ニジェール:栄養失調の予防対策で、乳幼児死亡率が半減
[11/05/24]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2011年5月24日
国境なき医師団(MSF)日本
ニジェール:栄養失調の予防対策で、乳幼児死亡率が半減
2011年5月26日からフランスで開催される主要8ヵ国(G8)首脳会合を前に、国境なき医師団(MSF) は、栄養失調の予防策に関する臨床結果を発表した。
アフリカ西部のニジェールでは、MSFが2010年に栄養価の高い栄養補助食を用いて栄養失調を未然に防ぐ対策を実施した結果、栄養補助食を摂取した乳幼児の死亡率が50%低下したことが明らかになった。
現在援助で使用されている食糧には、乳幼児の健全な発育に必須の栄養素が配合されていない。
MSFは、G8各国に援助食糧の内容を見直し、適切な食糧が命の危機に瀕している子どもたちへ確実に届くための対策を講じるよう訴える。
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2010年にカナダで開催されたG8で、各国は2011年から5年間で5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の2に削減できるよう取り組むと宣言した。しかし、世界ではいまも日本の総人口を上回る1億9500万人の子どもたちが栄養失調に苦しみ、5歳未満児の年間死者数の3分の1以上にあたる、267万人を上回る乳幼児が命を落としている。
MSFのニジェールにおける活動統括責任者、イザベル・ドゥフルニー医師は語る。
「MSFは、発育途中にある6ヵ月から2歳の乳幼児が低体重で致命的な状態に陥るまえに栄養治療食を摂取できれば、死亡率が半減することを確認しました。資金拠出者や政策立案者が真剣に乳幼児の死亡率を下げる対策を考えているならば、世界の『最も栄養失調に脅かされている地域』において、子どもたちの発育ニーズに見合った栄養素を含む食糧を提供できるようにシステムを変えなければなりません」
これまでにMSFは、栄養失調に対して予防面からのアプローチを進めてきた。
近年、栄養失調児のために開発された新しい栄養補助食は、牛乳、ミネラルやビタミンなどの必須栄養素を含み、調理することなくそのまま食べることができる。
MSFはこの栄養価の高い栄養補助食を用いて、世界で乳幼児死亡率が最も高く、アフリカのサヘル地域に位置する「最も栄養失調に脅かされている地域」での死亡者数を減らす取り組みを実施している。
2010年に、サヘル地域の国であるニジェールが食糧不足と栄養上の危機に陥った際、同国政府とMSFならびに現地NGOは、乳幼児の栄養失調を予防するために、最大規模の栄養補助食の配布を実施した。
2010年7月から12月の間、MSFはニジェールのタウア県、マラディ県、ザンデール県で、主に生後6ヵ月から2歳の子ども約15万人を対象に、3ヵ月から6ヵ月分に相当する、栄養補助食を配布した。一部の子どもたちは同時期に、国連世界食糧計画(WFP)による穀物と強化小麦を中心とする食糧配給も受けていた。マラリアや急性栄養失調という、この地域で一般的な小児疾患に対する医療も同時に提供され、栄養補助食の受給者以外の子どもたちも受診できた。
この期間内、MSFの疫学研究組織であるエピセンターは、栄養補助食の配布地域に住む数千人の乳幼児を対象に月間調査を行った。モニタリングの結果、調査対象者のすべての健康状態が向上した*。また、医療ケアが必要な子どもたちは、ニジェールの医療施設と連携して活動しているMSFや、他団体のもとに搬送された。
MSFの小児栄養顧問、スーザン・シェパード医師は語る。
「ヨーロッパや中南米、米国では、乳幼児に高栄養価の食糧を与えることは、栄養失調と乳幼児死亡率の低減対策において、長年にわたり、基本原則の1つとなってきました。いまこそ、『最も栄養失調に脅かされている地域』に住む子どもたちに、この基準を適用すべきです。もし、昨年MSFがニジェールで展開したのと同様の活動を支える適切な資源が投入されれば、今日にでも子どもたちの命を救うことができるのです」
メキシコ、タイ、米国や多くの欧州各国は、牛乳や卵といった高栄養価の食品を、最も貧窮した世帯の乳幼児も確実に摂取できるようにする施策によって、乳幼児期の栄養失調と死亡率の低減に成功している。しかし、食べ物の確保さえままならない世帯にとっては、高品質のタンパク質、脂質のほか他の必須栄養素を含む動物性の食品の購入は困難である。この栄養価の差を補う国レベルの対策が必須である。
栄養治療は免疫系統を弱めるため、栄養治療に陥った子どもはマラリア、呼吸器感染や下痢といった他の疾患による死亡のリスクが高まる。これらの「致命的な疾患」に対する予防接種や治療対策に高品質な栄養補助食の配布も追加できれば、乳幼児の死亡率低下が期待できる。
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2010年にMSFは、ニジェール国内のタウア、マラディおよびザンデール3県にある、64ヵ所の一次医療施設と9ヵ所の病院で現地の団体とともに、栄養失調の予防治療に加えて、小児医療および栄養失調の治療も実施した。ここでは、栄養失調に苦しむ約15万人の子どもたちが治療を受けた。これは2010年にニジェールで治療を受けた全栄養失調児の半分近くにあたり、うち2万4000人が入院治療を受けた。85%〜92%の子どもたちは既に退院している。MSFと現地の団体は21万6330件の5歳未満のマラリア患者の治療にあたり、37万件の小児検診を行い、1万3000人の子どもたちに入院治療を提供した。
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*マラディ県のマダルーンファ地区で、栄養を強化した食品が配布された子どもたちの死亡率は1日あたり1万人中、2.2人で、配布を受けなかった子どもたちの死亡率は、5.3人であった。マラディ県のギダンルンジ地区では、配布ありの子どもたちの死亡率は1日あたり1万人中、1.1人、配布なしの子どもたちでは2.5人。また、ザンデール県ミリアの町では、配布ありの子どもたちは1日あたり1万人中、1.2人、配布なしのグループでは3.2人だった。
国境なき医師団(MSF)日本
ニジェール:栄養失調の予防対策で、乳幼児死亡率が半減
2011年5月26日からフランスで開催される主要8ヵ国(G8)首脳会合を前に、国境なき医師団(MSF) は、栄養失調の予防策に関する臨床結果を発表した。
アフリカ西部のニジェールでは、MSFが2010年に栄養価の高い栄養補助食を用いて栄養失調を未然に防ぐ対策を実施した結果、栄養補助食を摂取した乳幼児の死亡率が50%低下したことが明らかになった。
現在援助で使用されている食糧には、乳幼児の健全な発育に必須の栄養素が配合されていない。
MSFは、G8各国に援助食糧の内容を見直し、適切な食糧が命の危機に瀕している子どもたちへ確実に届くための対策を講じるよう訴える。
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2010年にカナダで開催されたG8で、各国は2011年から5年間で5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の2に削減できるよう取り組むと宣言した。しかし、世界ではいまも日本の総人口を上回る1億9500万人の子どもたちが栄養失調に苦しみ、5歳未満児の年間死者数の3分の1以上にあたる、267万人を上回る乳幼児が命を落としている。
MSFのニジェールにおける活動統括責任者、イザベル・ドゥフルニー医師は語る。
「MSFは、発育途中にある6ヵ月から2歳の乳幼児が低体重で致命的な状態に陥るまえに栄養治療食を摂取できれば、死亡率が半減することを確認しました。資金拠出者や政策立案者が真剣に乳幼児の死亡率を下げる対策を考えているならば、世界の『最も栄養失調に脅かされている地域』において、子どもたちの発育ニーズに見合った栄養素を含む食糧を提供できるようにシステムを変えなければなりません」
これまでにMSFは、栄養失調に対して予防面からのアプローチを進めてきた。
近年、栄養失調児のために開発された新しい栄養補助食は、牛乳、ミネラルやビタミンなどの必須栄養素を含み、調理することなくそのまま食べることができる。
MSFはこの栄養価の高い栄養補助食を用いて、世界で乳幼児死亡率が最も高く、アフリカのサヘル地域に位置する「最も栄養失調に脅かされている地域」での死亡者数を減らす取り組みを実施している。
2010年に、サヘル地域の国であるニジェールが食糧不足と栄養上の危機に陥った際、同国政府とMSFならびに現地NGOは、乳幼児の栄養失調を予防するために、最大規模の栄養補助食の配布を実施した。
2010年7月から12月の間、MSFはニジェールのタウア県、マラディ県、ザンデール県で、主に生後6ヵ月から2歳の子ども約15万人を対象に、3ヵ月から6ヵ月分に相当する、栄養補助食を配布した。一部の子どもたちは同時期に、国連世界食糧計画(WFP)による穀物と強化小麦を中心とする食糧配給も受けていた。マラリアや急性栄養失調という、この地域で一般的な小児疾患に対する医療も同時に提供され、栄養補助食の受給者以外の子どもたちも受診できた。
この期間内、MSFの疫学研究組織であるエピセンターは、栄養補助食の配布地域に住む数千人の乳幼児を対象に月間調査を行った。モニタリングの結果、調査対象者のすべての健康状態が向上した*。また、医療ケアが必要な子どもたちは、ニジェールの医療施設と連携して活動しているMSFや、他団体のもとに搬送された。
MSFの小児栄養顧問、スーザン・シェパード医師は語る。
「ヨーロッパや中南米、米国では、乳幼児に高栄養価の食糧を与えることは、栄養失調と乳幼児死亡率の低減対策において、長年にわたり、基本原則の1つとなってきました。いまこそ、『最も栄養失調に脅かされている地域』に住む子どもたちに、この基準を適用すべきです。もし、昨年MSFがニジェールで展開したのと同様の活動を支える適切な資源が投入されれば、今日にでも子どもたちの命を救うことができるのです」
メキシコ、タイ、米国や多くの欧州各国は、牛乳や卵といった高栄養価の食品を、最も貧窮した世帯の乳幼児も確実に摂取できるようにする施策によって、乳幼児期の栄養失調と死亡率の低減に成功している。しかし、食べ物の確保さえままならない世帯にとっては、高品質のタンパク質、脂質のほか他の必須栄養素を含む動物性の食品の購入は困難である。この栄養価の差を補う国レベルの対策が必須である。
栄養治療は免疫系統を弱めるため、栄養治療に陥った子どもはマラリア、呼吸器感染や下痢といった他の疾患による死亡のリスクが高まる。これらの「致命的な疾患」に対する予防接種や治療対策に高品質な栄養補助食の配布も追加できれば、乳幼児の死亡率低下が期待できる。
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2010年にMSFは、ニジェール国内のタウア、マラディおよびザンデール3県にある、64ヵ所の一次医療施設と9ヵ所の病院で現地の団体とともに、栄養失調の予防治療に加えて、小児医療および栄養失調の治療も実施した。ここでは、栄養失調に苦しむ約15万人の子どもたちが治療を受けた。これは2010年にニジェールで治療を受けた全栄養失調児の半分近くにあたり、うち2万4000人が入院治療を受けた。85%〜92%の子どもたちは既に退院している。MSFと現地の団体は21万6330件の5歳未満のマラリア患者の治療にあたり、37万件の小児検診を行い、1万3000人の子どもたちに入院治療を提供した。
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*マラディ県のマダルーンファ地区で、栄養を強化した食品が配布された子どもたちの死亡率は1日あたり1万人中、2.2人で、配布を受けなかった子どもたちの死亡率は、5.3人であった。マラディ県のギダンルンジ地区では、配布ありの子どもたちの死亡率は1日あたり1万人中、1.1人、配布なしの子どもたちでは2.5人。また、ザンデール県ミリアの町では、配布ありの子どもたちは1日あたり1万人中、1.2人、配布なしのグループでは3.2人だった。