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ホクレン農業協同組合連合会「北のごはん倶楽部」News Letter vol. 25

2018年8月6日

ホクレン農業協同組合連合会

ホクレン農業協同組合連合会「北のごはん倶楽部」News Letter vol. 25

【特集】きらら397誕生30年。北海道米の歴史とこれから。
1988(昭和63)年に優良品種認定を受け、30回目の作付を迎えた「きらら397」。北海道米のイメージを大きく変えるきっかけとなった品種を生んだ上川農業試験場を訪ね、品種開発の背景とともに、将来に向けての取り組みについてお聞きしました。「ななつぼし」「ふっくりんこ」「ゆめぴりか」など、北海道米が躍進を遂げたポイントはどこにあったのか、販売者、生産者の声とあわせてご紹介します。

【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201808036681-O1-gxwM46F9

「きらら397」のふるさと、上川農業試験場を訪ねて。
100年以上品種改良に携わり、 数多くの品種を開発してきた上川農業試験場。今年30周年を迎えた「きらら397」は、 ここで誕生しました。 今回お話を伺った平山氏は、水稲グループで育種を担当。 今や全国で人気の品種「ゆめぴりか」や今年2月に北海道の優良品種として認定された直播用新品種「上育471号」など、 おいしい北海道米づくりに取り組んでいます。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201808036681-O6-bD4tIzl6
地方独立行政法人 北海道総合研究機構 上川農業試験場 水稲グループ 主査 平山 裕治氏

府県のお米の味に追いつけ、追い越せ。
 かつて、作付面積、生産量ともに日本一でありながら、「味が良くない」と低評価だった北海道米。つくったお米を政府が買い取るため耐冷性と収量性が重視され、おいしさは度外視されていました。しかし、生産調整によって栽培面積は一挙に減少。「北海道のお米づくりがピンチだ!」という危機意識が高まり、1980( 昭和55 )年、行政と民間が一体となって取り組む「優良米早期開発プロジェクト」がスタートしました。
 1984( 昭和59 )年、このプロジェクトから生まれた最初のおいしいお米が「ゆきひかり」。そして1988( 昭和63 )年、「きらら397 」が誕生しました。
 「当時は、北海道でトップの良食味米。やっと府県のお米の標準に追いついたレベルでしたが、これをきっかけに、北海道でもおいしいお米がつくれる、全国トップレベルを目指して新しい品種を開発しよう、という気運が高まりました」
 おいしいお米といえば「コシヒカリ」。コシヒカリそのものを北海道で栽培することはできませんが、その系統を受け継ぐ品種は以前から存在。その品種を改良しておいしさを追求したお米が「きらら397 」です。
 「『きらら397 』の親である『しまひかり』が『コシヒカリ』の系統にあたります。この品種は出穂が遅くて寒さに弱いため、道南でしかつくれなかった。そこで、寒さに強くて出穂が早い『キタアケ』を交配した品種が『きらら397 』です」
 「きらら397 」は安定した品質、道北や道央の幅広い地域で栽培できることなどが生産者に高く評価され、またたく間に作付面積が広がっていきました。

お米のおいしさにかかわる2 つの成分に着目。
 上川農試では、年間100通り程度の組み合わせで交配を行い、約10万におよぶ株を栽培。それぞれの株は異なる性質を持っており、研究員は毎日、生育状況を観察し、記録しています。
 今では、データ管理にコンピュータが使われるようになりましたが、以前は「野帳」と呼ばれるノートに手書きで記入。現在も保管されている野帳を見ると、育種の苦労が伝わってきます。
 「育種で難しいのは、実際に食べてみないと、おいしいかどうかわからないこと。私たちは、お米ができると毎日、お昼と午後3時に少しずつ試食をします。『きらら397』の開発を手がけた先輩たちは、自宅にも何種類かの炊飯器を用意して食べ比べるなど、かなり苦労なさったと聞いています」
 そこで、早い段階から優良な株を選抜するために注目されたのが良食味にかかわる成分。府県米と北海道米を分析して違いを調べたところ、北海道は、お米に含まれるデンプン「アミロース」と「タンパク質」の含有量が高いことがわかり、この数値を下げることが品種改良の目標になりました。

【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201808036681-O7-4SfPBtTr
稲の生育状況を記した「野帳」。今も大切に保管されている。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201808036681-O28-0E129W6i

「きらら397」が実証した、成分選抜の有効性。
 「1960 〜70年代から、おいしいお米はアミロース含有量が低いことはわかっていましたが、測定が難しかった。当時はひとつ調べるのに2 日間程かかったそうです」
 この問題を解決するため、元道立中央農業試験場の研究員として活躍されていた稲津 脩氏が、1時間に20点まで分析できるアミロースオートアナライザーの導入を提案。アミロース含有量の低い個体を効率よく選抜できるようになりました。
 タンパク質も、以前からお米の硬さに影響を与えていることは知られていましたが、科学的な数値に基づいて選抜する手法は当時としては画期的。また、品種改良にかかる年数を、従来の10年から8 年に短縮するなどの試みも行われました。
 「きらら397」の成功によって、おいしいお米づくりに成分選抜が役立つことが実証され、後の「ななつぼし」や「ゆめぴりか」の開発にも生かされました。
 「北海道という寒冷な気候を持つ土地で『コシヒカリ』の系統による低アミロース化には限界がある。そこで、『ななつぼし』にはアメリカから逆輸入した品種『国宝ローズ』、『ゆめぴりか』には『きらら397』の変異系統から低アミロースの特性を導入しています」

【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201808036681-O8-c36R3E4Q
「アミロース」含有量の測定に使われるオートアナライザー。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201808036681-O9-KY9ATpuw

直播用の新品種が誕生。今後の育種の方向性は?
 今年2月、上川農試が関係機関と協力し、10年がかりで開発した直播用の新品種「上育471号」が北海道の優良品種に認定されました。
 「現在の直播で主に栽培されている『ほしまる』に替わる品種を目指しました。移植栽培は、ハウスで育苗し、5月に田植えを行うのが一般的ですが、直播だと4月にタネを水田にまいても寒いので発芽しません。5月に入ってタネをまくので、耐冷性とともに生育の早さを追求しました。また直播は、半分程度しか発芽しないため、より発芽しやすい性質を持つことや低温での苗立ちの良さも重視。『ほしまる』に比べ、いもち病抵抗性が強い、玄米での品質が良い、収量がやや多いなどの特長があります」
 苗立ちが良いと穂数確保が容易となるため、収量の安定が期待できます。また、「ななつぼし」に匹敵する食味も見込まれています。現在、北海道で直播を導入している水田は約2 ,000 haですが、将来的にはもっと広がる想定です。
 これからは、「ゆめぴりか」で実現した低アミロースの特長を生かしつつ、より収量性に優れた品種や「ななつぼし」のバランスを生かした新品種の開発が計画されています。
 「今どういうニーズがあるのか、開発した品種がどんな用途に向いているのかなど、私たちだけでは把握できない部分もありますので、関係機関と協力しながら進めていきます」

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新品種の候補となる稲を育成中。
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