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富士通研究所とトロント大学、戦略的パートナーシップを締結

TOKYO, Sep 20, 2017 - (JCN Newswire) - 株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)とUniversity of Toronto(注2)(以下、トロント大学)は、新しいパートナーシップを締結し、富士通研究所は、量子コンピューティングを中核とする革新的コンピューティング技術の研究開発の強化のために、新たな研究拠点をトロントに設立します。

現在のコンピューティング技術では、医療、金融、物流、公共政策など様々な分野において、迅速な意志決定が要求されながら現実的な時間で解くことができない極めて複雑な問題が膨大に存在します。この課題に対して、コンピューティング技術の変革のみならず、これを社会に適用するためのソフトウェア開発の双方が必要になります。

今回の戦略的パートナーシップの締結により、両者がこれまで培ってきた技術を発展させ、実社会における解決が困難な問題を高速に解く量子コンピューティング技術の実用化を加速させます。今後、さらに革新的コンピューティング技術の研究開発に挑み、グローバルな社会、経済、産業などの課題解決に貢献していきます。

経緯

富士通研究所とトロント大学は、コンピューティング性能を向上させる研究分野で、18年間以上に及ぶ信頼関係を築いてきました。今回、先端的な研究成果の実証の場にふさわしいトロントにおいて、富士通研究所の研究拠点を構え、より一層緊密に協力することが双方にとって有益であるとの結論に至りました。今後は、それらの研究を発展させるとともに、量子コンピューティング分野を中核として、双方の世界的に優れた知見と研究開発力を融合して研究分野を拡大します。

1. 富士通研究所の強み
富士通研究所は、本格的なAI活用の時代を睨み、ソフトウェアのみならず、アーキテクチャーやハードウェアを含めた研究戦略の一環として、課題領域ごとに最適な性能を発揮するドメイン指向コンピューティング(注3)の研究に取り組んできました。現行の量子コンピュータを、諸問題に対する実用的な性能で超えるデジタルアニーラ (注4)を開発し、量子コンピューティングが必要とされる領域で、先端的な研究開発を世界的にリードしています。

2. トロント大学の強み
トロント大学は、その設立に係わったthe Centre for Quantum Information and Quantum Computing(CQIQC)や新設の独立したVector Institute for Artificial Intelligenceの研究機関で代表されるように、量子コンピューティングやAIの分野において国際的に認められた世界トップクラスの研究大学です。今年、トロント大学は、クアクアレリ・シモンズ社による世界大学ランキングにおいて、Computer Science & Information Systemsの分野で10位、Engineering and Technology分野で34位とされており、上海ランキングコンサルタント社による大学ランキングでもComputer Science & Engineering分野で13位に位置付けられています。トロント大学は、ヘルスケアやバイオ、金融、セキュリティの分野においても世界的な研究者を抱え、工業技術の実社会における応用にも積極的に取り組んでいます。

技術の背景

実社会には、これまで人間が行ってきた複雑な意志決定や、膨大な学習用入力データから最適な組を選ぶケースなど、現在のコンピューティング技術では実用的な時間で解くことができない問題が膨大に存在します。そして、様々な要因を考慮して最適解を導く場合の演算量は、要因の数に対して指数関数的に増大します。

例えば、最適な組み合わせを選択する問題では、要素の数が100個増えるだけで、組み合わせ数が1000兆の1000兆倍以上となるため、このような問題は現在のコンピュータが苦手としています。他方、投資ポートフォリオ、物流最適化、地球環境問題に立脚した産業政策の実施など、実社会の問題はさらに複雑な要素を含むだけでなく、迅速な最適解の発見が要求されており、これを実現する新しいコンピューティング技術の出現が望まれています。

共同研究の概要

富士通研究所とトロント大学は、まず両者が開発したデジタルアニーラ技術を発展させ、実社会の課題解決に幅広く適応できる規模と機能を拡張します。また、トロント大学で行っている高度な学術的研究を活かして、医療や金融領域などの実社会の問題に適用するための応用ソフトウェアを開発することで実用化を加速します。

今後、取り組むテーマの一つに、癌放射線治療での放射線量最適化があります。CT画像に基づき癌組織に充分な放射線を照射して正常組織への線量を安全なレベルに保つためには、膨大な最適化計算を行う必要があります。計算中は患者の体を固定する必要があるため、計算時間は数分以内に限定されます。この最適化計算を高精度で短時間に実行できれば、治療効果の向上と治療時間の短縮により、安全性を保ちつつ患者の負担を軽減できます。デジタルアニーラの拡張と応用ソフトウェアの開発により数分以内での計算が可能となり、放射線治療技術を変革することができると考えています。このような取り組みを進めることで、デジタルアニーラ技術を発展させ、実社会への適用を拡大します。

両者の研究員の密な連携はもとより、北米における革新的なコンピューティング技術の知のエコシステムを両者が核となって形成し、新しいICTビジネスの創出と社会・経済の発展に貢献して参ります。

株式会社富士通研究所 代表取締役社長 佐々木 繁のコメント

富士通研究所は、ICT分野における先端的な技術開発を常にリードしてきました。コンピューティングのみならず、医療、金融などの様々な分野で卓越的な研究成果を創出し優秀な人材が集まるトロント大学との共同研究を強化することは非常に大きな意義があります。量子コンピューティング技術のみならず、革新的なコンピューティング研究での成果を継続的に世に問うことで、我々の持つAIやクラウドなどの技術の価値がさらに高まり、ビジネスの拡大が可能になると考えています。これにより、富士通グループが掲げる人にやさしい豊かな社会の創造に向けたヒューマンセントリックイノベーションがさらに推進され、社会や経済の発展に貢献できるものと確信します。

University of Toronto 学長 Meric Gertlerのコメント

トロント大学は、今回の富士通研究所との提携をこの上なく光栄に思うとともに、我々の協力により数年のうちに成し遂げられるであろうすばらしい成果に期待しています。本日発表した戦略的パートナーシップは富士通研究所の新しい研究センターの設立とあわせて、我々の共同研究を強化し発展させてくれるでしょう。そして、実用的な量子コンピューティング技術の研究開発に対する我々の努力を加速し、21世紀における社会、経済、産業の幅広い分野の問題に挑戦する我々の大いなる助けとなることでしょう。

注釈
注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木 繁。
注2 University of Toront:
所在地 Canada, Ontario州 Toronto市、学長 Meric S. Gertler。
注3 ドメイン指向コンピューティング:
特定のアプリケーション領域に適したハードウェア構成と処理の最適化により、コンピューティング性能を飛躍的に向上させるコンピューティング技術。
「大量画像から目的の画像を瞬時に検索する技術を開発」(2016年2月2日プレスリリース)
注4 デジタルアニーラ:
富士通研究所とトロント大学が共同で開発した、従来の半導体技術を用いて組合せ最適化問題を高速に解くことができる計算機アーキテクチャー。
「量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャーを開発」(2016年10月20日プレスリリース)

本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/09/20.html

概要:富士通株式会社

詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。

本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
コンピュータシステム研究所
電話 044-754-2931(直通)
メール ngcs_qc_press_mem@ml.labs.fujitsu.com


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