アリアンツ: アジアの海運事故は世界の趨勢に反し継続して上昇、過去10年間の主要な海運事故で世界のトップ地域に
[18/07/23]
TOKYO/SEOUL, Jul 23, 2018 - (Media OutReach) - アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティ(AGCS)が発行した「Safety & Shipping Review 2018」によると、世界全体では過去10年で大型船の損失件数は38%減少し、この傾向は2017年も継続しています。しかし、南シナ、インドシナ、インドネシア、フィリピンの海域での事故は25%増加し、過去10年の重大な船舶事故件数でアジアは世界でトップ地域となり、「新たなバミューダトライアングル」と呼ばれるまでになっています。
2017年は、ベトナムでの損失により、世界全体の損失の3分の1(32%)がこの海域で発生しました。天候が主要な原因の一つとなっており、台風13号(ハト)と台風23号(ダムリー)は、同国の混雑する海域と低い安全基準が相俟って、6件を超える損失をもたらしました。
2017年に海運業界で報告された全損は94件で、前年(98件)から4%減となり、2014年以降では2番目に低い件数となりました。100グロストン以上の船舶事故を分析した年次レビューによると、アジアの台風および米国のハリケーンなどの悪天候により、20隻以上を損失しました。
「世界全体で見ると、過去1年の全損の頻度と損害規模は減少しており、これは過去10年間のポジティブな傾向が継続していることを意味します。保険金請求は比較的落ち着いており、これまでの船舶の設計面の改善およびリスク管理や安全規制の効果が反映しています」と、AGCSのGlobal Product Leader Hull & Marine Liabilitiesを務めるBaptiste Ossenaは述べています。
しかし、アジアにおける損害は増加しており、不均衡は依然として存在します。 この地域は引き続き、2017年の船舶損失の3分の1以上を占める世界最大の損害発生地域となっています。東部地中海および黒海地域は2番目に大きな損失のホットスポット(17件)、続いて英国諸島(8件)となっています。 AGCSの分析によれば、北極圏の海域では、報告された海難事故件数は年間29%増加しています(71件)。
危険な海域と不運な船舶
アジアの主要航路周辺での政治的緊張は、混乱と衝突リスクの増大を招いています。中国、韓国、日本からの東西貿易の主要航路であり、世界の海上貿易の3分の1を占める南シナ海もまた、数ヶ国が領有権を争う係争地です。
こうした争いは、南シナ海において米国および中国が海軍の軍事演習を実施するなど、軍事的なプレゼンスを高めています。昨年、米海軍艦船と商業船との間で2件の重大な衝突事故が発生しました。米国の誘導ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド(USS Fitzgerald)が貨物船と日本沿岸で衝突し、ジョン・S・マケイン(USS John S. McCain)が石油タンカーとシンガポール沖で衝突しました。
「領有権の主張と紛争は、長期的にさらに大きな影響を及ぼし、東南アジアにおける海と航海の自由を脅かし、アジアの貿易に甚大な影響を及ぼす可能性があります。貿易がますます集中し、政治的緊張が高まることで、同地域の不安定さが増し、安全上の問題を引き起こす可能性があります」と、AGCSのSenior Marine Risk Consultantを務めるAndrew Kinsleyは述べています。
アジアおよびアフリカ地域では、海賊の脅威も高い水準を継続しています。世界全体では記録的に低い数値であるにもかかわらず、これらの地域の海域では世界の全インシデントの4分の3を占めています。2017年に、東南アジアのインシデントは76件、11%増で、インドネシアは43件で引き続き世界有数のホットスポットとなっています。フィリピンでは2016年の10件から2017年に22件と2倍以上になりました[1]。
分析によると、金曜日は最も危険な日であることが示されています。報告された合計1,129件の損害うち175件が過去10年間でこの日に発生しました。 13日の金曜日は本当に不運になる可能性があります。過去最大の海上保険損害となったコスタ・コンコルディアを含む3隻が2012年のこの日に失われました。 昨年の最も不運な船舶は、地中海と黒海の東部で操業する旅客船で、12ヶ月間で7回の事故に巻き込まれました。 アジアでは、過去10年間では11月に最も事故が発生しており、36隻が失われました。そのうち3分の1は台風によるものです(12件)。
エマージングリスクが損失につながる
海運業界には新たな複数のリスク・エクスポージャーが存在します。従来よりも大型化した貨物船はサッカー場4面分よりも長く、火災の封じ込めや救助の問題をもたらします。一方、気候変動は、北極および北大西洋の海域に、航路にかかわる新たなリスクをもたらしています。
海運業界がCO2 排出量削減を実現するため、同時に新たな技術上のリスクがもたらされ、機械事故の懸念が生じるなか、環境審査も厳しくなっています。
その他の課題としては、船上の作業の自動化の導入を進めるメリットとリスクが天秤にかけられています。最近の港湾ロジスティクスに対するNotPetyaマルウェアは、80近くの港で貨物の遅れと混雑を引き起こし、従来のリスクに加え、海運業界が直面するエマージングリスクを示す結果となりました。
人為的ミスが大きな問題、データが役に立つ
数十年にわたる安全性の向上にもかかわらず、海運業界に慢心する余地はありません。2018年1月にはタンカー「サンチ」が上海沖で沈没したほか、米海軍艦船のアジアでの衝突事故2件が発生するなど、しばしば人為的ミスが主な原因の重大事故が後を絶ちません。推定では75%から96%の事故原因が人為的ミスによるものであると推定されています[2]。人為的ミスはまた、AGCSの分析によると、海上賠償責任保険に関する保険金請求事案15,000件のうち75%を占め、保険金支払額は16億ドルにのぼっています[3]。
「人為的ミスは主な事故原因であり続けています」と、AGCSの Captain Rahul Khanna, Global Head of Marine Risk Consultingを務めるCaptain Rahul Khannaは述べています。「不十分な沿岸側の支援と商業的圧力は、海上の安全とリスクにおいて重要な役割を果たしています。」業界で生産される大量のデータは現在十分に活用されておらず、リアルタイムの調査結果やアラートを発信するためのデータと分析の活用が事故の削減に役立つとKhannaと考えています。「過密な日程は安全文化と意思決定に多大な影響を及ぼす可能性があります。1日24時間 、週7日体制でデータを分析することで、乗組員の行動やニアミスから洞察を得られ、トレンドを特定することができます。海運業界は過去の損害から学んできましたが、安全な航海と災害の間のギャップを埋めるのは予測分析かもしれません。」
リンク:
「Safety & Shipping Review 2018」(PDF版)アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティ https://bit.ly/2msclig
アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティについて
https://www.agcs.allianz.com/about-us/at-a-glance/
免責事項
https://www.agcs.allianz.com/about-us/news/press-release-disclaimer/
報道関係者のお問い合わせ先
wendy.koh@allianz.com
[1] 国際海事局(International Maritime Bureau)
[2] AGCS「Safety & Shipping 1912-2012 From Titanic to Costa Concordia」
[3] AGCS「Global Claims Review: Liability In Focus」2017年
Copyright 2018 JCN Newswire. All rights reserved. www.jcnnewswire.com
2017年は、ベトナムでの損失により、世界全体の損失の3分の1(32%)がこの海域で発生しました。天候が主要な原因の一つとなっており、台風13号(ハト)と台風23号(ダムリー)は、同国の混雑する海域と低い安全基準が相俟って、6件を超える損失をもたらしました。
2017年に海運業界で報告された全損は94件で、前年(98件)から4%減となり、2014年以降では2番目に低い件数となりました。100グロストン以上の船舶事故を分析した年次レビューによると、アジアの台風および米国のハリケーンなどの悪天候により、20隻以上を損失しました。
「世界全体で見ると、過去1年の全損の頻度と損害規模は減少しており、これは過去10年間のポジティブな傾向が継続していることを意味します。保険金請求は比較的落ち着いており、これまでの船舶の設計面の改善およびリスク管理や安全規制の効果が反映しています」と、AGCSのGlobal Product Leader Hull & Marine Liabilitiesを務めるBaptiste Ossenaは述べています。
しかし、アジアにおける損害は増加しており、不均衡は依然として存在します。 この地域は引き続き、2017年の船舶損失の3分の1以上を占める世界最大の損害発生地域となっています。東部地中海および黒海地域は2番目に大きな損失のホットスポット(17件)、続いて英国諸島(8件)となっています。 AGCSの分析によれば、北極圏の海域では、報告された海難事故件数は年間29%増加しています(71件)。
危険な海域と不運な船舶
アジアの主要航路周辺での政治的緊張は、混乱と衝突リスクの増大を招いています。中国、韓国、日本からの東西貿易の主要航路であり、世界の海上貿易の3分の1を占める南シナ海もまた、数ヶ国が領有権を争う係争地です。
こうした争いは、南シナ海において米国および中国が海軍の軍事演習を実施するなど、軍事的なプレゼンスを高めています。昨年、米海軍艦船と商業船との間で2件の重大な衝突事故が発生しました。米国の誘導ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド(USS Fitzgerald)が貨物船と日本沿岸で衝突し、ジョン・S・マケイン(USS John S. McCain)が石油タンカーとシンガポール沖で衝突しました。
「領有権の主張と紛争は、長期的にさらに大きな影響を及ぼし、東南アジアにおける海と航海の自由を脅かし、アジアの貿易に甚大な影響を及ぼす可能性があります。貿易がますます集中し、政治的緊張が高まることで、同地域の不安定さが増し、安全上の問題を引き起こす可能性があります」と、AGCSのSenior Marine Risk Consultantを務めるAndrew Kinsleyは述べています。
アジアおよびアフリカ地域では、海賊の脅威も高い水準を継続しています。世界全体では記録的に低い数値であるにもかかわらず、これらの地域の海域では世界の全インシデントの4分の3を占めています。2017年に、東南アジアのインシデントは76件、11%増で、インドネシアは43件で引き続き世界有数のホットスポットとなっています。フィリピンでは2016年の10件から2017年に22件と2倍以上になりました[1]。
分析によると、金曜日は最も危険な日であることが示されています。報告された合計1,129件の損害うち175件が過去10年間でこの日に発生しました。 13日の金曜日は本当に不運になる可能性があります。過去最大の海上保険損害となったコスタ・コンコルディアを含む3隻が2012年のこの日に失われました。 昨年の最も不運な船舶は、地中海と黒海の東部で操業する旅客船で、12ヶ月間で7回の事故に巻き込まれました。 アジアでは、過去10年間では11月に最も事故が発生しており、36隻が失われました。そのうち3分の1は台風によるものです(12件)。
エマージングリスクが損失につながる
海運業界には新たな複数のリスク・エクスポージャーが存在します。従来よりも大型化した貨物船はサッカー場4面分よりも長く、火災の封じ込めや救助の問題をもたらします。一方、気候変動は、北極および北大西洋の海域に、航路にかかわる新たなリスクをもたらしています。
海運業界がCO2 排出量削減を実現するため、同時に新たな技術上のリスクがもたらされ、機械事故の懸念が生じるなか、環境審査も厳しくなっています。
その他の課題としては、船上の作業の自動化の導入を進めるメリットとリスクが天秤にかけられています。最近の港湾ロジスティクスに対するNotPetyaマルウェアは、80近くの港で貨物の遅れと混雑を引き起こし、従来のリスクに加え、海運業界が直面するエマージングリスクを示す結果となりました。
人為的ミスが大きな問題、データが役に立つ
数十年にわたる安全性の向上にもかかわらず、海運業界に慢心する余地はありません。2018年1月にはタンカー「サンチ」が上海沖で沈没したほか、米海軍艦船のアジアでの衝突事故2件が発生するなど、しばしば人為的ミスが主な原因の重大事故が後を絶ちません。推定では75%から96%の事故原因が人為的ミスによるものであると推定されています[2]。人為的ミスはまた、AGCSの分析によると、海上賠償責任保険に関する保険金請求事案15,000件のうち75%を占め、保険金支払額は16億ドルにのぼっています[3]。
「人為的ミスは主な事故原因であり続けています」と、AGCSの Captain Rahul Khanna, Global Head of Marine Risk Consultingを務めるCaptain Rahul Khannaは述べています。「不十分な沿岸側の支援と商業的圧力は、海上の安全とリスクにおいて重要な役割を果たしています。」業界で生産される大量のデータは現在十分に活用されておらず、リアルタイムの調査結果やアラートを発信するためのデータと分析の活用が事故の削減に役立つとKhannaと考えています。「過密な日程は安全文化と意思決定に多大な影響を及ぼす可能性があります。1日24時間 、週7日体制でデータを分析することで、乗組員の行動やニアミスから洞察を得られ、トレンドを特定することができます。海運業界は過去の損害から学んできましたが、安全な航海と災害の間のギャップを埋めるのは予測分析かもしれません。」
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「Safety & Shipping Review 2018」(PDF版)アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティ https://bit.ly/2msclig
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[1] 国際海事局(International Maritime Bureau)
[2] AGCS「Safety & Shipping 1912-2012 From Titanic to Costa Concordia」
[3] AGCS「Global Claims Review: Liability In Focus」2017年
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