2023年3月期業績は豊富な受注残高を背景に会社計画を上回る公算大

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2023年3月期の業績見通し
テクマトリックス<3762>の2023年3月期の連結業績は、売上収益で前期比17.8%増の43,000百万円、営業利益で同7.1%増の4,000百万円、税引前利益で同6.8%増の3,970百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益で同7.1%増の2,540百万円と期初計画を据え置いた。第2四半期累計までの進捗率は売上収益で48.2%、営業利益で47.9%とそれぞれ直近3年間の平均(売上収益46.9%、営業利益45.8%)を上回る進捗となった。そして、受注残高が豊富にあること、下期は情報基盤事業やアプリケーション・サービス事業で収益性改善が期待できることなどから会社計画を上回る可能性が高いと弊社では見ている。

(1) 情報基盤事業
情報基盤事業の売上収益は前期比11.3%増の27,500百万円、営業利益は同6.4%増の3,250百万円を見込んでいる。第2四半期までの進捗率は売上収益で48.6%、営業利益で38.9%となっており、営業利益については急激な円安や一部製品の納期遅延の影響で計画を下回るペースとなっている。2022年3月期の営業利益率12.4%に対して、2023年3月期第2四半期累計は9.2%まで低下しており、下期にどの程度まで収益性を改善できるかが計画達成のカギを握ることになる。通期の売上収益が計画どおりだった場合、営業利益で計画を達成するためには下期の営業利益率で14.0%の水準が必要で、現在の状況を考えればハードルは高い。ただ、売上収益については豊富な受注残高に加えて、納期遅延していたストレージ製品が売上計上できる見通しとなっていることから計画を上回る可能性が高い。増収効果と新規受注案件の採算性向上により、営業利益をどの程度まで計画に近づけることができるかが焦点となりそうだ。

足元の受注状況に関しては引き続き好調だ。サイバー攻撃による被害が多発していることから、企業の経営課題として情報セキュリティ対策の優先順位が高まっていることが背景にある。また、官公庁だけでなく各自治体レベルでも情報セキュリティ対策が重要視されるようになってきており、従来は地場のSIerからオンプレミス型の対策製品を導入するにとどまっていたが、ここ最近ではより高度な対策を行うため最新のクラウド型サービスを同社から導入するケースも増えてきているようで、当面は受注面でも拡大基調が続くものと予想される。

新たな取り組みとしては、2022年7月よりクラウドネイティブ技術の活用をシステム構築から運用保守、トレーニングに至るまでトータル支援する「テクマトリックスNEO」のサービス提供を開始した。クラウドサービスの活用を積極的かつ効率的に進めたい企業向けのサービスとなり、教育支援については子会社のカサレアルが提供する。提供社数として500社を目標に掲げている。

また、2022年9月よりPalo Alto Networksの「Cortex Xpanse」の活用を支援するアタックサーフェスマネジメントサービスの提供を開始した。「Cortex Xpanse」は企業組織が保有するインターネット上に公開しているすべてのIT資産を継続的に調査し、サイバー攻撃を受けるリスクを検出・管理できるクラウドサービスである。人的対応では難しい高精度な情報収集や高頻度のチェックを自動化できることが特徴だ。同社のセキュリティスペシャリストが、「Cortex Xpanse」の検出結果を分析し、要対策ホストリストの作成と診断対象を選定して脆弱性診断を実施、その結果を報告するとともに脆弱性の対策についてのコンサルティングを行うサービスとなる。そのほかにも海外有力ベンダーの先進的なサービスを積極的に導入しており、情報セキュリティ対策に対する多様なニーズに応える方針だ。

(2) アプリケーション・サービス事業及び医療システム事業
2023年3月期の期初計画ではアプリケーション・サービス事業と医療システム事業を合算した数値で公表しており、売上収益は前期比31.3%増の15,500百万円、営業利益は同10.3%増の750百万円を見込んでいた。第2四半期累計の両事業の合算値は売上収益で前年同期比51.9%増の7,377百万円、営業利益で同194.1%増の650百万円である。通期計画に対する進捗率は売上収益で47.6%、営業利益で86.7%となっている。売上収益についてはビジネスソリューション分野やCRM分野で計画を下回ったものの、医療システム事業の上振れにより相殺され、おおむね計画どおりの進捗となっている。一方、利益面では既述のとおり医療システム事業が計画を大きく上回ったことで高い進捗率となっている。

医療システム事業ついては、下期も旧PSPのオンプレミス型PACSの販売が続く見通しであること、旧PSPについては季節要因で第4四半期に売上が偏重する傾向にあることなどを考慮すれば、売上収益は第2四半期累計の4,013百万円に対して下期はさらに増加することが見込まれる。

ソフトウェア品質保証分野については、第2四半期累計が1ケタ増収であったがサブスクリプション契約が積み上がっていることから通期での増収達成は確実性が高い。一方、CRM分野については受注が通期で計画どおりに進みそうであるものの、受注タイミングの遅れが響いて売上収益の達成水準については注視が必要である。ビジネスソリューション分野については下期も状況に大きな変化はないものと予想される。

営業利益について見ると、医療システム事業は第2四半期累計の748百万円から下期はさらに増加することが見込まれる。一方、アプリケーション・サービス事業についても下期は上向き、通期では増収、営業利益も黒字化する見通しだ。このため、期初計画の営業利益750百万円は上回る公算が大きく、情報基盤事業が計画を下回ったとしても医療システム事業の上振れにより十分吸収可能と弊社では見ている。

なお、事業トピックスとして医療分野ではPSPが2022年7月に大学発ベンチャーであるメドメイン(株)の第三者割当増資3億円を引き受け、資本業務提携を締結した。メドメインはデジタル病理を支援するAI搭載クラウドシステム「PidPort」の開発・提供を行っており、同分野では業界の先頭を走っている。今後はPSPが持つインフラ基盤やサービスとの連携を図るとともに、システムの開発・販売の協力を行う予定だ。病理分野は医療のなかでもDXが遅れており、潜在ニーズも大きい。今後「NOBORI PAL」のサービスの1つとして組み込んでいくことで、顧客開拓が進むものと期待される。同社にとっても医用画像分野におけるサービスラインナップの拡充につながる。

また、CRM分野において2022年10月にタイのCDP(Customer Data Platform)並びにマーケティングCRMのリーディングカンパニーであるChoco Card Enterprise Co., Ltd.と資本業務提携を締結したことを発表した。タイでは2021年にソーシャルデータ分析クラウドサービスの最大手となるWISESIGHT (THAILAND) CO.,LTDを傘下に持つTZO Company Limitedに出資し、資本業務提携を結んでおり、今回で2社目となる。今後Choco Card Enterpriseの販売ネットワークを生かしてローカル企業に対して「FastHelp」等の販売を推進し、タイ及びASEAN地域での事業拡大を目指す方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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