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シナネンHD Research Memo(9):脱炭素に向けた事業構造、社員の市場価値向上を目指す

注目トピックス 日本株
*16:19JST シナネンHD Research Memo(9):脱炭素に向けた事業構造、社員の市場価値向上を目指す
■中期経営計画

3. 非財務目標
(1) 脱炭素社会に対応した事業構造への転換
シナネンホールディングス<8132>は、2030年度の自社操業に伴うGHG※1排出量(Scope1+2)を、2016年度比で50%削減することを目標としている。具体的には、LPガス配送で配送効率の改善、配送車両のEV化、ガスの自家使用でカーボンニュートラルLPGの使用、機器の高効率化、省エネ行動の徹底、再生可能エネルギーの自家使用、太陽光発電などの設置、省エネ行動の徹底によってGHGの排出量を抑制する一方、バイオ炭やブルーカーボン※2などによる炭素貯留、森林ファンドやブルーカーボンファンドなどの設定・投資による環境価値の取得、事務所や工場でのCO2吸収装置設置などによって除去量を増やしていくことで、カーボンニュートラルを実現する考えである。

※1 GHG(Greenhouse Gas):二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス。GHGの排出量を算定・報告する際の国際的な基準であるGHGプロトコルにのっとり、サプライチェーン全体をScope1(自社の燃料消費)、Scope2(自社の電気使用)、Scope3(原材料・通勤・輸配送など上流のエネルギー消費、及び製品の仕様や廃棄など下流のエネルギー消費)に分けて把握、管理、開示する動きが強まっている。日本では、プライム市場の上場企業には、FSB(Financial Stability Board:金融安定理事会)の要請により設立されたTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)が推奨するScope3の開示が求められている。
※2 ブルーカーボン:海草や海藻の藻場や、湿地・干潟・マングローブ林といった浅場などの海洋生態系に取り込まれた炭素。


また同社は、Scope3の目標に、財務的な拡大と脱炭素対応を同時に実現していく指標として、GHG排出量1tあたりの生産性を測る炭素生産性※を採用した。そして、炭素生産性をGHG排出量1トンあたりの売上総利益と定義し、2027年度のサプライチェーン全体(Scope1〜3)の炭素生産性を、2016年度比で6.0%以上向上させること目標としている。具体的には、全事業における売上総利益率の改善、サプライチェーン全体でのGHG排出量の削減、バイオエタノールやSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)などの燃料の供給、高効率給湯器などの販売、再生可能エネルギー事業の拡大、再生可能エネルギー電源の調達・供給比率の拡大によって、より少ないGHG排出量でより多くの利益を産み出し、脱炭素社会に対応した事業構造への転換を目指していく方針である。

※炭素生産性:GHG排出量1トンあたりの生産性のことで、ステークホルダーとの協力によりサプライチェーン全体の脱炭素対応を実現していく指標として計測される。


(2) 社員の市場価値の向上
同社は、企業価値は社員の市場価値の総和であるという考えのもとに、社員の市場価値の向上によって会社の企業価値を向上させていく考えである。チャレンジや働きがい・やりがい、社是・ミッションへの共感などによってエンゲージメントを強化し、適切な評価・報酬や適材適所のジョブローテーションなどによって教育投資の効果を高め、ダイバーシティ&インクルージョンに沿って会社方針・メッセージや職場環境を整備する。これにより、社員は市場価値の高い個人に成長することで人生を豊かにし、同社はその成長した個人に選ばれ続ける会社となって社員の人生をより豊かにしていくという良循環を目指している。

同社は特にエンゲージメント指数(組織風土調査における「満足度」指数で5点満点)、教育訓練時間(OJTを除く社員1人あたりの年間時間)、女性管理職比率を重要視している。エンゲージメント指数では、会社の存在意義や事業の社会貢献性、ミッション、ビジョンなどを魅力的に発信するとともに、学ぶ意欲のある社員に教育機会を与えキャリア形成を仕組み化し、多様な社員が活躍できる環境を整備することで、満足度を2022年度の3.3点から2027年度には4.0点以上とする計画である。成長意欲のある個人を仕組みと教育機会の拡充によってサポートし、教育訓練時間を2022年度の16.4時間から2027年度には25.0時間に拡大することを目標とする。また、多様な視点を経営に反映して新たな価値を創出するため、ダイバーシティを推進して女性社員を積極登用し、女性管理職比率を2022年度の5.1%から2027年度には20.0%へ引き上げることを目指す。


持続可能な事業ポートフォリオの構築を推進
4. 成長戦略
(1) 事業ポートフォリオの変革
同社は、事業ポートフォリオの変革と資本効率の改善によって成長を持続する考えである。第三次中期経営計画期間中に、現在の事業セグメントの分類を電気・環境ソリューション事業、ライフクリエイト事業、石油・ガス事業という事業ポートフォリオに再編し、電気・環境ソリューション事業とライフクリエイト事業の収益強化を進めることで、季節や天候、相場といったリスクをカバーしやすい体制の構築を目指す。たとえば、都市ガスと比べて、環境にやさしく発熱量が多いうえ災害にも強いという優位性のあるLPガスで、商権買い取りなどにより直販を増やしていく。新規事業では、再生可能エネルギーや再資源化、脱炭素、非エネルギーなどの分野で提携を増やしていく。これにより、電気・環境ソリューション事業やライフクリエイト事業において成長領域を確保、そうした領域に経営資源を集中投下することで、第三次中期経営計画期間中には利益貢献できる新規事業を創出する方針である。一方、成長性や収益性の低い事業については撤退や売却を進めていく考えだ。

(2) 資本効率を考慮した投資
こうした考えに従い、2027年度までに、500億円規模の事業ポートフォリオ変革投資を、資本効率を考慮しつつ厳選して実行する予定である。投資内容は、CPPA※1などに向けた発電所・蓄電所の整備、海外での再生可能エネルギー事業、バイオ燃料(バイオ炭)、ソーラーシェアリングといった再生可能エネルギーに300億円規模、木質バイオマス工場の建設、バイオマス系廃棄物の再資源化、環境分析事業、GHG排出量低減化製品の開発など環境循環ビジネスに50億円規模を投資する計画である。そのほか吸着剤工場の建設やエネルギー総合管理クラウドサービスの開発、新モビリティ、LPWA※2設置、及びLPガス事業での商権買収や建物維持管理事業のM&Aなどに150億円程度の投資を考えている。こうした投資によって市場成長性などの社会的価値を高めるとともに投資効率を改善、2027年度にROE8%以上を達成する方針である。

※1 CPPA(Corporate Power Purchase Agreement):企業や自治体などの法人が発電事業者から電力を長期に購入する契約。
※2 LPWA(Low Power Wide Area-network):省電力で長距離対応の無線通信技術。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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