臭化メチル剤から完全に脱却した産地適合型栽培マニュアルの開発
[12/11/20]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
平成24年11月20日
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
臭化メチル剤から完全に脱却した産地適合型栽培マニュアルの開発― 栽培マニュアルの公表と研究成果発表会の開催 ―
■ ポイント
・土壌くん蒸剤として利用してきた不可欠用途用臭化メチル剤は、「不可欠用途臭化メチルの国家管理戦略」の策定により、平成24年12月31日で全廃されます。
・本剤全廃後でも安定生産活動ができるよう新規代替栽培マニュアルを開発しました。
・この新規代替栽培マニュアルを広く知っていただくため、東京・名古屋・福岡で研究成果発表会を開催します。
■ 概要
1.臭化メチルは、モントリオール議定書により成層圏のオゾン層を破壊する物質と指定されたことから、先進国では平成17年に廃止されました。しかし、廃止によって我が国の生産現場に混乱を来す作目(ピーマン、キュウリ、メロン、ショウガ、スイカ)には特例措置として使用が認められてきました。
2.その特例措置も平成24年12月31日で全廃され、臭化メチルは農業の生産現場から姿を消します。
3.農研機構 中央農業総合研究センターは、平成20年度から農林水産省の新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業において、地方自治体、民間企業等13機関との産学官共同研究で土壌くん蒸用臭化メチル剤の代替技術を開発してきました。
4.中央農研では、これまでの研究成果として新規開発した産地適合型の臭化メチル代替栽培マニュアルを全国の農業関係者に広く知っていただくため、全国の三大都市(東京、名古屋、福岡)で研究成果発表会を開催します。
<東京会場>
日時:平成24年12月3日(月曜日) 10時00分〜15時00分
会場:日本教育会館一ツ橋ホール
<名古屋会場>
日時:平成24年12月5日(水曜日) 10時00分〜15時00分
会場:名古屋国際会議場レセプションホール
<福岡会場>
日時:平成24年12月7日(金曜日) 10時00分〜15時00分
会場:都久志会館ホール
5.また、併せてマニュアルを公表いたします。マニュアルは冊子のほかPDF形式で提供します。
<冊子について>
本研究プロジェクトに参加している地方自治体の試験研究機関、または、中央農業総合研究センターの研究担当者にFAXでお申込みください。無償で配布いたします。なお、部数に限りがあるため、ご要望にお応えできないことがあります。
<PDF形式について>
下記の中央農研webサイトからダウンロードできます。12月3日からご利用いただけます。
http://www.naro.affrc.go.jp/narc/contents/post_methylbromide/index.html
予算:農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」(平成20−24年度)
■ 研究の社会的背景
臭化メチル剤は、土壌病害虫のみならず、雑草被害の防除にまで効果を示す卓越した土壌くん蒸剤として農業現場で幅広く使用されてきました。しかし、1992年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」第4回締約国会合において、本剤はオゾン層破壊関連物質に指定され、1995年以降は検疫用途を除きその製造・使用が国際的に規制され、日本を含む先進諸国では同締約国会合で承認された特別の用途(検疫用途、緊急用途、不可欠用途)を除き2005年に原則廃止が決定されました。
我が国では、その廃止期限以降でも、技術的・経済的代替技術が皆無であるキュウリ、メロン、トウガラシ類、ショウガおよびスイカの特定の土壌伝染病害を対象に、特例措置が認められました。しかし、我が国としては、地球環境保護への積極的な貢献と2015年から開始される発展途上国の使用規制に模範を示すため、国内の産地、農業関係者との合意の下、平成24年(2012年)12月31日に不可欠用途用臭化メチルの全廃期限を設定しました。
■ 研究の経緯
このような背景の下、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」において、平成20年から24年の5年間に渡り「臭化メチル剤から完全に脱却した産地適合型栽培マニュアルの開発」の研究プロジェクトに取り組んできました。本事業では、既存や新規開発の個別技術を体系化し、平成25年から生産現場で利用できる脱臭化メチル栽培マニュアルを開発することを目的としています。
まず平成20年から22年までの3カ年で代替技術を基礎とした新規栽培マニュアルのプロトタイプを確立します。次に、23年からの2年間に農家圃場でそのプロトタイプを実証し、平成25年からの臭化メチル全廃時に即戦力となる新規栽培マニュアルを農家に提供することを計画しています。新規栽培マニュアルでは、防除価が80以上、収量は臭化メチル使用栽培に比較して90%以上の確保を達成目標にしています。
■ 研究の内容
1.ピーマン、メロン及びキュウリ等の土壌伝染性ウイルス病を対象とした技術開発では、IPM(総合的病害虫管理技術)を基礎とした栽培管理技術を開発しています。メロンとトマトとの輪作、ピーマンやキュウリ苗の根部を保護する新規定植法、ピーマンにおける植物ワクチン(弱毒ウイルス)の開発・利用、残渣腐熟促進技術等、土壌伝染性ウイルス病の防除に主眼を置いた栽培マニュアルです。
2.ショウガの根茎腐敗病対策では、代替化学剤を基礎とした栽培マニュアルです。基本となる代替土壌くん蒸剤は、クロルピクリン1、3-ジクロロプロペンとメチルイソチオシアネートの混合剤、昨年新規登録されたヨウ化メチル剤等を用います。生育期では、ジアゾファミドの潅注処理、アゾキシストロビンとメタラキシルMの混合粒剤処理等を行います。今後期待されるアミスルブロムも登録申請の準備に入りました。圃場の立地条件や産地の位置、地形等、ショウガの栽培環境に最適となる薬剤の扱い方や組み合わせ処理方法等を新規に考案した栽培マニュアルです。
■ 用語の解説
臭化メチルによる地球への影響
地球上の動植物に悪影響を及ぼす宇宙紫外線の侵入を遮断する成層圏のオゾン層を破壊する物質のひとつです。成層圏のオゾン層が破壊されるとオゾンホールが形成され、そこから大量の宇宙紫外線が地上に降り注ぎます。宇宙紫外線が地上に降り注ぐと人の皮膚がんや白内障の発生率増加に繋がるとされています。
モントリオール議定書
オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、オゾン層を破壊するおそれのある物質を指定し、これらの物質の製造、消費及び貿易を規制しながら人の健康および環境を保護することを目的とした条約の一種です。1987年にカナダで採択された議定書で、日本国は1988年から加入しています。事務局はナイロビの国連環境計画(UNEP)に置かれています。
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
臭化メチル剤から完全に脱却した産地適合型栽培マニュアルの開発― 栽培マニュアルの公表と研究成果発表会の開催 ―
■ ポイント
・土壌くん蒸剤として利用してきた不可欠用途用臭化メチル剤は、「不可欠用途臭化メチルの国家管理戦略」の策定により、平成24年12月31日で全廃されます。
・本剤全廃後でも安定生産活動ができるよう新規代替栽培マニュアルを開発しました。
・この新規代替栽培マニュアルを広く知っていただくため、東京・名古屋・福岡で研究成果発表会を開催します。
■ 概要
1.臭化メチルは、モントリオール議定書により成層圏のオゾン層を破壊する物質と指定されたことから、先進国では平成17年に廃止されました。しかし、廃止によって我が国の生産現場に混乱を来す作目(ピーマン、キュウリ、メロン、ショウガ、スイカ)には特例措置として使用が認められてきました。
2.その特例措置も平成24年12月31日で全廃され、臭化メチルは農業の生産現場から姿を消します。
3.農研機構 中央農業総合研究センターは、平成20年度から農林水産省の新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業において、地方自治体、民間企業等13機関との産学官共同研究で土壌くん蒸用臭化メチル剤の代替技術を開発してきました。
4.中央農研では、これまでの研究成果として新規開発した産地適合型の臭化メチル代替栽培マニュアルを全国の農業関係者に広く知っていただくため、全国の三大都市(東京、名古屋、福岡)で研究成果発表会を開催します。
<東京会場>
日時:平成24年12月3日(月曜日) 10時00分〜15時00分
会場:日本教育会館一ツ橋ホール
<名古屋会場>
日時:平成24年12月5日(水曜日) 10時00分〜15時00分
会場:名古屋国際会議場レセプションホール
<福岡会場>
日時:平成24年12月7日(金曜日) 10時00分〜15時00分
会場:都久志会館ホール
5.また、併せてマニュアルを公表いたします。マニュアルは冊子のほかPDF形式で提供します。
<冊子について>
本研究プロジェクトに参加している地方自治体の試験研究機関、または、中央農業総合研究センターの研究担当者にFAXでお申込みください。無償で配布いたします。なお、部数に限りがあるため、ご要望にお応えできないことがあります。
<PDF形式について>
下記の中央農研webサイトからダウンロードできます。12月3日からご利用いただけます。
http://www.naro.affrc.go.jp/narc/contents/post_methylbromide/index.html
予算:農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」(平成20−24年度)
■ 研究の社会的背景
臭化メチル剤は、土壌病害虫のみならず、雑草被害の防除にまで効果を示す卓越した土壌くん蒸剤として農業現場で幅広く使用されてきました。しかし、1992年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」第4回締約国会合において、本剤はオゾン層破壊関連物質に指定され、1995年以降は検疫用途を除きその製造・使用が国際的に規制され、日本を含む先進諸国では同締約国会合で承認された特別の用途(検疫用途、緊急用途、不可欠用途)を除き2005年に原則廃止が決定されました。
我が国では、その廃止期限以降でも、技術的・経済的代替技術が皆無であるキュウリ、メロン、トウガラシ類、ショウガおよびスイカの特定の土壌伝染病害を対象に、特例措置が認められました。しかし、我が国としては、地球環境保護への積極的な貢献と2015年から開始される発展途上国の使用規制に模範を示すため、国内の産地、農業関係者との合意の下、平成24年(2012年)12月31日に不可欠用途用臭化メチルの全廃期限を設定しました。
■ 研究の経緯
このような背景の下、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」において、平成20年から24年の5年間に渡り「臭化メチル剤から完全に脱却した産地適合型栽培マニュアルの開発」の研究プロジェクトに取り組んできました。本事業では、既存や新規開発の個別技術を体系化し、平成25年から生産現場で利用できる脱臭化メチル栽培マニュアルを開発することを目的としています。
まず平成20年から22年までの3カ年で代替技術を基礎とした新規栽培マニュアルのプロトタイプを確立します。次に、23年からの2年間に農家圃場でそのプロトタイプを実証し、平成25年からの臭化メチル全廃時に即戦力となる新規栽培マニュアルを農家に提供することを計画しています。新規栽培マニュアルでは、防除価が80以上、収量は臭化メチル使用栽培に比較して90%以上の確保を達成目標にしています。
■ 研究の内容
1.ピーマン、メロン及びキュウリ等の土壌伝染性ウイルス病を対象とした技術開発では、IPM(総合的病害虫管理技術)を基礎とした栽培管理技術を開発しています。メロンとトマトとの輪作、ピーマンやキュウリ苗の根部を保護する新規定植法、ピーマンにおける植物ワクチン(弱毒ウイルス)の開発・利用、残渣腐熟促進技術等、土壌伝染性ウイルス病の防除に主眼を置いた栽培マニュアルです。
2.ショウガの根茎腐敗病対策では、代替化学剤を基礎とした栽培マニュアルです。基本となる代替土壌くん蒸剤は、クロルピクリン1、3-ジクロロプロペンとメチルイソチオシアネートの混合剤、昨年新規登録されたヨウ化メチル剤等を用います。生育期では、ジアゾファミドの潅注処理、アゾキシストロビンとメタラキシルMの混合粒剤処理等を行います。今後期待されるアミスルブロムも登録申請の準備に入りました。圃場の立地条件や産地の位置、地形等、ショウガの栽培環境に最適となる薬剤の扱い方や組み合わせ処理方法等を新規に考案した栽培マニュアルです。
■ 用語の解説
臭化メチルによる地球への影響
地球上の動植物に悪影響を及ぼす宇宙紫外線の侵入を遮断する成層圏のオゾン層を破壊する物質のひとつです。成層圏のオゾン層が破壊されるとオゾンホールが形成され、そこから大量の宇宙紫外線が地上に降り注ぎます。宇宙紫外線が地上に降り注ぐと人の皮膚がんや白内障の発生率増加に繋がるとされています。
モントリオール議定書
オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、オゾン層を破壊するおそれのある物質を指定し、これらの物質の製造、消費及び貿易を規制しながら人の健康および環境を保護することを目的とした条約の一種です。1987年にカナダで採択された議定書で、日本国は1988年から加入しています。事務局はナイロビの国連環境計画(UNEP)に置かれています。