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小学生が早稲田の法廷で模擬裁判 講師陣も驚嘆する子どもたちの高い潜在能力

2015-04-06

早稲田大学広報室広報課

小学生が早稲田の法廷で模擬裁判
正当防衛は認められるか? 量刑は妥当なのか?
講師陣も驚嘆する子どもたちの高い潜在能力

2015年3月15日(日)、早稲田大学早稲田キャンパス8号館法廷教室にて、早稲田大学社会科学部仲道ゼミナールと江戸川区子ども未来館法律ゼミとの合同模擬裁判が実施されました。これは、早稲田大学社会科学部西原博史教授(憲法学)、同仲道祐樹准教授(刑法学)、東京大学法学部大村敦志教授(民法学)が1年間にわたり講師を担当した、江戸川区子ども未来館での小学生向け法律ゼミの締めくくりとして企画されたものです。

本模擬裁判では、小学生が裁判官役となり、仲道ゼミの学生が演じる裁判をふまえて、実際に判決を作成しました。対象とした事件は、「バイト先の先輩であるKに執拗ないじめを受けていた被告人Wが、ある夜、そのイライラからKを殴りつけたところ、たまたまKが交際中のOを蹴りつけようとしていた瞬間であり、これによってOが救助された」というものです。本件の処理にあたっては、刑法36条1項にいう「他人の権利を防衛するため……にした行為」という文言をどのように解釈するかが問われます。

■正当防衛は認められるか?

小学生からは、「イライラして殴っている以上、防衛するための行為とはいえない」として被告人からの正当防衛の主張を退ける意見が出された一方、「正当防衛の成立に、どのような気持ちであったのかがなぜ重要なのか」「結果としてOが助かっている以上、『防衛』に成功している」との反論が出され、裁判官会議はおおいに紛糾。有罪側、無罪側が激しい議論を戦わせましたが、最終的には、被告人を有罪にする、という結論を得ました。

■量刑は妥当?

続いて、検察官側からの「懲役2年」との求刑に対して、実際に何年の刑を科すかという量刑段階に議論が進みました。有罪無罪の判断では多数を形成できなかった無罪側ですが、ここで、その発想が大きな展開を見せます。被告人の刑を軽くするべきだ、とする主張として、「被告人WがKからいじめられていたのだから、悪いのはWだけではない」という(大人でも思いつくような)理由が出てくるのは想定の範囲内でした。担当教員が一様に驚かされたのは、「被告人Wは、KがOを殴るのを結果としては止めている。これは、『Oが殴られなかった』という形でOを助けたのみならず、『Kが犯罪者にならなかった』という意味でKをも助けた行為であるから、その行為にはいい面も含まれている。この点を考慮すれば、懲役2年は重すぎる」という理由付けでした。このような視点は、現在の刑法学の教科書には掲載されていないものですが、たしかに正当防衛の一側面を適切にとらえているものです。この2つの理由をもって、無罪側は、有罪側の説得に成功。2年の求刑に対して、1年6月という量刑を引き出すことに成功しました。

■子どもたちの高い潜在能力

1年間の法律ゼミを通じて、小学生が提出してくる柔軟かつ論理的な推論と主張に、担当した講師陣は毎回うならされていました。小学生の持つ、法的思考に対しての高い潜在能力と、法的な思考を欲せざるを得ない子どもたちの当事者性を認識させられるとともに、その能力が十分に発揮される社会の構築に向けて、担当講師陣一同、さらなる研究の発展を誓う企画でした。

レポート:社会科学部准教授 仲道祐樹

ニュース全文 http://www.waseda.jp/fsss/sss/news/2015/04/03/4551/
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