高温耐性に優れ、寿司米に向く水稲新品種「笑(え)みの絆(きずな)」を開発
[11/09/08]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2011年9月8日
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業総合研究センター
高温耐性に優れ、寿司米に向く
水稲新品種「笑(え)みの絆(きずな)」を開発
■ ポイント
・寿司米に向く、やや硬く、ほぐれやすく、あっさりした食感の米品種「笑みの絆」を開発しました。
・登熟期の高温耐性が強く、高温条件下でも玄米の白濁が少ないことにより、米の検査等級の低下を防げることから、農家経済の安定に繋がることが期待されます。
■ 概要
1.農研機構 中央農業総合研究センター【所長 佐々木昭博】は、高温耐性に優れ、寿司米に向く水稲新品種「笑みの絆」を育成いたしました。
2.「笑みの絆」を寿司飯にした場合、外観、なめらかさは「ササニシキ」よりも優れ、粘りは弱く、やや硬く、ほぐれ易く、あっさりした食感で、寿司米としての食味の総合評価は「ササニシキ」、「ハツシモ」よりも優れていました。
3.民間企業による業務用炊飯特性調査では、飯粒がしっかりしていて、酢飯に向くという評価が得られ、共同研究先の農業生産法人株式会社ファーム木精では、山口県、東京都の寿司店における実需評価を受けて、全国の寿司店、米穀店8店舗での「笑みの絆」の販売を予定しています。
4.「笑みの絆」の登熟期の高温耐性は強く、高温条件下でも玄米の白濁が少ないことにより、米の検査等級の低下を防げることから、農家経済の安定に繋がることが期待されます。
5.なお、本研究は農林水産省委託プロジェクト「低コストで質の良い加工・業務用農作物の安定供給技術の開発」の成果です。また、本品種は8月19日に品種登録出願公表されました。
■ 背景
「食の外部化」の進展により、現在、主食用米需要の3割弱を占める外食・中食産業の割合は今後も増加していくことが予想されることから、調理加工に適する米の開発が期待されています。調理加工用のお米の中で、寿司米については、酢の入りが良く、ほぐれやすい特性が求められます。また、近年の温暖化傾向による米の外観品質の低下が課題になっており、これに対処するため、登熟期の高温耐性に優れた品種が求められています。このような背景から、粘りの強い一般的な良食味品種とは異なり、炊飯米がなめらかで、やや硬く、ほぐれやすく、あっさりした食感を特徴としてもち、かつ、近年の温暖化傾向の条件下でも白濁が少なく、安定した外観品質を示し、農家経済の安定に繋がる高温耐性に強い品種の開発が望まれていました。
■ 経緯
「笑み(えみ)の絆(きずな)」は、強い粘りを持たない良食味品種の育成を目標として、寿司米用として定評のある「ハツシモ」から育成された「岐系120号」と良食味系統「収6602」の交配後代から育成された品種です。平成14年に育成を開始し、平成20年から「北陸225号」の系統名で関係各県に配付し、奨励品種決定調査および特性検定試験に供試してきました。平成21年度より農業生産法人株式会社ファーム木精との共同研究により寿司米等への適性を検討したところ、山口県、東京都の寿司店において高い評価が得られました。また、登熟期の高温耐性が強く、平成22年の猛暑下においても高い玄米品質を示すことが確認できました。この様な結果を受け、「北陸225号」を「笑みの絆」として品種登録申請を行い、普及を図ることとしました。
■ 内容・意義
1.育成地のある北陸地域では中生の熟期に属する品種であり、出穂期、成熟期は一般食用の主要品種である中生の「コシヒカリ」よりやや遅いです(表1)。
2.「コシヒカリ」に比較して、稈長および穂長は短く、穂数が多い草型をしています(表1、写真1、写真2)。
3.耐倒伏性は「コシヒカリ」より強く、収量性は、標準の施肥条件では「コシヒカリ」よりやや少ないですが、多肥条件では「コシヒカリ」より多収となります。
4.玄米の千粒重は「コシヒカリ」よりやや軽く、玄米の外観品質は「コシヒカリ」より心白および背基白の発生が明らかに少なく、光沢に優れます(表1、写真3)。
5.登熟期の高温耐性が強く、高温条件下でも玄米の白濁が少ないです(表2)。
6.寿司飯の外観、なめらかさは「ササニシキ」よりも優れており、ほぐれ易く、粘りは「ササニシキ」より弱いです。硬さは「ササニシキ」より硬く、あっさりした食感で、寿司米としての総合評価では「ササニシキ」、「ハツシモ」に優ります(表3)。(なお、「ササニシキ」、「ハツシモ」はこれまで比較的寿司米に向く米として評価されています。)
7.民間企業による業務用炊飯特性調査の結果では、飯粒がしっかりしていて、酢飯に向いていることが確認できました(表4)。
8.本品種の適応地域は「コシヒカリ」等の熟期の水稲品種の作付が可能で、冷害の危険性の少ない東北南部、北陸および関東以西であり、広い地域で栽培ができます。
■ 今後の予定・期待
わが国に普及している水稲品種の大半が「コシヒカリ」のような粘りが強く、柔らかい米の品種ですが、業務用として、酢を吸わせる寿司や、ルウをかけるカレーなど、あっさりしていてやや硬めの米が適する用途が少なくありません。「笑みの絆」が新しい素材として市場に提供されることにより、この米の特性を生かした新商品の開発等米に関わる産業の活性化、さらには、近年の温暖化傾向下でも白濁米が少なく、検査等級の低下を防げると考えられることから、農家経済の安定に繋がることが期待されます。なお、共同研究先の農業生産法人株式会社ファーム木精では、山口県、東京都の寿司店における実需評価の結果を受け、全国に渡る寿司店、米穀店8店舗での販売を予定しています。
■ 品種の名前の由来
消費者が食べて、おいしさに笑みがこぼれ、生産者との絆が築かれることを願って名付けました。
■用語の解説
・精玄米重:米選機でくず米を除いた玄米の重量です。ちなみに、くず米を含む玄米の総重量のことを粗玄米重といいます。
・同上比率:標準品種である「コシヒカリ」の精玄米重を100とした時の「笑みの絆」の精玄米重比
・千粒重:玄米1000粒の重さのことです。
・白未熟粒:乳白粒、心白粒、背白粒、腹白粒等、玄米の胚乳部に白濁を生じる未熟な粒のこと。高温条件下で発生が増加する。
・乳白粒:玄米の全体が白色、不透明な粒のことです。
・心白粒:玄米の粒中心部が白色、不透明な粒のことです。
・背白粒:玄米の背部(胚がない方の側)が白色、不透明な粒のことです。
・腹白粒:玄米の腹部(胚がある方の側)が白色、不透明な粒のことです。
■ 現地栽培試験担当者
農業生産法人株式会社ファーム木精 代表取締役社長 加瀬部 一倫
〒690-3207 島根県飯石郡飯南町頓原495-2
電話 0854-72-1999
FAX 0854-72-1997
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業総合研究センター
高温耐性に優れ、寿司米に向く
水稲新品種「笑(え)みの絆(きずな)」を開発
■ ポイント
・寿司米に向く、やや硬く、ほぐれやすく、あっさりした食感の米品種「笑みの絆」を開発しました。
・登熟期の高温耐性が強く、高温条件下でも玄米の白濁が少ないことにより、米の検査等級の低下を防げることから、農家経済の安定に繋がることが期待されます。
■ 概要
1.農研機構 中央農業総合研究センター【所長 佐々木昭博】は、高温耐性に優れ、寿司米に向く水稲新品種「笑みの絆」を育成いたしました。
2.「笑みの絆」を寿司飯にした場合、外観、なめらかさは「ササニシキ」よりも優れ、粘りは弱く、やや硬く、ほぐれ易く、あっさりした食感で、寿司米としての食味の総合評価は「ササニシキ」、「ハツシモ」よりも優れていました。
3.民間企業による業務用炊飯特性調査では、飯粒がしっかりしていて、酢飯に向くという評価が得られ、共同研究先の農業生産法人株式会社ファーム木精では、山口県、東京都の寿司店における実需評価を受けて、全国の寿司店、米穀店8店舗での「笑みの絆」の販売を予定しています。
4.「笑みの絆」の登熟期の高温耐性は強く、高温条件下でも玄米の白濁が少ないことにより、米の検査等級の低下を防げることから、農家経済の安定に繋がることが期待されます。
5.なお、本研究は農林水産省委託プロジェクト「低コストで質の良い加工・業務用農作物の安定供給技術の開発」の成果です。また、本品種は8月19日に品種登録出願公表されました。
■ 背景
「食の外部化」の進展により、現在、主食用米需要の3割弱を占める外食・中食産業の割合は今後も増加していくことが予想されることから、調理加工に適する米の開発が期待されています。調理加工用のお米の中で、寿司米については、酢の入りが良く、ほぐれやすい特性が求められます。また、近年の温暖化傾向による米の外観品質の低下が課題になっており、これに対処するため、登熟期の高温耐性に優れた品種が求められています。このような背景から、粘りの強い一般的な良食味品種とは異なり、炊飯米がなめらかで、やや硬く、ほぐれやすく、あっさりした食感を特徴としてもち、かつ、近年の温暖化傾向の条件下でも白濁が少なく、安定した外観品質を示し、農家経済の安定に繋がる高温耐性に強い品種の開発が望まれていました。
■ 経緯
「笑み(えみ)の絆(きずな)」は、強い粘りを持たない良食味品種の育成を目標として、寿司米用として定評のある「ハツシモ」から育成された「岐系120号」と良食味系統「収6602」の交配後代から育成された品種です。平成14年に育成を開始し、平成20年から「北陸225号」の系統名で関係各県に配付し、奨励品種決定調査および特性検定試験に供試してきました。平成21年度より農業生産法人株式会社ファーム木精との共同研究により寿司米等への適性を検討したところ、山口県、東京都の寿司店において高い評価が得られました。また、登熟期の高温耐性が強く、平成22年の猛暑下においても高い玄米品質を示すことが確認できました。この様な結果を受け、「北陸225号」を「笑みの絆」として品種登録申請を行い、普及を図ることとしました。
■ 内容・意義
1.育成地のある北陸地域では中生の熟期に属する品種であり、出穂期、成熟期は一般食用の主要品種である中生の「コシヒカリ」よりやや遅いです(表1)。
2.「コシヒカリ」に比較して、稈長および穂長は短く、穂数が多い草型をしています(表1、写真1、写真2)。
3.耐倒伏性は「コシヒカリ」より強く、収量性は、標準の施肥条件では「コシヒカリ」よりやや少ないですが、多肥条件では「コシヒカリ」より多収となります。
4.玄米の千粒重は「コシヒカリ」よりやや軽く、玄米の外観品質は「コシヒカリ」より心白および背基白の発生が明らかに少なく、光沢に優れます(表1、写真3)。
5.登熟期の高温耐性が強く、高温条件下でも玄米の白濁が少ないです(表2)。
6.寿司飯の外観、なめらかさは「ササニシキ」よりも優れており、ほぐれ易く、粘りは「ササニシキ」より弱いです。硬さは「ササニシキ」より硬く、あっさりした食感で、寿司米としての総合評価では「ササニシキ」、「ハツシモ」に優ります(表3)。(なお、「ササニシキ」、「ハツシモ」はこれまで比較的寿司米に向く米として評価されています。)
7.民間企業による業務用炊飯特性調査の結果では、飯粒がしっかりしていて、酢飯に向いていることが確認できました(表4)。
8.本品種の適応地域は「コシヒカリ」等の熟期の水稲品種の作付が可能で、冷害の危険性の少ない東北南部、北陸および関東以西であり、広い地域で栽培ができます。
■ 今後の予定・期待
わが国に普及している水稲品種の大半が「コシヒカリ」のような粘りが強く、柔らかい米の品種ですが、業務用として、酢を吸わせる寿司や、ルウをかけるカレーなど、あっさりしていてやや硬めの米が適する用途が少なくありません。「笑みの絆」が新しい素材として市場に提供されることにより、この米の特性を生かした新商品の開発等米に関わる産業の活性化、さらには、近年の温暖化傾向下でも白濁米が少なく、検査等級の低下を防げると考えられることから、農家経済の安定に繋がることが期待されます。なお、共同研究先の農業生産法人株式会社ファーム木精では、山口県、東京都の寿司店における実需評価の結果を受け、全国に渡る寿司店、米穀店8店舗での販売を予定しています。
■ 品種の名前の由来
消費者が食べて、おいしさに笑みがこぼれ、生産者との絆が築かれることを願って名付けました。
■用語の解説
・精玄米重:米選機でくず米を除いた玄米の重量です。ちなみに、くず米を含む玄米の総重量のことを粗玄米重といいます。
・同上比率:標準品種である「コシヒカリ」の精玄米重を100とした時の「笑みの絆」の精玄米重比
・千粒重:玄米1000粒の重さのことです。
・白未熟粒:乳白粒、心白粒、背白粒、腹白粒等、玄米の胚乳部に白濁を生じる未熟な粒のこと。高温条件下で発生が増加する。
・乳白粒:玄米の全体が白色、不透明な粒のことです。
・心白粒:玄米の粒中心部が白色、不透明な粒のことです。
・背白粒:玄米の背部(胚がない方の側)が白色、不透明な粒のことです。
・腹白粒:玄米の腹部(胚がある方の側)が白色、不透明な粒のことです。
■ 現地栽培試験担当者
農業生産法人株式会社ファーム木精 代表取締役社長 加瀬部 一倫
〒690-3207 島根県飯石郡飯南町頓原495-2
電話 0854-72-1999
FAX 0854-72-1997