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インフルエンザウイルスの増殖に対するDHAの可能性

2014年11月20日

DHA・EPA協議会

〜まもなくインフルエンザの流行シーズンが到来〜
インフルエンザウイルスの増殖に対するDHAの可能性

−12月上旬〜中旬にはじまるインフルエンザの流行シーズン。−

秋も深まり、まもなく冬を迎えようとしています。その冬の訪れとともに“流行”を耳にする病気、それがインフルエンザです。厚生労働省の発表によると、昨年は12月16日週(第51週) 2012年が12月10日週(第50週)、そして2011年は12月5日週(第49週)の感染症発生動向調査で、インフルエンザの定点あたり報告数が、流行開始の目安とされている1.00を上回りました。近年の3シーズンはいずれも12月上旬から中旬にインフルエンザの流行シーズンを迎えているのです[図1参照]1)。
今年は、9月の時点で早くも東京都、千葉県、岐阜県、島根県の小中高校でインフルエンザの集団感染による学級閉鎖が行われ、10月20日週(第43週)の千葉県のインフルエンザの定点当たり報告数では、県内の一部地域で流行開始の目安とされる定点当たり1.00を超えました2)。すでに現在、インフルエンザ流行の兆しが見られはじめています。
インフルエンザが毎年流行する理由として、インフルエンザウイルスが少しずつ変異を続けていることがあげられます。インフルエンザウイルスの遺伝情報は、RNA(リボ核酸)が担当しています。RNAはヒトの遺伝情報を担当するDNAとは異なり、誤ったコピーを起こしやすいため、ウイルスは変異を続けてしまいます。これに対して、予防策のひとつであるインフルエンザワクチンは、毎年そのシーズンの流行を予測して、流行すると考えられるウイルスを用いて製造されています。このため高い予防効果が期待できますが、ワクチン接種の効果が現れるまでに2週間程度かかることから、12月中旬までの早いタイミングに接種することが推奨されています。
本年、日本ではデング熱の国内感染が約70年ぶりに確認され、西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱の感染者が欧米で発生するなど、感染症への懸念が世界的に高まっています。日本国内だけで毎年1000万人以上の患者を生み出すインフルエンザに対しても、早い段階から予防を心がけることが望まれます。

1)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/rinshou.html
2)千葉県感染症情報センター:http://www.pref.chiba.lg.jp/eiken/c-idsc/



−DHAから体内でつくられる代謝物がインフルエンザの増殖を抑制。
 DHA代謝物には予防と症状悪化を抑える働きが期待できる。−

冬に日本国内で猛威を振るうインフルエンザ。その理由は湿度20%前後の環境が最も生存に適した環境であるためといわれています。そのインフルエンザウイルスの増殖を、DHAから体内でつくられる代謝物(プロテクチンD1(PD1))が抑制することが、秋田大学、大阪大学などの共同研究によって明らかにされました3)。

●インフルエンザ感染前と直後にDHA代謝物を与えたマウスの生存率が改善。
 このためDHA代謝物はインフルエンザに対して予防的に働くことが示された。

2009年に新型インフルエンザとして、日本でも大流行した「インフルエンザ(H1N1)2009」を用いて、DHA代謝物(PD1)の効果について検討が行われました。
インフルエンザ(H1N1)2009を感染させたマウスに、感染12時間前と感染直後にDHA代謝物を投与し、対照群と生存率の比較が行われました。その結果、対照群の生存率は9日後には50%となり、10日後には40%を下回りました。一方、DHA代謝物を与えたマウスの生存率は14日後でも100%を示し、マウスの生存率を有意に改善しました。この結果から、DHA代謝物の投与が、インフルエンザに対して予防的に働くことがわかりました。

●インフルエンザ感染2日後に、治療薬とともにDHA代謝物を投与すると、
 インフルエンザ重症マウスの生存率が改善。治療にも有用な可能性が示唆された。

インフルエンザウイルスは体の中で急激に増殖する特徴があるため、抗インフルエンザ薬は発症から2日以内に服用しないと、十分な効果は期待できません。そこで、DHA代謝物(PD1)の感染後の効果を調べるため、感染2日後に投与したときの影響について検討が行われました。
インフルエンザ(H1N1/PR8ウイルス)を感染させたマウスに、プラセボを与えた対照群の11日後の生存率は0%でしたが、2日後に抗インフルエンザ薬(ペラミビル)を投与した群は、20日後の生存率は40%弱まで向上しました。それに加えて、DHA代謝物を2・3・4日後に投与した群では、生存率が100%に改善しました。この結果から、DHA代謝物は予防に加えて、治療にも有効である可能性が示唆されました。

●DHAの代謝物は、インフルエンザウイルスの遺伝情報を担うRNAが
 細胞の核から拡散することを防ぎ、ウイルスの増殖を抑制していた。

DHA代謝物(PD1)がインフルエンザウイルスに与える影響を調べるために、培養細胞を用いた検討が行われました。その結果、インフルエンザ(H5N1ウイルス)に感染した細胞にDHA代謝物を投与すると、遺伝情報を担うRNA(リボ核酸)の発現量を低下させ、ウイルスの量(ウイルス価)を有意に抑制することがわかりました。
インフルエンザウイルスの増殖は、体内に侵入したウイルスにより細胞の核に放出されたRNAが、増幅して核の外へと移動し、そのRNAをもとに核の外で新たなウイルスが作られることによって起こります。これに対してDHA代謝物は、RNAの核外への移動を抑制していることがわかりました。このことによりウイルスの増殖が抑えられ、予防と治療に有効な働きが示されたと考えられています。

3)Morita, M. et al. Cell. 153,1 (2013):112-25


- Interview -
矢澤 一良 先生 早稲田大学 研究院教授
1972年京都大学工学部工業化学科卒業。ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生体研究室勤務。その後、相模中央化学研究所に入所、1989年に東京大学より農学博士号を授与される。東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科ヘルスフード科学講座客員教授、東京海洋大学「食の安全と機能に関する研究」プロジェクト特任教授を経て、2014年より早稲田大学ナノ理工学研究機構規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門研究院教授(現職)。

「予防医学」からみたDHA・EPAのポテンシャル
私は長い間、食による「予防医学」に携わってきました。予防医学は、病気になってから治療する「治療医学」とは異なり、病気にかからないことを目指しています。同じ環境で生活しても、風邪をひきやすい人とひきにくい人、生活習慣病にかかりやすい人とかかりにくい人がいます。実はその違いは食べ物にあることが少なくありません。だから食べ物を賢く選んで、ヒトの機能を調節する−その考え方が予防医学の根底を成しています。
ヒトの機能を調節する成分として多くのものが見出されていますが、その最も重要な位置に存在するのがDHAとEPAです。 DHA・EPAは、AHA(米国心臓協会)、FDA(米国食品医薬品局)、EFSA(欧州食品安全機関)などに推奨され、2012年の消費者庁の「食品の機能性評価モデル事業」では、対象とされた成分で唯一「機能性について明確で十分な根拠がある=A」評価を受けており、世界で最も信頼されている成分と言うことができます。
治療医学においても予防医学と同じ目的で、ワクチンを用いた予防接種が行われています。しかしワクチンに相当する作用を持つ食品成分も存在します。そのひとつがDHA・EPAです。前頁に紹介されている研究成果によって、またひとつ、このことが証明されたと考えています。

さまざまなインフルエンザウイルスの増殖抑制が期待できるDHA代謝物
DHA・EPAは免疫力を向上する作用がすでに認められているため、インフルエンザの予防を期待できることがわかっていました。それに加えて、前頁にある報告では新たに、DHAから体内でつくられる代謝物が、2009年に新型インフルエンザとして流行したウイルスに感染したマウスに予防的な効果を示し、インフルエンザ感染後2日経った重症マウスに対して、治療に有効な働きを行うことが示唆されました。そしてその理由として、ウイルスが増殖するために、侵入した細胞の核へと放出した遺伝情報を、DHA代謝物が核の外に移動するのを防いでいることが明らかにされました。つまり、DHA代謝物は体内に侵入したウイルスの増殖を遺伝子発現のレベルで抑制しているのです。このためインフルエンザウイルスの種類にかかわらず、DHA代謝物は体内に侵入したウイルス増殖を抑制する可能性が十分にあるのです。このことから私は大変貴重な成果であるととらえています。
今回見出されたDHA代謝物の作用が、DHAの摂取で起こるかという点については、現段階ではまだわかりませんが、私は今後の研究の進展により解明される可能性があると考えています。

インフルエンザ予防のためには免疫力の向上
インフルエンザなど感染症予防に重要となるのが、免疫力を高めることです。ただし冬は、ウイルスの生存にとって好条件であることに対して、寒さなどから人間の活動には悪条件になるため、免疫を高める「運動」量が減少してしまいます。
予防医学の基本となる食品の中でも、DHAとEPAは循環器系の改善を通して、白血球の機能を維持し、ウイルスなどから体を守る免疫力を向上することが知られています。その他、キノコや海草に含まれるβグルカンや食物繊維、乳酸菌や納豆菌、麹菌などの発酵生産物には、腸管における免疫力の向上が期待できます。
これから迎える年末年始は暴飲暴食になりがちな時期ですが、DHAやEPAなど免疫力を向上する成分を含む食品を賢く選び、インフルエンザから体を守ってください。また、DHAとEPAは酸化しやすい成分のため、脂溶性の抗酸化作用を持つ成分と一緒に摂取すると、より高い抗酸化作用が期待できます。



【浜内 千波 先生 のDHA・EPAが豊富な旬のお魚レシピ】
<プロフィール>
『家庭料理をちゃんと伝えたい』……という思いで、料理教室を主宰。『料理は、もっともっと夢のある楽しいもの』をモットーに、テレビ番組や料理ビデオの出演、講演会、雑誌や書籍の執筆活動、各種料理講習会への参画を積極的に行い、その発想のユニークさやクリエイティブな仕事には定評があります。
最近の主な著書は、『「おいしいね」って言われるレシピ』(KADOKAWA)、『お腹が凹むオリーブオイル・レシピ』 (PHP研究所)、『免疫力を上げるまいたけ健康レシピ』 (マイナビ)、など多数。

◎サバ鍋[ 1人分249kcal/調理時間15分]
キムチ、トマトのパンチが強く、サバと良く合います。
また、うまみも相乗効果で、塩だけでもとてもおいしいスープになります
<材料:4人分>
サバ  中2尾分(400g)
トマト 1個
キムチ 100g
もやし 1袋
白菜  400g
シメジ 1P
水   3カップ
塩   小1

−作り方−
(1)鍋に分量の水と塩を入れ白菜のざく切り、子房に分けたシメジを入れ蓋をし、火を通す。
(2)一口大に切ったサバ、もやしを入れて火を通す。
 最後にキムチとトマトのくし型を入れ、お好みの火加減で火を通しながらいただく。


◎ブリのあつあつ茶漬け[ 1人分471kcal/調理時間5分]
最近ブームのお茶漬け。ブリが半生の状態でいただけ、忙しいときでも安心。
最後に胡麻をまぶして、抗酸化アップも期待できます。
<材料:4人分>
ご飯  4杯分
ぶり  300g前後
のり  適宜
わさび 適宜
葱   適宜
お茶  たっぷり
醤油  適宜(要確認)
胡麻  少々

−作り方−
(1)ご飯の上に鰤のうすきりと葱、のり、わさびをトッピングして、
 醤油をかけ熱湯かお茶を注ぐ。

※できるだけ温かいお湯かお茶を注ぎ、全体をしっかり混ぜながら食べると
 おいしくお召し上がりいただけます。

★11月・12月が旬の魚
ブリ、サバ
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