【プレスリリース】不足する世界的な保健医療対策の財源に―金融取引税に大きな可能性
[10/12/09]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2010年12月9日
国境なき医師団(MSF)日本
不足する世界的な保健医療対策の財源に
金融取引税に大きな可能性
国際的な人道・医療援助団体である国境なき医師団(MSF)は、金融取引税が保健医療のための追加資金として、安定的で持続的な財源になり得る可能性があると考えている。子どもの栄養失調やHIV/エイズなど、幅広い医療問題に取り組むためには、政府開発援助(ODA)による資金援助に加えて、金融取引税からの財源が必要とされることを、MSFはその活動を通じて目の当たりにしている。
◆金融取引税をめぐる議論が高まるなか、MSFはこのほど、以下の論説(抜粋)を発表した。
金融取引税は、金融市場を安定化させ、世界金融危機の間に生じた損失を補てんする財源を生み出す手段として導入が検討されている。しかし、多くの経済学者および世界のリーダーたちは、金融取引税のもう一つの利点に注目している。それはこの税制が、低・中所得国の保健医療と開発のための安定的かつ持続的な資金調達の手段となり得るという点である。金融取引税による財源は、HIV/エイズ、乳幼児死亡率を下げるための栄養治療プログラムや集団予防接種など、さまざまな保健医療と開発問題に充てることができる。
HIVは母子保健を考えるうえでの主要要因であり、出産可能年齢の女性の最大の死因となっている。治療薬の普及を含めて世界的なHIV/エイズ対策への支援が宣言されているにも関わらず、抗レトロウイルス薬(ARV)治療をただちに必要とする人びとのうち、この命をつなぐための薬を手にすることができるのは3分の1に満たない。最新の研究により、エイズ治療の拡大によって患者の寿命を延ばすだけでなく、新規感染者数も抑えられることが明らかになったが、それにも関わらず「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」などのHIV/エイズ対策への主要な資金拠出機関は、現在深刻な財政難に陥っている。金融取引税は、この重要な試みへの資金捻出を後押しできる。
多くの組織や団体が、保健医療対策としての金融取引税の導入を求めており、60ヵ国が参加する「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」もその1つである。現在リーディング・グループの議長国である日本は、金融取引税の一種である通貨取引税の導入を提言しており、英ポンド、米ドル、ユーロ、日本円の4つの主要通貨の為替取引に0.005%の通貨取引税を課すことで、年間330億米ドル(約2兆7799億円)の税収が得られると試算している。さらに国際通貨基金(IMF)も、金融取引税は技術的に実施可能であるとしている。金融取引税の構想の重要な点は、それが非常に低い税率でありながら、毎日何百万回と行われる取引に広く課税されることで、税収が増大し、保健医療のための多額な資金を創出することができるというところにある。
国際的な保健医療対策としての金融取引税の実施は、医療援助を行うための十分な資金を創出する重要な方法であり、その結果、多くの命を救い、無用な苦しみを減らすことができる。日本は世界のリーダーの一国として、金融取引税への支持を公に表明し続ける必要がある。またその影響力をリーディング・グループ内や20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)などの舞台で行使し、保健医療対策としての金融取引税の実現に向けての歩みを速めていかなければならない。
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国境なき医師団(MSF)日本
不足する世界的な保健医療対策の財源に
金融取引税に大きな可能性
国際的な人道・医療援助団体である国境なき医師団(MSF)は、金融取引税が保健医療のための追加資金として、安定的で持続的な財源になり得る可能性があると考えている。子どもの栄養失調やHIV/エイズなど、幅広い医療問題に取り組むためには、政府開発援助(ODA)による資金援助に加えて、金融取引税からの財源が必要とされることを、MSFはその活動を通じて目の当たりにしている。
◆金融取引税をめぐる議論が高まるなか、MSFはこのほど、以下の論説(抜粋)を発表した。
金融取引税は、金融市場を安定化させ、世界金融危機の間に生じた損失を補てんする財源を生み出す手段として導入が検討されている。しかし、多くの経済学者および世界のリーダーたちは、金融取引税のもう一つの利点に注目している。それはこの税制が、低・中所得国の保健医療と開発のための安定的かつ持続的な資金調達の手段となり得るという点である。金融取引税による財源は、HIV/エイズ、乳幼児死亡率を下げるための栄養治療プログラムや集団予防接種など、さまざまな保健医療と開発問題に充てることができる。
HIVは母子保健を考えるうえでの主要要因であり、出産可能年齢の女性の最大の死因となっている。治療薬の普及を含めて世界的なHIV/エイズ対策への支援が宣言されているにも関わらず、抗レトロウイルス薬(ARV)治療をただちに必要とする人びとのうち、この命をつなぐための薬を手にすることができるのは3分の1に満たない。最新の研究により、エイズ治療の拡大によって患者の寿命を延ばすだけでなく、新規感染者数も抑えられることが明らかになったが、それにも関わらず「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」などのHIV/エイズ対策への主要な資金拠出機関は、現在深刻な財政難に陥っている。金融取引税は、この重要な試みへの資金捻出を後押しできる。
多くの組織や団体が、保健医療対策としての金融取引税の導入を求めており、60ヵ国が参加する「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」もその1つである。現在リーディング・グループの議長国である日本は、金融取引税の一種である通貨取引税の導入を提言しており、英ポンド、米ドル、ユーロ、日本円の4つの主要通貨の為替取引に0.005%の通貨取引税を課すことで、年間330億米ドル(約2兆7799億円)の税収が得られると試算している。さらに国際通貨基金(IMF)も、金融取引税は技術的に実施可能であるとしている。金融取引税の構想の重要な点は、それが非常に低い税率でありながら、毎日何百万回と行われる取引に広く課税されることで、税収が増大し、保健医療のための多額な資金を創出することができるというところにある。
国際的な保健医療対策としての金融取引税の実施は、医療援助を行うための十分な資金を創出する重要な方法であり、その結果、多くの命を救い、無用な苦しみを減らすことができる。日本は世界のリーダーの一国として、金融取引税への支持を公に表明し続ける必要がある。またその影響力をリーディング・グループ内や20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)などの舞台で行使し、保健医療対策としての金融取引税の実現に向けての歩みを速めていかなければならない。
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