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スギ花粉を分解し、花粉症を引き起こすアレルゲンの消失を可視化

2011年2月17日

ダイキン工業株式会社

スギ花粉を分解し、花粉症を引き起こすアレルゲンの消失を可視化
           山形大学との共同実証

 ダイキン工業株式会社は、山形大学 医学部の白澤信行 准教授との共同研究により、強力な酸化分解力を持つ当社独自のストリーマ放電がスギ花粉を分解し、花粉症の原因となるアレルゲンを 消失させる様子を可視化することに成功しました。
 今回、スギ花粉が物理的に分解・除去される形態の変化だけでなく、花粉症の症状を引き起こすアレルゲンが消失していく様子まで同時に可視化する実験法を確立しました。本実験は、あらかじめスギ花粉から抽出したアレルゲンに対してではなく、スギ花粉そのものに対してストリーマ放電を照射して効果を実証したものであり、花粉に対する効果実証としては過去に例を見ないものです。

 スギ花粉に含まれる2種類のアレルゲン(クリジェー1(ワン)、クリジェー2(ツー))は、春の花粉症の代表的な原因物質であるとされており、スギ花粉症患者の92.4%はクリジェー1、クリジェー2の両方に対してアレルギー反応を起こすことが報告されています※1。クリジェー1はスギ花粉の表面に含まれる一方で、クリジェー2は花粉内部の細胞質内に含まれており※2、スギ花粉症を予防するためにはこれら2種類のアレルゲンを分解・除去する必要があります。
 今回の実証では、強力な酸化分解力を持つストリーマ放電によってスギ花粉が分解・除去される形態の変化を調べるために、対象物を立体的に観察することが可能な走査型電子顕微鏡を用い、ストリーマ放電を照射したスギ花粉を撮影しました。また、花粉症の症状を引き起こす抗原性の変化についても調べるため、ストリーマ放電を照射した花粉を、クリジェー1およびクリジェー2に反応して蛍光を発する抗体と結合させ、花粉症を引き起こすアレルゲンの有無について蛍光顕微鏡を用いて撮影しました。その結果、ストリーマ放電がスギ花粉を分解・除去し、また花粉症を引き起こす抗原性を消失させることが確認できました。

 なお、今回の研究成果は、2011年11月10日〜12日にグランドプリンスホテル新高輪で開催される、第61回日本アレルギー学会秋季学術大会にて山形大学と共同で発表する予定です。

【2種類のアレルゲンからなるスギ花粉の構造】
● スギ花粉には2種類のアレルゲンが潜んでいる。
● 花粉症の人の92.4%はクリジェー1とクリジェー2の両方に反応する。
● 表面のクリジェー1を除去しても、クリジェー2は硬い外皮に守られている。
※1 平成4年度厚生省アレルギー総合研究事業研究報告書、p166-168(1993)
※2 スギ花粉アレルゲンCryj1とCryj2の発芽花粉における局在性. 日本花粉学会会誌、p15-22(2004)

■実証結果
1)試験概要
目的: あらかじめスギ花粉から抽出したアレルゲンではなく、スギ花粉そのものに対してストリーマ放電を照射し、スギ花粉の形態変化とアレルゲンの抗原性変化を観察することで、実空間で飛散している状態に近いスギ花粉に対するストリーマ放電の有用性を検証する。
手順: ?正常な花粉※3に、ストリーマ放電を照射。
    ?ストリーマ放電を照射した花粉の一部は、走査型電子顕微鏡で形態変化を観察。
    ?ストリーマ放電を照射した花粉の一部は、クリジェー1に反応すると蛍光色を発する抗体※4と結合させ、蛍光顕微鏡で観察し、クリジェー1の有無を確認。
    ?ストリーマ放電を照射した花粉の一部は、花粉内部のクリジェー2が見えるよう切断し、クリジェー2に反応すると蛍光を発する抗体※5と結合させ、切断面を蛍光顕微鏡で観察し、クリジェー2の有無を確認。

※3 CEDAR POLLEN-CJ (JAPANESE CEDAR) LB-5289 LSLコスモバイオ株式会社
※4 Anti-Cry j-1 LB-5201 LSL コスモバイオ株式会社、Alexa488-labeled Anti-rabbit IgG
※5 Anti-Cry j-2 LB-5202 LSL コスモバイオ株式会社、Alexa488-labeled Anti-rabbit IgG

2)試験結果
<走査型顕微鏡による観察>
【試験結果】ストリーマ照射前の正常なスギ花粉は30×40μm前後の椎茸状構造をしている。
ストリーマ照射4日後には、形態が破壊され、表面にはくぼみが多数存在する。

<蛍光顕微鏡による観察>
・クリジェー1の抗原性の変化
【試験結果】ストリーマ照射前のスギ花粉は表面にクリジェー1を有しており、数多くの強い蛍光を示す陽性部位が観察されたが、照射2日後には陽性部位の数は激減した。照射4日後には明確な陽性部位が観察されず、クリジェー1の抗原性が失われている。

・クリジェー2の抗原性の変化
【試験結果】ストリーマ照射前のスギ花粉は内部にクリジェー2を有しており、切断面の中心部に数多くの強い蛍光を示す陽性部位が観察された。
照射4日後には明確な陽性部位が観察されず、クリジェー2の抗原性が失われている。

【ご参考資料】
■ストリーマ放電技術について
 2004年に当社が開発したストリーマ放電技術は、これまで困難とされていた「高速電子」を安定的に発生させることに成功した画期的な空気浄化技術です。ストリーマ放電とは、プラズマ放電の一種で、酸化分解力の高い「高速電子」を3次元的・広範囲に発生させるため、一般的なプラズマ放電(グロー放電)と比べて、酸化分解力が1000倍以上になります。本技術は、空気成分と合体した高速電子が、強い酸化分解力をもつため、ニオイや菌類・室内汚染物質のホルムアルデヒドなどに対しても持続的な除去効果があります。これまでにも、強毒性インフルエンザウイルス(H5N1)、弱毒性インフルエンザウイルス(H1N1)やノロウイルス、食中毒の原因となる毒素や細菌といった、様々な有害物質の不活化効果があることを、大学及び公的研究機関と共同で実証してきました。
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