メガマウスザメの胸鰭の構造分析で成果
[14/01/22]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2014年1月22日
一般財団法人 沖縄美ら島財団
謎多き巨大ザメ、メガマウスザメの生態解明に前進!
メガマウスザメの胸鰭の構造分析で成果
沖縄美ら海水族館を管理運営する一般財団法人 沖縄美ら島財団(沖縄県本部町)と北海道大学、東海大学の研究グループは、メガマウスザメの詳細な解剖学的調査を行い、胸鰭の骨格や皮膚に他のサメにはない特殊な構造が多数見られることを発見しました。この発見は、メガマウスザメが奇妙な進化をとげたサメであることを再認識させてくれるものです。本研究の成果は2014年1月21日(米国日付)、米国オンライン学術誌『PLOS ONE』に掲載されました。
■発表雑誌■
雑誌名:PLOS ONE
論文名:Pectoral fin of the megamouth shark: Skeletal and muscular systems, skin histology, and functional morphology(訳:メガマウスザメの胸鰭の謎:筋肉系、骨格系、皮膚の組織学、機能形態学)
著者名:北海道大学 冨田 武照・東海大学 田中 彰・
沖縄美ら島財団総合研究センター 佐藤 圭一・北海道大学名誉教授 仲谷 一宏 以上4名
掲載日:2014年1月21日(米国日付)
※本研究は日本学術振興会の支援を受けて行っています。
■ポイント■
1.メガマウスザメの生態は未知な点が多く、遊泳生態や摂餌生態はいまだ確認されていない。
2.メガマウスザメはプランクトンを食べるサメであるが、同様にプランクトンを食べるジンベエザメやウバザメとは異なる摂餌方法をとることが推測されてきた。
3.本研究により、メガマウスザメの胸鰭が大変柔軟で、可動性に富んでいることが発見された。これは、本種の遊泳速度が遅く、胸鰭を利用することによって舵を取ったり、バランスを維持したりすることを示唆している。
4.本研究に用いられたメガマウスザメの解剖標本は、海洋博公園内の「美ら海プラザ」内で展示されている。
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<研究の背景>
メガマウスザメは1976年に発見された全長6メートルに達する大型のサメで、その大きさと奇妙な姿からシーラカンスと並ぶ20世紀最大の魚類学的発見と言われています。しかし、世界でもほとんど目撃例・捕獲例がないというその希少性ゆえ、生態は謎に包まれています。
メガマウスザメはジンベエザメ、ウバザメと並ぶ数少ないプランクトン食のサメです。餌の摂取方法は、積極的に餌を吸引してろ過するジンベエザメとは異なり、遊泳しながら餌を口に流し込んでろ過するのではないかと推測されていますが、実際の遊泳生態や摂餌生態は確認されていません。
本研究は、メガマウスザメの胸鰭の構造を詳細に観察し、遊泳生態を推定した初めての研究となります。魚の胸鰭は、舵としての役割があり、その構造はその魚の泳ぎ方と密接な関係があることが知られています。本研究では、胸鰭の構造を他の外洋性のサメと比べることで、メガマウスザメの遊泳生態の解明を目指しました。
<研究成果の概要>
研究は、2007年7月に茨城県沖で混獲された全長3.7mのオス、2010年6月に静岡県河津町で捕獲された全長5.4mのメス個体を解剖して行いました。
1.メガマウスザメの胸鰭にみられる特殊な構造
メガマウスザメの胸鰭の骨格や皮膚には他のサメにはない特殊な構造が多数見られることを発見しました。これらの構造はすべて、メガマウスザメの胸鰭が高い可動性を持つことを示唆します。
1)胸鰭を支える骨格に非常に多くの関節があり、胸鰭全体がしなやかに曲がる。
2)胸鰭と胴体をつなぐ関節が蝶番になっており、頭尾方向によく動く。
3)胸鰭の皮膚に弾性繊維が多く含まれており、皮膚の伸縮性が高い。
2.可動性の高い胸鰭は「バランサー」?
メガマウスザメは非常に遅く泳ぐサメであると考えられています。一般的に、水中を進む物体は、速度が遅くなるほど姿勢を保つことが困難になります。メガマウスザメのよく動く胸鰭は、ゆっくり泳ぐときに体を安定化させる「バランサー」としての役割を果たしている可能性が高いと結論付けました。
プランクトンを主食とするメガマウスザメは、他の外洋性のサメのように獲物を高速で追い回す必要がありません。彼らのよく動く胸鰭は、ゆっくり泳いでプランクトンを濾しとって食べる彼らの生態を反映していると考えられます。
<今後の展望>
本研究の成果は、メガマウスザメの生態解明に貢献するだけでなく、サメの中で3種しかいないプランクトン食のサメがどのように進化してきたかを解明するうえでも重要です。沖縄美ら島財団は、謎に包まれている大型海洋生物の生態解明に向け、飼育と研究を両輪で進めてまいります。
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■研究者プロフィール■
冨田武照(とみた たけてる):2011−東京大学大学院博士課程修了 同年−北海道大学総合博物館にて学術振興会特別研究員(PD). 専門は軟骨魚類の進化、機能形態学など.
田中彰 (たなか しょう):1980年−東京大学大学院農学系研究科博士課程修了,同年東海大学海洋学部水産学科勤務. 1994年−東海大学海洋学部教授,現在−東海大学海洋学部海洋生物学科所属.専門は軟骨魚類の生態・生活史.
佐藤圭一(さとう けいいち): 2000年−北海道大学大学院博士課程修了.同年−沖縄海洋生物飼育技術センター,2002年−沖縄美ら海水族館勤務,現在−沖縄美ら島財団総合研究センター・研究第一課長.専門はサメ・エイ類の形態・系統分類・生態学.
仲谷一宏(なかや かずひろ):1974年−北海道大学大学院博士課程修了.同年−北海道大学助手,1984年−北海道大学助教授、2000年 北海道大学教授,現在−北海道大学名誉教授.専門は軟骨魚類の機能形態学・分類学・生態学.
一般財団法人 沖縄美ら島財団
謎多き巨大ザメ、メガマウスザメの生態解明に前進!
メガマウスザメの胸鰭の構造分析で成果
沖縄美ら海水族館を管理運営する一般財団法人 沖縄美ら島財団(沖縄県本部町)と北海道大学、東海大学の研究グループは、メガマウスザメの詳細な解剖学的調査を行い、胸鰭の骨格や皮膚に他のサメにはない特殊な構造が多数見られることを発見しました。この発見は、メガマウスザメが奇妙な進化をとげたサメであることを再認識させてくれるものです。本研究の成果は2014年1月21日(米国日付)、米国オンライン学術誌『PLOS ONE』に掲載されました。
■発表雑誌■
雑誌名:PLOS ONE
論文名:Pectoral fin of the megamouth shark: Skeletal and muscular systems, skin histology, and functional morphology(訳:メガマウスザメの胸鰭の謎:筋肉系、骨格系、皮膚の組織学、機能形態学)
著者名:北海道大学 冨田 武照・東海大学 田中 彰・
沖縄美ら島財団総合研究センター 佐藤 圭一・北海道大学名誉教授 仲谷 一宏 以上4名
掲載日:2014年1月21日(米国日付)
※本研究は日本学術振興会の支援を受けて行っています。
■ポイント■
1.メガマウスザメの生態は未知な点が多く、遊泳生態や摂餌生態はいまだ確認されていない。
2.メガマウスザメはプランクトンを食べるサメであるが、同様にプランクトンを食べるジンベエザメやウバザメとは異なる摂餌方法をとることが推測されてきた。
3.本研究により、メガマウスザメの胸鰭が大変柔軟で、可動性に富んでいることが発見された。これは、本種の遊泳速度が遅く、胸鰭を利用することによって舵を取ったり、バランスを維持したりすることを示唆している。
4.本研究に用いられたメガマウスザメの解剖標本は、海洋博公園内の「美ら海プラザ」内で展示されている。
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<研究の背景>
メガマウスザメは1976年に発見された全長6メートルに達する大型のサメで、その大きさと奇妙な姿からシーラカンスと並ぶ20世紀最大の魚類学的発見と言われています。しかし、世界でもほとんど目撃例・捕獲例がないというその希少性ゆえ、生態は謎に包まれています。
メガマウスザメはジンベエザメ、ウバザメと並ぶ数少ないプランクトン食のサメです。餌の摂取方法は、積極的に餌を吸引してろ過するジンベエザメとは異なり、遊泳しながら餌を口に流し込んでろ過するのではないかと推測されていますが、実際の遊泳生態や摂餌生態は確認されていません。
本研究は、メガマウスザメの胸鰭の構造を詳細に観察し、遊泳生態を推定した初めての研究となります。魚の胸鰭は、舵としての役割があり、その構造はその魚の泳ぎ方と密接な関係があることが知られています。本研究では、胸鰭の構造を他の外洋性のサメと比べることで、メガマウスザメの遊泳生態の解明を目指しました。
<研究成果の概要>
研究は、2007年7月に茨城県沖で混獲された全長3.7mのオス、2010年6月に静岡県河津町で捕獲された全長5.4mのメス個体を解剖して行いました。
1.メガマウスザメの胸鰭にみられる特殊な構造
メガマウスザメの胸鰭の骨格や皮膚には他のサメにはない特殊な構造が多数見られることを発見しました。これらの構造はすべて、メガマウスザメの胸鰭が高い可動性を持つことを示唆します。
1)胸鰭を支える骨格に非常に多くの関節があり、胸鰭全体がしなやかに曲がる。
2)胸鰭と胴体をつなぐ関節が蝶番になっており、頭尾方向によく動く。
3)胸鰭の皮膚に弾性繊維が多く含まれており、皮膚の伸縮性が高い。
2.可動性の高い胸鰭は「バランサー」?
メガマウスザメは非常に遅く泳ぐサメであると考えられています。一般的に、水中を進む物体は、速度が遅くなるほど姿勢を保つことが困難になります。メガマウスザメのよく動く胸鰭は、ゆっくり泳ぐときに体を安定化させる「バランサー」としての役割を果たしている可能性が高いと結論付けました。
プランクトンを主食とするメガマウスザメは、他の外洋性のサメのように獲物を高速で追い回す必要がありません。彼らのよく動く胸鰭は、ゆっくり泳いでプランクトンを濾しとって食べる彼らの生態を反映していると考えられます。
<今後の展望>
本研究の成果は、メガマウスザメの生態解明に貢献するだけでなく、サメの中で3種しかいないプランクトン食のサメがどのように進化してきたかを解明するうえでも重要です。沖縄美ら島財団は、謎に包まれている大型海洋生物の生態解明に向け、飼育と研究を両輪で進めてまいります。
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■研究者プロフィール■
冨田武照(とみた たけてる):2011−東京大学大学院博士課程修了 同年−北海道大学総合博物館にて学術振興会特別研究員(PD). 専門は軟骨魚類の進化、機能形態学など.
田中彰 (たなか しょう):1980年−東京大学大学院農学系研究科博士課程修了,同年東海大学海洋学部水産学科勤務. 1994年−東海大学海洋学部教授,現在−東海大学海洋学部海洋生物学科所属.専門は軟骨魚類の生態・生活史.
佐藤圭一(さとう けいいち): 2000年−北海道大学大学院博士課程修了.同年−沖縄海洋生物飼育技術センター,2002年−沖縄美ら海水族館勤務,現在−沖縄美ら島財団総合研究センター・研究第一課長.専門はサメ・エイ類の形態・系統分類・生態学.
仲谷一宏(なかや かずひろ):1974年−北海道大学大学院博士課程修了.同年−北海道大学助手,1984年−北海道大学助教授、2000年 北海道大学教授,現在−北海道大学名誉教授.専門は軟骨魚類の機能形態学・分類学・生態学.