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【プレスリリース】TPP:知的財産権保護でジェネリック薬の供給が脅かされる恐れ

2011年11月7日

国境なき医師団(MSF)

TPP:知的財産権保護でジェネリック薬の供給が脅かされる恐れ
――TPPが途上国向け医薬品の供給に及ぼす影響について、MSFは日本政府に考慮を要請

日本政府が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関する協議参加への検討を進めている中、国境なき医師団(MSF)はTPPに盛り込まれた知的財産権の保護に関する条項によって途上国向けの安価な医薬品の供給が脅かされると訴える。

米国はTPPを通じて知的財産権の保護強化を推進しており、これによりMSFのような団体が活動する途上国で医薬品の供給が脅かされる懸念が生じている。MSFは日本におけるTPPを巡る議論において、この懸念が除外されていることを憂慮している。

MSF日本のエリック・ウアネス事務局長は説明する。
「MSFの治療プログラム、引いては患者の命が、良質で安価なジェネリック医薬品の供給にかかっていることは、これまで私たちが世界各地で医療を提供してきた経験から明らかです。日本政府がTPP交渉において、知的財産権を厳格に保護する条項の、途上国の患者に及ぼす影響を適切に考慮しなければ、HIV/エイズなどの病気の治療におけるこれまでの進歩が台無しになるでしょう」

オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国の9ヵ国で現在交渉が進められているTPPは、アジア太平洋地域における経済政策の要とされ、同時に開発途上国も含めた地域間の自由貿易協定のモデルであるとされている。米国が推進する知的財産権の保護強化は、TPP参加国におけるジェネリック医薬品の供給の遅れや、医薬品メーカー間の価格競争の減退につながる恐れがある。

ジェネリック医薬品メーカー間の価格競争は、過去10年間で第一世代のHIV/エイズ治療薬の価格の99%引き下げを可能にし、2002年時点で一人当たり年間1万米ドル(約78万円)だった価格が、現在では一人当たり年間60米ドル(約4680円)になった。この劇的な価格の引き下げによって、今日では600万人以上にHIV/エイズ治療を提供できるようになっている。

また、ジェネリック医薬品の価格競争を抑制すると、日本は自国の対外援助政策にも影響を与えることになる。日本は「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」の主要な資金提供者であり、世界基金の支援を受けたプログラムの多くがジェネリック医薬品に頼っているからだ。TPP交渉参加国のベトナム、マレーシア、ペルーのいずれも、世界基金の支援を受けている。

MSF日本の必須医薬品キャンペーン渉外担当、ブライアン・デイビスは、こう話す。
「市場競争を抑制する政策は、安価な医薬品で数百万人の人びとの命を救おうとする取り組みをも阻むものです。途上国における安価な医薬品へのアクセスの促進は、日本の貿易政策の要であるべきです」

MSFは引き続き、TPP交渉の進捗と、途上国に向けた医薬品の供給に及ぼす影響に注目していく。
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