ウナギが夏バテによい理由のひとつは、魚介類のなかでもウナギに多く含まれるDHAとEPA!?
[14/08/07]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2014年7月
DHA・EPA協議会
ウナギが夏バテによい理由のひとつは、魚介類のなかでもウナギに多く含まれるDHAとEPA!?
−真夏を目の前に、例年以上に日本人の注目を集めるウナギ−
夏に欠かせない食材として、日本人に愛されてきたウナギ。今年に入ってから、稚魚の豊漁という近年にない明るい話題が上ったかと思えば、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の恐れがある野生動物を指定する「レッドリスト」にニッポンウナギを加えると発表するなど、真夏を目の前にして例年以上に日本人の注目を集めています。
今や日本人の常識になっている“夏バテ対策にウナギ”を食べる習慣、実はこの習慣が奈良時代にはすでに定着していたことをご存知でしょうか。
現存する日本最古の歌集「万葉集」。その編纂にも関わった大伴家持は、「万葉集」に次の歌を残しています。
“石麻呂に 我れ物申す 夏痩せに 良しといふものぞ 鰻捕り食(め)せ“−家持が夏痩せした石麻呂に“鰻を食べるとよい”と勧めた、と言われるこの歌が、日本人がウナギを食べていたことを物語る最古の記録といわれ、しかも現在に通じる習慣があったことを示しています。その後、食物本草書の最高峰といわれる「本朝食鑑」(1697年刊)には“腰を暖め、陽(性的能力)を起こし、諸風(緒の風毒)を除き、五痔を療し、悪瘡を治し、一切の虫を殺す。小児の疳傷および虫による心病に最もよい”と、その効果が詳しく述べられています。そして江戸時代後期に登場した、現代に通じるウナギの蒲焼きと、平賀源内が考案したといわれる“土用の丑”が、日本人のウナギ人気を決定づけたと考えられています。
−ウナギは多様なビタミン類のほか、DHA・EPAを豊富に含む−
ウナギが夏バテによいことは、現代の栄養学でも明らかにされています。そのひとつが、ウナギが持つ栄養価そのものが高い上、皮膚や視覚の健康に関与するビタミンA、疲労回復効果が期待されるビタミンB1、発育に欠かせないビタミンB2、体内の酸化を防ぐビタミンEなど、多様なビタミンが多く含まれていることにあります[図1参照]1)2)。
そしてもうひとつ、ウナギが夏バテによい理由として、 DHA・EPAをはじめとする魚油があげられます。 DHA・EPAは魚により含有量が大きく異なりますが、ウナギに豊富なことが知られています。なおウナギを蒲焼きにすると、魚油が外に流れ出てしまいますが、それ以上に水分が流出して軽くなるため、重量あたりの含有量に大きな差はありません[図2参照]3)。
土用の丑のウナギは、夏を代表する日本人のDHA・EPA供給源だったのです。
1)文部科学省:http://fooddb.mext.go.jp/index.pl
2)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/05/h0529-1.html
3)文部科学省:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031801.htm
−EPAを含む魚油の摂取は、疲労感を有意に軽減し、バテないカラダづくりに貢献−
2月には冷夏と予想されていた今年の夏ですが、気象庁が6月に発表した3ヶ月予報では気温は例年通りと予報されました。今年も暑い夏を迎えることが予想され、夏バテ対策にも気を抜けません。実は近年、ウナギが夏バテによい理由のひとつとされるEPAを含む魚油に、運動中の疲労感を軽減し、バテないカラダづくりに貢献する可能性があることが、東京大学、富山大学、城西国際大学と日本水産の共同研究によってわかってきました。
男子大学生に8週間、EPAを含む魚油(3.6g/日)もしくはプラセボを摂取してもらい、その前後で60分間のエルゴメーター(自転車)運動を行い、運動時の疲労感を比較しました。その結果、EPAを含む魚油を摂取したグループでは、疲労感が有意に軽減していました[図3参照]。そして、摂取前より少ない酸素量で運動を行っていることがわかりました4)。
この理由はEPAを含む魚油が、血液中の赤血球の柔軟性を高め、細い血管もスムーズに流れるようになったことにより、体の隅々まで効率よく酸素が届けられ、より少ない酸素量で運動を行うことができたと考えられます。そしてその結果、肺や心臓などの負担が軽くなり、疲労感の軽減につながったと推察されています。
- Interview -
矢澤 一良 (やざわ かずなが)先生 早稲田大学 研究院教授
1972年京都大学工学部工業化学科卒業。ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生体研究室勤務。その後、相模中央化学研究所に入所、1989年に東京大学より農学博士号を授与される。東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科ヘルスフード科学講座客員教授、東京海洋大学「食の安全と機能に関する研究」プロジェクト特任教授を経て、2014年より早稲田大学ナノ理工学研究機構規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門研究院教授(現職)。
−「夏バテ」の正体は、暑さと冷房による自律神経の乱れ−
夏バテは夏特有の疲労です。この原因は毎日続く高温がストレスとなり、自律神経の乱れを招くためです。自律神経は内臓や血管など重要な組織を安定した状態に保っています。特に夏は高温が続くため、自律神経は体内の組織の温度調節を行いますが、その働きが乱れるとうまく調節できなくなってしまいます。人を構成する細胞や、その細胞で産生される酵素は、およそ体温36.7度で活発に働きます。このため1度下がるとからだの代謝が滞り、逆に1度上がると風邪をひいたときのように体調を崩します。このようにたった1度の温度差がからだに大きな影響を与えるのです。また現代の夏は暑さに加えて、冷房の影響も大きくなっています。屋内外の温度差があまりにも激しいため、自律神経は酷使され、疲弊してしまうのです。つまり夏バテは、体内の温度を安定に保つことができないことから、からだの重要な組織の働きがにぶり、疲労が蓄積してしまった状態と言うことができます。
−ウナギが夏バテによい理由−エネルギー状態の改善、食欲増進、そしてDHA・EPA−
日本人は昔から夏バテ対策にウナギを食べてきましたが、この習慣は理にかなっていることなのです。自律神経の乱れはからだのさまざまな感覚をにぶらせ、食欲も低下します。このため、夏はそばやそうめんなど食べやすい単品料理で食事を済ますことが増えるため、栄養が偏り、特にビタミンやミネラルが不足することが多く見られます。これに対してウナギは、タンパク質や脂質などエネルギー源となる成分に加えて、多様なビタミンやミネラルも多く含まれています。つまり、単にエネルギー源だけではなく、それを有効に使うための成分も豊富に摂取できるのです。
またウナギの蒲焼きの匂いは、古典落語にも登場するように、多くの日本人の食欲をそそります。これもウナギの蒲焼きの匂いと、それによって想起される味の記憶がもたらす夏バテ改善効果のひとつと言うことができます。
そしてウナギが夏バテによいもうひとつの理由が、その機能性にあります。その役割を担っている成分が、ウナギに豊富なDHAとEPAなのです。
−DHAとEPAは体内で滞った血液の流れを改善し、体温を適切に保つ−
自律神経による体温調節には、発汗のほか全身を巡る血液による温度調節作用があげられます。しかし夏になると高温による脱水や、冷房による体の冷えのため、血液の流れに問題を抱える人が多くみられます。血液は1日におよそ400回も同じ箇所を循環し、体内の組織を適切な温度に保つ役割を果たしています。しかし血流の滞りによって、体内の組織を適切な温度に保てないことが原因となり、夏バテを招く、また悪化するケースが少なくありません。その滞った血流に働くのがDHAとEPAなのです。
血液には高温による脱水や血流の緩慢などが原因となり、血栓と呼ばれる塊が発生します。この塊が原因となり、血液が流れにくいドロドロの状態になることが知られています。これに対して、EPAは血栓の過剰な生成を抑制し、ドロドロの状態の血液を、サラサラと流れやすい状態に変えることが明らかにされています。さらにこれに加えて、DHAが硬くなった血管の細胞を柔軟にして、血液を流れやすくします。このようにEPAとDHAそれぞれが、血液と血管に働くことにより血流が改善し、適切な体内の温度の維持に寄与しているのです。
また血液は温度調節のほかに、酸素やエネルギーなどを全身に供給する役割を担うため、血流の改善はさまざまな効果をもたらします。前頁で紹介されている疲労感の低減は、EPAが赤血球の柔軟性を高めたためと考えられますが、DHAにも同じ働きがあります。そしてこの作用を通じて、持久力の向上などが期待できます。
−活性酸素による傷害を受けた全身の細胞膜を修復するDHA・EPA−
夏は日光に当たっているだけで、ぐったりと疲れてしまいます。それは紫外線を浴びたことによりつくられた活性酸素が全身を巡り、細胞を包む膜に傷害を与えていることに起因します。紫外線の影響で夏に多く発生する活性酸素は、あらゆる細胞にとって最も毒性が高く、疲労の元凶と言うべき存在です。これに対して、DHA・EPAは細胞一つひとつの膜の柔軟性を高めるとともに、細胞内の情報を保護し、細胞間の情報を最適化するため、活性酸素に傷害を受けた細胞の修復を通じて、疲労からの回復を促します。
また夏バテの原因である自律神経の乱れが進むとともに、細胞の中でも特に脳の細胞の情報伝達が低下していくことが知られています。DHAは脳の血管から細胞に有害な物質が移行しないように働く「血液脳関門」を通過できる数少ない物質のため、脳の神経細胞に入ることができます。そして他の細胞と同様に、細胞膜の柔軟性を高め、細胞間の情報を最適化するため、夏バテで冴えない頭を回復させることが期待できます。
DHA・EPAはウナギのほかにも、夏が旬の魚であれば、ハマチやタチウオ、イサキ、アナゴなどにも豊富に含まれています。これらの魚を食生活に上手に取り入れて、夏を元気に乗り越えてください。
【浜内 千波 先生 のDHA・EPAが豊富な旬のお魚レシピ】
<プロフィール>
『家庭料理をちゃんと伝えたい』……という思いで、料理教室を主宰。『料理は、もっともっと夢のある楽しいもの』をモットーに、テレビ番組や料理ビデオの出演、講演会、雑誌や書籍の執筆活動、各種料理講習会への参画を積極的に行い、その発想のユニークさやクリエイティブな仕事には定評があります。
最近の主な著書は、『「おいしいね」って言われるレシピ』(KADOKAWA)、『お腹が凹むオリーブオイル・レシピ』 (PHP研究所)、『免疫力を上げるまいたけ健康レシピ』 (マイナビ)、など多数。
◎鯵のたたきバーグかば焼き丼[ 1人分476kcal/調理時間15分]
見た目もウナギにそっくりですが、味の品のよさで生臭さを感じず召し上がれます。
<材料:2人分>
鰺 2尾
塩 小1/3
しょうが 2かけ
小麦粉 適宜
海苔 1/2枚
サラダ油 適宜
醤油 大2
砂糖 大1
みりん 大2
酒 大2
大葉 4枚
ごま 少々
ごはん 2杯
わさび 少々
−作り方−
(1)鯵の頭骨をとり、細かくたたきなめらかにする。
塩、しょうがをみじん切りにしたものを混ぜる。
(2)海苔を半分に切り、(1)をまんべんなくのせ、小麦粉を薄くはたく。
(3)フライパンにサラダ油をしき、(2)を両面焼く。
焼き目が付いてきたら、調味料(醤油、砂糖、みりん、酒)を入れ、からめる。
(4)ごはんの上に大葉を半分に切ったもの、(3)を半分に切ったものをのせる。
たれをかけ、ごまをふり、わさびを添える。
◎さんまのかば焼きう巻き[ 1人分375kcal/調理時間15分]
秋刀魚のやわらかさと卵のやわらかさがとてもマッチして、ウナギに負けない美味しさです。
<材料:2人分>
さんま 1尾
醤油 大1
みりん 大1
砂糖 大1/2
酒 大1
卵 3個
水 大3
砂糖 大2
塩 少々
サラダ油 適宜
大葉 2枚
大根 100g
−作り方−
(1)さんまは三枚おろしにする。
(2)フライパンを熱し、秋刀魚を皮目を下にしてしっかり焼く。
(3)さんまが焼き上がったら一度取り出し、フライパンで調味料を一煮立ちさせる。
そこに焼き上がった秋刀魚を戻してからめる。
(4)ボウルに卵を割り砂糖、塩、水を入れ、しっかり混ぜる。
(5)卵焼き器を熱し、サラダ油をしき、
卵液を3等分して流し入れる。手早く火を通し秋刀魚をのせ巻く。
再び同じ要領で卵液を流し入れ、2回巻く
(6)大根をすりおろし、水気を絞り、大葉の荒みじんと和え、添える
★7月・8月が旬の魚
アジ、サバ、ハマチ、タチウオ
DHA・EPA協議会
ウナギが夏バテによい理由のひとつは、魚介類のなかでもウナギに多く含まれるDHAとEPA!?
−真夏を目の前に、例年以上に日本人の注目を集めるウナギ−
夏に欠かせない食材として、日本人に愛されてきたウナギ。今年に入ってから、稚魚の豊漁という近年にない明るい話題が上ったかと思えば、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の恐れがある野生動物を指定する「レッドリスト」にニッポンウナギを加えると発表するなど、真夏を目の前にして例年以上に日本人の注目を集めています。
今や日本人の常識になっている“夏バテ対策にウナギ”を食べる習慣、実はこの習慣が奈良時代にはすでに定着していたことをご存知でしょうか。
現存する日本最古の歌集「万葉集」。その編纂にも関わった大伴家持は、「万葉集」に次の歌を残しています。
“石麻呂に 我れ物申す 夏痩せに 良しといふものぞ 鰻捕り食(め)せ“−家持が夏痩せした石麻呂に“鰻を食べるとよい”と勧めた、と言われるこの歌が、日本人がウナギを食べていたことを物語る最古の記録といわれ、しかも現在に通じる習慣があったことを示しています。その後、食物本草書の最高峰といわれる「本朝食鑑」(1697年刊)には“腰を暖め、陽(性的能力)を起こし、諸風(緒の風毒)を除き、五痔を療し、悪瘡を治し、一切の虫を殺す。小児の疳傷および虫による心病に最もよい”と、その効果が詳しく述べられています。そして江戸時代後期に登場した、現代に通じるウナギの蒲焼きと、平賀源内が考案したといわれる“土用の丑”が、日本人のウナギ人気を決定づけたと考えられています。
−ウナギは多様なビタミン類のほか、DHA・EPAを豊富に含む−
ウナギが夏バテによいことは、現代の栄養学でも明らかにされています。そのひとつが、ウナギが持つ栄養価そのものが高い上、皮膚や視覚の健康に関与するビタミンA、疲労回復効果が期待されるビタミンB1、発育に欠かせないビタミンB2、体内の酸化を防ぐビタミンEなど、多様なビタミンが多く含まれていることにあります[図1参照]1)2)。
そしてもうひとつ、ウナギが夏バテによい理由として、 DHA・EPAをはじめとする魚油があげられます。 DHA・EPAは魚により含有量が大きく異なりますが、ウナギに豊富なことが知られています。なおウナギを蒲焼きにすると、魚油が外に流れ出てしまいますが、それ以上に水分が流出して軽くなるため、重量あたりの含有量に大きな差はありません[図2参照]3)。
土用の丑のウナギは、夏を代表する日本人のDHA・EPA供給源だったのです。
1)文部科学省:http://fooddb.mext.go.jp/index.pl
2)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/05/h0529-1.html
3)文部科学省:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031801.htm
−EPAを含む魚油の摂取は、疲労感を有意に軽減し、バテないカラダづくりに貢献−
2月には冷夏と予想されていた今年の夏ですが、気象庁が6月に発表した3ヶ月予報では気温は例年通りと予報されました。今年も暑い夏を迎えることが予想され、夏バテ対策にも気を抜けません。実は近年、ウナギが夏バテによい理由のひとつとされるEPAを含む魚油に、運動中の疲労感を軽減し、バテないカラダづくりに貢献する可能性があることが、東京大学、富山大学、城西国際大学と日本水産の共同研究によってわかってきました。
男子大学生に8週間、EPAを含む魚油(3.6g/日)もしくはプラセボを摂取してもらい、その前後で60分間のエルゴメーター(自転車)運動を行い、運動時の疲労感を比較しました。その結果、EPAを含む魚油を摂取したグループでは、疲労感が有意に軽減していました[図3参照]。そして、摂取前より少ない酸素量で運動を行っていることがわかりました4)。
この理由はEPAを含む魚油が、血液中の赤血球の柔軟性を高め、細い血管もスムーズに流れるようになったことにより、体の隅々まで効率よく酸素が届けられ、より少ない酸素量で運動を行うことができたと考えられます。そしてその結果、肺や心臓などの負担が軽くなり、疲労感の軽減につながったと推察されています。
- Interview -
矢澤 一良 (やざわ かずなが)先生 早稲田大学 研究院教授
1972年京都大学工学部工業化学科卒業。ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生体研究室勤務。その後、相模中央化学研究所に入所、1989年に東京大学より農学博士号を授与される。東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科ヘルスフード科学講座客員教授、東京海洋大学「食の安全と機能に関する研究」プロジェクト特任教授を経て、2014年より早稲田大学ナノ理工学研究機構規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門研究院教授(現職)。
−「夏バテ」の正体は、暑さと冷房による自律神経の乱れ−
夏バテは夏特有の疲労です。この原因は毎日続く高温がストレスとなり、自律神経の乱れを招くためです。自律神経は内臓や血管など重要な組織を安定した状態に保っています。特に夏は高温が続くため、自律神経は体内の組織の温度調節を行いますが、その働きが乱れるとうまく調節できなくなってしまいます。人を構成する細胞や、その細胞で産生される酵素は、およそ体温36.7度で活発に働きます。このため1度下がるとからだの代謝が滞り、逆に1度上がると風邪をひいたときのように体調を崩します。このようにたった1度の温度差がからだに大きな影響を与えるのです。また現代の夏は暑さに加えて、冷房の影響も大きくなっています。屋内外の温度差があまりにも激しいため、自律神経は酷使され、疲弊してしまうのです。つまり夏バテは、体内の温度を安定に保つことができないことから、からだの重要な組織の働きがにぶり、疲労が蓄積してしまった状態と言うことができます。
−ウナギが夏バテによい理由−エネルギー状態の改善、食欲増進、そしてDHA・EPA−
日本人は昔から夏バテ対策にウナギを食べてきましたが、この習慣は理にかなっていることなのです。自律神経の乱れはからだのさまざまな感覚をにぶらせ、食欲も低下します。このため、夏はそばやそうめんなど食べやすい単品料理で食事を済ますことが増えるため、栄養が偏り、特にビタミンやミネラルが不足することが多く見られます。これに対してウナギは、タンパク質や脂質などエネルギー源となる成分に加えて、多様なビタミンやミネラルも多く含まれています。つまり、単にエネルギー源だけではなく、それを有効に使うための成分も豊富に摂取できるのです。
またウナギの蒲焼きの匂いは、古典落語にも登場するように、多くの日本人の食欲をそそります。これもウナギの蒲焼きの匂いと、それによって想起される味の記憶がもたらす夏バテ改善効果のひとつと言うことができます。
そしてウナギが夏バテによいもうひとつの理由が、その機能性にあります。その役割を担っている成分が、ウナギに豊富なDHAとEPAなのです。
−DHAとEPAは体内で滞った血液の流れを改善し、体温を適切に保つ−
自律神経による体温調節には、発汗のほか全身を巡る血液による温度調節作用があげられます。しかし夏になると高温による脱水や、冷房による体の冷えのため、血液の流れに問題を抱える人が多くみられます。血液は1日におよそ400回も同じ箇所を循環し、体内の組織を適切な温度に保つ役割を果たしています。しかし血流の滞りによって、体内の組織を適切な温度に保てないことが原因となり、夏バテを招く、また悪化するケースが少なくありません。その滞った血流に働くのがDHAとEPAなのです。
血液には高温による脱水や血流の緩慢などが原因となり、血栓と呼ばれる塊が発生します。この塊が原因となり、血液が流れにくいドロドロの状態になることが知られています。これに対して、EPAは血栓の過剰な生成を抑制し、ドロドロの状態の血液を、サラサラと流れやすい状態に変えることが明らかにされています。さらにこれに加えて、DHAが硬くなった血管の細胞を柔軟にして、血液を流れやすくします。このようにEPAとDHAそれぞれが、血液と血管に働くことにより血流が改善し、適切な体内の温度の維持に寄与しているのです。
また血液は温度調節のほかに、酸素やエネルギーなどを全身に供給する役割を担うため、血流の改善はさまざまな効果をもたらします。前頁で紹介されている疲労感の低減は、EPAが赤血球の柔軟性を高めたためと考えられますが、DHAにも同じ働きがあります。そしてこの作用を通じて、持久力の向上などが期待できます。
−活性酸素による傷害を受けた全身の細胞膜を修復するDHA・EPA−
夏は日光に当たっているだけで、ぐったりと疲れてしまいます。それは紫外線を浴びたことによりつくられた活性酸素が全身を巡り、細胞を包む膜に傷害を与えていることに起因します。紫外線の影響で夏に多く発生する活性酸素は、あらゆる細胞にとって最も毒性が高く、疲労の元凶と言うべき存在です。これに対して、DHA・EPAは細胞一つひとつの膜の柔軟性を高めるとともに、細胞内の情報を保護し、細胞間の情報を最適化するため、活性酸素に傷害を受けた細胞の修復を通じて、疲労からの回復を促します。
また夏バテの原因である自律神経の乱れが進むとともに、細胞の中でも特に脳の細胞の情報伝達が低下していくことが知られています。DHAは脳の血管から細胞に有害な物質が移行しないように働く「血液脳関門」を通過できる数少ない物質のため、脳の神経細胞に入ることができます。そして他の細胞と同様に、細胞膜の柔軟性を高め、細胞間の情報を最適化するため、夏バテで冴えない頭を回復させることが期待できます。
DHA・EPAはウナギのほかにも、夏が旬の魚であれば、ハマチやタチウオ、イサキ、アナゴなどにも豊富に含まれています。これらの魚を食生活に上手に取り入れて、夏を元気に乗り越えてください。
【浜内 千波 先生 のDHA・EPAが豊富な旬のお魚レシピ】
<プロフィール>
『家庭料理をちゃんと伝えたい』……という思いで、料理教室を主宰。『料理は、もっともっと夢のある楽しいもの』をモットーに、テレビ番組や料理ビデオの出演、講演会、雑誌や書籍の執筆活動、各種料理講習会への参画を積極的に行い、その発想のユニークさやクリエイティブな仕事には定評があります。
最近の主な著書は、『「おいしいね」って言われるレシピ』(KADOKAWA)、『お腹が凹むオリーブオイル・レシピ』 (PHP研究所)、『免疫力を上げるまいたけ健康レシピ』 (マイナビ)、など多数。
◎鯵のたたきバーグかば焼き丼[ 1人分476kcal/調理時間15分]
見た目もウナギにそっくりですが、味の品のよさで生臭さを感じず召し上がれます。
<材料:2人分>
鰺 2尾
塩 小1/3
しょうが 2かけ
小麦粉 適宜
海苔 1/2枚
サラダ油 適宜
醤油 大2
砂糖 大1
みりん 大2
酒 大2
大葉 4枚
ごま 少々
ごはん 2杯
わさび 少々
−作り方−
(1)鯵の頭骨をとり、細かくたたきなめらかにする。
塩、しょうがをみじん切りにしたものを混ぜる。
(2)海苔を半分に切り、(1)をまんべんなくのせ、小麦粉を薄くはたく。
(3)フライパンにサラダ油をしき、(2)を両面焼く。
焼き目が付いてきたら、調味料(醤油、砂糖、みりん、酒)を入れ、からめる。
(4)ごはんの上に大葉を半分に切ったもの、(3)を半分に切ったものをのせる。
たれをかけ、ごまをふり、わさびを添える。
◎さんまのかば焼きう巻き[ 1人分375kcal/調理時間15分]
秋刀魚のやわらかさと卵のやわらかさがとてもマッチして、ウナギに負けない美味しさです。
<材料:2人分>
さんま 1尾
醤油 大1
みりん 大1
砂糖 大1/2
酒 大1
卵 3個
水 大3
砂糖 大2
塩 少々
サラダ油 適宜
大葉 2枚
大根 100g
−作り方−
(1)さんまは三枚おろしにする。
(2)フライパンを熱し、秋刀魚を皮目を下にしてしっかり焼く。
(3)さんまが焼き上がったら一度取り出し、フライパンで調味料を一煮立ちさせる。
そこに焼き上がった秋刀魚を戻してからめる。
(4)ボウルに卵を割り砂糖、塩、水を入れ、しっかり混ぜる。
(5)卵焼き器を熱し、サラダ油をしき、
卵液を3等分して流し入れる。手早く火を通し秋刀魚をのせ巻く。
再び同じ要領で卵液を流し入れ、2回巻く
(6)大根をすりおろし、水気を絞り、大葉の荒みじんと和え、添える
★7月・8月が旬の魚
アジ、サバ、ハマチ、タチウオ