NECなど、生体認証を活用した新生児のワクチン接種管理システムの有用性を世界で初めてケニアの病院で実証
[23/02/07]
TOKYO, Feb 7, 2023 - (JCN Newswire) - 日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長 兼 CEO:森田 隆之、以下 NEC)、ケニア中央医学研究所(所在地:ケニア共和国ナイロビ、所長:Sam Kariuki、Kenya Medical Research Institute、以下KEMRI)および長崎大学熱帯医学研究所(所在地:長崎市、所長: 金子修、以下 熱研)は、新生児の適切なワクチン接種の実施を促進するため、新生児用の指紋認証と保護者の声認証を組み合わせることで本人確認を行い、確実にワクチン接種の履歴と計画を管理するシステムを開発、ケニアの病院での実証試験により、その有用性を確認しました。なお、病院でのワクチン接種時に出生直後を含む新生児の本人確認を生体認証を用いて行うのは世界で初めてです(注1)。
本実証試験は2022年9月から開始し、これまで300名以上の保護者と新生児のデータを登録し、150名以上の新生児に対してワクチン接種履歴を登録しました。
今後、ケニア内で対象の病院を拡大し、システム利用上の課題を検証・改善しながら2023年3月まで実証試験を行う予定です。
ワクチン接種の重要性と課題
世界では多くの子供が幼いうちに命を落としており、COVID-19の影響を除いても2020年の1年間で、約500万人の子供が5さいの誕生日を迎える前に亡くなっています。さらに、これら5さい以下の子供たちの約半数である240万人は、出生後28日以内に命を落としており、その多くは予防可能であるとされています(注2)。
一方、世界では電気や通信のインフラ整備の遅れによりデジタル技術の活用が進まない地域があります。これらの地域では、誰が、いつ、どこで出生し、どのような医療サービスを受けたか、といった基本的な情報が手書きで記録されている場合があります。こうした場合、来院した保護者と子供に必要な医療サービスを医療従事者が簡単に把握できず、適切なワクチン接種などの働きかけを妨げる要因のひとつとなっています。こうした課題の解決を目指し、NECとKEMRI、熱研は、新生児期を含む子供の確実な本人確認を実現する生体認証技術を搭載し、出生から24か月の間に推奨されるワクチン接種の履歴と計画を管理できるシステムを共同で開発しました。
本システムの特長
新生児では出産時のケア方法など様々な出生時の状況により、指紋を精緻に撮像できないことがあり、従来の指紋認証による本人確認には大きな困難が伴うことが調査の結果わかりました。また、ワクチン接種管理システムを実際に病院で利用してもらうためには、病院スタッフが特別な手順やスキルの習得を必要とせず、簡単に導入できることも重要でした。
そこでNECは、保護者の本人確認に声認証を活用し、その保護者に紐づけられた新生児を指紋の紋様(渦の形)により照合する方法を採用しました。
声認証では本人と子供の名前を名乗る程度の時間で認証が可能なため、出産直後でも負担を最小限におさえられます。また、医療機関も従来の診療時の手順をほとんど変えることなく声認証を導入することが可能です。
新生児の本人確認では、従来型の指紋認証を用いるのではなく、指紋画像から紋様情報のみを抽出し、複数指の紋様情報の組み合わせで本人確認を行う技術を開発しました。
本システムにより、保護者と新生児それぞれに適した生体認証技術によって本人確認が可能となり、生後24か月までに接種が推奨されるワクチンとその適切なスケジュールを登録することで、接種履歴を記録するとともに、適切なタイミングで次の接種を保護者に働きかけることができるようになります。
本システムの病院での利用手順
病院では、以下のような手順で実証試験を行っています。
(1) 出生当日に保護者の声と新生児の指紋の紋様を登録(左右の親指と人差し指の合計4指を登録)。
(2) 所定の予防接種のスケジュールに従い、病院スタッフが保護者に来院を働きかける。
(3) 保護者が来院時に名前を伝える際の音声で声認証を行って保護者を照合、データベースからその保護者の子供を絞り込む。
(4) 子供の4指の指紋を専用スキャナーで撮影。前の手順で絞り込まれた子供のデータと、撮影した指紋から抽出した紋様を照合し本人確認を行う。
(5) 所定のワクチン接種を行い、システムに接種履歴を登録する。
実証試験の概要
実施期間: 2022年9月〜2023年3月
対象病院:ケニア共和国クワレ郡キナンゴ病院
対象者: 本実証試験参加を希望する約1000名の保護者と新生児(2022年11月末時点で約300名がデータ登録済み)
試験内容:ワクチン接種管理システムを活用して、新生児の出生時の身体特徴情報と、生後24か月までの8種類のワクチン接種と1種類のビタミン摂取の実施履歴と計画を記録し、同システムの有用性と課題の検証を行います。なお、取得した声情報および指紋の紋様情報は、今回の試験用途だけに用い、試験終了後に削除します。
指紋の紋様を活用した本人確認について
本システムでは、新生児の複数の指(左右の親指と人差し指の合計4指)から撮像された指紋画像を、それぞれの渦の形によって5種類に分類(注3)、その紋様の情報を登録します。今回の実証試験に際し、事前に新生児50名の指紋を撮影して紋様の組み合わせを調査したころ、50名の中でまったく同じ4指の紋様の組み合わせはありませんでした。そこで本システムでは、この紋様による分類と認証精度95%を実現するNECの声認証(注4)を組み合わせることで、新生児の本人確認の精度向上を実現しています。
3者は今後、2023年3月まで本実証試験を継続し、病院からのフィードバックを基に本システムの改善を図ります。その後、複数の病院をネットワーク化した実証試験に着手し、2023年中を目標にケニア国内での本格的な導入を目指します。さらに、他国への展開も検討します。
ワクチン接種率の向上への取り組みにより、SDGsの目標3.2「すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 12 件以下まで減らし、5 歳以下死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 25 件以下まで減らすことを目指し、2030 年までに、新生児及び 5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する」の実現に貢献します。また、全ての新生児へ親子関係と出生地情報の記録および本人確認の手段を提供することで、目標16.9「2030 年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する」の実現に貢献します。
なお、本実証試験に関するコメントは以下のとおりです。
KEMRIがパートナーとともにこの画期的な研究の先頭に立ち、生体認証とワクチン接種管理システムを用いてリアルタイムで本人確認を行うとともに、より良い健康の実現とユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けた政策と行動が、このような成果をもたらすことを大変光栄に思います。また、KEMRIの研究者が、クワレ郡キナンゴ病院、NEC、長崎大学と共同してこのシステムを検証することを嬉しく思っています。
KEMRI サム カリウキ所長
新生児の生体認証技術を含めた母子を正確に同定する仕組みによる予防接種管理システムの開発が、ケニアにおける出生後24ヶ月間の予防接種率を加速的に向上させることに期待を寄せています。また、この新生児の正確な認識する技術が、精度の高い予防接種管理システムの設計基盤となり、その結果、新生児の健康に関するユニバーサル・ヘルス・カバレッジが達成されることも大きな期待をしています。
第1回野口英世アフリカ賞受賞者 ミリアム・ウェレ博士
本リリースの詳細は下記をご参照ください。
https://jpn.nec.com/press/202302/20230207_01.html
概要:日本電気株式会社(NEC)
詳細は www.nec.co.jp をご覧ください。
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本実証試験は2022年9月から開始し、これまで300名以上の保護者と新生児のデータを登録し、150名以上の新生児に対してワクチン接種履歴を登録しました。
今後、ケニア内で対象の病院を拡大し、システム利用上の課題を検証・改善しながら2023年3月まで実証試験を行う予定です。
ワクチン接種の重要性と課題
世界では多くの子供が幼いうちに命を落としており、COVID-19の影響を除いても2020年の1年間で、約500万人の子供が5さいの誕生日を迎える前に亡くなっています。さらに、これら5さい以下の子供たちの約半数である240万人は、出生後28日以内に命を落としており、その多くは予防可能であるとされています(注2)。
一方、世界では電気や通信のインフラ整備の遅れによりデジタル技術の活用が進まない地域があります。これらの地域では、誰が、いつ、どこで出生し、どのような医療サービスを受けたか、といった基本的な情報が手書きで記録されている場合があります。こうした場合、来院した保護者と子供に必要な医療サービスを医療従事者が簡単に把握できず、適切なワクチン接種などの働きかけを妨げる要因のひとつとなっています。こうした課題の解決を目指し、NECとKEMRI、熱研は、新生児期を含む子供の確実な本人確認を実現する生体認証技術を搭載し、出生から24か月の間に推奨されるワクチン接種の履歴と計画を管理できるシステムを共同で開発しました。
本システムの特長
新生児では出産時のケア方法など様々な出生時の状況により、指紋を精緻に撮像できないことがあり、従来の指紋認証による本人確認には大きな困難が伴うことが調査の結果わかりました。また、ワクチン接種管理システムを実際に病院で利用してもらうためには、病院スタッフが特別な手順やスキルの習得を必要とせず、簡単に導入できることも重要でした。
そこでNECは、保護者の本人確認に声認証を活用し、その保護者に紐づけられた新生児を指紋の紋様(渦の形)により照合する方法を採用しました。
声認証では本人と子供の名前を名乗る程度の時間で認証が可能なため、出産直後でも負担を最小限におさえられます。また、医療機関も従来の診療時の手順をほとんど変えることなく声認証を導入することが可能です。
新生児の本人確認では、従来型の指紋認証を用いるのではなく、指紋画像から紋様情報のみを抽出し、複数指の紋様情報の組み合わせで本人確認を行う技術を開発しました。
本システムにより、保護者と新生児それぞれに適した生体認証技術によって本人確認が可能となり、生後24か月までに接種が推奨されるワクチンとその適切なスケジュールを登録することで、接種履歴を記録するとともに、適切なタイミングで次の接種を保護者に働きかけることができるようになります。
本システムの病院での利用手順
病院では、以下のような手順で実証試験を行っています。
(1) 出生当日に保護者の声と新生児の指紋の紋様を登録(左右の親指と人差し指の合計4指を登録)。
(2) 所定の予防接種のスケジュールに従い、病院スタッフが保護者に来院を働きかける。
(3) 保護者が来院時に名前を伝える際の音声で声認証を行って保護者を照合、データベースからその保護者の子供を絞り込む。
(4) 子供の4指の指紋を専用スキャナーで撮影。前の手順で絞り込まれた子供のデータと、撮影した指紋から抽出した紋様を照合し本人確認を行う。
(5) 所定のワクチン接種を行い、システムに接種履歴を登録する。
実証試験の概要
実施期間: 2022年9月〜2023年3月
対象病院:ケニア共和国クワレ郡キナンゴ病院
対象者: 本実証試験参加を希望する約1000名の保護者と新生児(2022年11月末時点で約300名がデータ登録済み)
試験内容:ワクチン接種管理システムを活用して、新生児の出生時の身体特徴情報と、生後24か月までの8種類のワクチン接種と1種類のビタミン摂取の実施履歴と計画を記録し、同システムの有用性と課題の検証を行います。なお、取得した声情報および指紋の紋様情報は、今回の試験用途だけに用い、試験終了後に削除します。
指紋の紋様を活用した本人確認について
本システムでは、新生児の複数の指(左右の親指と人差し指の合計4指)から撮像された指紋画像を、それぞれの渦の形によって5種類に分類(注3)、その紋様の情報を登録します。今回の実証試験に際し、事前に新生児50名の指紋を撮影して紋様の組み合わせを調査したころ、50名の中でまったく同じ4指の紋様の組み合わせはありませんでした。そこで本システムでは、この紋様による分類と認証精度95%を実現するNECの声認証(注4)を組み合わせることで、新生児の本人確認の精度向上を実現しています。
3者は今後、2023年3月まで本実証試験を継続し、病院からのフィードバックを基に本システムの改善を図ります。その後、複数の病院をネットワーク化した実証試験に着手し、2023年中を目標にケニア国内での本格的な導入を目指します。さらに、他国への展開も検討します。
ワクチン接種率の向上への取り組みにより、SDGsの目標3.2「すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 12 件以下まで減らし、5 歳以下死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 25 件以下まで減らすことを目指し、2030 年までに、新生児及び 5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する」の実現に貢献します。また、全ての新生児へ親子関係と出生地情報の記録および本人確認の手段を提供することで、目標16.9「2030 年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する」の実現に貢献します。
なお、本実証試験に関するコメントは以下のとおりです。
KEMRIがパートナーとともにこの画期的な研究の先頭に立ち、生体認証とワクチン接種管理システムを用いてリアルタイムで本人確認を行うとともに、より良い健康の実現とユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けた政策と行動が、このような成果をもたらすことを大変光栄に思います。また、KEMRIの研究者が、クワレ郡キナンゴ病院、NEC、長崎大学と共同してこのシステムを検証することを嬉しく思っています。
KEMRI サム カリウキ所長
新生児の生体認証技術を含めた母子を正確に同定する仕組みによる予防接種管理システムの開発が、ケニアにおける出生後24ヶ月間の予防接種率を加速的に向上させることに期待を寄せています。また、この新生児の正確な認識する技術が、精度の高い予防接種管理システムの設計基盤となり、その結果、新生児の健康に関するユニバーサル・ヘルス・カバレッジが達成されることも大きな期待をしています。
第1回野口英世アフリカ賞受賞者 ミリアム・ウェレ博士
本リリースの詳細は下記をご参照ください。
https://jpn.nec.com/press/202302/20230207_01.html
概要:日本電気株式会社(NEC)
詳細は www.nec.co.jp をご覧ください。
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