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筋ジストロフィー患者の母親で心不全のリスクが高いことを初めて発見

2018年3月1日

独立行政法人国立病院機構徳島病院

筋ジストロフィー患者の母親で心不全のリスクが高いことを初めて発見

筋ジストロフィーは遺伝子の変異によって筋肉の変性・壊死が生じ、筋力低下や運動機能障害、呼吸不全、心筋症などの症状が起こる疾患です。その中で代表的な疾患であり、日本国内の患者数は約5,000人とされる「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」は性染色体(X染色体)にある遺伝子の変異によるものです。

この原因となる遺伝子変異は、患者本人の突然変異で生じる場合と親から遺伝する場合があります。男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持つことから、X染色体に原因となる遺伝子変異が生じるとDMDを発症します。一方、女性はX染色体を2本持っていて、片方のX染色体に原因となる遺伝子変異が生じても、もう一方が正常であればDMDを発症する確率はまれです。このことから、女性はDMDを発症していないものの、原因となる遺伝子変異を持っている可能性があります。

独立行政法人国立病院機構は、前身の国立病院・国立療養所時代から50年以上にわたって筋ジストロフィー医療を手がけており、国立病院機構徳島病院では1994年からDMD患者の母親の方を対象に定期検診を行ってきました。

今回、国立精神・神経医療研究センター、徳島大学病院などと共同で22年間の検診結果を解析した結果、「遺伝子変異を持つ女性は、DMDを発症していなくても心不全のリスクが高いこと」を初めて発見し、2017年12月21日にJournal of the Neurological Sciences誌の電子版に掲載されました。

これまで、日本のDMD患者の方は、10歳代後半までしか生きられませんでしたが、最近では医療技術の向上によって30歳を超え、40歳以上の方も少なくありません。また、携帯型医療機器の普及や医療・福祉制度の改善により人工呼吸器装着後も在宅で生活できる方も増えています。

このように、DMD患者の平均寿命が大幅に伸びたこと、高度な介護が必要な方が長期間在宅で過ごせるようになったことで、介護する家族も高齢化し、負担が増加しているという一面があることも事実です。このため、家族が長く健康でいられるように健康管理を行うことがDMD患者・家族全体のQOL(生活の質)にとって重要な課題になっています。

遺伝子変異を持っている可能性がある女性は、たとえ症状はなくとも心機能を定期的に検査し、異常を認めたら適切な心不全治療を早期に開始して経過観察をする必要があります。

【掲載論文】
Katsuhito Adachi, Shuji Hashiguchi, Miho Saito, Setsuko Kashiwagi, Tatsushi Miyazaki, Hisaomi Kawai, Hirotsugu Yamada, Takashi Iwase, Masashi Akaike, Shoichiro Takao, Michio Kobayashi, Masatoshi Ishizaki, Tuyoshi Matsumura, Madoka Mori-Yoshimura, En Kimura
Detection and management of cardiomyopathy in female dystrophinopathy carriers
Journal of the Neurological Sciences, 2018 in press;
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