第28回「中堅企業経営者『景況感』意識調査」ー世界36カ国同時調査ーを発表
[16/08/09]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2016年8月9日
太陽グラントソントン
第28回「中堅企業経営者『景況感』意識調査」ー世界36カ国同時調査ーを発表
太陽グラントソントンは、2016年5月に実施した非上場企業を中心とする中堅企業経営者の意識調査の結果を公表した(従業員数100人から750人)。この調査は、グラントソントン加盟主要36カ国が実施する世界同時調査の一環である。
・日本の景況感が大幅下落。過去3年半の中で最も低いDI -51を記録。また、日本のDIは対象36カ国中で最低値。
・米国、英国および世界36カ国の平均の景況感も低下。
・オリンピック・パラリンピックを間近に控えるブラジルは景況感が大幅に改善。
■日本の景況感が大幅に悪化、悲観視する経営者の多くが人材不足を懸念
世界36カ国の中堅企業経営者に対して行った、自国経済の今後一年の見通しに関する2016年第2四半期(調査実施期間2016年5月、以下今回)の調査において、日本の景況感 DI*1は−51となり、過去3年半の中で最も低い値となった(2012年第4四半期にDI−70を記録)。さらに、今回の調査において他国と比較すると、調査対象36カ国中で最も低いDI値であることも分かった。
また、今回初めて「悲観的」と考える理由として「人材不足」の項目を用意したところ、選択肢の中で最も多くの経営者から選択されており、人材不足が深刻な影響を与えていることが分かった。
■中国の景況感は引き続き改善。英国は過去3年間で最低値。
世界36カ国の平均の景況感DIは、前期比(※)24ポイント減のDI 32となった。
主要国の景況感を見ると、中国は前期比8ポイント増となるDI 36、米国は前期比6ポイント減のDI 44となった。英国は前期比33ポイント減と大きく下げてDI 44となり、過去3年間で最も低い景況感となった(本調査は英国のEU離脱を問う国民投票の前に実施) 。
■日本の景況感DIがギリシャを下回り最下位に。ブラジルは景況感が大幅に改善。
今回の調査で、調査対象国36カ国(左表)のうち景況感DIが高い国はフィリピン94、アイルランド90、インド83などとなった。
一方、景況感DIがマイナスを示した国は、ラトビア -1、アルメニア -12、シンガポール -12、マレーシア -12、南アフリカ -13、トルコ -20、ロシア -21、ギリシャ -50、日本は対前期比で40ポイント下げ、対象国中最低の -51となった。 2015年第1四半期以来、本調査ではギリシアが最低位を続けてきたが、今回の調査で日本と入れ替わる形になった。また、前回調査で景況感DIがマイナスを示した国は、8カ国であったのに対し今回は9カ国となっており、わずかに悲観的な傾向が強まった。全対象国平均の前期比も4ポイントながら低下しており、同様な傾向が見られた。
DIの対前期比で大きな改善がみられた国は、この夏にオリンピック・パラリンピックを間近に控えるブラジルで、前期比30ポイント増と、2014年第4四半期以来で初めてDIがプラスに転じた。
その他地域別の平均を見ると、EU加盟国平均はDI 35と前期比 3ポイント減、アジア太平洋地域平均もDI 28とこちらも同比3ポイント減、G7平均もDI 26と9ポイント減となった。一方、BRICs平均は、ブラジルの大幅改善の影響もあり、DI 37と同比で5ポイント増と小幅ながら改善した。
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<調査実施期間>(インターナショナル)
2016年第2四半期:2016年5月(36カ国)
2015年第4四半期:2015年11月(36カ国)
2015年第2四半期:2015年 5月(36カ国)
※1 DI: バランス統計手法Diffusion Index の略。景気判断DI「良い」との回答比率から「悪い」との回答比率を引いた景況感を示す指数。
※2:従来は四半期毎の調査結果の発表としていたが、今期より年2回の発表に変更。
※2015年第4四半期までは四半期ごとに調査。2016年以降は、半年ごとに調査結果を発表。
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■今後一年間の自社の見通し:
【日本は8項目中5項目が悪化、「収益性」のみ過去最高値を記録】
日本の中堅企業の今後1 年の自社の見通しについては、前回調査では全8項目中5項目が悪化となっていたが、今回の調査では、「販売価格」以外は前回と同じ、または改善された数値となった。特に「収益性」の項目は25ポイントと、2007年の調査開始から過去最高のDI値となった。
米国においては、前回と同ポイントとなった「雇用」、1ポイント増となった「調査研究」の項目を除いては、前回に引き続き6項目で悪化となった。
■日本における動向:
今後一年間の日本経済の見通しを「楽観的」と考える理由として前回同様、「現政権の政策」が多くの人から挙げられた。 一方「人材不足」の問題が多くの経営者に悲観的な見通しをもたらしていることが明らかになった。
【今後一年間の日本経済の見通し】
日本の調査対象者に、今後一年間の日本経済の見通しについて尋ねたところ、 「たいへん楽観的だ」は前回とほぼ同じ1.4%となり、 「少し楽観的だ」と回答した人は5.4%と前回の1/3以下に減少した。
一方、「たいへん悲観的だ」は9.5%と前期から5.5ポイント増加、「少し悲観的だ」は48.6%で前回から21.9ポイントと大幅に増加した。
「たいへん楽観的だ」「少し楽観的だ」と回答した人に「楽観的だ」と考える理由(複数回答)を尋ねたところ、前回同様「現政権の政策」が60%と最も多く、「株価の上昇」「設備投資の回復」「訪日客のインバウンド消費」などがこれに続いた。
前回「株価の上昇」に次いで多かった「個人消費の回復」は、前回に対しポイントが大幅に減少し、0%となった。
同様に「たいへん悲観的だ」「少し悲観的だ」と回答した人に、その理由(複数回答)を尋ねた。今回初めて「悲観的」と考える理由として「人材不足」の項目を用意したところ、65.1%と選択肢の中で最も多くの経営者から選択されており、人材不足を深刻な問題として捉えていることが分かった。
【経営課題】
自社の事業で過去一年間において達成された事項(複数回答)について尋ねたところ、最も多く挙げられたのは「5%以上の増収」(60.8%)であったが、前年同期(2015年5月)比で3.4ポイント増加した。次いで「市場における新製品・新サービスの開発」 (31.4%)、「職員(人員)水準が5%以上増加した」(27.5%) が続いた。
今後一年間の主な経営課題について尋ねたところ、「5%以上の増収」が最も多く53.5%で、前年同期比で11.8ポイント減少した。次いで「市場における新製品・新サービスの開発」(38.0%)、「職員(人員)水準を5%以上増やす」(26.8%)が続いた。
理想の為替相場水準に関する質問では、 「1ドル=110円以上115円未満」との回答が22.7%で最も多く、 これに「1ドル=105円以上110円未満」(21.3%)が続いた。また加重平均では前期比で21.9円の円高方向に推移しており、前年同期の加重平均値からは23.8円の円安方向の推移を示した。
TPPが発効して貿易の自由化が進むことによる経営への影響について尋ねたところ、「収益力が高まる」「どちらかといえば収益力が高まる」の合計26.7%が、「収益力が低下する」「どちらかといえば収益力が低下する」の合計2.6%を24.1ポイント上回る結果となり、収益力に好影響を及ぼすと考える人の割合の方が依然として多いことが明らかになった。
ただし回答が最も多かったのは、従来と同様「わからない」(70.7%)であった。
また、政府に実施してもらいたい経済活性化の推進施策について質問したところ、前期と同様「法人税の引き下げ」(62.7%)や「設備投資減税」(42.7%)などが多く挙げられた。
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第28回「中堅企業経営者の意識調査」コメント
太陽グラントソントン広報担当パートナー 美谷 昇一郎
今回の2016年第2四半期調査(2016年5月)では、対象36カ国の今後一年の景況感見通しが前期(2015年第4四半期)から4ポイント低下しDI32となった。
今回の調査結果で特徴的だったのは、日本の景況感DIが−51となり、過去3年半の中で最も低い値となったことである(2012年第4四半期にDI−70を記録したことがある)。さらに、今回の日本の調査結果を他国と比較すると、調査対象36カ国中で最も低いDI値であった。今回初めて「悲観的」と考える理由の選択肢に「人材不足」の項目を加えたところ、65.1%と最も多い回答を得ており、人材不足を深刻な問題として捉える経営者が多いことが分かった。
これは、新興国の景気減速、株安・円高、熊本地震によるマインド面の下押しの影響に加えて、特に中堅企業ほど人手不足感が強く、欠員補充の困難さ、人件費の上昇によるコスト増、投資事業計画の見直しなど雇用環境の悪化に起因した懸念点を強く反映したものとみられる。消費関連では小売の下支えとなってきたインバウンド需要に陰りがみられる他、タイトな雇用環境にもかかわらず賃金水準の大幅な改善には結びついていないことから、消費税増税の再延期の流れは織り込んでいるものの、消費マインドの改善にまでは至っていない。さらに、日本経済の見通しを「悲観的」と考える理由として「為替の変動」も34.9%の回答を得ているが、調査実施後の6月に実施された英国の国民投票によりEUからの離脱が決定したことを受けて、急速な円高ユーロ安が進行し、輸出企業の業績に影響の広がることが懸念される。
一方、主要国の景況感に目を移すと、中国は前期比8ポイント増となるDI36、米国は前期比6ポイント減のDI44となった。また、英国は前期比33ポイント減と大きく下げてDI44となり、過去3年間で最も低い景況感となった。一方、対前期比で大きな改善がみられた国は、この夏にオリンピック・パラリンピックを控えるブラジルで、前期比30ポイント増と1年半ぶりにDIがプラスに転じた。
安倍政権では、5月に経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の素案と、人口1億人を維持するための「ニッポン一億総活躍プラン」をまとめ、2021年度までに国民総生産(GDP)を600兆円に増やす目標の実現に向け、働き方改革による生産性の向上や少子高齢化の克服に政府を挙げて取り組む姿勢を明確にしている。しかし、当面は、急速な円高や人手不足、中国など新興国の経済の減速、など中堅企業の経営に影響を与える懸念材料は少なくなく、引き続き慎重な企業経営を余儀なくされるだろう。さらに、英国のEU離脱が決定した影響から欧州経済はさらに不透明感を強めることが懸念され、この影響についても注視をしていく必要がある。
以上
太陽グラントソントン
第28回「中堅企業経営者『景況感』意識調査」ー世界36カ国同時調査ーを発表
太陽グラントソントンは、2016年5月に実施した非上場企業を中心とする中堅企業経営者の意識調査の結果を公表した(従業員数100人から750人)。この調査は、グラントソントン加盟主要36カ国が実施する世界同時調査の一環である。
・日本の景況感が大幅下落。過去3年半の中で最も低いDI -51を記録。また、日本のDIは対象36カ国中で最低値。
・米国、英国および世界36カ国の平均の景況感も低下。
・オリンピック・パラリンピックを間近に控えるブラジルは景況感が大幅に改善。
■日本の景況感が大幅に悪化、悲観視する経営者の多くが人材不足を懸念
世界36カ国の中堅企業経営者に対して行った、自国経済の今後一年の見通しに関する2016年第2四半期(調査実施期間2016年5月、以下今回)の調査において、日本の景況感 DI*1は−51となり、過去3年半の中で最も低い値となった(2012年第4四半期にDI−70を記録)。さらに、今回の調査において他国と比較すると、調査対象36カ国中で最も低いDI値であることも分かった。
また、今回初めて「悲観的」と考える理由として「人材不足」の項目を用意したところ、選択肢の中で最も多くの経営者から選択されており、人材不足が深刻な影響を与えていることが分かった。
■中国の景況感は引き続き改善。英国は過去3年間で最低値。
世界36カ国の平均の景況感DIは、前期比(※)24ポイント減のDI 32となった。
主要国の景況感を見ると、中国は前期比8ポイント増となるDI 36、米国は前期比6ポイント減のDI 44となった。英国は前期比33ポイント減と大きく下げてDI 44となり、過去3年間で最も低い景況感となった(本調査は英国のEU離脱を問う国民投票の前に実施) 。
■日本の景況感DIがギリシャを下回り最下位に。ブラジルは景況感が大幅に改善。
今回の調査で、調査対象国36カ国(左表)のうち景況感DIが高い国はフィリピン94、アイルランド90、インド83などとなった。
一方、景況感DIがマイナスを示した国は、ラトビア -1、アルメニア -12、シンガポール -12、マレーシア -12、南アフリカ -13、トルコ -20、ロシア -21、ギリシャ -50、日本は対前期比で40ポイント下げ、対象国中最低の -51となった。 2015年第1四半期以来、本調査ではギリシアが最低位を続けてきたが、今回の調査で日本と入れ替わる形になった。また、前回調査で景況感DIがマイナスを示した国は、8カ国であったのに対し今回は9カ国となっており、わずかに悲観的な傾向が強まった。全対象国平均の前期比も4ポイントながら低下しており、同様な傾向が見られた。
DIの対前期比で大きな改善がみられた国は、この夏にオリンピック・パラリンピックを間近に控えるブラジルで、前期比30ポイント増と、2014年第4四半期以来で初めてDIがプラスに転じた。
その他地域別の平均を見ると、EU加盟国平均はDI 35と前期比 3ポイント減、アジア太平洋地域平均もDI 28とこちらも同比3ポイント減、G7平均もDI 26と9ポイント減となった。一方、BRICs平均は、ブラジルの大幅改善の影響もあり、DI 37と同比で5ポイント増と小幅ながら改善した。
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<調査実施期間>(インターナショナル)
2016年第2四半期:2016年5月(36カ国)
2015年第4四半期:2015年11月(36カ国)
2015年第2四半期:2015年 5月(36カ国)
※1 DI: バランス統計手法Diffusion Index の略。景気判断DI「良い」との回答比率から「悪い」との回答比率を引いた景況感を示す指数。
※2:従来は四半期毎の調査結果の発表としていたが、今期より年2回の発表に変更。
※2015年第4四半期までは四半期ごとに調査。2016年以降は、半年ごとに調査結果を発表。
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■今後一年間の自社の見通し:
【日本は8項目中5項目が悪化、「収益性」のみ過去最高値を記録】
日本の中堅企業の今後1 年の自社の見通しについては、前回調査では全8項目中5項目が悪化となっていたが、今回の調査では、「販売価格」以外は前回と同じ、または改善された数値となった。特に「収益性」の項目は25ポイントと、2007年の調査開始から過去最高のDI値となった。
米国においては、前回と同ポイントとなった「雇用」、1ポイント増となった「調査研究」の項目を除いては、前回に引き続き6項目で悪化となった。
■日本における動向:
今後一年間の日本経済の見通しを「楽観的」と考える理由として前回同様、「現政権の政策」が多くの人から挙げられた。 一方「人材不足」の問題が多くの経営者に悲観的な見通しをもたらしていることが明らかになった。
【今後一年間の日本経済の見通し】
日本の調査対象者に、今後一年間の日本経済の見通しについて尋ねたところ、 「たいへん楽観的だ」は前回とほぼ同じ1.4%となり、 「少し楽観的だ」と回答した人は5.4%と前回の1/3以下に減少した。
一方、「たいへん悲観的だ」は9.5%と前期から5.5ポイント増加、「少し悲観的だ」は48.6%で前回から21.9ポイントと大幅に増加した。
「たいへん楽観的だ」「少し楽観的だ」と回答した人に「楽観的だ」と考える理由(複数回答)を尋ねたところ、前回同様「現政権の政策」が60%と最も多く、「株価の上昇」「設備投資の回復」「訪日客のインバウンド消費」などがこれに続いた。
前回「株価の上昇」に次いで多かった「個人消費の回復」は、前回に対しポイントが大幅に減少し、0%となった。
同様に「たいへん悲観的だ」「少し悲観的だ」と回答した人に、その理由(複数回答)を尋ねた。今回初めて「悲観的」と考える理由として「人材不足」の項目を用意したところ、65.1%と選択肢の中で最も多くの経営者から選択されており、人材不足を深刻な問題として捉えていることが分かった。
【経営課題】
自社の事業で過去一年間において達成された事項(複数回答)について尋ねたところ、最も多く挙げられたのは「5%以上の増収」(60.8%)であったが、前年同期(2015年5月)比で3.4ポイント増加した。次いで「市場における新製品・新サービスの開発」 (31.4%)、「職員(人員)水準が5%以上増加した」(27.5%) が続いた。
今後一年間の主な経営課題について尋ねたところ、「5%以上の増収」が最も多く53.5%で、前年同期比で11.8ポイント減少した。次いで「市場における新製品・新サービスの開発」(38.0%)、「職員(人員)水準を5%以上増やす」(26.8%)が続いた。
理想の為替相場水準に関する質問では、 「1ドル=110円以上115円未満」との回答が22.7%で最も多く、 これに「1ドル=105円以上110円未満」(21.3%)が続いた。また加重平均では前期比で21.9円の円高方向に推移しており、前年同期の加重平均値からは23.8円の円安方向の推移を示した。
TPPが発効して貿易の自由化が進むことによる経営への影響について尋ねたところ、「収益力が高まる」「どちらかといえば収益力が高まる」の合計26.7%が、「収益力が低下する」「どちらかといえば収益力が低下する」の合計2.6%を24.1ポイント上回る結果となり、収益力に好影響を及ぼすと考える人の割合の方が依然として多いことが明らかになった。
ただし回答が最も多かったのは、従来と同様「わからない」(70.7%)であった。
また、政府に実施してもらいたい経済活性化の推進施策について質問したところ、前期と同様「法人税の引き下げ」(62.7%)や「設備投資減税」(42.7%)などが多く挙げられた。
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第28回「中堅企業経営者の意識調査」コメント
太陽グラントソントン広報担当パートナー 美谷 昇一郎
今回の2016年第2四半期調査(2016年5月)では、対象36カ国の今後一年の景況感見通しが前期(2015年第4四半期)から4ポイント低下しDI32となった。
今回の調査結果で特徴的だったのは、日本の景況感DIが−51となり、過去3年半の中で最も低い値となったことである(2012年第4四半期にDI−70を記録したことがある)。さらに、今回の日本の調査結果を他国と比較すると、調査対象36カ国中で最も低いDI値であった。今回初めて「悲観的」と考える理由の選択肢に「人材不足」の項目を加えたところ、65.1%と最も多い回答を得ており、人材不足を深刻な問題として捉える経営者が多いことが分かった。
これは、新興国の景気減速、株安・円高、熊本地震によるマインド面の下押しの影響に加えて、特に中堅企業ほど人手不足感が強く、欠員補充の困難さ、人件費の上昇によるコスト増、投資事業計画の見直しなど雇用環境の悪化に起因した懸念点を強く反映したものとみられる。消費関連では小売の下支えとなってきたインバウンド需要に陰りがみられる他、タイトな雇用環境にもかかわらず賃金水準の大幅な改善には結びついていないことから、消費税増税の再延期の流れは織り込んでいるものの、消費マインドの改善にまでは至っていない。さらに、日本経済の見通しを「悲観的」と考える理由として「為替の変動」も34.9%の回答を得ているが、調査実施後の6月に実施された英国の国民投票によりEUからの離脱が決定したことを受けて、急速な円高ユーロ安が進行し、輸出企業の業績に影響の広がることが懸念される。
一方、主要国の景況感に目を移すと、中国は前期比8ポイント増となるDI36、米国は前期比6ポイント減のDI44となった。また、英国は前期比33ポイント減と大きく下げてDI44となり、過去3年間で最も低い景況感となった。一方、対前期比で大きな改善がみられた国は、この夏にオリンピック・パラリンピックを控えるブラジルで、前期比30ポイント増と1年半ぶりにDIがプラスに転じた。
安倍政権では、5月に経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の素案と、人口1億人を維持するための「ニッポン一億総活躍プラン」をまとめ、2021年度までに国民総生産(GDP)を600兆円に増やす目標の実現に向け、働き方改革による生産性の向上や少子高齢化の克服に政府を挙げて取り組む姿勢を明確にしている。しかし、当面は、急速な円高や人手不足、中国など新興国の経済の減速、など中堅企業の経営に影響を与える懸念材料は少なくなく、引き続き慎重な企業経営を余儀なくされるだろう。さらに、英国のEU離脱が決定した影響から欧州経済はさらに不透明感を強めることが懸念され、この影響についても注視をしていく必要がある。
以上