ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎の発熱症状に対する乳酸菌飲料の軽減効果を確認
[11/05/10]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2011年5月10日
順天堂大学大学院医学研究科
ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎の発熱症状に対する
乳酸菌飲料の軽減効果を確認
〜介護老人保健施設での感染性胃腸炎集団感染の予防に期待〜
順天堂大学大学院医学研究科プロバイオティクス研究講座(永田 智、山城雄一郎ほか)では、介護老人保健施設に入所する高齢者にラクトバチルス カゼイ シロタ株(LcS)を含む発酵乳を飲用してもらった結果、感染性胃腸炎(ノロウイルスによることを確認)に起因する発熱症状を緩和する効果を確認しました。
また、糞便細菌叢を解析したところ、LcS発酵乳の飲用によって有用菌(ビフィズス菌、乳酸桿菌)の増加と有害菌(大腸菌群)の減少、有機酸の増加を認め、腸内環境の改善が 感染性胃腸炎症状の緩和をもたらす要因の一つであると考えられました。
ノロウイルスは、感染性胃腸炎の主な原因として知られていますが、抵抗力の低い高齢者では、脱水症状や発熱を起こすリスクがあるなど重症化するケースがあります。近年、高齢者施設などにおいて集団感染が多発しており、如何に感染を食い止めるかが課題となっています。
これまで、乳酸菌などのプロバイオティクスのウイルス性胃腸炎に対する効果についてはデータが少なく、中でもノロウイルスに関する報告例はありませんでした。
今回の成果は、プロバイオティクスの摂取が、抵抗力の低い高齢者が集団で生活する施設等において、ノロウイルスをはじめとした感染性胃腸炎防御の有効な手段になりうることを示しています。
なお、本研究成果は、英国の科学雑誌「British Journal of Nutrition」オンライン版(4月27日付)に掲載されました。
1.背景
ノロウイルスは、急性感染性胃腸炎の主たる原因として知られています。ノロウイルスは手指や食品などを介して口から感染し、腸管内で増殖すると、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な人であれば軽症で回復しますが、抵抗力の弱い幼児や高齢者では重症化したり、まれにおう吐物を誤って気道に詰まらせて死亡したりすることがあります。特に高齢者施設では、免疫力の低い高齢者が集団生活する場であるため、感染症に対するリスク管理はとても重要です。しかし、感染を完全に抑えることは困難なため、如何にして感染被害を最小限に食い止めるかが課題となっています。
そこで、研究グループでは、感染防御効果や免疫調節作用が認められている乳酸菌(ラクトバチルス カゼイ シロタ株;LcS)の飲用によるノロウイルスの感染防御効果について調べました。
2.研究の内容
介護老人保健施設に入所する高齢者77名(平均年齢84歳)を対象に行いました。被験者を2つのグループに分け、一方は飲用群(39名)、もう一方を非飲用群(38名)としました。飲用群にはLcS発酵乳(1本80mlあたり400億個のLcSを含有)を1日1本ずつ、10月はじめから長期間継続して飲んでもらいました。毎日の診療録から、両群の健康状態を調査し、下痢の症状が認められた場合には糞便を採取して、ノロウイルス検出キットによってノロウイルスが原因であることを確認しました。その結果、12月の1か月間にノロウイルス感染性胃腸炎が多数の被験者に発症し、発症率に両群間で有意差はありませんでしたが、発熱症状(37℃以上)があった日数は、飲用群では非飲用群に比べ、有意に短縮されました(図1)。
また、同施設の入所者10名(平均年齢83歳)に、前述のLcS発酵乳を1日1本、2か月間飲んでもらい、飲用前後の糞便細菌叢を比較したところ、LcS発酵乳の飲用によって、有用菌のビフィズス菌および乳酸桿菌が増加しました。一方、有害菌の大腸菌群は減少し、日和見感染菌の起因菌である緑膿菌は、検出率が低下しました(図2)。加えて、糞便中の有機酸濃度を調べたところ、LcS発酵乳の飲用によって短鎖脂肪酸(主として酢酸)濃度が増加しました(図3)。
3.考察および今後の期待
本研究において、ノロウイルス感染によって生じる発熱症状の緩和に、LcS発酵乳の飲用が有効であることが示されました。また、LcS発酵乳の摂取によって、ビフィズス菌と乳酸桿菌の増加、大腸菌群と緑膿菌の減少、加えて短鎖脂肪酸(主として酢酸)濃度の上昇が確認されました。腸内の短鎖脂肪酸は、大腸菌群などの病原菌の繁殖を抑え腸の水電解質吸収能力やぜん動運動を改善し、腸細胞のエネルギー源ともなります。また、LcS発酵乳の継続飲用は、低下したNK活性を回復させる効果も認められています。したがって、LcS発酵乳の飲用による発熱症状の緩和は、腸内環境改善や免疫増強作用といった抵抗力の増強が大きな要因であると考えられます。
今回の成果から、免疫力の低い高齢者が集団で生活する施設等において、LcSはノロウイルスをはじめとする感染性胃腸炎やその他の感染防御の有効な手段になりうると期待されます。
順天堂大学大学院医学研究科
ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎の発熱症状に対する
乳酸菌飲料の軽減効果を確認
〜介護老人保健施設での感染性胃腸炎集団感染の予防に期待〜
順天堂大学大学院医学研究科プロバイオティクス研究講座(永田 智、山城雄一郎ほか)では、介護老人保健施設に入所する高齢者にラクトバチルス カゼイ シロタ株(LcS)を含む発酵乳を飲用してもらった結果、感染性胃腸炎(ノロウイルスによることを確認)に起因する発熱症状を緩和する効果を確認しました。
また、糞便細菌叢を解析したところ、LcS発酵乳の飲用によって有用菌(ビフィズス菌、乳酸桿菌)の増加と有害菌(大腸菌群)の減少、有機酸の増加を認め、腸内環境の改善が 感染性胃腸炎症状の緩和をもたらす要因の一つであると考えられました。
ノロウイルスは、感染性胃腸炎の主な原因として知られていますが、抵抗力の低い高齢者では、脱水症状や発熱を起こすリスクがあるなど重症化するケースがあります。近年、高齢者施設などにおいて集団感染が多発しており、如何に感染を食い止めるかが課題となっています。
これまで、乳酸菌などのプロバイオティクスのウイルス性胃腸炎に対する効果についてはデータが少なく、中でもノロウイルスに関する報告例はありませんでした。
今回の成果は、プロバイオティクスの摂取が、抵抗力の低い高齢者が集団で生活する施設等において、ノロウイルスをはじめとした感染性胃腸炎防御の有効な手段になりうることを示しています。
なお、本研究成果は、英国の科学雑誌「British Journal of Nutrition」オンライン版(4月27日付)に掲載されました。
1.背景
ノロウイルスは、急性感染性胃腸炎の主たる原因として知られています。ノロウイルスは手指や食品などを介して口から感染し、腸管内で増殖すると、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な人であれば軽症で回復しますが、抵抗力の弱い幼児や高齢者では重症化したり、まれにおう吐物を誤って気道に詰まらせて死亡したりすることがあります。特に高齢者施設では、免疫力の低い高齢者が集団生活する場であるため、感染症に対するリスク管理はとても重要です。しかし、感染を完全に抑えることは困難なため、如何にして感染被害を最小限に食い止めるかが課題となっています。
そこで、研究グループでは、感染防御効果や免疫調節作用が認められている乳酸菌(ラクトバチルス カゼイ シロタ株;LcS)の飲用によるノロウイルスの感染防御効果について調べました。
2.研究の内容
介護老人保健施設に入所する高齢者77名(平均年齢84歳)を対象に行いました。被験者を2つのグループに分け、一方は飲用群(39名)、もう一方を非飲用群(38名)としました。飲用群にはLcS発酵乳(1本80mlあたり400億個のLcSを含有)を1日1本ずつ、10月はじめから長期間継続して飲んでもらいました。毎日の診療録から、両群の健康状態を調査し、下痢の症状が認められた場合には糞便を採取して、ノロウイルス検出キットによってノロウイルスが原因であることを確認しました。その結果、12月の1か月間にノロウイルス感染性胃腸炎が多数の被験者に発症し、発症率に両群間で有意差はありませんでしたが、発熱症状(37℃以上)があった日数は、飲用群では非飲用群に比べ、有意に短縮されました(図1)。
また、同施設の入所者10名(平均年齢83歳)に、前述のLcS発酵乳を1日1本、2か月間飲んでもらい、飲用前後の糞便細菌叢を比較したところ、LcS発酵乳の飲用によって、有用菌のビフィズス菌および乳酸桿菌が増加しました。一方、有害菌の大腸菌群は減少し、日和見感染菌の起因菌である緑膿菌は、検出率が低下しました(図2)。加えて、糞便中の有機酸濃度を調べたところ、LcS発酵乳の飲用によって短鎖脂肪酸(主として酢酸)濃度が増加しました(図3)。
3.考察および今後の期待
本研究において、ノロウイルス感染によって生じる発熱症状の緩和に、LcS発酵乳の飲用が有効であることが示されました。また、LcS発酵乳の摂取によって、ビフィズス菌と乳酸桿菌の増加、大腸菌群と緑膿菌の減少、加えて短鎖脂肪酸(主として酢酸)濃度の上昇が確認されました。腸内の短鎖脂肪酸は、大腸菌群などの病原菌の繁殖を抑え腸の水電解質吸収能力やぜん動運動を改善し、腸細胞のエネルギー源ともなります。また、LcS発酵乳の継続飲用は、低下したNK活性を回復させる効果も認められています。したがって、LcS発酵乳の飲用による発熱症状の緩和は、腸内環境改善や免疫増強作用といった抵抗力の増強が大きな要因であると考えられます。
今回の成果から、免疫力の低い高齢者が集団で生活する施設等において、LcSはノロウイルスをはじめとする感染性胃腸炎やその他の感染防御の有効な手段になりうると期待されます。