ランニングにおける「脱水」対策 3つのポイント
[15/02/09]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
20150209
教えて!「かくれ脱水」委員会
マラソン大会 各地でブーム
練習に力が入るランナーのみなさん、健康管理は大丈夫?
ランニングにおける「脱水」対策 3つのポイント
今シーズンもマラソンブームが続いており、人気のマラソン大会の開催もまだこれから控えています。これから出場予定のランナーはますます練習に力が入りますが、一方で健康面のリスクには充分に注意したいものです。若くて練習量の多い学生たちが走る大学駅伝大会でも、出場選手たちが脱水症や低体温症などの健康被害に見舞われることがあるのです。そこで教えて!『かくれ脱水』委員会は、NPO法人 日本医師ジョガーズ連盟のランニングドクター・中村 集 医師に、ランニングにおける脱水への対策などについて聞きました。
■ランニングは脱水リスクがつきもの
昨年(2014年)8月、米国心臓医学会(ACC)が、長距離ランナーにとって熱中症は心疾患よりも死亡リスクが約10倍高く、熱中症や脱水症のリスクへの理解も充分ではない、という発表(下記※参照)をしました。ランニング時には体温が上昇しますが、カラダは汗をかくことで気化熱をうばい、体温を元に戻そうと調整します。汗をかくと体液が失われますが、失われた水分・電解質を適切に補給せずにいると脱水状態に陥ってしまいます。「ランニングには脱水リスクはつきものです。脱水状態は臓器の機能に影響を及ぼすため、筋肉のけいれん、疲労や倦怠感、頭痛、めまい、吐き気といった体調の変化があらわれ、脱水症となるわけです」(中村医師)。中村医師に、ランニングにおける脱水への対策として必要なことを教えてもらいました。
■中村医師がアドバイス!ランニングの脱水対策 注意したい3つのポイント
1.レース中の給水プランを立てること
走っているときの給水の目安は、1時間あたり400〜800ml
2.レース前、レース後にも、
電解質を含む経口補水液などで充分な水分補給をすること
レース前の水分補給は1〜2時間前に250ml〜500mlをこまめに
ゴール後は体重減少の70〜80%の水分を
3.天気予報をしっかりチェック
暑くなることが予想されれば放熱仕様のウェアの着用など服装の検討を
■電解質を含んだ水分を摂り、異変を感じたらレースを止める意識をもつ
走っているときも、5kmごとの給水ポイントで適切な量の水分を摂ることが大切です。「脱水対策としては、水分だけではなく電解質の補給(特にナトリウム)と糖分が必要です。給水では、電解質と糖質のバランスを調整した吸収の早い経口補水液(OS-1など)が有用でしょう」と中村医師は語ります。電解質を含まない水を飲みすぎると、血中ナトリウム濃度が下がり、不安感やめまい、頭痛などの症状を伴う「水中毒」を起こす危険性があるので注意しましょう。また、「体調に変化を感じたら中止することもいとわないという意識をもっていてほしい」と中村医師。「めまい、筋肉痛、けいれん、しびれ、顔面蒼白、呼吸が荒くなったら走るのをやめて、涼しいところで休んでください」
■中高齢者はレース前に一度専門医のチェックを
中村医師が所属するNPO法人 日本医師ジョガーズ連盟(日医ジョガーズ)は、ランニングを愛好する医師の団体です。各地で開催されているマラソン大会の医療活動を援助して大会運営に貢献するとともに、ランニングドクターの育成にも力を入れています。中村医師も、レース中の救護医としていくつもの大会に参加し、脱水や心疾患で倒れたランナーへの応急処置などをしてきました。
「救護医としての参加時には必ず経口補水液を携行し、脱水状態に陥ってしまったランナーに対処しています。今までは脱水で倒れているランナーがいたら、救急車で病院か救護所へ運び点滴をすることが多かったのですが、飲むことができるようであれば(意識障害がなく軽度から中等度までの脱水状態の場合)、経口補水液で回復することが多くなり、不要な救急搬送が減りました。意識がもうろうとしている方もいらっしゃるので誤嚥を防ぐためにも、市販されているゼリータイプを携行するのが良いかと思います」
さらに中村医師は、大会におけるランナーの医療サポートの充実やガイドラインの策定を呼びかけています。「米国心臓医学会の発表にもありますが、マラソンなどの大会の現場には、ランナーの体調管理や緊急時の救護体制などの指針が明確ではありません。日本も同様です。日医ジョガーズとして、近年、ランナーと一緒に走っていち早く救護活動をする認定ランニングドクターなどを育成し、なるべく多くのレースで脱水や心肺停止などのリスクへの対応を進めていますが、まだ十分ではありません」したがってランナーにとっては、出場するレースに応じた練習を行い、水分補給やウェアの選考なども含めて自主的にレースプランを立て、予防や対策を怠らないことが大切です。また中高齢者の場合、負荷をかけることで自分では気がつかない心臓病が悪化して心肺停止になるリスクもある、と中村医師は指摘します。「レース前に一度専門医のチェックを受けることは絶対に必要だと覚えていてください」(中村医師)
■中村医師へのインタビューは、教えて「かくれ脱水」委員会のホームページ
『かくれ脱水JOURNAL』にて、PDF版とともに公開しています。
http://www.kakuredassui.jp/column5
※Yankelson, L et al., Life-Threatening Events During Endurance Sports – Is Heat Stroke More Prevalent Than Arrhythmic Death?, JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY, VOL.64, No.5, 2014
教えて!「かくれ脱水」委員会
マラソン大会 各地でブーム
練習に力が入るランナーのみなさん、健康管理は大丈夫?
ランニングにおける「脱水」対策 3つのポイント
今シーズンもマラソンブームが続いており、人気のマラソン大会の開催もまだこれから控えています。これから出場予定のランナーはますます練習に力が入りますが、一方で健康面のリスクには充分に注意したいものです。若くて練習量の多い学生たちが走る大学駅伝大会でも、出場選手たちが脱水症や低体温症などの健康被害に見舞われることがあるのです。そこで教えて!『かくれ脱水』委員会は、NPO法人 日本医師ジョガーズ連盟のランニングドクター・中村 集 医師に、ランニングにおける脱水への対策などについて聞きました。
■ランニングは脱水リスクがつきもの
昨年(2014年)8月、米国心臓医学会(ACC)が、長距離ランナーにとって熱中症は心疾患よりも死亡リスクが約10倍高く、熱中症や脱水症のリスクへの理解も充分ではない、という発表(下記※参照)をしました。ランニング時には体温が上昇しますが、カラダは汗をかくことで気化熱をうばい、体温を元に戻そうと調整します。汗をかくと体液が失われますが、失われた水分・電解質を適切に補給せずにいると脱水状態に陥ってしまいます。「ランニングには脱水リスクはつきものです。脱水状態は臓器の機能に影響を及ぼすため、筋肉のけいれん、疲労や倦怠感、頭痛、めまい、吐き気といった体調の変化があらわれ、脱水症となるわけです」(中村医師)。中村医師に、ランニングにおける脱水への対策として必要なことを教えてもらいました。
■中村医師がアドバイス!ランニングの脱水対策 注意したい3つのポイント
1.レース中の給水プランを立てること
走っているときの給水の目安は、1時間あたり400〜800ml
2.レース前、レース後にも、
電解質を含む経口補水液などで充分な水分補給をすること
レース前の水分補給は1〜2時間前に250ml〜500mlをこまめに
ゴール後は体重減少の70〜80%の水分を
3.天気予報をしっかりチェック
暑くなることが予想されれば放熱仕様のウェアの着用など服装の検討を
■電解質を含んだ水分を摂り、異変を感じたらレースを止める意識をもつ
走っているときも、5kmごとの給水ポイントで適切な量の水分を摂ることが大切です。「脱水対策としては、水分だけではなく電解質の補給(特にナトリウム)と糖分が必要です。給水では、電解質と糖質のバランスを調整した吸収の早い経口補水液(OS-1など)が有用でしょう」と中村医師は語ります。電解質を含まない水を飲みすぎると、血中ナトリウム濃度が下がり、不安感やめまい、頭痛などの症状を伴う「水中毒」を起こす危険性があるので注意しましょう。また、「体調に変化を感じたら中止することもいとわないという意識をもっていてほしい」と中村医師。「めまい、筋肉痛、けいれん、しびれ、顔面蒼白、呼吸が荒くなったら走るのをやめて、涼しいところで休んでください」
■中高齢者はレース前に一度専門医のチェックを
中村医師が所属するNPO法人 日本医師ジョガーズ連盟(日医ジョガーズ)は、ランニングを愛好する医師の団体です。各地で開催されているマラソン大会の医療活動を援助して大会運営に貢献するとともに、ランニングドクターの育成にも力を入れています。中村医師も、レース中の救護医としていくつもの大会に参加し、脱水や心疾患で倒れたランナーへの応急処置などをしてきました。
「救護医としての参加時には必ず経口補水液を携行し、脱水状態に陥ってしまったランナーに対処しています。今までは脱水で倒れているランナーがいたら、救急車で病院か救護所へ運び点滴をすることが多かったのですが、飲むことができるようであれば(意識障害がなく軽度から中等度までの脱水状態の場合)、経口補水液で回復することが多くなり、不要な救急搬送が減りました。意識がもうろうとしている方もいらっしゃるので誤嚥を防ぐためにも、市販されているゼリータイプを携行するのが良いかと思います」
さらに中村医師は、大会におけるランナーの医療サポートの充実やガイドラインの策定を呼びかけています。「米国心臓医学会の発表にもありますが、マラソンなどの大会の現場には、ランナーの体調管理や緊急時の救護体制などの指針が明確ではありません。日本も同様です。日医ジョガーズとして、近年、ランナーと一緒に走っていち早く救護活動をする認定ランニングドクターなどを育成し、なるべく多くのレースで脱水や心肺停止などのリスクへの対応を進めていますが、まだ十分ではありません」したがってランナーにとっては、出場するレースに応じた練習を行い、水分補給やウェアの選考なども含めて自主的にレースプランを立て、予防や対策を怠らないことが大切です。また中高齢者の場合、負荷をかけることで自分では気がつかない心臓病が悪化して心肺停止になるリスクもある、と中村医師は指摘します。「レース前に一度専門医のチェックを受けることは絶対に必要だと覚えていてください」(中村医師)
■中村医師へのインタビューは、教えて「かくれ脱水」委員会のホームページ
『かくれ脱水JOURNAL』にて、PDF版とともに公開しています。
http://www.kakuredassui.jp/column5
※Yankelson, L et al., Life-Threatening Events During Endurance Sports – Is Heat Stroke More Prevalent Than Arrhythmic Death?, JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY, VOL.64, No.5, 2014