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【プレスリリース】インド・EU首脳会議:2千人のHIV感染者がデリーでデモ

2011年2月10日

国境なき医師団(MSF)

インド・EU首脳会議:2千人のHIV感染者がデリーでデモ
−FTAで安価な薬の供給に制限の恐れ

2月10日から開かれるインドと欧州連合(EU)の首脳会議で、インドとEUの自由貿易協定(FTA)の協議が行われることを受け、HIV感染者や国境なき医師団(MSF)らおよそ2000人がニューデリーでデモ行進を行い、FTAに含まれる条項が開発途上国に向けたインド製の安価なジェネリック薬(後発医薬品)の製造や流通に深刻な影響を与える懸念を訴えた。

MSFインターナショナル会長、ウンニ・カルナカラ医師は次のように話す。
「私たちは活動現場で、余りに多くの人が必要な薬を買うことができずに命を落としていく姿を目にしています。『開発途上国の薬局』を閉ざすような協定がなされてはなりません」

インド製の高品質で安価な後発医薬品は、各国政府や国連機関、MSFなどが開発途上国で患者に治療を提供する上で大きな役割を果たしている。インドの後発医薬品メーカー間の価格競争によって、HIVの第一選択薬の価格は、2000年に1人当たり年間1万米ドル(約77万6100円)から、現在は約150米ドル(約1万1600円)までに99%以上下がった。この著しい価格の引き下げによって、世界各地でHIV治療が飛躍的に拡大した。開発途上国でHIV感染者660万人の治療に用いられる治療薬の80%以上がインド製であり、小児用のHIV治療薬に限っては90%がインド製である。MSFなどの医療援助団体は、HIV以外の疾病治療にもインド製の後発医薬品を使用している。

インドのHIV陽性者団体「デリーHIV陽性ネットワーク(DNP+)」のムンドリカ・ガーロット氏は話す。
「私たちの生死は貿易協定の交渉者に左右されるべきものではありません。私たちは、インドとEUに対して『私たちの命を引き換えにしないで!』と訴えるべくこの場にいるのです」

既存の貿易協定でも、新薬の後発医薬品の製造に制限をかけるものもあるが、インドとEUのFTAは新たな制限を生み出し、現状をさらに悪化させる恐れがある。EUはこれまでの交渉の中でインドに対して、安価な後発医薬品の製造、登録、流通に制限を及ぼす恐れがある複数の条項案に同意するよう要求してきた。今回の首脳会議では、これらの条項に関する協議がさらに進むと見込まれている。MSFが最も懸念しているのが、EUが推進する「知的所有権保護の強化」に関する条項である。この規定により、開発途上国に向けて輸出された後発医薬品が知的所有権の侵害と混同され、インドの税関で差し押さえられる事態や、後発医薬品を用いて治療を提供するMSFのような医療提供者に対し、訴訟が起こされる可能性もある。

MSFのインドにおける活動責任者、ピエロ・ガンディーニはこう述べている。
「EUがこの貿易協定で目指しているものは、多くの人の命を支えている安価な後発医薬品がインドで製造される上での大幅な遅れにつながります。私たち医療援助団体も、活動地での患者の治療のためにインドから後発医薬品を購入しているという理由だけで、標的になりかねません」

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デリーでの今回のデモに先がけて、ネパール、マレーシア、英国、南アフリカ、カメルーンで今週、活動家やHIV感染者による同様のデモが行われている。
MSFは現在19ヵ国で17万人にHIV/エイズ治療を提供している。
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