秋の行楽シーズンを前に、山岳医と山岳遭難救助隊が指南する 「秋の登山を安全に楽しむための10ヶ条」
[15/10/07]
提供元:共同通信PRワイヤー
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20151006
教えて!「かくれ脱水」委員会
秋の行楽シーズンを前に、山岳医と山岳遭難救助隊が指南する
「秋の登山を安全に楽しむための10ヶ条」
気候もすっかり秋めいて、山々では紅葉が見られる季節となりました。近年、幅広い世代の方に楽しまれている登山・トレッキングですが、山は、そこに立ち入るだけで脱水しやすい環境であり、秋の登山ならではの危険も潜んでいます。今回、秋の登山やトレッキングを安全に楽しんでいただくために、山での環境リスクやその予防について、医療と救助の専門家にお話を伺いました。秋の登山を計画する前に、ぜひ一読ください。
大城和恵 (おおしろ・かずえ)教えて!「かくれ脱水」委員会・委員
心臓血管センター北海道大野病院・
付属駅前クリニック 医学博士
国際山岳医
西村和隆 (にしむら・かずたか)
北海道警察 山岳遭難救助隊
救助対策官
秋の登山でのリスクとは?
「秋といっても登山では、汗をよくかきますし、高度が上がると、ハーハーと大きな呼吸になりやすいです。吐いた息からも水分が逃げますので、脱水になりやすいといえます。寒いと利尿作用も働き、山で活動することは季節に関わらず、脱水になりやすい環境。脱水状態になると、心筋梗塞など発症するリスクが高まりますので。注意が必要です」と、大城委員。「私たちが主に活動する北海道の山を例にすると、水場が限られた山が多いんです。手つかずの自然の山が多い北海道では、山小屋があっても水を売っているわけではありません。お金を持っていてもしょうがない。北海道に限らず、事前に登山予定の山のどこで水を手に入れられるか調べておかないと危険です。秋の山登りでは、日没時間が早くなるので、水の確保は時間に余裕を持って行いましょう」山岳遭難救助隊 西村さんによると「山は、一回行ったときこうだったから次も大丈夫だということはありません。毎回、環境が違うということもある。山に登る際は、もし、こうなったら、という最悪のケースも考えて準備をしていくというのも必要」とのこと。「秋の山では道迷いがいちばん多く、紅葉の時期、紅葉を楽しみながら写真を撮ったりして歩くのは心地よいのですが、樹林帯の葉が落ちて、登山道を覆い尽くしてしまい、ルートを見失ってしまうということがあります。すると、急斜面に近づき、滑落してしまう事故も起こります。もうひとつは、夏に比べて日没時間が早くなるため、何かアクシデントが起こったり、疲れてしまって行動が遅くなったりすると日没後に下山することになり、ヘッドライトのような照明器具を持っていない登山者は、周囲が暗くて登山道を見失い、その場から動けなくなって遭難してしまうということがあります。天候や体調を鑑みて、途中で無理をしないで、最後まで山頂を目指すのではなく引き返すということも、選択肢として持って欲しい」と、西村氏は語ります。
秋の登山・水分補給について
水分補給について、大城委員は「まず水分は登る前にしっかり摂っておくこと。それから朝一回おしっこをして、登る前にもう一回おしっこが出れば、カラダに水分が循環している。それがカラダの出発準備が整ったということです。そのためには、朝最低500mlは飲まないといけません。少し塩分を含んだものを飲んだほうがカラダに水分を貯めておく作用があるのでお勧めします」とアドバイスしています。「日本人の登山スタイルというのは、だいたい25~30分歩いて5分休むか、50分~1時間歩いて10分休むかというのが多い。登山中の水分補給は、それに合わせて、登りだしてからは30分ごとに200ml前後くらいずつ飲むように指導しています。登山は激しい運動ですから、汗や呼気で水分を失います。登り終わってからも水分を摂ることも重要です」「山での脱水サインは、一般的には少しみつけにくいかもしれません。喉の渇きというのはすぐにはやってこないですし、疲労や寝不足の症状と同じように感じるんですね。私は、おしっこの回数がわかりやすいと思います。普段、2~3時間に一度くらいはトイレに行くと思いますが、山の中でも同じことです。いつもと違うようならやっぱり脱水なのです。水分を幾ら飲んでもまだおしっこが出ないというのは、摂取量が足りないということ。おしっこがいつもと同じペースで出ていなければ、水分が足りないと覚えてください。また、トイレをガマンするために水分を控えてしまう人が女性に多いです。夏場だと、それが山での熱中症の原因になっています。登山のリーダーが強制的に水分補給の時間を決めて水分を摂らせないといけませんね。水分補給を怠ると当然脱水のリスクが増します。体調不良の原因になりますから、秋の山などでも同じだと考えて欲しいです」
ウェアや食事について
大城委員によると、ウェアは「外側は防水防風。ちょっと湿度が抜けるようなゴアテックス素材のようなものがいいです。中に着るものは、薄いものを重ねる着方がいちばんいいのですが、肌と接する衣類は汗を吸い取って乾かしてくれる素材のもの。外に向かって保温性のあるものを纏うようにして、機能を使い分けて使うのがいいです」とのこと。食事については、「こま目に食べながら登る必要があります。行動する為のカロリーと同時に、エネルギーが体温をつくってくれる。水分も同様です。山では、お昼の時間と言うのではなく、こま目にエネルギーや水分を補給していくという“行動食”という概念でいて欲しいと思います」とコメントしています。西村さんは「一般的には、軽くてコンパクトで栄養価が高いものがいいでしょうけど・・・。私は、個人差はあると思いますが、自分が食べたいものを持っていくのがいちばんいいと思います。カラダにいいといわれてもノドを通らないようではいけません。食が進まないものより、これを山で食べたいと思うものを選んで欲しい」と語りました。
秋の登山をより楽しむために
「事故を起こしたくて起こす人はいないといわれていますが、遭難している方の例を見ますと、自分の体力や技術に見合った山を選んで登っていただくことが一番だと思います。自分の体力以上のものを求めて、登山という長時間の運動をしてしまうと、体調不良を引き起こすことがありますし、下山中に疲労が蓄積してしまい脚の踏ん張りが効かなくなって転倒し、ケガをしてしまうことも多いようです。また、地図やコンパス、GPSなどを持って登ったほうがいいですよ。秋の登山を楽しむために、装備も確認して欲しいですね」と西村さん。大城委員も「私も、やっぱり体力に見合った登山を、ということです」と訴えます。「基本的には山は体力、それも脚の筋力がないと登れない。山というのは、登りはゆっくりだと登れてしまいますが、下りは筋力がないと絶対に無理で、そこでケガをする人が多い。登山をする人は、普段から階段の上り下りをするなどして、勾配で体重をかけるようなトレーニングをしないと登山向きの筋力はつきません。筋力を鍛えていない人は、まず低い
山からはじめて、下山のときに自分の筋力を確かめる。または、下山の道をなるべく緩やかな道を選ぶということも必要だと思います」
【秋の登山を楽しむための10ヶ条】
1. 普段からの筋力アップと、自分の体力に見合ったルート設定
2. 水分の確保(必要水分の携帯と水場の確認)
3. 当日、登山前に500mlの水分補給(塩分の入ったもの)
4. 朝、起きて1回、朝食後に1回のトイレが出発OKの証
5. 30分ごとに200ml前後の水分摂取
6. 昼食時間などを決めず、こまめな行動食を
7. トイレタイムは平常のリズムで
8. 日照時間を考えたヘッドライトや、ルート確認の地図など装備の携行
9. 体温保護と汗対策を考えたウェアの着用
10. 下山しても水分補給
教えて!「かくれ脱水」委員会
秋の行楽シーズンを前に、山岳医と山岳遭難救助隊が指南する
「秋の登山を安全に楽しむための10ヶ条」
気候もすっかり秋めいて、山々では紅葉が見られる季節となりました。近年、幅広い世代の方に楽しまれている登山・トレッキングですが、山は、そこに立ち入るだけで脱水しやすい環境であり、秋の登山ならではの危険も潜んでいます。今回、秋の登山やトレッキングを安全に楽しんでいただくために、山での環境リスクやその予防について、医療と救助の専門家にお話を伺いました。秋の登山を計画する前に、ぜひ一読ください。
大城和恵 (おおしろ・かずえ)教えて!「かくれ脱水」委員会・委員
心臓血管センター北海道大野病院・
付属駅前クリニック 医学博士
国際山岳医
西村和隆 (にしむら・かずたか)
北海道警察 山岳遭難救助隊
救助対策官
秋の登山でのリスクとは?
「秋といっても登山では、汗をよくかきますし、高度が上がると、ハーハーと大きな呼吸になりやすいです。吐いた息からも水分が逃げますので、脱水になりやすいといえます。寒いと利尿作用も働き、山で活動することは季節に関わらず、脱水になりやすい環境。脱水状態になると、心筋梗塞など発症するリスクが高まりますので。注意が必要です」と、大城委員。「私たちが主に活動する北海道の山を例にすると、水場が限られた山が多いんです。手つかずの自然の山が多い北海道では、山小屋があっても水を売っているわけではありません。お金を持っていてもしょうがない。北海道に限らず、事前に登山予定の山のどこで水を手に入れられるか調べておかないと危険です。秋の山登りでは、日没時間が早くなるので、水の確保は時間に余裕を持って行いましょう」山岳遭難救助隊 西村さんによると「山は、一回行ったときこうだったから次も大丈夫だということはありません。毎回、環境が違うということもある。山に登る際は、もし、こうなったら、という最悪のケースも考えて準備をしていくというのも必要」とのこと。「秋の山では道迷いがいちばん多く、紅葉の時期、紅葉を楽しみながら写真を撮ったりして歩くのは心地よいのですが、樹林帯の葉が落ちて、登山道を覆い尽くしてしまい、ルートを見失ってしまうということがあります。すると、急斜面に近づき、滑落してしまう事故も起こります。もうひとつは、夏に比べて日没時間が早くなるため、何かアクシデントが起こったり、疲れてしまって行動が遅くなったりすると日没後に下山することになり、ヘッドライトのような照明器具を持っていない登山者は、周囲が暗くて登山道を見失い、その場から動けなくなって遭難してしまうということがあります。天候や体調を鑑みて、途中で無理をしないで、最後まで山頂を目指すのではなく引き返すということも、選択肢として持って欲しい」と、西村氏は語ります。
秋の登山・水分補給について
水分補給について、大城委員は「まず水分は登る前にしっかり摂っておくこと。それから朝一回おしっこをして、登る前にもう一回おしっこが出れば、カラダに水分が循環している。それがカラダの出発準備が整ったということです。そのためには、朝最低500mlは飲まないといけません。少し塩分を含んだものを飲んだほうがカラダに水分を貯めておく作用があるのでお勧めします」とアドバイスしています。「日本人の登山スタイルというのは、だいたい25~30分歩いて5分休むか、50分~1時間歩いて10分休むかというのが多い。登山中の水分補給は、それに合わせて、登りだしてからは30分ごとに200ml前後くらいずつ飲むように指導しています。登山は激しい運動ですから、汗や呼気で水分を失います。登り終わってからも水分を摂ることも重要です」「山での脱水サインは、一般的には少しみつけにくいかもしれません。喉の渇きというのはすぐにはやってこないですし、疲労や寝不足の症状と同じように感じるんですね。私は、おしっこの回数がわかりやすいと思います。普段、2~3時間に一度くらいはトイレに行くと思いますが、山の中でも同じことです。いつもと違うようならやっぱり脱水なのです。水分を幾ら飲んでもまだおしっこが出ないというのは、摂取量が足りないということ。おしっこがいつもと同じペースで出ていなければ、水分が足りないと覚えてください。また、トイレをガマンするために水分を控えてしまう人が女性に多いです。夏場だと、それが山での熱中症の原因になっています。登山のリーダーが強制的に水分補給の時間を決めて水分を摂らせないといけませんね。水分補給を怠ると当然脱水のリスクが増します。体調不良の原因になりますから、秋の山などでも同じだと考えて欲しいです」
ウェアや食事について
大城委員によると、ウェアは「外側は防水防風。ちょっと湿度が抜けるようなゴアテックス素材のようなものがいいです。中に着るものは、薄いものを重ねる着方がいちばんいいのですが、肌と接する衣類は汗を吸い取って乾かしてくれる素材のもの。外に向かって保温性のあるものを纏うようにして、機能を使い分けて使うのがいいです」とのこと。食事については、「こま目に食べながら登る必要があります。行動する為のカロリーと同時に、エネルギーが体温をつくってくれる。水分も同様です。山では、お昼の時間と言うのではなく、こま目にエネルギーや水分を補給していくという“行動食”という概念でいて欲しいと思います」とコメントしています。西村さんは「一般的には、軽くてコンパクトで栄養価が高いものがいいでしょうけど・・・。私は、個人差はあると思いますが、自分が食べたいものを持っていくのがいちばんいいと思います。カラダにいいといわれてもノドを通らないようではいけません。食が進まないものより、これを山で食べたいと思うものを選んで欲しい」と語りました。
秋の登山をより楽しむために
「事故を起こしたくて起こす人はいないといわれていますが、遭難している方の例を見ますと、自分の体力や技術に見合った山を選んで登っていただくことが一番だと思います。自分の体力以上のものを求めて、登山という長時間の運動をしてしまうと、体調不良を引き起こすことがありますし、下山中に疲労が蓄積してしまい脚の踏ん張りが効かなくなって転倒し、ケガをしてしまうことも多いようです。また、地図やコンパス、GPSなどを持って登ったほうがいいですよ。秋の登山を楽しむために、装備も確認して欲しいですね」と西村さん。大城委員も「私も、やっぱり体力に見合った登山を、ということです」と訴えます。「基本的には山は体力、それも脚の筋力がないと登れない。山というのは、登りはゆっくりだと登れてしまいますが、下りは筋力がないと絶対に無理で、そこでケガをする人が多い。登山をする人は、普段から階段の上り下りをするなどして、勾配で体重をかけるようなトレーニングをしないと登山向きの筋力はつきません。筋力を鍛えていない人は、まず低い
山からはじめて、下山のときに自分の筋力を確かめる。または、下山の道をなるべく緩やかな道を選ぶということも必要だと思います」
【秋の登山を楽しむための10ヶ条】
1. 普段からの筋力アップと、自分の体力に見合ったルート設定
2. 水分の確保(必要水分の携帯と水場の確認)
3. 当日、登山前に500mlの水分補給(塩分の入ったもの)
4. 朝、起きて1回、朝食後に1回のトイレが出発OKの証
5. 30分ごとに200ml前後の水分摂取
6. 昼食時間などを決めず、こまめな行動食を
7. トイレタイムは平常のリズムで
8. 日照時間を考えたヘッドライトや、ルート確認の地図など装備の携行
9. 体温保護と汗対策を考えたウェアの着用
10. 下山しても水分補給