富士通など、橋梁内部の損傷度合いを推定できるセンサーデータ分析技術を開発
[17/08/28]
TOKYO, Aug 28, 2017 - (JCN Newswire) - 富士通株式会社(以下、富士通)および株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、橋梁の表面に取り付けたセンサーで振動データを収集し、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を活用して、内部の損傷度合いを推定できるセンサーデータ分析技術を開発しました。
本技術について、産業活動において利用される技術に関して共同研究を行う相互扶助組織であるモニタリングシステム技術研究組合(注2)(以下、RAIMS)が行った橋梁の疲労劣化の実証実験(注3)より得られたデータを用いて、立証を行いました。
これにより、遠隔から橋梁内部の損傷度合いを推定できるようになり、維持管理業務の高度化を可能にします。
本技術の詳細は2017年9月11日(月曜日)から13日(水曜日)に国立大学法人九州大学で開催される土木学会 全国大会で発表する予定です。
開発の背景
日本では高度経済成長期に建設された多くの橋梁の老朽化が進んでいることから、それらを維持管理するための業務が急増し、メンテナンスコストの増大、技術者不足などが社会問題となりつつあります。
そこで、橋梁など社会インフラの維持管理業務にICTを適用することにより、これらの問題を解決することが期待されています。
課題
橋梁の点検業務は、主に構造物の損傷を目視で行っています。しかし、目視による情報のみでは、構造物表面に現れた変状しか捉えることができないため、内部の損傷度合いに関する情報を把握できないという課題があります。
近年、点検業務のICT化に向けて、橋梁床版(注4)の表面にセンサーを取り付け、振動データを活用することで、損傷程度の評価を行う試みがなされつつありますが、これまでの手法では、床版内部の損傷度合いの正確な把握が課題となっていました。
開発した技術
今回、富士通研究所独自のAI技術である時系列データに対するDeep Learning技術(注5)を拡張し、IoT機器などに搭載したセンサーより取得される変動の激しい複雑な時系列の振動データから抽出した幾何学的特徴を学習することで、構造物や機器などの状態の正常値との差を表す異常度や状態の急変を表す変化度を数値化し、異常の発生や特徴的な変化を検知する技術を開発しました。これにより、さまざまな社会インフラや機器に対して故障や劣化状態の推定・検証を行うことが可能になります。
今回、本技術をRAIMSによる実証実験のデータに適用し、検証しました。
実証実験の結果
今回開発した技術をRAIMSによる加速試験(輪荷重走行試験)で取得された振動データに適用しました。その結果、本技術で振動データから抽出した幾何学的特徴が、健全時は一つの固まりにまとまっているのに対して橋梁に内部損傷が発生した際には形状が変化する結果が得られました。さらに、幾何学的特徴の数値化を行い、そこから算出された異常度および変化度の結果と、床版内部測定用に埋め込んだ歪みセンサーの測定結果との一致を確認し、本技術の有効性が立証できました。
効果
本技術により、橋梁表面に取り付けた一か所の加速度センサーのデータ解析結果から広範囲の橋梁内部の損傷度合いを推定(注6)できることを確認しました。また、本技術は内部歪みの発生を検知することから、損傷の初期段階の推定が可能となり、損傷の早期対策に貢献できます。今後実証実験を重ねることにより、橋梁内部の損傷度合いを、橋梁表面に取り付けたセンサーで遠隔から高精度に推定できるようになり、橋梁維持管理業務の高度化を可能にします。
今後
実際の橋梁の振動データを使った実証を重ね、2018年頃の社会実装を目指します。
本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/08/28.html
注釈
注1 株式会社富士通研究所:本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木 繁。
注2 モニタリングシステム技術研究組合:所在地 東京都千代田区、理事長 依田 照彦。モニタリング技術の早期実用化を目的とした14の企業、法人が参画する組織であり、富士通も組合員として研究開発を行っている。
注3 橋梁の疲労劣化の実証実験:本実証実験は、RAIMSが実施した研究であり、内閣府の「SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術」の一環として国土交通省が実施する「社会インフラへのモニタリング技術の活用推進に関する技術研究開発」委託事業研究の成果。
<RAIMSによる実証実験の概要>
目的: 橋梁の疲労劣化をモニタリングするための技術検討
実施期間: 2015年7月から8月
実験概要: 荷重装置(輪荷重走行試験機)と実物大床版を使い、模擬的に橋梁床版の疲労劣化過程の再現を行う加速試験。試験のため、実物大床版の内部に歪みセンサーなどが埋め込まれている。また、分析対象である振動データは、本床版の表面に取り付けた加速度センサーより収集される。
実施場所: 国立大学法人山口大学
注4 床版: 橋の上を通る車両の重みを橋桁や橋脚に伝えるための構造物である床板のこと。
注5 時系列データに対するDeep Learning技術:トポロジカル・データ・アナリシスと呼ばれるデータ分析手法を用いて、時系列データを高精度に分析する富士通研究所独自の技術。
「時系列データを高精度に分析する新たなDeep Learning技術を開発」(2016年2月16日プレスリリース) http://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/02/16.html
注6 損傷度合いを推定:加速試験中に、実験床版の損傷程度を、国交省の「橋梁定期点検要領」に従い、技術者が目視で判断し、その結果とAI分析の結果を対応づけることで推定。
概要:富士通株式会社
詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。
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本技術について、産業活動において利用される技術に関して共同研究を行う相互扶助組織であるモニタリングシステム技術研究組合(注2)(以下、RAIMS)が行った橋梁の疲労劣化の実証実験(注3)より得られたデータを用いて、立証を行いました。
これにより、遠隔から橋梁内部の損傷度合いを推定できるようになり、維持管理業務の高度化を可能にします。
本技術の詳細は2017年9月11日(月曜日)から13日(水曜日)に国立大学法人九州大学で開催される土木学会 全国大会で発表する予定です。
開発の背景
日本では高度経済成長期に建設された多くの橋梁の老朽化が進んでいることから、それらを維持管理するための業務が急増し、メンテナンスコストの増大、技術者不足などが社会問題となりつつあります。
そこで、橋梁など社会インフラの維持管理業務にICTを適用することにより、これらの問題を解決することが期待されています。
課題
橋梁の点検業務は、主に構造物の損傷を目視で行っています。しかし、目視による情報のみでは、構造物表面に現れた変状しか捉えることができないため、内部の損傷度合いに関する情報を把握できないという課題があります。
近年、点検業務のICT化に向けて、橋梁床版(注4)の表面にセンサーを取り付け、振動データを活用することで、損傷程度の評価を行う試みがなされつつありますが、これまでの手法では、床版内部の損傷度合いの正確な把握が課題となっていました。
開発した技術
今回、富士通研究所独自のAI技術である時系列データに対するDeep Learning技術(注5)を拡張し、IoT機器などに搭載したセンサーより取得される変動の激しい複雑な時系列の振動データから抽出した幾何学的特徴を学習することで、構造物や機器などの状態の正常値との差を表す異常度や状態の急変を表す変化度を数値化し、異常の発生や特徴的な変化を検知する技術を開発しました。これにより、さまざまな社会インフラや機器に対して故障や劣化状態の推定・検証を行うことが可能になります。
今回、本技術をRAIMSによる実証実験のデータに適用し、検証しました。
実証実験の結果
今回開発した技術をRAIMSによる加速試験(輪荷重走行試験)で取得された振動データに適用しました。その結果、本技術で振動データから抽出した幾何学的特徴が、健全時は一つの固まりにまとまっているのに対して橋梁に内部損傷が発生した際には形状が変化する結果が得られました。さらに、幾何学的特徴の数値化を行い、そこから算出された異常度および変化度の結果と、床版内部測定用に埋め込んだ歪みセンサーの測定結果との一致を確認し、本技術の有効性が立証できました。
効果
本技術により、橋梁表面に取り付けた一か所の加速度センサーのデータ解析結果から広範囲の橋梁内部の損傷度合いを推定(注6)できることを確認しました。また、本技術は内部歪みの発生を検知することから、損傷の初期段階の推定が可能となり、損傷の早期対策に貢献できます。今後実証実験を重ねることにより、橋梁内部の損傷度合いを、橋梁表面に取り付けたセンサーで遠隔から高精度に推定できるようになり、橋梁維持管理業務の高度化を可能にします。
今後
実際の橋梁の振動データを使った実証を重ね、2018年頃の社会実装を目指します。
本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/08/28.html
注釈
注1 株式会社富士通研究所:本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木 繁。
注2 モニタリングシステム技術研究組合:所在地 東京都千代田区、理事長 依田 照彦。モニタリング技術の早期実用化を目的とした14の企業、法人が参画する組織であり、富士通も組合員として研究開発を行っている。
注3 橋梁の疲労劣化の実証実験:本実証実験は、RAIMSが実施した研究であり、内閣府の「SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術」の一環として国土交通省が実施する「社会インフラへのモニタリング技術の活用推進に関する技術研究開発」委託事業研究の成果。
<RAIMSによる実証実験の概要>
目的: 橋梁の疲労劣化をモニタリングするための技術検討
実施期間: 2015年7月から8月
実験概要: 荷重装置(輪荷重走行試験機)と実物大床版を使い、模擬的に橋梁床版の疲労劣化過程の再現を行う加速試験。試験のため、実物大床版の内部に歪みセンサーなどが埋め込まれている。また、分析対象である振動データは、本床版の表面に取り付けた加速度センサーより収集される。
実施場所: 国立大学法人山口大学
注4 床版: 橋の上を通る車両の重みを橋桁や橋脚に伝えるための構造物である床板のこと。
注5 時系列データに対するDeep Learning技術:トポロジカル・データ・アナリシスと呼ばれるデータ分析手法を用いて、時系列データを高精度に分析する富士通研究所独自の技術。
「時系列データを高精度に分析する新たなDeep Learning技術を開発」(2016年2月16日プレスリリース) http://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/02/16.html
注6 損傷度合いを推定:加速試験中に、実験床版の損傷程度を、国交省の「橋梁定期点検要領」に従い、技術者が目視で判断し、その結果とAI分析の結果を対応づけることで推定。
概要:富士通株式会社
詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。
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